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2章
別れ
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「……遅い!!遅すぎるぞ!!」
ステラを連れてアレスがレウスの森に向かってから50分ほどが経過した頃。
レウスの森直前の空白の森入り口付近で待機していたティナが痺れを切らしていた。
「そうですね。確かにもうそろそろ1時間が経ちますね」
「アレス君大丈夫かな……」
「2人とも、悪いが私はアレスを置いて帰るなんてことはしないぞ。エルフと戦争になってでも彼を連れ戻す」
「ええ。わかってます。その時は僕もご一緒します」
「……あっ!!2人とも見て!!アレス君が戻ってきたよ!!」
アレスから1時間経っても自分が戻って来なければエメルキア王国に帰るよう言われていたティナたちだったが、そんなつもりは毛頭なくエルフの森に殴り込みに行くと息巻いていた。
だがティナたちが動き出すよりも前に森からアレスが姿を現した。
「アレスさん!!」
「全く遅いぞアレス。心配させないでくれ」
「あれ……?アレス君、なんだか様子がおかしくない?」
「ええ、確かにどこか足取りがおぼつかない様子というか……」
「ッ!?た、倒れたぞ!?」
「アレス君!?」
アレスの姿を発見して安堵の笑みをこぼした3人であったが、すぐにアレスの様子がおかしいことに気が付いた。
森から姿を現したアレスはふらふらと歩いており、その歩く速度は明らかに遅い。
そしてソシアたちより少し手前で、なんとアレスは急に倒れてしまったのだ。
アレスが倒れたことに衝撃を受けた3人は思わず頭が真っ白になるも、考えるよりも先にアレスの元に走り出していた。
「アレス君!!どうしたの!?」
「まさかエルフに攻撃されたんじゃ……」
「ふざけるなよ……よくもアレスを!!」
「アレス君!アレス君!!……ッ!!アレス君……」
「これは……」
「ッ!?」
地面に倒れたアレスの元に急いで駆けつける3人。
不安、悲しみ、怒り。
様々な感情が沸き上がっていた3人がアレスの元に辿り着いたその時、3人は驚くべき光景を目にすることとなった……
時は少し遡り30分前。
「嫌ぁあああ!!」
ステラをレウスの森で受け入れて欲しければ命を差し出せというと問いにYESと答えたアレスに、1人のエルフが放った弓が襲い掛かる。
そのエルフの弓の実力はかなりのもので、放たれた弓矢は狙い通りにターゲットに命中した。
「~~~ッ!!いってぇな……」
「アレスにいに!!」
「馬鹿な!!」
「まさか……」
だがそのエルフの狙いはアレスの急所ではなかった。
放たれた弓矢は正確無比な軌道でアレスの頬を深く切り裂き耳をも引き裂いた。
「なぜ……なぜ躱さなかった……」
「おいこら!!殺すなら一思いにやれよ!!獲物をいたぶって殺すのがエルフの趣味なのか!?」
(致命には届かないと分かっていて躱さなかった?いや、違う。あの時の奴の目はたとえそれが顔のど真ん中を撃ち抜く一撃だったとしても躱すつもりはなかった。それに致命傷ではないもののあの傷は深くないはずだろう……?)
