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1章
体は凍てつけど心までは凍てつかず
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「フォォオオオン!!!」
「ティナさん!?ってことはあれはまさか、白銀妖狐!?」
アレスたちの前に現れたのは氷を操り巨大な体躯となった狐の化け物。
そしてその狐の体内に今にも取り込まれそうになっているティナの姿があったのだ。
「白銀妖狐!?アレスさん、それは!?」
「ティナの精霊使いのスキルで呼び出された精霊だ!まだ制御できないと言っていたはずだがどうして……」
「グルルル……キシャァア!!」
「やべっ!!いったん引け!!」
「きゃああ!!」
「うわあ!!」
アレスたちの姿を捉えた白銀妖狐は触手のように背中から伸ばした氷を鞭のようにして攻撃し始めたのだ。
あまりの勢いと強烈な冷気にアレスたちはたまらず白銀妖狐から距離を取ろうとする。
「冷て!流石氷雪系最上位の精霊……」
「なんであんな……ティナ様は大丈夫なの!?」
「精霊使いのスキルをもつ人間なら呼び出した精霊に殺されることはないはずですが……あれは明らかに規格外。命の保証は出来ません」
「おい、あの化け物移動を開始したぞ!」
木の陰に隠れ白銀妖狐の視界から外れたアレスたち。
しかし白銀妖狐はそんなアレスたちを探すことなくどこかに向けて行進し始めたのだ。
「あの方向は……まさかハズヴァルド学園!?」
「何!?いったいどうして!?」
「分かりませんが、付近で一番人が集まっている場所を目指しているのかもしれません」
「あんな化け物がハズヴァルド学園に辿り着いたら……とんでもないことになるぞ!」
白銀妖狐はただ移動しているだけだったが、その体から発生する冷気が周囲の木々をたちまち凍らせていった。
小動物は付近から逃げ、草木は凍り辺り一面白銀の世界に包まれる。
まるで命の消え去った死の大地と化したその様子に、アレスは白銀妖狐を絶対にハズヴァルド学園に近づけてはならないと悟ったのだ。
「やるしかねえ。お前らは安全なところに避難してろ!」
「き、危険すぎるよアレス君!」
「そうですよ!学園の先生方や王国軍の人たちが来ると思いますのでそれまで……」
「それじゃあ!ティナさんの命が持たないかもしれない!!」
「っ!」
すでに体の半身を白銀妖狐の体に取り込まれてしまっていたティナ。
段々と抵抗の少なくなっていく彼女の様子を見て一刻の猶予もないと考えたアレスは危険を顧みず白銀妖狐の前に姿を現したのだ。
「おいこらバケモン!!ティナさんを返しやがれ!!」
「フォォオオオン!!!」
「くっ!?」
アレスの姿を確認した白銀妖狐はすぐさま先ほどの氷の触手を振り回しアレスを攻撃する。
アレスはその攻撃を何とかすべて叩き斬ったのだが、氷でできたその触手は一瞬のうちに再生してしまったのだ。
さらに白銀妖狐は攻撃の手を休めることなく口から冷気の塊を放ちアレスを追い詰める。
「はぁ……はぁ……くそ、キリがねえ!」
(あいつの触手は氷でできてるから斬っても斬っても意味がない。それなのにこっちはあいつの放つ冷気で体力を削られていく……)
冷気の球をかき消すことは出来てもそれが周囲の温度を奪っていきアレスの体力を大きく削っていった。
白銀妖狐は進行を止めることなく森を凍らせ続けていた。
「はぁ……はぁ……呼吸が、苦しい……」
(こうなったらティナをあいつの体から引きずり出すしかねえ。だけどこの猛攻の中じゃ斬撃がティナに当たっちまう……)
「くっ……ジョージ!!1発だけ頼めるかぁ!!」
「っ!!わ、わかりました!!」
アレスは一か八かの作戦に出るため大声でジョージに呼び掛けた。
そのアレスの必死な声を聞きジョージはその一言からアレスの真意を読み解き覚悟を決めたのだ。
