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第十一章 盗賊王と機械の国
24話 一週間後の会議室で
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この前の出来事から、特にぼく達の方では出来る事が特に無くて、気付いたら一週間が経過していた。
その間にあった事と言えば、アキさんがミオラームと何を話したのか分からないけれど、彼女が満足したような表情を浮かべていた事くらいか。
「……サリアさん、来ませんね」
「うん」
「信用を何よりも大事にする彼女が来ないとはね」
先週のやり取りの通りに、冒険用ギルドの会議室に集まったぼく達は未だにこの場に来ないサリアに対して呟く。
それを見た必要な書類の準備をしてくれているアキは、困ったような表情をしながら
「もしかして、シンさん達の身に何かあったのでは?」
「いや、サリアの実力を考えたらその可能性は低いと思うかな」
確かにサリアの実力の事を考えたら、何かが起きた可能性は低いと思う。
けど……そう思えば思う程、どうして会議室に来ないのか……、アキが言うように本当に何かあったのではないか。
そんな事を考えると、少しずつ不安な気持ちになりそうだ。
「レースさん、落ち着いてください……、まだ何かがあったと決まったわけじゃないですから」
「……分かってるけど、やっぱり心配にはなるよ」
もしサリアが戻って来なかった場合、ぼく達がこれから相手をする【盗賊王】シュラの実力は彼女よりも高いという事になる。
そう思った時だった、会議室の外が騒がしくなったかと思うと……勢いよく扉が開かれて……
「いやぁ、ほんと……ほんっと、死ぬかと、死ぬかと思いましたよぉ!!」
と言いながら鮮やかな髪の色を泥等で汚したサリアが入って来た。
その姿は本当に何があったのかと困惑してしまう程で、所々が破けた服から見える肌に思わず眼が奪われてしまう。
勿論やましい意味ではなく、治癒術師としての視点で見てしまうわけで……あのようにボロボロになる程の衝撃を受けているのなら、出血等していてもおかしくない筈なのに、見える範囲ではそのような物が確認出来ない。
もしかして見えないところにあるのかもしれないと思い、椅子から立ち上がって近づくと
「あれ?レースさんどうしました……?ははーん、もしかしてこのあられもない姿で会議室に入って来た僕の姿に、性的な興奮でもしちゃいました?いやぁ僕も罪な女ですねぇ!」
「……ちょっと黙ってくれる?」
「え?あ……、え?」
「傷が無いか調べるから」
「……はい」
まずは汚れた状態では傷があった場合、そこから細菌が入る可能性がある。
この汚れ方から判断すると、既に遅いかもしれないけど……治癒術を使って全体的な汚れを取り除くと、彼女と自身の魔力を同調させていく。
そして体内に異常がないか確認をしようとすると……
「ちょ!ちょっと、いきなり僕の中を見ようとするなんてっ!」
「そんな状態で会議室に来たサリアが悪いよ、とりあえず診察してるから大人しくしていてくれないかな」
「……えぇ、ちょっとライさん!あなたからも何か言ってくださいよ!」
「ここは諦めて、大人しくレース君に診て貰った方が良いんじゃないかな」
「じゃ、じゃあ……診て貰いながら何があったか説明しても?」
その言葉に黙って頷くと、意識を集中して体内に異常がないか確認していく。
「僕がシンさんやガルシアを迎えに行った時、タイミングが本当に良かったのか悪かったのか、言い方が難しいんですけどね?二人がシュラと交戦してるところに合流してしまったんです」
「……アキ、会議の準備の手を止めて、サリアの話を紙にまとめて貰って欲しい」
「分かりました」
