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第十一章 盗賊王と機械の国
25話 新たな技術
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どす黒く気持ちが悪い魔力の動きを診ていると、何だか嫌な予感がする。
これがもし、頭部に移動し脳へと到達したらどうなるのか……
「サリア、シュラと戦った時に何かされたりした?」
「何か……ですか?」
「何でもいいから思い出してみて」
真剣な声にさすがにおどけるのを止めたのか、真面目な顔で考えるような仕草をする。
「……レース君、サリアに何かあったのかい?」
「うん、彼女の中にどす黒い魔力の塊があって、それが……」
「それが……?もしかして僕ヤバい状況ですか?」
「それは分からないけど、何だか嫌な予感がするから思い出して欲しいんだ」
盗賊王シュラの能力である【死翼】の効果によるものかもしれない。
もしそうだった場合、これが脳に到達した場合……嫌な予感が的中する事になる可能性がある。
これはいち早く何とかしなければ手遅れになってしまうだろう。
「……途中で見えない何かに身体を貫かれたような気がして、嫌な予感がしたのでその部位を咄嗟に切り離したんですけど……、もしかしてそれだったりします?」
「それって、身体の何処辺り?」
「何処って……、脚の付け根辺りですけど?」
「そこから、徐々に上がって来てる……?」
この一週間の間の、どのタイミングでシュラと戦闘になったのかは分からないけど、相手の放った魔力による攻撃が体内に残ってしまったのかもしれない。
……以前の会議で聞いた限りでは、【死翼】の効果を受けたら確実に命を奪われるって言うようなものだった筈だけど、それならサリアはどうして生き延びる事が出来たのか。
それも個人的には気になるけれど……、今はどうやって彼女の体内から取り除くのかを考えた方がいい。
「あの、もしかして……僕、本当にヤバいですか?」
「レースさん、どうにか出来ませんか?」
「……多分何とか出来るとは思う」
以前、空間魔術と治癒術を合わせた新しい治療法を仲間に試した事がある。
あの時はまだダリアが人の形になる前で心器の剣の中に意識を移していた時で、彼女の補助があったおかげで出来た芸当だったから……上手くできるだろうか。
「何とかって事はもしかして、失敗とかしちゃう可能性があるって感じですか?」
「……あるけど、頑張っては見るよ」
治癒術師である以上、どんなに生存する確率が低かったとしても患者であるのなら生かさなければならない。
だから、ぼくが今出来る手札の中で何が出来るのか、色々と考えてはみるけれど……既存の治癒術で治療は出来ないのは分かっている。
なら……
「いや……、これを使えば確実に出来るかも」
「レースさん?何か思いついたのですか?」
「うん、カエデの協力が必要になるんだけどいいかな……、ほら心器のガラスペンの能力でぼくが使う魔術と治癒術に指示を出して欲しいんだ」
「……なるほど、どういう指示を出せば良いですか?」
「それは──」
マスカレイドから継承した【黎明】を使う事で、技術及び術を新たに生み出す際に思考が加速するという特性生かして、新たな治療法を考えてみる。
そして頭に浮かび上がった方法をカエデに伝えていくと……
「……そんなことが可能なのですか?」
「うん、出来る筈だよ、ただ……ぼくは空間魔術の使い方がそこまで上手くは無いから座標の指示はカエデにやって欲しいんだ」
「分かりました、ライさん……申し訳ないのですが、サリアさんが動かないように身体を押さえておいて頂けますか?」
「分かった、サリア……、君は俺に触られるのが嫌だろうけど我慢して欲しい」
「この状況で嫌だなんて言いませんよ、ほら!早く動かないようにしちゃってください!あっ!でも痛いのは嫌なんで、出来ればやさしぃくおねが……ガガガガガ!」
ライさんの身体から青白い光が見えたかと思うと、サリアの身体に電流が走る。
そして苦し気に呻いたかと思うと……会議室の机の上に仰向けに倒れて動かなくなった。
「雷の魔術で、脳の電気信号を狂わせて体が動かないようにしたから……これで問題無く治療行為が出来ると思うけどどうかな」
「……それなら最初から麻酔を使うべきだったと思うけど、まぁいいかな」
「彼女に麻酔の類いが効くとは思えないから止めた方がいい、そういう意味でも俺としてはこの方が効率的だと思うかな、……こうでもしないと俺と彼女では身体能力の差が大きすぎて、怪我人が増えてしまうからね」
「……なるほど、そういう理由なら」
理由はともかくとして、サリアが動けなくなったおかげで思っていた以上に治療が上手くできそうだ。
「じゃあ、治療を開始するから……カエデ、助手の方お願いね」
「……分かりました」
……カエデの手元に心器のガラスペンが顕現するのを確認すると、意識を集中し空間魔術を発動する。
そして『レースさん、指示された通りに心臓付近に空間を繋がるように設定しました』という彼女の声に従い、右手側に空間の切れ目を作り出すとおびただしい量の出血が勢いよく噴き出す。