「ソシアさん!防御魔法を僕にお願いできますか!?」
「ま、まかせて!でも私の防御魔法ははっきり言って大したレベルじゃないよ?」
「大丈夫です!彼は1発だけと言いました。だからなんとか1回だけ凌げればそれで十分です」
ジョージはソシアから防御魔法を施してもらう。
その間もアレスは1人で白銀妖狐の攻撃を引き受け徐々に体力を失っていた。
「ありがとうございますソシアさん。うぉおおおお!!」
「頑張ってジョージ君!」
「よし来たか……月影流秘伝、叢雲・霧散!!」
「フォォオオオン!?」
アレスはジョージが駆けつけて来たのを確認すると、目にもとまらぬ速さで斬撃を飛ばし白銀妖狐の氷の触手を全て斬りつけたのだ。
だが当然そんなものは一瞬の時間稼ぎにしかならない。
さらに白銀妖狐の口から放たれる冷気弾は止めることは出来ず、すぐさま放たれた冷気弾がアレスを襲ったのだ。
(気を整えろ……ティナを傷つけず、奴の体から露出させる……)
「ふぅ~……」
アレスは白銀妖狐の攻撃を前にしてなんと剣を鞘にしまい、あろうことか目を閉じて呼吸を整えだしたのだ。
白銀妖狐が放った攻撃が無防備なアレスの目前に迫る。
「だぁあああああああ!!」
「フォォ!?」
「ぐっ、あああ!!アレスさん!約束通り、1発です!!」
「助かったよ、ジョージ」
しかしその攻撃がアレスに直撃する寸前、盾を構えたジョージが決死の覚悟で白銀妖狐の冷気弾を受け止めたのだ。
白銀妖狐の放った冷気弾の直撃を受けた盾は一瞬で凍り付き、瞬く間に粉々になってしまう。
そしてジョージの両腕までも一瞬で凍り付かせてしまったが、ジョージはなんとかギリギリ白銀妖狐の攻撃からアレスを守ってみせたのだ。
「紫電一刀……朧斬り!!」
「ファアアアアア!!??」
ジョージが作り出した一瞬の時間を使い精神統一を果たしたアレスは研ぎ澄まされた一撃で白銀妖狐の体を引き裂いたのだった。
その斬撃はティナが取り込まれていた体の中心めがけて振るわれたものだったのだが、極限まで集中したアレスは限界を見極め皮一枚ティナを傷つけずに彼女を白銀妖狐の体内から露出させることに成功したのだ。
「ティナ!!ティナ!!ぐっ……」
「アレス君!?」
「早く離れてください!!」
白銀妖狐の腹を切開したアレスは、剣を捨て白銀妖狐に掴まってティナに呼び掛ける。
強烈な白銀妖狐の体に触れたアレスの左手と両脚は一瞬で凍り付いてしまったのだが、それでもアレスはティナから離れようとしなかった。
「あ……う、あ……あれす?……っ!?アレス、一体何を!?」
「気が付いたか!!早くそこから出てこい!!」
「だ、ダメだアレス!早く私から離れないと君が凍り付いてしまう!!」
「じゃあ早く俺と一緒に来い!!」
「む、無理だ……無理なんだ。どれだけ力を込めても、心を強く持とうとも白銀妖狐の魔力に抗えないんだ……」
アレスの渾身の一撃が白銀妖狐に大きな傷をつけたが、スキルの持ち主であるティナから力を吸い取り白銀妖狐は再生を始めた。
そしてそれに伴い一瞬弱まっていた冷気も戻り始めアレスの手足はさらに凍り付いていった。
「お願いだアレス。君だけでも逃げてくれ。私は君を殺したくないんだ!」
そう言いながら涙を流すティナだったが、その涙は白銀妖狐が放つ冷気によりすぐに凍り付いてしまう。
全身が凍り付く寸前の絶体絶命な状況の中。
それでもアレスは右手を力強くティナに差し出したのだった。
「もう母上はいない。白銀妖狐を封じ込めることは叶わないから私が死ぬしかないんだ。だからお願いだ。私にもうこれ以上大切な人を殺させないでくれ……」
「ふざけんな!!ティナのお母さんはずっとお前の心の中にいるんだろう!?だからお前は今まで頑張って来れたんじゃないか!!」
「っ!?」
「あんなにボロボロにされても、皆に陰口をたたかれてもティナはお母さんの言葉を心の支えにして諦めずに頑張ってきた!!違うか!?」