「馬鹿な……貴様は、本当にその竜人族のために、他人のために死ねるというのか!?」
エルフが放った矢は致命傷には至らないが、激しく引き裂かれた頬の傷からは血がとどめなく溢れ出る。
しかしそんなこと意に介すことなくアレスはそのエルフの質問に答えた。
「もちろん見ず知らずの誰かのために死ねって言われても断る。でも、守りたいと思った人のためなら死んでも構わないさ」
「そんな、そんなことが……」
「人間のくせにそんなことを言うなんて……」
「いや、あそこまでの覚悟は我らエルフであっても……」
アレスの覚悟にエルフたちは若干引いてしまうほどに驚かされた。
「それで、殺すならお願いだから一思いにやってくれよ。俺だって痛いのは嫌なんだぜ?」
「……いや、その必要はない。貴様の覚悟はもう十分に示されたのだからな」
「っ!!それじゃあステラちゃんを……」
「ああ。貴様の要望通り、その竜人族の少女は我らレウスの森で預かろう」
「……ッ!!ありがとうございます!」
そんなアレスの覚悟を目の当たりにしたエルフたちは、アレスの要望を飲みステラをこの森に住まわせることを許可したのだ。
その約束を口にしたのは1人のエルフの声であったが、その他の者もそれに反対することなく押し黙っていた。
「やったなステラちゃん!この森に入れてもらえるって!!」
「……私、アレスにいにに酷いことする人たちは怖い……」
「うーん、そうだな……って言ってますけど、受け入れてくれるからには酷いことしたりしませんよね?」
「ああ。それは安心してもいい。森に許可なく立ち入るものは許さないが、許可さえあればそれはもうれっきとしたレウスの森の住民。つまりは我々の仲間ということだからな」
「ということだ。大丈夫だよステラちゃん。ここなら悪い人間は入って来られない」
「……うん」
「ああ、あと先に言うの忘れたけどこの布にはステラちゃんのお母さんの亡骸が包まれてるから。悪いんだけどこの子が毎日お参りできるようにお墓を用意してやってくれないか?」
「この人間は……まあいい。それくらいならば受け入れよう」
「んじゃあ、そういうことだから。エルフの森でも元気で暮らすんだぞ」
「待て人間!」
「ん?」
ステラを受け入れてもらえると約束を貰ったアレスは、長居は無用だとレウスの森から立ち去ろうとする。
しかしその時1人のエルフが突如木の上から降りてきてその姿を現したのだ。
「おいシルヴィア!!人間に姿を見せるなんて……」
「分かっている。だがこのままあの人間を帰すのはまずいだろう」
(ッ!!ライトエルフ……初めて見たが信じられないくらい美人だな……)
木の上に姿を隠していたエルフのうちの1人、シルヴィアと呼ばれたエルフがゆっくりとアレスの元に歩み寄る。
雪のように白い肌に風になびく美しい銀髪、エルフの特徴である尖った耳。
宝石のように美しいエメラルドの瞳はまさに人形のようで芸術作品の域に足を踏み入れているとさえ感じさせる。
緑聖国シャムザロールの北方に位置するレウスの森にのみ住むと言われるライトエルフの彼女は、動物というよりは植物に近いと言ってもいい程の独特な気配を纏いアレスの目の前までやってきた。
「なんだよ。やっぱり殺すっていうんじゃないだろうな」
「いいえ。ただ……少し止まっていなさい」
「……っ!」
シルヴィアはアレスの元にやってくると、その細く美しい手を差し出しまだ血の止まらないアレスの頬にそっとかざす。
そしてほのかな温かみが感じられる回復魔法を施すと、アレスの傷を綺麗さっぱり直してしまったのだ。
「傷が……ありがとう。優しいんだな」
「勘違いしないで。人間から不要な恨みを買いたくないから治しただけ。姿を見せたのもその竜人族のために覚悟を見せたあなたへの最低限の礼儀よ」
「そうか。それじゃあステラちゃん、このエルフのお姉さんと一緒に行きなさい」
「……うん。ねえアレスにいに。また……会える?」
ついに訪れてしまった別れの瞬間。
ステラは最後にアレスに向かって寂しそうな顔をしてそう問いかけた。
「……。ああ、もちろん会えるに決まってるだろ。その時までに空を飛ぶ練習をして、俺をお空に連れて行ってくれよ」
「うん……」
「人間、分かっているとは思うけれど……」
「皆まで言うな」
「……そう」
アレスは悲しそうな顔をするステラに笑顔でそう答えた。
無論人間を激しく拒絶するレウスの森にアレスが再びやってくることはできない。
ステラも騒ぎになってしまうためエメルキア王国に行くのは難しく、連絡を取る手段もないためアレスがステラと再会するのは現実的に考えて困難であった。
シルヴィアはアレスに忠告しようと口を開いたが、アレスはシルヴィアにだけにしか届かないほどの小声で承知済みだと答える。
「まだ不安か?それじゃあ……ステラちゃん。これ」
「……コイン?」
「ああ。よっと……ほら、表裏どっちだ?」
「……、表!」
「……ふっ。正解だ。それじゃあこのコインはステラちゃんに預けておく。また今度会った時に一緒に遊ぼうね」
「……。うん!わかった、約束だよ!」
「もちろん約束だ」
「アレスにいに……私をいっぱい助けてくれてありがとう!守ってくれてありがとう!」
「ああ……元気で暮らすんだぞ」
