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第二章 開拓同行願い

16話 冒険者の資格

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 道中で説明してくれるとは言うけど一体何を話してくれるというのか……不安もあるけど、ふと気付いたら内心楽しくなってきているぼくがいる。
とはいえコルクやダートに言われはしたけどぼくはそこまで強くはないけどぼく達で考えた連携が強い人達に何処まで通じるのか、上手く行ったら遭遇しても倒す事が出来るかもしれない。

「……内容は手配書の通りですが、その中の一人であるルードがフェ―レン領:辺境開拓村クイスト付近にて目撃情報があり捜索を開始したのですが」
「この小さい村の中にいるわけがないって感じで……なら開拓地の奥に居る可能性の方が多いっすよねぇって感じで……栄花にはこういうのがあるんすよ」

 そういうとケイは道具袋から見慣れぬ板状の物を取り出してぼく達に見せてくれる、
仲には手配書の人物の名前が書かれており一件手配書と同じ物に見えた。

「これにいったい何の意味があるん?うちには分からへんのけど……」
「もしかしたら名前の下に魔力探知というのがあるからこれかな?」
「……もしそうなら、栄花は魔力で人の場所を探す事が出来るのですか?」
「まぁ取り合えずそルード・フェレスの下にある探知を押してみて欲しいっすよ」

 各々の感想を言うけど、とりあえず言われた通り魔力探知という文字を押して見ると板の画面が空中に浮かびあがり、ルードの顔とどの範囲に居るかが書き出される。
これは魔導具だと思うけどいったいどういう原理で出来ているのだろうか。

「これは栄花騎士団にしかない魔導具で、お二人はご存じだと思いますが……まずは冒険者ではないレースさんに分かりやすく説明させて貰いますね?」

 アキさんはそういうと説明をしてくれた。
まず冒険者ギルドに登録するにはその人の魔力を登録する事になり個人で魔力の波長が違う為個人情報として使う事が出来る。
これをギルドに保存することでギルドカードと言う冒険者資格証が貰える仕組みになっているとの事で登録と共に栄花に情報が送られるらしい……

「それって……ダートやコルクも知ってるの?」
「ん?当たり前やん、冒険者になる以上は必要な事やん?それにな?そうやって情報を入れる事でな、依頼を受けている時にその人が何の依頼を受けとんのか今どこにおるんかわかるんよ……まぁうちは仲間に居場所を調べられるんが嫌で冒険者を辞めたんやけどね」
「私はカルディアさんにこのカードに魔力を登録してとしか言われて無かったので知りませんでした……」

 知ってる者と知らない者がと綺麗に分かれてしまっているけど、ダートは多分……この世界に来た時はまだ文字が読めなかったりして師匠に代行して貰ったのかもしれない。
けどそれとこの板に何の繋がりがあるんだろう。

「……栄花騎士団の最高幹部ではそうして登録された個人情報を保存したこの端末を使用して確認が出来るのです」
「とはいっても勿論普段は使ったりはしないっすよ?俺達でも使うのには団長と副団長及び最高幹部合わせて13人の内過半数以上の許可が必要っすからね……流石に自由に使う事は出来ないんすよ」
「んなもん当然やろ……特に意味も無いのに常に監視されてたら怖いわ……」

 ダートは話の意味を今一理解出来てないみたいで困惑した顔をしているけど、知らなかったらそういう反応もするだろう。
ぼくだってある日突然、実は所在地とか全て知られてましたって言われたら怖いし条件さえ満たす事が出来れば個人情報も全て丸裸にされると思うと不安になるのはしょうがない。

「あの、そういえばカルディアと言う名前が聞こえましたが……まさか【叡智】ですか?」
「そういえばこの国以外ではそう呼ばれてたね師匠……」
「師匠?Sランク認定されてる化物が師匠ってレースってもしかして凄かったりするっすか?」
「いや、ぼくは治癒術が使えるだけで戦うのは苦手だから凄くないよ」
「へぇ……そうなんすか残念っすねぇ……強かったら一度手合わせしたかったんすけどね」