サリアの言葉を聞いたライさんが何を思ったのか、忙しそうに動いているアキに内容を紙にまとめるように指示を出すと、それを聞いた彼女が腰のベルトに付けられたブックホルスターから空間収納の魔術が込められた魔導具の本を取り出し、中からメモ帳と一枚のペンを取り出す。
「……準備が出来たようなので、こほん!そこで今にも殺されそうになっている二人の前に颯爽と現れた僕は!二人に後で合流するから、ここは僕に任せて先に行くように指示を出したんですね!そうしたら……何と、『魔族風情が、高貴なる天族である俺の物に手を出すとは、身の程を弁えるべきだ』とかいきなり言い出して襲って来たんですよ」
「あの……そこから、どうなったのですか?」
「えぇ、カエデさんも気になりますよね?そこでしょうがなく戦う事になったんですけど、最初はね?戦えてたんですよ、けど途中でシュラの仲間だと思われる盗賊の方々がぞろぞろと参戦してきて、後は多勢に無勢!怪我をするような負傷は無かったと言えば嘘になりますが、この通りぼこぼこにされちゃいましてねぇ、いやぁ死ぬかと思いましたよ」
彼女はそういうけれど肉体の何処にも異常な個所は見つからない。
「そうは言うけど……何処にもおかしいところは無いけど?」
「そりゃあ、切り落として来ましたからねぇ、いやぁお相手さん方驚いてましたよ?ボロボロな個所を切断して逃げる何て思わなかったのでしょうねぇ」
「……切り落としたって、何所にもそんな傷は無いけど?」
「そりゃあ、傭兵としての企業秘密って奴ですねぇ……、で、その隙をついて逃げた僕は二人と合流して、何とか必死に戻って来たのです!どうですか?僕は優秀でしょう?だって、それは僕ですからね!」
……サリアの自信ありげな言葉を聞いて、怪我の後も無いしこれ以上の治癒術は必要無いだろうと思い治療行為を止めようとした時に、違和感を感じて再度意識を集中させる。
すると彼女の魔力ではない、どす黒く、そして言葉にするのが難しい程に嫌な気配がする魔力の塊が本当にゆっくりと良く観察しないと分からない速さで頭部へと移動しているのに気づいて『サリア、悪いけどそのまま動かないで欲しい』と指示を出すと、【叡智】を発動させて自身の能力を底上げさせるのだった。
その間にあった事と言えば、アキさんがミオラームと何を話したのか分からないけれど、彼女が満足したような表情を浮かべていた事くらいか。
「……サリアさん、来ませんね」
「うん」
「信用を何よりも大事にする彼女が来ないとはね」
先週のやり取りの通りに、冒険用ギルドの会議室に集まったぼく達は未だにこの場に来ないサリアに対して呟く。
それを見た必要な書類の準備をしてくれているアキは、困ったような表情をしながら
「もしかして、シンさん達の身に何かあったのでは?」
「いや、サリアの実力を考えたらその可能性は低いと思うかな」
確かにサリアの実力の事を考えたら、何かが起きた可能性は低いと思う。
けど……そう思えば思う程、どうして会議室に来ないのか……、アキが言うように本当に何かあったのではないか。
そんな事を考えると、少しずつ不安な気持ちになりそうだ。
「レースさん、落ち着いてください……、まだ何かがあったと決まったわけじゃないですから」
「……分かってるけど、やっぱり心配にはなるよ」
もしサリアが戻って来なかった場合、ぼく達がこれから相手をする【盗賊王】シュラの実力は彼女よりも高いという事になる。
そう思った時だった、会議室の外が騒がしくなったかと思うと……勢いよく扉が開かれて……
「いやぁ、ほんと……ほんっと、死ぬかと、死ぬかと思いましたよぉ!!」
と言いながら鮮やかな髪の色を泥等で汚したサリアが入って来た。
その姿は本当に何があったのかと困惑してしまう程で、所々が破けた服から見える肌に思わず眼が奪われてしまう。
勿論やましい意味ではなく、治癒術師としての視点で見てしまうわけで……あのようにボロボロになる程の衝撃を受けているのなら、出血等していてもおかしくない筈なのに、見える範囲ではそのような物が確認出来ない。