いつかまた再会することを夢見て、ステラはアレスとの別れを受け入れることが出来た。
ステラは最後にアレスにハグをして感謝の気持ちを伝える。
そんなステラの気持ちをめいっぱい受け取ったアレスは柔らかな笑顔でほほ笑んだ。
「それじゃあステラちゃん!またね!!」
「ばいばい!みんなにもまた会おうねって伝えてね~!」
アレスは名残惜しそうに手を振るステラに笑顔で返事をし、真っ直ぐ森の出口に向かって歩いていった。
「……あの人間のことをずいぶんと信頼しているのね」
「うん!アレスにいに達はね、私のこと全然知らなかったのに助けてくれたから。とっても優しいの」
「……そう。さっきは怖い思いをさせてしまって申し訳なかったわ。人間は受け入れられないけど竜人族であるあなたは別よ。酷いことをする奴が居たら教えてね、私が守ってあげるわ」
(このお姉さんは……あんまり怖くないかもしれない……)
「……うん!」
アレスを見送ったステラは、シルヴィアに連れられレウスの森へと向かう。
人間に住処を追われたという境遇のステラに、エルフたちは負の感情を抱いてはいない。
人見知りの彼女がエルフの森で馴染むのには少し時間がかかってしまうが、それでも新たな土地で幸せな生活を送ることとなるのだった。
そして時は現在。
レウスの森から戻ってきたアレスがソシアたちのすぐ目の前で倒れた時のこと。
「アレス君!アレス君!!……ッ!!アレス君……」
「これは……」
「ッ!?」
「すぅ……すぅ……」
「ね、眠ってる……?」
アレスが倒れたことに最悪な状況がよぎる3人であったが、なんとアレスはただ眠っているだけですべては3人の杞憂だったのだ。
「まったく。心配させてくれる」
「アレスさん、ここに来るまでほとんどまとまった睡眠をとっていませんでしたからね。ステラさんを無事に送り届けるまで気を張っていたんでしょう」
「でも見て。アレス君のこの寝顔」
「ああ。ステラは無事にエルフたちに受け入れてもらえたようだ」
全てが終わり、緊張の糸が切れたアレスはソシアたちの姿を見て気を失うように眠ってしまっていたのだ。
そんなアレスに呆れたような笑顔を見せる3人だったのだが、アレスのその穏やかな寝顔からすべてが丸く収まったのだと心の底から安心しきることが出来たのだった。
ステラを連れてアレスがレウスの森に向かってから50分ほどが経過した頃。
レウスの森直前の空白の森入り口付近で待機していたティナが痺れを切らしていた。
「そうですね。確かにもうそろそろ1時間が経ちますね」
「アレス君大丈夫かな……」
「2人とも、悪いが私はアレスを置いて帰るなんてことはしないぞ。エルフと戦争になってでも彼を連れ戻す」
「ええ。わかってます。その時は僕もご一緒します」
「……あっ!!2人とも見て!!アレス君が戻ってきたよ!!」
アレスから1時間経っても自分が戻って来なければエメルキア王国に帰るよう言われていたティナたちだったが、そんなつもりは毛頭なくエルフの森に殴り込みに行くと息巻いていた。
だがティナたちが動き出すよりも前に森からアレスが姿を現した。
「アレスさん!!」
「全く遅いぞアレス。心配させないでくれ」
「あれ……?アレス君、なんだか様子がおかしくない?」
「ええ、確かにどこか足取りがおぼつかない様子というか……」
「ッ!?た、倒れたぞ!?」
「アレス君!?」
アレスの姿を発見して安堵の笑みをこぼした3人であったが、すぐにアレスの様子がおかしいことに気が付いた。
森から姿を現したアレスはふらふらと歩いており、その歩く速度は明らかに遅い。
そしてソシアたちより少し手前で、なんとアレスは急に倒れてしまったのだ。
アレスが倒れたことに衝撃を受けた3人は思わず頭が真っ白になるも、考えるよりも先にアレスの元に走り出していた。
「アレス君!!どうしたの!?」
「まさかエルフに攻撃されたんじゃ……」
「ふざけるなよ……よくもアレスを!!」
「アレス君!アレス君!!……ッ!!アレス君……」
「これは……」
「ッ!?」
地面に倒れたアレスの元に急いで駆けつける3人。
不安、悲しみ、怒り。
様々な感情が沸き上がっていた3人がアレスの元に辿り着いたその時、3人は驚くべき光景を目にすることとなった……
時は少し遡り30分前。
「嫌ぁあああ!!」
ステラをレウスの森で受け入れて欲しければ命を差し出せというと問いにYESと答えたアレスに、1人のエルフが放った弓が襲い掛かる。
そのエルフの弓の実力はかなりのもので、放たれた弓矢は狙い通りにターゲットに命中した。
「~~~ッ!!いってぇな……」
「アレスにいに!!」
「馬鹿な!!」
「まさか……」
だがそのエルフの狙いはアレスの急所ではなかった。
放たれた弓矢は正確無比な軌道でアレスの頬を深く切り裂き耳をも引き裂いた。
「なぜ……なぜ躱さなかった……」
「おいこら!!殺すなら一思いにやれよ!!獲物をいたぶって殺すのがエルフの趣味なのか!?」
(致命には届かないと分かっていて躱さなかった?いや、違う。あの時の奴の目はたとえそれが顔のど真ん中を撃ち抜く一撃だったとしても躱すつもりはなかった。それに致命傷ではないもののあの傷は深くないはずだろう……?)