 実際、師匠は一度に6つの異なる属性を同時に発動したり魔術と治癒術を同時に唱えるような化物だけど、ぼくに出来るのは精々治癒術が使える事と魔術とは言えないお粗末な物が使えるだけだ……何故かって自分の周囲に雪を散らせるだけ何て魔術とはいえないし戦闘の役に立つ訳がない。

「お二人のお話しの内容は分かったのですが……聞きづらいのですが私達が荷物持ちと呼ばれた意味も説明して貰えませんか?」
「あぁ……その件についてはごめんなさい、どうやらこの村では治癒術師の事を理解している方が少ないみたいで、私やケイが未開の土地に行くなら念の為に治癒術が使える者を同行させるべきだと言っても、『自分達には人の傷を癒す事しか出来ないひ弱な奴は必要ない!!』と言って人の話を聞いてくれなかったんですよ」
「まぁ……だからレースには悪いけど、俺達の荷物持ちという体で付いて来て貰う事で納得して貰った感じっすかねぇ」

 そういう事なら分かるけど、護衛隊は元冒険者が多い為治癒術師が戦場ではどういうものか知っている事が多いと思うのだけど違ったのだろうか……。
戦場で治癒術師にあったら敵に回すなと強い人達程理解していると聞いた事があるけど……もしかしたら彼等は強くないのかもしれない?

「なんやレース不思議な顔しとぉからに、もしかしてあんたそういう扱いされんのに違和感でもあったりするん?それなら気にせん方がええよ……、うちはもう冒険者やないけど二つ名が付くようになるB級以上の冒険者とは違うてな?C以下の奴らなんて自分の住んでる街や村から基本的に出やしないんよ。そうするとな?あんたらの事を知らん輩が出やすくなるしそれが当然や……知らない事を理解しようとする冒険心の無い奴がCのまま上がれんのやから奴等にそういう情報の更新は無いと思った方がええよ」
「さすが幻鏡っすね、元Bなだけあって俺達が説明するよりも早く説明してくれて助かるっすよ」

 話が長くて分かりづらい所はあったけど大まかな把握は出来たけど治癒術が下に見られているという事実には悲しくなる。

「とりあえず、ダートやコルク等の上位からしたら常識だけどそれより下はそれが通じないって事で合ってる?」
「うん、レースの考えであってるよ?でもCランク皆がそうって訳じゃないから勘違いしないであげて?」

 ダートはそういうと笑顔でぼくの手を取り隣に並んで歩き始める。
どうしていきなり?とは思うけど横からぼくの顔を見上げて「でもレースの事は何かあったら私が守るから大丈夫だよ」っと小さな声で喋り手を強く握る彼女に何も言えなくなってしまう。

「さてお喋りはこれ位にしましょう……、もうそろそろ私達の持ち場になるので気を引き締めてください。」
「あんたらもいちゃつくのはそこまでっすよ!ここからはちゃんとした仕事っす!」
「ほんまなぁ……私達の前で見せつけんでええんよ?そういうのは終わってから何回でもしてええからな?」

 3人から同じような事を言われてしまい恥ずかしくなったのか顔を赤くして俯きぼくの手を離すダートがいて何だかおかしく感じて笑いそうになってしまう。
それにアキやケイと話をするのに集中していたせいか、気付いたらまだ日中だというのに日の光があんまり入らない薄暗い森の中にぼく等がいて、普段過ごしている日常の直ぐそこにこのような世界が広がっているという事を改めて認識させられる。

「って事でここから先は本当に危険っすからね……」
「こっから先はまだ誰も現地の人物が入ったことが無い場所ですのであなた達の命の保証は出来ませんが、出来うる限り私達が守りますので安心してください」
「なら頼らせて貰うわぁ……レースやダートもそれでええよな?」

……ぼく達はお互いに頷いた後、森の奥地へと足を踏み入れた。
周囲からは野生の動物達の落ち着いた気配がして頭上からは鳥の囀りが聞こえる。
そんな平和な森だけどいつ何が起こるか分からない以上はぼくがしっかりとダートを守らないと駄目だ、彼女に暗示の魔術を使わせないようにしっかりとしよう。
そんな決意を胸に周囲を警戒していると……急に周囲の生物の気配が消えて静かな死が近づく音がした
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