「そうだ……でも、私の……私1人の力じゃこの力は抑えることが……」
「ティナは1人なんかじゃないだろう?」
「えっ……」
「俺が最後までお前を信じてやる。だから絶対に諦めるんじゃねえ!」
「……っ!」
すでにアレスの左腕と両脚は使い物にならないほど凍り付いてしまっている。
それでもアレスは笑顔のままティナを見つめ右手を差し出し続けていたのだ。
瞬間、ティナの脳裏に今までの辛かった人生が浮かび上がってきたのだ。
大好きだった母親を亡くし、たった一人で今まで頑張ってきた。
頼れる人は誰もいないと……自分一人だけの力で強大な白銀妖狐の力に抗っていかなければいけないと。
「私は……私は、諦めたくない!!」
アレスの言葉にティナは再び心の炎を燃やす。
すると今まで凍り付き動かなかった体が動き出し、白銀妖狐の束縛から逃れることが出来たのだ。
「ぐぁあああ!引っ張り出すぞ!!」
「っ!!」
アレスは残った右腕で最後の力を振り絞り、ティナを白銀妖狐の体から引きずり出す。
(凍った手足を地面にぶつけたら割れる!!何とか腰から……)
「っああ!!」
凍った左腕と両脚から地面に着地すればそのまま割れてしまう。
そう考えたアレスは何とか体をひねり腰から地面に激突した。
おかげで手足は無事に着地することが出来たのだが腰を強く強打しアレスは動けなくなる。
「ティナ!!決めろ!!」
「ありがとうアレス君、君のおかげで私は白銀妖狐に精神で上回ることが出来た。あとは……」
「フォォオオオ!!!」
「肉体でやつに、勝るだけだ」
宿主のティナが離れ、崩れそうになる体で白銀妖狐は再びティナを取り込もうとする。
だがティナはそんな中冷静に刀を構えたのだ。
「フォルワイル家、奥義!!」
「ファァ!?」
「百花繚乱!!!」
迫りくる白銀妖狐に、ティナは必殺の一撃を叩き込む。
敵を切り刻む百の斬撃はまるで鮮やかに咲き誇る大量の花のようで……
「はぁ……はぁ……終わった……」
白銀妖狐の体を完全に切り刻み、荒れ狂う白銀妖狐の魂を鎮めることに成功したのだった。
「ティナさん!?ってことはあれはまさか、白銀妖狐!?」
アレスたちの前に現れたのは氷を操り巨大な体躯となった狐の化け物。
そしてその狐の体内に今にも取り込まれそうになっているティナの姿があったのだ。
「白銀妖狐!?アレスさん、それは!?」
「ティナの精霊使いのスキルで呼び出された精霊だ!まだ制御できないと言っていたはずだがどうして……」
「グルルル……キシャァア!!」
「やべっ!!いったん引け!!」
「きゃああ!!」
「うわあ!!」
アレスたちの姿を捉えた白銀妖狐は触手のように背中から伸ばした氷を鞭のようにして攻撃し始めたのだ。
あまりの勢いと強烈な冷気にアレスたちはたまらず白銀妖狐から距離を取ろうとする。
「冷て!流石氷雪系最上位の精霊……」
「なんであんな……ティナ様は大丈夫なの!?」
「精霊使いのスキルをもつ人間なら呼び出した精霊に殺されることはないはずですが……あれは明らかに規格外。命の保証は出来ません」
「おい、あの化け物移動を開始したぞ!」
木の陰に隠れ白銀妖狐の視界から外れたアレスたち。
しかし白銀妖狐はそんなアレスたちを探すことなくどこかに向けて行進し始めたのだ。
「あの方向は……まさかハズヴァルド学園!?」
「何!?いったいどうして!?」
「分かりませんが、付近で一番人が集まっている場所を目指しているのかもしれません」
「あんな化け物がハズヴァルド学園に辿り着いたら……とんでもないことになるぞ!」
白銀妖狐はただ移動しているだけだったが、その体から発生する冷気が周囲の木々をたちまち凍らせていった。
小動物は付近から逃げ、草木は凍り辺り一面白銀の世界に包まれる。
まるで命の消え去った死の大地と化したその様子に、アレスは白銀妖狐を絶対にハズヴァルド学園に近づけてはならないと悟ったのだ。
