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第六章 明かされた出自と失われた時間
32話 言葉に出来ない秘密
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あの後夕飯を食べたぼく達は直ぐに寝る事になったのは良いんだけど、また問題を起こさないようにというミュラッカの考えの元、ダートと同じ部屋で明け方まで休む事になった。
何ていうか連日同じ寝具で寝ていると慣れて来るから不思議だ……、でも何で彼女はぼくの腕を枕にして寝ているのかが分からない。
この状態で果たして眠る事が出来るだろうかと思っていたら……
「寝れた……」
気付いたら明け方でしっかりと眠れていた。
それに今回は腕の感覚が残っているから動かせるし、更には変な方向に曲がったりしていない……、こんな事ってあるんだなぁって思っているけど、何故かぼくの手がダートの頭の上に置かれている。
寝ている時に無意識でやってしまったのだろうかと思うけど、そんな事ってあるのだろうか?
取り合えず手をどけようとするけど、そうすると彼女の頭を撫でるようになってしまうからなんとも気恥ずかしい。
でもしょうがないから手をどかそうとすると……
「ん、んん……」
ぼくの手を掴んで何故か頭の上に戻されてしまう。
……なるほど、ぼくが無意識にやったんじゃなくて寝ている間にダートがやったんだって理解出来たけど、この光景を誰かに見られたら正直言ってかなり恥ずかしい気がする。
二人きりの時ならいいと思うけど、いつ誰が入って来るか分からない屋敷ではこうやってくっ付いてる所を見られたくないという気持ちがあって……、最近自分の気持ちに素直になれるようにはなって来たから分かるんだけど、ぼくはこの時間を誰にも見せないで独占したい。
「って言っても将来ダートとちゃんと夫婦になって、ダリアと一緒にメセリーの診療所に帰ったら難しいんだろうなぁ」
部屋の数を考えたらぼくとダートの部屋位しか無いから、将来的な事を考えて増築して三階を作るのを視野に入れるとして……、それまではぼくの部屋をダートと共有すればいいと思うけどって何を考えてるんだ。
起きたら直ぐにヴィーニ達の所へと行ってダリアとルミィを助けに行かなきゃいけないのに、こんな妄想をしてしまう何てどうかしている。
気合を入れないといけないと分かっているのに、ついこれからの事を考えてしまう辺り緊張感が足りてないのかもしれない。
「ぼくってもしかして、かなりマイペースというか緊張感が無い人間なのでは?」
「レースさんがマイペースな人間だという事には同意しますけど……、緊張感が無いかと言われると同意しかねますね」
声がした場所を見るとカエデがベッドの近くに立って、何とも言えない物を見ているような顔をしている。
いつ部屋に入ったんだろう、彼女の事だから無断で入って来ること何て無いと思う。
性格的にノックをしてから入って来たとは思うけど……、もしかして聞こえてなかったのだろうか?
「……何でカエデが部屋の中にいるの?」
「ミュラッカ様に妹が入ると気まずいと思うから代わりに行ってくれないかと言われたので、起こしに来たのですがノックしても反応が無かったので心配になって入りました」
「ノックの音なんて聞こえなかったけど?」
「入った後も私が声を出すまで気づかない位に、ダートお姉様の頭を撫で続けてたのでそっちに集中してたんじゃないですか?」
「頭を撫でて何か……、あれ?」
ダートの方を見ると無意識に頭をゆっくりと撫でていて、撫でられている彼女は幸せそうな寝顔を浮かべている。
試しに意識をして触ってみると良く手入れされた髪の毛が気持ち良くて癖になりそうだ……
「いや、何で手の方を確認した後にそのまま撫で続けてるんですか……」
「何でって触ってると気持ち良くて」
「……レースさん、そういうのは二人きりの時にしてください」
「あ、うん……、そういえば起こしに来たって事は皆はもう準備が出来て居たりするの?」
「はい、ミュラッカ様とトキさん、シンさんは既に馬車の中で待機しています、サリア様は……皆の朝食を作ってから乗るそうですが、既に結構時間が経っているので馬車にいると思いますよ?、なので後は私達だけですが……、ダートお姉様を起こす方法が浮かばないので、レースさんが抱き上げてそのまま運んでください」
取り合えず待たせている以上は言われたようにした方がいいと思うから、枕にされている腕を起こさないようにゆっくりどかすとベッドから起き上がり、両腕を彼女の身体の下に入れるとこちらに抱き上げるようにして持ち上げる。
「当り前のようにお姫様抱っこするんですね、途中で起きたら恥ずかしがりますよ?」
「その時はその時で考えるよ」
「ならいいですけど……、じゃあレースさん行きますよ?」
カエデが扉を開けてくれてダートを抱き上げたぼくを先に通すと、急いでぼくの隣に立って通路を歩きだす。
ただ……、何ていうかぼくに何かを聞きたそうな顔をしているけどどうしたのだろう。
「聞きたい事があるなら、そんな顔をするよりも聞いてくれないかな」