もしかして見えないところにあるのかもしれないと思い、椅子から立ち上がって近づくと
「あれ?レースさんどうしました……?ははーん、もしかしてこのあられもない姿で会議室に入って来た僕の姿に、性的な興奮でもしちゃいました?いやぁ僕も罪な女ですねぇ!」
「……ちょっと黙ってくれる?」
「え?あ……、え?」
「傷が無いか調べるから」
「……はい」
まずは汚れた状態では傷があった場合、そこから細菌が入る可能性がある。
この汚れ方から判断すると、既に遅いかもしれないけど……治癒術を使って全体的な汚れを取り除くと、彼女と自身の魔力を同調させていく。
そして体内に異常がないか確認をしようとすると……
「ちょ!ちょっと、いきなり僕の中を見ようとするなんてっ!」
「そんな状態で会議室に来たサリアが悪いよ、とりあえず診察してるから大人しくしていてくれないかな」
「……えぇ、ちょっとライさん!あなたからも何か言ってくださいよ!」
「ここは諦めて、大人しくレース君に診て貰った方が良いんじゃないかな」
「じゃ、じゃあ……診て貰いながら何があったか説明しても?」
その言葉に黙って頷くと、意識を集中して体内に異常がないか確認していく。
「僕がシンさんやガルシアを迎えに行った時、タイミングが本当に良かったのか悪かったのか、言い方が難しいんですけどね?二人がシュラと交戦してるところに合流してしまったんです」
「……アキ、会議の準備の手を止めて、サリアの話を紙にまとめて貰って欲しい」
「分かりました」
サリアの言葉を聞いたライさんが何を思ったのか、忙しそうに動いているアキに内容を紙にまとめるように指示を出すと、それを聞いた彼女が腰のベルトに付けられたブックホルスターから空間収納の魔術が込められた魔導具の本を取り出し、中からメモ帳と一枚のペンを取り出す。
「……準備が出来たようなので、こほん!そこで今にも殺されそうになっている二人の前に颯爽と現れた僕は!二人に後で合流するから、ここは僕に任せて先に行くように指示を出したんですね!そうしたら……何と、『魔族風情が、高貴なる天族である俺の物に手を出すとは、身の程を弁えるべきだ』とかいきなり言い出して襲って来たんですよ」
「あの……そこから、どうなったのですか?」
「えぇ、カエデさんも気になりますよね?そこでしょうがなく戦う事になったんですけど、最初はね?戦えてたんですよ、けど途中でシュラの仲間だと思われる盗賊の方々がぞろぞろと参戦してきて、後は多勢に無勢!怪我をするような負傷は無かったと言えば嘘になりますが、この通りぼこぼこにされちゃいましてねぇ、いやぁ死ぬかと思いましたよ」
彼女はそういうけれど肉体の何処にも異常な個所は見つからない。
「そうは言うけど……何処にもおかしいところは無いけど?」
「そりゃあ、切り落として来ましたからねぇ、いやぁお相手さん方驚いてましたよ?ボロボロな個所を切断して逃げる何て思わなかったのでしょうねぇ」
「……切り落としたって、何所にもそんな傷は無いけど?」
「そりゃあ、傭兵としての企業秘密って奴ですねぇ……、で、その隙をついて逃げた僕は二人と合流して、何とか必死に戻って来たのです!どうですか?僕は優秀でしょう?だって、それは僕ですからね!」
……サリアの自信ありげな言葉を聞いて、怪我の後も無いしこれ以上の治癒術は必要無いだろうと思い治療行為を止めようとした時に、違和感を感じて再度意識を集中させる。
すると彼女の魔力ではない、どす黒く、そして言葉にするのが難しい程に嫌な気配がする魔力の塊が本当にゆっくりと良く観察しないと分からない速さで頭部へと移動しているのに気づいて『サリア、悪いけどそのまま動かないで欲しい』と指示を出すと、【叡智】を発動させて自身の能力を底上げさせるのだった。
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