「やるしかねえ。お前らは安全なところに避難してろ!」
「き、危険すぎるよアレス君!」
「そうですよ!学園の先生方や王国軍の人たちが来ると思いますのでそれまで……」
「それじゃあ!ティナさんの命が持たないかもしれない!!」
「っ!」
すでに体の半身を白銀妖狐の体に取り込まれてしまっていたティナ。
段々と抵抗の少なくなっていく彼女の様子を見て一刻の猶予もないと考えたアレスは危険を顧みず白銀妖狐の前に姿を現したのだ。
「おいこらバケモン!!ティナさんを返しやがれ!!」
「フォォオオオン!!!」
「くっ!?」
アレスの姿を確認した白銀妖狐はすぐさま先ほどの氷の触手を振り回しアレスを攻撃する。
アレスはその攻撃を何とかすべて叩き斬ったのだが、氷でできたその触手は一瞬のうちに再生してしまったのだ。
さらに白銀妖狐は攻撃の手を休めることなく口から冷気の塊を放ちアレスを追い詰める。
「はぁ……はぁ……くそ、キリがねえ!」
(あいつの触手は氷でできてるから斬っても斬っても意味がない。それなのにこっちはあいつの放つ冷気で体力を削られていく……)
冷気の球をかき消すことは出来てもそれが周囲の温度を奪っていきアレスの体力を大きく削っていった。
白銀妖狐は進行を止めることなく森を凍らせ続けていた。
「はぁ……はぁ……呼吸が、苦しい……」
(こうなったらティナをあいつの体から引きずり出すしかねえ。だけどこの猛攻の中じゃ斬撃がティナに当たっちまう……)
「くっ……ジョージ!!1発だけ頼めるかぁ!!」
「っ!!わ、わかりました!!」
アレスは一か八かの作戦に出るため大声でジョージに呼び掛けた。
そのアレスの必死な声を聞きジョージはその一言からアレスの真意を読み解き覚悟を決めたのだ。
「ソシアさん!防御魔法を僕にお願いできますか!?」
「ま、まかせて!でも私の防御魔法ははっきり言って大したレベルじゃないよ?」
「大丈夫です!彼は1発だけと言いました。だからなんとか1回だけ凌げればそれで十分です」
ジョージはソシアから防御魔法を施してもらう。
その間もアレスは1人で白銀妖狐の攻撃を引き受け徐々に体力を失っていた。
「ありがとうございますソシアさん。うぉおおおお!!」
「頑張ってジョージ君!」
「よし来たか……月影流秘伝、叢雲・霧散!!」
「フォォオオオン!?」
アレスはジョージが駆けつけて来たのを確認すると、目にもとまらぬ速さで斬撃を飛ばし白銀妖狐の氷の触手を全て斬りつけたのだ。
だが当然そんなものは一瞬の時間稼ぎにしかならない。
さらに白銀妖狐の口から放たれる冷気弾は止めることは出来ず、すぐさま放たれた冷気弾がアレスを襲ったのだ。
(気を整えろ……ティナを傷つけず、奴の体から露出させる……)
「ふぅ~……」
アレスは白銀妖狐の攻撃を前にしてなんと剣を鞘にしまい、あろうことか目を閉じて呼吸を整えだしたのだ。
白銀妖狐が放った攻撃が無防備なアレスの目前に迫る。
「だぁあああああああ!!」
「フォォ!?」
「ぐっ、あああ!!アレスさん!約束通り、1発です!!」
「助かったよ、ジョージ」
しかしその攻撃がアレスに直撃する寸前、盾を構えたジョージが決死の覚悟で白銀妖狐の冷気弾を受け止めたのだ。
白銀妖狐の放った冷気弾の直撃を受けた盾は一瞬で凍り付き、瞬く間に粉々になってしまう。
そしてジョージの両腕までも一瞬で凍り付かせてしまったが、ジョージはなんとかギリギリ白銀妖狐の攻撃からアレスを守ってみせたのだ。
「紫電一刀……朧斬り!!」
「ファアアアアア!!??」
ジョージが作り出した一瞬の時間を使い精神統一を果たしたアレスは研ぎ澄まされた一撃で白銀妖狐の体を引き裂いたのだった。
その斬撃はティナが取り込まれていた体の中心めがけて振るわれたものだったのだが、極限まで集中したアレスは限界を見極め皮一枚ティナを傷つけずに彼女を白銀妖狐の体内から露出させることに成功したのだ。
