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第十二章 魔導国物語
15話 叡智を継ぐ者
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ソフィアさんに対して、申し訳ない気持ちになっても、目の前にある問題が片付くことはない。
けど、どうすればいいのか私では分からなくて……
「そこで提案なのですが、ダートさん」
「……私?」
「はい、これはあなた達にしか言えない内密なお話になるのですが――」
ソフィアさんが、言葉にしようとした時だった。
今まで静かに座っていたランが、手を挙げて立ち上がると……
「それは栄花騎士団の人間が聞いて良いものなの?」
「構いませんよ?むしろ、栄花の方達にも聞いて頂いた方が……私としては好都合ですので」
「それならいいの」
「お気遣いとご理解頂きありがとうございます……では、本題に入るのですが、現在我が国にはSランク冒険者が不在という、とても危険な状況になっております」
Sランク冒険者だったお義母様が亡くなったのが原因だけど、これに関しては……しょうがないと思う。
けど……あの人がいなくなってしまった損失は大きいけれど、残してくれた物も大きい。
私に遺してくれた屋敷と、過去、現在、未来の魔術と治癒術が記されている特殊な図書館型の異空間に接続する為の【叡智】と呼ばれる能力。
そして……そんな偉大な賢者に教えを受けた数えきれない程の術師達、彼らの存在のおかげで、魔導国家メセリーの戦力はレースの生まれ故郷である、北の大国【ストラフィリア】に引けを取らないらしくて、仮想敵国として想定されるくらいだって……以前サリッサさんに教えて貰った事がある。
「そして、カルディア様がお亡くなりになられた事に関しては、これから先も公表する予定はありません」
「……公表しないって大丈夫なのかよ、隠しててもばあさんが死んだ事がいずれバレんじゃねぇか?」
「えぇ、遅かれ早かれ聡明な方なら、いずれ気づいてしまうでしょう……ですが、カルディア様に教えを受けた方や、この国の国民達は皆、あのお方が定期的に身体を乗り換えているのを知っています」
「もしかして、私にお義母様の変わりをして欲しいって事?」
「さすがダートさん、物分かりが良い方は好きですよ」
……私にお義母様の変わりが務まるだろうか。
考えれば考える程、不安な気持ちがこみ上げて来る。
「なぁ、母さんがばあさんの変わりをするのと、無の天使のセツナって言う奴になんの繋がりがあんだよ、話が見えねぇんだけど?」
「ダリアさん、あなたは人の話を最後まで聞くようにしましょうね……現在、あちら側に漏れた情報はダートさんの出産と、ラディア君の事だけです」
「ソフィア様、それって確かな情報なの?」
「ランさん、ご安心ください、我が国の王族が代々受け継いで来た心器には人の真偽を計る力がありますので、この国で私に嘘をつける者はいません」
「そんな便利な能力があんなら、予め使ってればこんなことにならなかったんじゃねぇのか?」
ダリアの言いたい事は分かるけど、強力な能力を代償無しに使えるとは限らない。
私の心器の能力【呪音】も、音を出す事が出来なければ相手に呪術を掛ける事が出来なくなってしまう。
他には、耳が聞こえない人にも効果がないとか、そんな感じで強力な能力ではあるけど、心器の能力は強力であればあるほど、条件が厳しくなっていく。
「それが、そんな便利なものじゃないんですよ、使えば使う程、精神的に不安定になりやすくて……誰が信じられる相手なのか分からなくなるんですよ」
「そんな危険な能力を私達の為に使って……」
「カルディア様の亡き後、残された私に出来る事は何かを考えての事ですから、ダートさん、そんな気負わないでください……という事で、そろそろお返事を聞きたいのですが、よろしいですか?」
「……私は、お義母様の変わりを務めてラディアを守れるなら喜んでやります、やらせてください」
私とレースの間に生まれた、愛しい我が子を守る為なら……不安は大きいけど、出来る限りの事はやろうと思う。
「ありがとうございます……ダートさん、望まぬ立場を押し付けてしまい大変申し訳ございません」
「いえ、私達を守る為にそこまでして貰ったのに、何もしない訳にはいかないので、けど……本当に私がSランク冒険者【叡智】カルディアの変わりを担う事で、無の天使に対抗できるのですか?」
「えぇ、出来ます、出来る筈です……国に所属しているSランク冒険者という存在は言わなれば戦術兵器ですから、辺境開拓都市クイストに我が魔導国家メセリーの最高戦力が、あなたを迎え撃つ為に首都から出て来たという情報を流せば相手は警戒せざる負えない」
「……けど、それだと警戒させるだけで、何の解決にもなってないの、ソフィア様はどうするつもりなの?」
……心配そうに尋ねるランを見て、ソフィアさんの表情が柔らかい笑みから、真剣な顔に変わる。