「……まさかレースさんが表情で察してくるようになる何て思いませんでした、聞きたい事と言っても何て言いますか、目を覚ましてミュラッカ様に怒られている時から気になっていたのですけど、何か思い悩んでいるように見えますけどどうかしたんですか?、ダートお姉様は話してくれるまで待ってくれるでしょうけど、私はどうしても気になってしまって……」
「……どうもしてないよ、何もない」
聞かれた瞬間に驚きで歩く足が止まりそうになったけど、どうせぼくの事だから顔に出て隠せて無かったんだと思う。
でも、マリステラから内緒にするように言われているから言う訳には行かない。
「その言い方だと何かありましたって言ってるようなものですよ?、言えないような事なんですか?」
「操られている間にあった事を皆に言わないように約束した相手がいるんだ、だからごめん」
「……約束をした?、誰としたのかは分かりませんが、それなら一つだけいいですか?答えられないならそれでいいです」
「それでいいなら」
「レースさんが操られて戦闘をしている時に、途中で心器が消えたのですけど何か知ってるんじゃないですか?」
……それなら母さんが介入したおかげだと思うけど、これを伝えて良いのだろうか。
でも聞いた事を話す訳じゃないから話すだけなら問題無い?、マリステラが言っていた事は『ここで聞いた事は出来れば誰にも言わないでね』だけだから大丈夫な筈だ。
「それなら心の中で母さんが出て来て……、ぼくの魔力の流れを停止させてくれたんだよ」
「スノーホワイト様が?それって何があったんですか?」
「……ごめん言えないんだ、それに質問は一つだけでしょ?」
「なるほどこれで分かりました、レース様は心の中であった事を誰かと約束している為、誰にも伝える事が出来ないって事ですね、それなら私からはこれ以上聞きません」
「……ありがとう、何も言えなくてごめんね」
……本当は言えるならダートに伝えたいし、カエデ達にも話してしまいたいけど約束をしている以上は守らなければいけない。
それに……、もし約束を破ってしまった場合いくら『出来れば誰にも言わないで』と言われていても何が起きるか分からないから何が起きても言わない方が良いと思う。
あの時はそこまで恐ろしい相手だとは思わなかったけど、今になって思うとどう見てもぼく達では敵対した瞬間に手も足も出ずに滅ぼされてしまってもおかしくない。
カエデからは、その質問以降何も聞かれる事無くお互いに無言のまま屋敷を出ると、そのまま外に用意されている馬車に乗りこんで目的地へと出発するのだった。
何ていうか連日同じ寝具で寝ていると慣れて来るから不思議だ……、でも何で彼女はぼくの腕を枕にして寝ているのかが分からない。
この状態で果たして眠る事が出来るだろうかと思っていたら……
「寝れた……」
気付いたら明け方でしっかりと眠れていた。
それに今回は腕の感覚が残っているから動かせるし、更には変な方向に曲がったりしていない……、こんな事ってあるんだなぁって思っているけど、何故かぼくの手がダートの頭の上に置かれている。
寝ている時に無意識でやってしまったのだろうかと思うけど、そんな事ってあるのだろうか?
取り合えず手をどけようとするけど、そうすると彼女の頭を撫でるようになってしまうからなんとも気恥ずかしい。
でもしょうがないから手をどかそうとすると……
「ん、んん……」
ぼくの手を掴んで何故か頭の上に戻されてしまう。
……なるほど、ぼくが無意識にやったんじゃなくて寝ている間にダートがやったんだって理解出来たけど、この光景を誰かに見られたら正直言ってかなり恥ずかしい気がする。
二人きりの時ならいいと思うけど、いつ誰が入って来るか分からない屋敷ではこうやってくっ付いてる所を見られたくないという気持ちがあって……、最近自分の気持ちに素直になれるようにはなって来たから分かるんだけど、ぼくはこの時間を誰にも見せないで独占したい。
「って言っても将来ダートとちゃんと夫婦になって、ダリアと一緒にメセリーの診療所に帰ったら難しいんだろうなぁ」
部屋の数を考えたらぼくとダートの部屋位しか無いから、将来的な事を考えて増築して三階を作るのを視野に入れるとして……、それまではぼくの部屋をダートと共有すればいいと思うけどって何を考えてるんだ。
起きたら直ぐにヴィーニ達の所へと行ってダリアとルミィを助けに行かなきゃいけないのに、こんな妄想をしてしまう何てどうかしている。
気合を入れないといけないと分かっているのに、ついこれからの事を考えてしまう辺り緊張感が足りてないのかもしれない。
「ぼくってもしかして、かなりマイペースというか緊張感が無い人間なのでは?」
「レースさんがマイペースな人間だという事には同意しますけど……、緊張感が無いかと言われると同意しかねますね」
声がした場所を見るとカエデがベッドの近くに立って、何とも言えない物を見ているような顔をしている。
いつ部屋に入ったんだろう、彼女の事だから無断で入って来ること何て無いと思う。
性格的にノックをしてから入って来たとは思うけど……、もしかして聞こえてなかったのだろうか?
