治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
338 / 600
第八章 戦いの先にある未来

32話 薬王の真実と禁忌 ダート視点

しおりを挟む
 姿を唐突に変えた薬王を見て驚きのあまり呼吸を忘れそうになる。
エルフの種族から、トレントと呼ばれる樹で出来た人型のモンスターへと変わって……

「……え、あ、え!?」
「どうした?」
「ショウソク・メイディ様の姿が……」
「ショウソクで言い、様付けされる事に慣れてないのでな、それにこの姿に関しては気にしないでいい、これは俺の中にある神の力に馴染み扱う為に必要な事だ」
「えっと、何を仰ってるのか意味が……」

 神の力を扱う為に必要な事、確かこの世界にある五大国の王様達の身体には神様が封印されているらしいけど、実際に私がその姿を見たのは義父にあたるストラフィリアの【前覇王ヴォルフガング・ストラフィリア】に封じられていた戦神【ディザスティア】だけで、後はメセリーの【魔王ソフィア・メセリー】に封じられている魔神【セラフナハシュ】に関して本人から聞いた事がある位だ。
後者は、何度かお義母様と共に診療所の手伝いに来てくれていた時に、レースと夫婦になるからにはこの世界の事を知っておいた方が良いだろうという事で教えて貰ったけど、聞いたのは神様の名前とその特徴位で詳しくは知らない。
でも、お義母様がこの国にいてくれる限りは共生出来る存在であるらしいけど……、ある時お義母様が私に大事な話があると呼び出して来て二人きりで話す事になった時に

『私はこれから人として生きて死ぬ事にしたから、これから正常に魂が歳と共に生命力を失い始めるわ……、そうね大体今から計算して10年前後で老衰で無くなると思うから後は宜しくね?、私の屋敷を含む財産はこの世界に連れて来てしまった罪滅ぼしと言ったらいい方が良くないと思うけど、大事な息子の奥さんであるあなたにあげるわ?、後もし私が居なくなった後に困った事があったら地下に隠し部屋があるからそこで、ダートちゃんが私の【叡智】を継ぎなさい、その為の魔導具を用意しといてあげるから、場所は――』

 と色々とお義母様が居なくなった後の事を教えてくれたから分かるけど、10年後居なくなってしまったら多分、神様と共生出来なくなるんだと思う。
それに関してはその時にレースと話し合えばいいとして、現状のこれはどうすればいいのかな……

「……おまえは何処までこの世界の事を知っている?、ヴォルフガングの息子と夫婦であるのなら封印されている神の事は知っているだろう?」
「はい……、ストラフィリアの【ディザスティア】様の事と縁あってメセリーの【セラフナハシュ】様についてなら知ってますが、他の国の神様に関しては詳しくは無いです」
「メランティーナ、それが俺に封じられていた神の名でこの首都に使われている体の本来の名前だ」
「メランティーナ……、あのちょっと待ってください、封じられていたとはどういう事ですか?」
「なんだ知らないのか、俺の中に既に神はいない奴は既に蘇っている俺の娘として産まれ変わってな……」

 メイメイちゃんが神様の生まれ変わり?何を言ってるのか分からない。
もしそれが本当だったら、封印するべき存在を自由にさせているって事だけど……

「どうしてそのような事を……?」
「ある日、俺の妻との間に出来た子が産まれる少し前に不慮の事故で亡くなってしまってな、メランティーナの提案に乗って胎児を蘇らせた結果的にそうなったのだ」
「えっと……」
「あぁ、そんな気まずそうな顔をしなくてもいい、これに関しては俺達が望んだ事だからな、それに産まれた後にあれがメランティーナである事には直ぐに気付いていたよ、なんせ今迄聞こえていた奴の声が聞こえなくなったのだから気付かないという事に無理がある、だがな?俺から見たら妻から産まれ健康に育って行ってくれている娘の姿は愛おしいし、中身が何であれ俺の愛すべき子だ、だから中身が神である事に関しては気付かない振りをしていたがある時、自ら大事な話があると申し訳なさそうに来て全てを話してくれたよ」

 ……私はいったい何を聞かされているのか、こちらの返答を聞かずに淡々と語り始めるショウソク様の姿は遠く懐かしい物を見る用で今を見ていない気がする。

「だがな、その姿を見て思ったのだ、私は娘を守る為ならこの世界の全てを敵に回して見せようと、それがこの姿だ、先程作った薬品はメランティーナの樹液に俺の血液を混ぜ、俺の中にある神の残滓を精霊術を使い込めた物だ、それ等を組み合わせる事で徐々に身体をメランティーナのそれへと変えて行っているという事だな、勿論これは神を蘇らせるというこの世界の禁忌に当たる行為で栄花に知られた場合、俺は討伐対象になるわけだが知られた所で問題は無い、何故なら既に俺の身体の殆んどは既にメランティーナの物に置き換わっている、この状態でならメイメイの為に世界と戦う事も出来る、これを聞いたダートに問おう、お前は真実を知った上で俺達と敵対するか?」
「敵対するかって言われても正直言って、私ではどう判断すればいいのか分からないけど……、でも私とレースの娘であるダリアと友達になってくれたメイメイちゃんとはこれからも仲良くしていきたいって思う……じゃダメですか?」
「娘と友達に、成程あの娘はお前達の子だったか……、それに仲良くしたいとつまり敵対はなさそうだな、信じてやろう、だが少しでもこの国の秘密を栄花に漏らしてみろ、その時はこの国以外を滅びると思え……、ん、薬の効果が切れたようだな」

……ショウソク様の姿がトレントから元のエルフ族へと戻って行く。
そして何やら手を握ったり開いたりし始めたかと思うと『そう言えばお前は娘と栄花騎士団副団長のカエデにようがあるのだったな、連れて行ってやる』と言って私の腕を掴むと木の壁の中に姿を埋めて行く。
焦って手足をばたつかせても振り解く事が出来ずに全身が壁の中に埋められたかと思うと『樹液を通じて目的の場所へ送り届けてやる、何この身体は既に俺の物となっているからな少しだけ苦しいと思うがそこは我慢しろ』と言う声が聞こえたと同時に身体が凄い勢いで上へと運ばれて行き、真っ暗で酸素が無い中苦しさに耐えきれず意識を手放しそうになるのを必死に堪えていると目の前が明るくなり、メイメイちゃんと楽し気に話しているダリアとカエデちゃんの部屋へと投げ出されるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...