そこに魔力で覆った手を入れると、直接どす黒い魔力の塊を掴んで引きずり出すのだった。
これがもし、頭部に移動し脳へと到達したらどうなるのか……
「サリア、シュラと戦った時に何かされたりした?」
「何か……ですか?」
「何でもいいから思い出してみて」
真剣な声にさすがにおどけるのを止めたのか、真面目な顔で考えるような仕草をする。
「……レース君、サリアに何かあったのかい?」
「うん、彼女の中にどす黒い魔力の塊があって、それが……」
「それが……?もしかして僕ヤバい状況ですか?」
「それは分からないけど、何だか嫌な予感がするから思い出して欲しいんだ」
盗賊王シュラの能力である【死翼】の効果によるものかもしれない。
もしそうだった場合、これが脳に到達した場合……嫌な予感が的中する事になる可能性がある。
これはいち早く何とかしなければ手遅れになってしまうだろう。
「……途中で見えない何かに身体を貫かれたような気がして、嫌な予感がしたのでその部位を咄嗟に切り離したんですけど……、もしかしてそれだったりします?」
「それって、身体の何処辺り?」
「何処って……、脚の付け根辺りですけど?」
「そこから、徐々に上がって来てる……?」
この一週間の間の、どのタイミングでシュラと戦闘になったのかは分からないけど、相手の放った魔力による攻撃が体内に残ってしまったのかもしれない。
……以前の会議で聞いた限りでは、【死翼】の効果を受けたら確実に命を奪われるって言うようなものだった筈だけど、それならサリアはどうして生き延びる事が出来たのか。
それも個人的には気になるけれど……、今はどうやって彼女の体内から取り除くのかを考えた方がいい。
「あの、もしかして……僕、本当にヤバいですか?」
「レースさん、どうにか出来ませんか?」
「……多分何とか出来るとは思う」
以前、空間魔術と治癒術を合わせた新しい治療法を仲間に試した事がある。
あの時はまだダリアが人の形になる前で心器の剣の中に意識を移していた時で、彼女の補助があったおかげで出来た芸当だったから……上手くできるだろうか。
「何とかって事はもしかして、失敗とかしちゃう可能性があるって感じですか?」
「……あるけど、頑張っては見るよ」
治癒術師である以上、どんなに生存する確率が低かったとしても患者であるのなら生かさなければならない。
だから、ぼくが今出来る手札の中で何が出来るのか、色々と考えてはみるけれど……既存の治癒術で治療は出来ないのは分かっている。
なら……
「いや……、これを使えば確実に出来るかも」
「レースさん?何か思いついたのですか?」
「うん、カエデの協力が必要になるんだけどいいかな……、ほら心器のガラスペンの能力でぼくが使う魔術と治癒術に指示を出して欲しいんだ」
「……なるほど、どういう指示を出せば良いですか?」
「それは──」
マスカレイドから継承した【黎明】を使う事で、技術及び術を新たに生み出す際に思考が加速するという特性生かして、新たな治療法を考えてみる。
そして頭に浮かび上がった方法をカエデに伝えていくと……
「……そんなことが可能なのですか?」
「うん、出来る筈だよ、ただ……ぼくは空間魔術の使い方がそこまで上手くは無いから座標の指示はカエデにやって欲しいんだ」
「分かりました、ライさん……申し訳ないのですが、サリアさんが動かないように身体を押さえておいて頂けますか?」
「分かった、サリア……、君は俺に触られるのが嫌だろうけど我慢して欲しい」
「この状況で嫌だなんて言いませんよ、ほら!早く動かないようにしちゃってください!あっ!でも痛いのは嫌なんで、出来ればやさしぃくおねが……ガガガガガ!」
ライさんの身体から青白い光が見えたかと思うと、サリアの身体に電流が走る。
そして苦し気に呻いたかと思うと……会議室の机の上に仰向けに倒れて動かなくなった。
「雷の魔術で、脳の電気信号を狂わせて体が動かないようにしたから……これで問題無く治療行為が出来ると思うけどどうかな」
「……それなら最初から麻酔を使うべきだったと思うけど、まぁいいかな」
「彼女に麻酔の類いが効くとは思えないから止めた方がいい、そういう意味でも俺としてはこの方が効率的だと思うかな、……こうでもしないと俺と彼女では身体能力の差が大きすぎて、怪我人が増えてしまうからね」
「……なるほど、そういう理由なら」
理由はともかくとして、サリアが動けなくなったおかげで思っていた以上に治療が上手くできそうだ。
「じゃあ、治療を開始するから……カエデ、助手の方お願いね」
「……分かりました」
……カエデの手元に心器のガラスペンが顕現するのを確認すると、意識を集中し空間魔術を発動する。
そして『レースさん、指示された通りに心臓付近に空間を繋がるように設定しました』という彼女の声に従い、右手側に空間の切れ目を作り出すとおびただしい量の出血が勢いよく噴き出す。
そこに魔力で覆った手を入れると、直接どす黒い魔力の塊を掴んで引きずり出すのだった。
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