「馬鹿な……貴様は、本当にその竜人族のために、他人のために死ねるというのか!?」
エルフが放った矢は致命傷には至らないが、激しく引き裂かれた頬の傷からは血がとどめなく溢れ出る。
しかしそんなこと意に介すことなくアレスはそのエルフの質問に答えた。
「もちろん見ず知らずの誰かのために死ねって言われても断る。でも、守りたいと思った人のためなら死んでも構わないさ」
「そんな、そんなことが……」
「人間のくせにそんなことを言うなんて……」
「いや、あそこまでの覚悟は我らエルフであっても……」
アレスの覚悟にエルフたちは若干引いてしまうほどに驚かされた。
「それで、殺すならお願いだから一思いにやってくれよ。俺だって痛いのは嫌なんだぜ?」
「……いや、その必要はない。貴様の覚悟はもう十分に示されたのだからな」
「っ!!それじゃあステラちゃんを……」
「ああ。貴様の要望通り、その竜人族の少女は我らレウスの森で預かろう」
「……ッ!!ありがとうございます!」
そんなアレスの覚悟を目の当たりにしたエルフたちは、アレスの要望を飲みステラをこの森に住まわせることを許可したのだ。
その約束を口にしたのは1人のエルフの声であったが、その他の者もそれに反対することなく押し黙っていた。
「やったなステラちゃん!この森に入れてもらえるって!!」
「……私、アレスにいにに酷いことする人たちは怖い……」
「うーん、そうだな……って言ってますけど、受け入れてくれるからには酷いことしたりしませんよね?」
「ああ。それは安心してもいい。森に許可なく立ち入るものは許さないが、許可さえあればそれはもうれっきとしたレウスの森の住民。つまりは我々の仲間ということだからな」
「ということだ。大丈夫だよステラちゃん。ここなら悪い人間は入って来られない」
「……うん」
「ああ、あと先に言うの忘れたけどこの布にはステラちゃんのお母さんの亡骸が包まれてるから。悪いんだけどこの子が毎日お参りできるようにお墓を用意してやってくれないか?」
「この人間は……まあいい。それくらいならば受け入れよう」
「んじゃあ、そういうことだから。エルフの森でも元気で暮らすんだぞ」
「待て人間!」
「ん?」
ステラを受け入れてもらえると約束を貰ったアレスは、長居は無用だとレウスの森から立ち去ろうとする。
しかしその時1人のエルフが突如木の上から降りてきてその姿を現したのだ。
「おいシルヴィア!!人間に姿を見せるなんて……」
「分かっている。だがこのままあの人間を帰すのはまずいだろう」
(ッ!!ライトエルフ……初めて見たが信じられないくらい美人だな……)
木の上に姿を隠していたエルフのうちの1人、シルヴィアと呼ばれたエルフがゆっくりとアレスの元に歩み寄る。
雪のように白い肌に風になびく美しい銀髪、エルフの特徴である尖った耳。
宝石のように美しいエメラルドの瞳はまさに人形のようで芸術作品の域に足を踏み入れているとさえ感じさせる。
緑聖国シャムザロールの北方に位置するレウスの森にのみ住むと言われるライトエルフの彼女は、動物というよりは植物に近いと言ってもいい程の独特な気配を纏いアレスの目の前までやってきた。
「なんだよ。やっぱり殺すっていうんじゃないだろうな」
「いいえ。ただ……少し止まっていなさい」
「……っ!」
シルヴィアはアレスの元にやってくると、その細く美しい手を差し出しまだ血の止まらないアレスの頬にそっとかざす。
そしてほのかな温かみが感じられる回復魔法を施すと、アレスの傷を綺麗さっぱり直してしまったのだ。
「傷が……ありがとう。優しいんだな」
「勘違いしないで。人間から不要な恨みを買いたくないから治しただけ。姿を見せたのもその竜人族のために覚悟を見せたあなたへの最低限の礼儀よ」
「そうか。それじゃあステラちゃん、このエルフのお姉さんと一緒に行きなさい」