そして……『そこで栄花の方達に力をお貸し頂きたいのです、私と共に戦場に出て頂けないでしょうか』と言葉にしながら椅子から立ち上がり、ゆっくりと頭を下げるのだった。
けど、どうすればいいのか私では分からなくて……
「そこで提案なのですが、ダートさん」
「……私?」
「はい、これはあなた達にしか言えない内密なお話になるのですが――」
ソフィアさんが、言葉にしようとした時だった。
今まで静かに座っていたランが、手を挙げて立ち上がると……
「それは栄花騎士団の人間が聞いて良いものなの?」
「構いませんよ?むしろ、栄花の方達にも聞いて頂いた方が……私としては好都合ですので」
「それならいいの」
「お気遣いとご理解頂きありがとうございます……では、本題に入るのですが、現在我が国にはSランク冒険者が不在という、とても危険な状況になっております」
Sランク冒険者だったお義母様が亡くなったのが原因だけど、これに関しては……しょうがないと思う。
けど……あの人がいなくなってしまった損失は大きいけれど、残してくれた物も大きい。
私に遺してくれた屋敷と、過去、現在、未来の魔術と治癒術が記されている特殊な図書館型の異空間に接続する為の【叡智】と呼ばれる能力。
そして……そんな偉大な賢者に教えを受けた数えきれない程の術師達、彼らの存在のおかげで、魔導国家メセリーの戦力はレースの生まれ故郷である、北の大国【ストラフィリア】に引けを取らないらしくて、仮想敵国として想定されるくらいだって……以前サリッサさんに教えて貰った事がある。
「そして、カルディア様がお亡くなりになられた事に関しては、これから先も公表する予定はありません」
「……公表しないって大丈夫なのかよ、隠しててもばあさんが死んだ事がいずれバレんじゃねぇか?」
「えぇ、遅かれ早かれ聡明な方なら、いずれ気づいてしまうでしょう……ですが、カルディア様に教えを受けた方や、この国の国民達は皆、あのお方が定期的に身体を乗り換えているのを知っています」
「もしかして、私にお義母様の変わりをして欲しいって事?」
「さすがダートさん、物分かりが良い方は好きですよ」
……私にお義母様の変わりが務まるだろうか。
考えれば考える程、不安な気持ちがこみ上げて来る。
「なぁ、母さんがばあさんの変わりをするのと、無の天使のセツナって言う奴になんの繋がりがあんだよ、話が見えねぇんだけど?」
「ダリアさん、あなたは人の話を最後まで聞くようにしましょうね……現在、あちら側に漏れた情報はダートさんの出産と、ラディア君の事だけです」
「ソフィア様、それって確かな情報なの?」
「ランさん、ご安心ください、我が国の王族が代々受け継いで来た心器には人の真偽を計る力がありますので、この国で私に嘘をつける者はいません」
「そんな便利な能力があんなら、予め使ってればこんなことにならなかったんじゃねぇのか?」
ダリアの言いたい事は分かるけど、強力な能力を代償無しに使えるとは限らない。
私の心器の能力【呪音】も、音を出す事が出来なければ相手に呪術を掛ける事が出来なくなってしまう。
他には、耳が聞こえない人にも効果がないとか、そんな感じで強力な能力ではあるけど、心器の能力は強力であればあるほど、条件が厳しくなっていく。
「それが、そんな便利なものじゃないんですよ、使えば使う程、精神的に不安定になりやすくて……誰が信じられる相手なのか分からなくなるんですよ」
「そんな危険な能力を私達の為に使って……」
「カルディア様の亡き後、残された私に出来る事は何かを考えての事ですから、ダートさん、そんな気負わないでください……という事で、そろそろお返事を聞きたいのですが、よろしいですか?」
「……私は、お義母様の変わりを務めてラディアを守れるなら喜んでやります、やらせてください」
私とレースの間に生まれた、愛しい我が子を守る為なら……不安は大きいけど、出来る限りの事はやろうと思う。
「ありがとうございます……ダートさん、望まぬ立場を押し付けてしまい大変申し訳ございません」
「いえ、私達を守る為にそこまでして貰ったのに、何もしない訳にはいかないので、けど……本当に私がSランク冒険者【叡智】カルディアの変わりを担う事で、無の天使に対抗できるのですか?」
「えぇ、出来ます、出来る筈です……国に所属しているSランク冒険者という存在は言わなれば戦術兵器ですから、辺境開拓都市クイストに我が魔導国家メセリーの最高戦力が、あなたを迎え撃つ為に首都から出て来たという情報を流せば相手は警戒せざる負えない」
「……けど、それだと警戒させるだけで、何の解決にもなってないの、ソフィア様はどうするつもりなの?」
……心配そうに尋ねるランを見て、ソフィアさんの表情が柔らかい笑みから、真剣な顔に変わる。
そして……『そこで栄花の方達に力をお貸し頂きたいのです、私と共に戦場に出て頂けないでしょうか』と言葉にしながら椅子から立ち上がり、ゆっくりと頭を下げるのだった。
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