箱庭幻想譚―異世界に転生した私の幸せになりたいと願った物語―

物部妖狐

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第二章 修行、そして旅に出る

24話 セイラの思い

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 無意識に衝撃を逃がす為に数歩後ろに下がって、前を覆うように包んでいた翼を広げると、私の目の前で片膝をついているセイラさんがいた。
ゆっくりと立ち上がると短槍を消して構えを解くと、何度か深呼吸を繰り返し、全身から力を抜いて脱力をする。
そしてゆっくりと地面に座り込むと……

「……本当に受け止める何て、やっぱり私あなたの事嫌いだわ」
「でも、セイラさんが受け止めたり出来たら旅に出る事を許してあげるって言うから頑張って受け止めたんだけど?」
「余裕で必殺の一撃を受け止められたのが気に入らないの、私だってこの国を復興させた英雄の一人なのよ?能力だって、ゼンの斬とかっていう頭おかしい能力程では無いけど、【加速】って言う一級品だし、心器の短槍だって【韋駄天】って言う距離に応じて際限なく速度が上がるヤバいの持ってるのにどうしてよ」
「どうしてって言われても……受ける事が出来たとしか」
「めちゃくちゃよあなた、本当におかしいわよ……プリムラスグロリア様から天神と魔神の間に産まれた、二柱の力を受け継いだ【天魔】という新たな可能性って聞いてはいたけど、根本的に存在が違うじゃない」

 根本的に違うって言われても、確かに私はプリムラスグロリアさんの言うように天魔という、この世界に一人しかいない特別な種族だけど、そこまで差があるとは思えない。
だって、ゼンさんの方が全体的に私よりも能力が高いし、カー君に至っては純粋な魔族としての能力の高さや毒の魔法を使った搦め手、そして身体を大蛇へと変えて暴れる事で起きる圧倒的な破壊力。
二人と比べたら私に出来る事は、【暴食と施し】を使った相手の生命力と魔力を奪って自分の物にしたり、自身の生命力を相手に渡す事が出来たり、身体能力を生かした攻撃くらいだ。
しかもいくら魔力を相手から奪ったところで、私自身は魔法を使う事が出来ないから、魔力の塊を直接ぶつける位しか使い道が無い。
ただ……今回セイラさんの一撃を受けて分かったのは、背中から生えている悪魔と天使の翼は凄い防御力があるって事。
でもそれって戦う力かどうかと言われたら、何か違うと思うから……それらを踏まえて考えると、私よりも皆の方が強いと思う。

「……そんなこと無いとは言わせないわよ?今のあなたは確かにゼンやあのカーティスって言う色男がいないと、ポテンシャルを活かす事が出来ないだろうけど、間違いなく旅に出たら強くなるわ」
「えっと……セイラさん?」
「いいから黙って聞きなさい、だからね?自分の身を一人で守れるようになったら、ゼンの事はあなたが守りなさい」

 セイラさんが真剣な表情で私を見る。
その気持ちにちゃんと答える事が出来るだろうかと不安になってしまう。
五大国の神様達を倒す旅に出る以上何が起きるのか分からないし、無責任に約束するのも違う気がする……だって、全員が無事に帰って来れるって言う約束が出来ないのに、分かったって言うのは相手に失礼だよね。
でも、こうやってお願いされている以上は自身が無いけど出来る限りの事はしたい。

「守りなさいって、私に出来るかな」
「出来るって信じてるから、こうやって言ってるんでしょ?だから、もし旅の目的が終わってここに戻って来る時にゼンがいなかったら許さないわよ?」
「……うん、あ、でもカー君はいいの?ほら、カー君って奥さんが凄い沢山いるから、居なくなったら悲しむ人が沢山いるよ?」
「あの色男は別にどうでもいいわ、だって……あぁいうタイプは死んでも死なないでしょうし、それに試練の時なんて本気でやってなかったわよ?プリムラスグロリア様に突っ込んで反撃を受けた後、堂々と休んでたじゃない、ゼンだってそれに気付いてたからあぁやって声を掛けて指示を出したわけだし、そういう意味でもあなた達の中で一番嫌いなのはあの色男よ、なぁにが沢山の奥さんがいる?おかしくない?男なら一人の女を大事にしなさいよ!ほんっとありえない!」

 あぁ、カー君の事本当に嫌いなんだなぁ……、確かに私もセイラさんと同じ考えを持ってるから気持ちは分からない訳でもない。
でもこれに関しては、カー君と奥さん達の関係だから私達がとやかく言うべきものでもないと思うし、お互いに納得しているならそれでいいんじゃないかなって思う。
それにこれからの旅で金銭的な面でお世話になる事が増えるだろうし、出来ればカー君の奥さん達とは仲良くしたいなぁって。

「あなたもそう思うでしょ?」
「私もセイラさんと似た考えだから分かるけど……、カー君は魔族でこの世界で生まれた人じゃないから、価値観の違いはしょうがないんじゃないかな」
「……確かにそうかもしれないけど、シャルネさんは嫌じゃないの?あぁ言うタイプは旅の道中で、隙あらば女を作って奥さんを増やすわよ?」
「正直言うと、それに関しては嫌だなぁって思うけど……一緒に旅する以上はある程度はしょうがないかなって」
「シャルネさ、いや……シャルネって結構大人な考えを持ってるのね、甘やかされて育って来たお嬢様みたいな子だと勝手に思い込んでたから以外かも」

 甘やかされて育ってたらこんな性格になっていないと思うし、大人な考えって言うよりは、カー君に関してはもうそういう人なんだって割り切ってしまっただけかもしれない。
だって、ここに来るまでの間に訪れた町だっけ、村だっけ……もう忘れちゃったけど、そこで色々とあって、その際に出会った妊婦のダニエラさんとカー君が直ぐに仲良くなって、首都スメラギに到着した後彼の奥さんの一人になったし。
そもそも、彼が旅に同行する時に話してくれたことを覚えてるから、もう慣れてしまった方がいいんじゃないかなって。

「それに何時の間にか私とちゃんと話せるようになってるじゃない?」
「あ、ほ、ほんとだ」
「ふふ、どうして指摘したらまたおどおどしてんのよ、おかしい人」
「だって、意識したら緊張しちゃうし……」
「もうめんどくさいなぁ……、じゃあ今日はここに泊まってシャルネの人見知りを治す手伝いをしてあげる!大丈夫、ここに来るまでの間にゼンと会って泊まる許しは貰ってるから!」

……え、待ってゼンさん私そんな話聞いてない!って言っても、外に出た時にあったなら私知らなくて当然だよね!?。
すると、セイラさんに腕を掴まれ『取り合えず汗掻いたから、一緒にお風呂入って汗を流そっか、お互いを知り仲良くなるにはまず裸の付き合いから!じゃあいくぞー!やるぞー!』と強引にお風呂に連れていかれるのだった。
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