「……うん。ねえアレスにいに。また……会える?」
ついに訪れてしまった別れの瞬間。
ステラは最後にアレスに向かって寂しそうな顔をしてそう問いかけた。
「……。ああ、もちろん会えるに決まってるだろ。その時までに空を飛ぶ練習をして、俺をお空に連れて行ってくれよ」
「うん……」
「人間、分かっているとは思うけれど……」
「皆まで言うな」
「……そう」
アレスは悲しそうな顔をするステラに笑顔でそう答えた。
無論人間を激しく拒絶するレウスの森にアレスが再びやってくることはできない。
ステラも騒ぎになってしまうためエメルキア王国に行くのは難しく、連絡を取る手段もないためアレスがステラと再会するのは現実的に考えて困難であった。
シルヴィアはアレスに忠告しようと口を開いたが、アレスはシルヴィアにだけにしか届かないほどの小声で承知済みだと答える。
「まだ不安か?それじゃあ……ステラちゃん。これ」
「……コイン?」
「ああ。よっと……ほら、表裏どっちだ?」
「……、表!」
「……ふっ。正解だ。それじゃあこのコインはステラちゃんに預けておく。また今度会った時に一緒に遊ぼうね」
「……。うん!わかった、約束だよ!」
「もちろん約束だ」
「アレスにいに……私をいっぱい助けてくれてありがとう!守ってくれてありがとう!」
「ああ……元気で暮らすんだぞ」
いつかまた再会することを夢見て、ステラはアレスとの別れを受け入れることが出来た。
ステラは最後にアレスにハグをして感謝の気持ちを伝える。
そんなステラの気持ちをめいっぱい受け取ったアレスは柔らかな笑顔でほほ笑んだ。
「それじゃあステラちゃん!またね!!」
「ばいばい!みんなにもまた会おうねって伝えてね~!」
アレスは名残惜しそうに手を振るステラに笑顔で返事をし、真っ直ぐ森の出口に向かって歩いていった。
「……あの人間のことをずいぶんと信頼しているのね」
「うん!アレスにいに達はね、私のこと全然知らなかったのに助けてくれたから。とっても優しいの」
「……そう。さっきは怖い思いをさせてしまって申し訳なかったわ。人間は受け入れられないけど竜人族であるあなたは別よ。酷いことをする奴が居たら教えてね、私が守ってあげるわ」
(このお姉さんは……あんまり怖くないかもしれない……)
「……うん!」
アレスを見送ったステラは、シルヴィアに連れられレウスの森へと向かう。
人間に住処を追われたという境遇のステラに、エルフたちは負の感情を抱いてはいない。
人見知りの彼女がエルフの森で馴染むのには少し時間がかかってしまうが、それでも新たな土地で幸せな生活を送ることとなるのだった。
そして時は現在。
レウスの森から戻ってきたアレスがソシアたちのすぐ目の前で倒れた時のこと。
「アレス君!アレス君!!……ッ!!アレス君……」
「これは……」
「ッ!?」
「すぅ……すぅ……」
「ね、眠ってる……?」
アレスが倒れたことに最悪な状況がよぎる3人であったが、なんとアレスはただ眠っているだけですべては3人の杞憂だったのだ。
「まったく。心配させてくれる」
「アレスさん、ここに来るまでほとんどまとまった睡眠をとっていませんでしたからね。ステラさんを無事に送り届けるまで気を張っていたんでしょう」
「でも見て。アレス君のこの寝顔」
「ああ。ステラは無事にエルフたちに受け入れてもらえたようだ」
全てが終わり、緊張の糸が切れたアレスはソシアたちの姿を見て気を失うように眠ってしまっていたのだ。
そんなアレスに呆れたような笑顔を見せる3人だったのだが、アレスのその穏やかな寝顔からすべてが丸く収まったのだと心の底から安心しきることが出来たのだった。
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