「ティナ!!ティナ!!ぐっ……」
「アレス君!?」
「早く離れてください!!」
白銀妖狐の腹を切開したアレスは、剣を捨て白銀妖狐に掴まってティナに呼び掛ける。
強烈な白銀妖狐の体に触れたアレスの左手と両脚は一瞬で凍り付いてしまったのだが、それでもアレスはティナから離れようとしなかった。
「あ……う、あ……あれす?……っ!?アレス、一体何を!?」
「気が付いたか!!早くそこから出てこい!!」
「だ、ダメだアレス!早く私から離れないと君が凍り付いてしまう!!」
「じゃあ早く俺と一緒に来い!!」
「む、無理だ……無理なんだ。どれだけ力を込めても、心を強く持とうとも白銀妖狐の魔力に抗えないんだ……」
アレスの渾身の一撃が白銀妖狐に大きな傷をつけたが、スキルの持ち主であるティナから力を吸い取り白銀妖狐は再生を始めた。
そしてそれに伴い一瞬弱まっていた冷気も戻り始めアレスの手足はさらに凍り付いていった。
「お願いだアレス。君だけでも逃げてくれ。私は君を殺したくないんだ!」
そう言いながら涙を流すティナだったが、その涙は白銀妖狐が放つ冷気によりすぐに凍り付いてしまう。
全身が凍り付く寸前の絶体絶命な状況の中。
それでもアレスは右手を力強くティナに差し出したのだった。
「もう母上はいない。白銀妖狐を封じ込めることは叶わないから私が死ぬしかないんだ。だからお願いだ。私にもうこれ以上大切な人を殺させないでくれ……」
「ふざけんな!!ティナのお母さんはずっとお前の心の中にいるんだろう!?だからお前は今まで頑張って来れたんじゃないか!!」
「っ!?」
「あんなにボロボロにされても、皆に陰口をたたかれてもティナはお母さんの言葉を心の支えにして諦めずに頑張ってきた!!違うか!?」
「そうだ……でも、私の……私1人の力じゃこの力は抑えることが……」
「ティナは1人なんかじゃないだろう?」
「えっ……」
「俺が最後までお前を信じてやる。だから絶対に諦めるんじゃねえ!」
「……っ!」
すでにアレスの左腕と両脚は使い物にならないほど凍り付いてしまっている。
それでもアレスは笑顔のままティナを見つめ右手を差し出し続けていたのだ。
瞬間、ティナの脳裏に今までの辛かった人生が浮かび上がってきたのだ。
大好きだった母親を亡くし、たった一人で今まで頑張ってきた。
頼れる人は誰もいないと……自分一人だけの力で強大な白銀妖狐の力に抗っていかなければいけないと。
「私は……私は、諦めたくない!!」
アレスの言葉にティナは再び心の炎を燃やす。
すると今まで凍り付き動かなかった体が動き出し、白銀妖狐の束縛から逃れることが出来たのだ。
「ぐぁあああ!引っ張り出すぞ!!」
「っ!!」
アレスは残った右腕で最後の力を振り絞り、ティナを白銀妖狐の体から引きずり出す。
(凍った手足を地面にぶつけたら割れる!!何とか腰から……)
「っああ!!」
凍った左腕と両脚から地面に着地すればそのまま割れてしまう。
そう考えたアレスは何とか体をひねり腰から地面に激突した。
おかげで手足は無事に着地することが出来たのだが腰を強く強打しアレスは動けなくなる。
「ティナ!!決めろ!!」
「ありがとうアレス君、君のおかげで私は白銀妖狐に精神で上回ることが出来た。あとは……」
「フォォオオオ!!!」
「肉体でやつに、勝るだけだ」
宿主のティナが離れ、崩れそうになる体で白銀妖狐は再びティナを取り込もうとする。
だがティナはそんな中冷静に刀を構えたのだ。
「フォルワイル家、奥義!!」
「ファァ!?」
「百花繚乱!!!」
迫りくる白銀妖狐に、ティナは必殺の一撃を叩き込む。
敵を切り刻む百の斬撃はまるで鮮やかに咲き誇る大量の花のようで……
「はぁ……はぁ……終わった……」
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