「……何でカエデが部屋の中にいるの?」
「ミュラッカ様に妹が入ると気まずいと思うから代わりに行ってくれないかと言われたので、起こしに来たのですがノックしても反応が無かったので心配になって入りました」
「ノックの音なんて聞こえなかったけど?」
「入った後も私が声を出すまで気づかない位に、ダートお姉様の頭を撫で続けてたのでそっちに集中してたんじゃないですか?」
「頭を撫でて何か……、あれ?」
ダートの方を見ると無意識に頭をゆっくりと撫でていて、撫でられている彼女は幸せそうな寝顔を浮かべている。
試しに意識をして触ってみると良く手入れされた髪の毛が気持ち良くて癖になりそうだ……
「いや、何で手の方を確認した後にそのまま撫で続けてるんですか……」
「何でって触ってると気持ち良くて」
「……レースさん、そういうのは二人きりの時にしてください」
「あ、うん……、そういえば起こしに来たって事は皆はもう準備が出来て居たりするの?」
「はい、ミュラッカ様とトキさん、シンさんは既に馬車の中で待機しています、サリア様は……皆の朝食を作ってから乗るそうですが、既に結構時間が経っているので馬車にいると思いますよ?、なので後は私達だけですが……、ダートお姉様を起こす方法が浮かばないので、レースさんが抱き上げてそのまま運んでください」
取り合えず待たせている以上は言われたようにした方がいいと思うから、枕にされている腕を起こさないようにゆっくりどかすとベッドから起き上がり、両腕を彼女の身体の下に入れるとこちらに抱き上げるようにして持ち上げる。
「当り前のようにお姫様抱っこするんですね、途中で起きたら恥ずかしがりますよ?」
「その時はその時で考えるよ」
「ならいいですけど……、じゃあレースさん行きますよ?」
カエデが扉を開けてくれてダートを抱き上げたぼくを先に通すと、急いでぼくの隣に立って通路を歩きだす。
ただ……、何ていうかぼくに何かを聞きたそうな顔をしているけどどうしたのだろう。
「聞きたい事があるなら、そんな顔をするよりも聞いてくれないかな」
「……まさかレースさんが表情で察してくるようになる何て思いませんでした、聞きたい事と言っても何て言いますか、目を覚ましてミュラッカ様に怒られている時から気になっていたのですけど、何か思い悩んでいるように見えますけどどうかしたんですか?、ダートお姉様は話してくれるまで待ってくれるでしょうけど、私はどうしても気になってしまって……」
「……どうもしてないよ、何もない」
聞かれた瞬間に驚きで歩く足が止まりそうになったけど、どうせぼくの事だから顔に出て隠せて無かったんだと思う。
でも、マリステラから内緒にするように言われているから言う訳には行かない。
「その言い方だと何かありましたって言ってるようなものですよ?、言えないような事なんですか?」
「操られている間にあった事を皆に言わないように約束した相手がいるんだ、だからごめん」
「……約束をした?、誰としたのかは分かりませんが、それなら一つだけいいですか?答えられないならそれでいいです」
「それでいいなら」
「レースさんが操られて戦闘をしている時に、途中で心器が消えたのですけど何か知ってるんじゃないですか?」
……それなら母さんが介入したおかげだと思うけど、これを伝えて良いのだろうか。
でも聞いた事を話す訳じゃないから話すだけなら問題無い?、マリステラが言っていた事は『ここで聞いた事は出来れば誰にも言わないでね』だけだから大丈夫な筈だ。
「それなら心の中で母さんが出て来て……、ぼくの魔力の流れを停止させてくれたんだよ」
「スノーホワイト様が?それって何があったんですか?」
「……ごめん言えないんだ、それに質問は一つだけでしょ?」
「なるほどこれで分かりました、レース様は心の中であった事を誰かと約束している為、誰にも伝える事が出来ないって事ですね、それなら私からはこれ以上聞きません」
「……ありがとう、何も言えなくてごめんね」
……本当は言えるならダートに伝えたいし、カエデ達にも話してしまいたいけど約束をしている以上は守らなければいけない。
それに……、もし約束を破ってしまった場合いくら『出来れば誰にも言わないで』と言われていても何が起きるか分からないから何が起きても言わない方が良いと思う。
あの時はそこまで恐ろしい相手だとは思わなかったけど、今になって思うとどう見てもぼく達では敵対した瞬間に手も足も出ずに滅ぼされてしまってもおかしくない。
カエデからは、その質問以降何も聞かれる事無くお互いに無言のまま屋敷を出ると、そのまま外に用意されている馬車に乗りこんで目的地へと出発するのだった。
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