治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第九章 戦いの中で……

37話 友達だから

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 何事も無く書庫に戻り待機していた二人と合流したけど、ハスは本を読みながら寝てしまったようで……ランはまだマンガを読んでいた。
取り合えず隠し部屋で何があったのかランに説明するついでにそれぞれが空いている椅子へと座って話を始め暫くした後……

「さて……父はあんな事を言っておったがの、あそこを使うのは敵が攻めて来てからで良いじゃろう」
「メイメイがそういうならいいけど、ショウソクの言う事を守らなくて大丈夫?」
「日頃姿を見せず、王としての仕事もせぬ奴がいきなりあれこれ言い出したとしても説得力は無かろう」

 ショウソクは、メイメイの事以外はどうでもいいという考えの持ち主だし、国の事に関しても娘が過ごしやすいのならそれでいいという、正直言ってとんでもない思考をしていて、今まで出会ってきた王族と比べると王とは言えるような人では無い。
それなのに何故か、メイディ内では国民達から一定支持がされている辺り、結果的にバランスは取れている。
まぁ……そんな彼の行動を納得できない人達が沢山いたから、反乱軍何て作られてしまったのだろうけど、もし彼に反乱が成功してしまった場合起きる事としたら、どんな国になるのかぼくには想像が出来ない。

「けど……それならメイメイちゃん、私は何処にいたらいいかな?ほら今回私は守って貰う立場になるわけだし、出来ればあそこにいた方がいいと思うんだけど」
「なぁに、そんな事なら気にしないで良いのじゃよ……、ダートにはカエデとダリアと共に余の部屋におるが良い」
「メイメイ様、それなら私の護衛として来てくれているランちゃんも部屋に入れて貰っていいですか?」
「……いやじゃ」

 メイメイがカエデに対して不機嫌そうな顔をする。
護衛のランが部屋に来るのがどうして嫌なのだろうか、もしかしてだけど彼女に何か問題があったりするのだろうか。

「……メイメイ様?」
「メイメイちゃんじゃ、カエデよ余を呼ぶときは、様を付けるでない……友達に様を付けられるのは距離感を感じて嫌なのじゃ」
「えっと……あの、メイメイちゃ、ん?」

 メイメイが笑顔を作ると、椅子に座りながら身体を左右に揺らす。
どうやらぼくの考え過ぎだったみたいだけど、何か表情の変化が忙しくて落ち着きがないような気がするのは気のせいだろうか……。

「良いぞ!、護衛の猫の獣人族の女子も来て良いのじゃ!皆で女子会なのじゃよ!」
「……女子会なの?そういうのした事無いから分からないの」
「ほぅ、そうなのじゃな……なら良い事を教えてやるのじゃ!女子会とは皆でお菓子等の食べ物を持ち寄り楽しく話し合いをするものなのじゃよ!何を隠そう余とダリアは最近毎日女子会をしておる……つまり余達は女子会のプロなのじゃよ!」
「……俺はただ付き合わされてるだけだっての、おかげでお気に入りの服が着れなくなりそうで怖いぜ」
「沢山栄養取ってるからのぅ、早めに溜め込んだ分消費せんと腹に余計な肉がついて、その露出が激しい服を着れんくなるぞ?」

 ダリアのおへそを出したり、脚が出る服装でお腹が出たり他の所に脂肪が乗っているのは何て言うか実際に見たら反応に困る気がする。
勿論太っている事が悪いとは言わない、むしろ痩せ過ぎよりは良いと思うけど……まぁ不健康なレベルじゃなければ良いかな。

「……戦う時に動けば問題ねぇよ」
「ふふ、なら存分に余を守ると良いぞ?おぬしには精霊術を教えて実際にある程度は使えるようになったのじゃからな、結果を出してもらうのじゃよ」
「任せとけって、何があってもぜってぇメイメイの事守ってやるから安心して背中を預けろ」
「ふふ、頼りにしておるからのぅ……、じゃあ余等は部屋に行くからレースに……えっとハスと言ったかのおぬし等はいつの通り過ごすと良いのじゃ」

 と言ってメイメイが他の女性陣を連れて行こうとするけど、途中でカエデだけが何かを思い出したように後ろを振り向いて小走りで近づいてくる。

「おや?カエデどうしたんじゃ?」
「ちょっと用事を思い出したので先に行っててください」
「そうなのじゃ……?なら後で迷わず来るのじゃよ?」
「えぇ、でもお菓子とかは残しといてくださいね?」
「分かったのじゃ」

 メイメイは頷くと、ダート達を連れて自分の部屋へと戻っていく。
そしてカエデがぼくの目の前に来ると、すっと手が伸ばして耳に付けているイヤーカフスに触れる。

「あ、レースさんちょっとそれを貸して貰っていいですか?」
「……え?」
「このイヤーカフス、今日まで着けてませんでしたよね?ダートお姉様は気にして無かったみたいですけど……私はちゃんと確認しますよ」
「これはえっと、戦闘訓練の時にライさんからこの魔導具を着けるようにって言われて……」
「それなら今着ける必要ありませんよね?」

……カエデはそういうとイヤーカフスをぼくの耳から外し、自分の耳に着ける。
そして何かを確認するように指先で二回押したり等を繰り返して『……これは、あぁそういう事ですか、レースさん?後これを渡した人に聞きたい事があるのでレースさんの部屋でゆっくりとお話しましょうか』と笑顔を浮かべるのだった。
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