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一章
演目7 連携
しおりを挟むスライム討伐はマイカの一撃で終わったところで、俺の近くにブロンドさんが降って来た。
カッコイイ三点着地――もといスーパーヒーロー着地で。
「お見事」
「フフ。頑丈な魔法少女以外にはオススメしないぞ。膝に悪い」
「でしょうね」
「それより、この後の処理がどうなるかは知ってるか?」
「まぁ……物を直すのが得意な魔法少女が来て、建物やら道の修復。その間に魔法少女協会の人が色々と聞き込みをするというのは知ってます」
「その通り。私たちも何を倒したのか事情聴取を受ける。ただし、他にナイトメアが現れた場合はその限りでは――」
ブロンドさんが言い終わる前に、スマホからナイトメア出現の警報が鳴った。
「はぁ……全く、今度は何処だ?」
溜息を吐いてしかめっ面をしたブロンドさんは、変身した際に消えていたスマホを魔法で取り出し、場所を確認した。
「……ちと遠いな。ネロ、さっき君は私たちよりも早く到着していたな?」
「ええ」
「ならその力、見せてくれるか?」
「はい」
どうやら俺の力を頼って現場に急行したいらしい。遠くで同じようにスマホを確認していたマイカはブロンドさんの手招きによって近づいて来た。
「なにブロンド先輩、急がないの?」
「ネロの力で向かう。嫌とは言わせないぞ」
「うっ、分かったわよ」
先輩には素直なんだな。
俺は緩んだ気を引き締め、咳払いをして二人に注目してもらう。
それから不敵な笑みを浮かべた。
「それではお二方、これより行われますは世にも不思議なタネ無しマジック。ゆめゆめ驚いて目的地の悪夢に食われぬようご用心ください」
口上を述べ終え、指パッチンで縦横三メートルほどの巨大な箱を生成する。それは全ての面に“?”マークが描かれており、奇抜な色合いをしている。
ステッキでちょんと小突けば箱は簡単に展開され、中の物が出現した。
「これって……!」
「エレベーター!」
マイカとブロンドさんが驚いてくれる。いい反応だ。
箱の中に出したのは上下移動しか出来ない筈の昇降機《エレベーター》。さっきやったエスカレーターから形を変えただけで、瞬間移動は変わらない。
「どうぞ、お入りください」
帽子が落ちないように手を添えつつ、恭しい挨拶と共に片手で中へ入るよう促す。
「本当に大丈夫なの?」
「信じるしかないだろう」
二人は不安になりながらもエレベーターに乗ってくれた。
大丈夫。もし失敗したら俺も一緒だ。
後から俺も乗り込みボタンを押してドアを締め、『目的地』と書かれたボタンを押す。
「では、下へ参ります」
電源も無く動き出したエレベーターは下へ移動を始めた。
「上へ参ります」
ある程度沈むと今度は上へ移動を始めた。
そして、停止。
チーン♪
気味の良い音の後にドアが開くと、そこは目的地である住宅街。目の前ではナイトメアが今まさに暴れている最中だった。
「ご利用ありがとうございました」
指パッチンと同時にエレベーターを消し、まるで夢であったかのように見せる。
二人は俺の魔法に呆気に取られていたが、暴れるナイトメアが車をこっちに投げ飛ばして来て、ブロンドさんが瞬時に大盾を生成して前に出て防いだ。
彼女は一ミリも後退することなく、むしろ車が弾き返されて地面に転がった。
「アシュラオーガか。マイカ、相性が悪いだろうから気を付けろ」
「分かってる。悔しいけどネロ、今回はあんたが頑張りなさい」
「あ、ああ……」
アシュラオーガって何? 初めて聞くナイトメアだ。
オーガというのは分かる。怒りの感情を中心に成長したナイトメア。二階建ての家ほどの大きさで、見た目が鬼そのものなのはニュースで見たことがある。
だが、今目の前で怒りのままに大暴れしている奴は、憤怒の顔で、腕は六本、おまけにオーラのように体が常に轟々と燃えている。
危険過ぎてマスコミが撮影出来ない奴なのかな?
――おっと、今はそれどころじゃないか。
今度は家の瓦礫が飛んで来て、ブロンドさんが大盾に魔力を込めてバリアを展開、盾の範囲を拡大して防いでくれた。それどころかジリジリと前進を始めた。
「マイカ、このまま後ろに。隙が出来たら私の合図で強烈な一撃を叩き込め」
「はい!」
「ネロ、君は……何かないか?」
「何かって?」
「まだ出会ったばかりだから、何が出来るか私たちは知らない。あいつに有効そうな攻撃をしてくれると助かる。因みにアシュラオーガは水や氷で攻撃すると多少動きが鈍る」
「ふむ……となると……」
雨でも降らせばいいのだろうか?
それとも氷を降らせる?
でも、それだと面白くない。一工夫欲しい。
水……沢山……放水……。
「ん。ならこうしよう」
イメージを済ませ、俺は被っているハットを頭上に放り投げた。
「放水UFO」
ハットの中から大量のハットを召喚し、それは意思を持っているかのように空を飛んでアシュラオーガを全方位から捉え、大量の冷たい水がハットの中から放水された。その勢いと量は消火栓の倍ほどであり、突然の放水を浴びたアシュラオーガは二つの腕で顔を隠すように防いで怯んだ。
「よし! このまま接近するぞ!」
「先輩、合図は?」
「まだだ」
ブロンドさんの進行が速くなり、徐々に距離を詰める。アシュラオーガが残った四つの腕で車や家の瓦礫を投げつけて来るが、それは全てブロンドさんが防ぐ。
まるで効果が無いと見たアシュラオーガは背を向けて逃げ出した。
逃がさんよ。
「タケノコぼこぼこ」
魔法でアシュラオーガの進行方向に筍の形をした鉄の棘を大量に生やす。急には止まれない奴は足にぐっさりと刺さって苦痛に叫び声をあげて倒れた。
倒れたことで更に鉄の棘が全身に刺さり、また苦痛の叫びを発した。
うわー痛そー。
「今だマイカ!」
「オッケー!」
ブロンドさんの合図が出るとマイカは飛んでアシュラオーガの真上を取った。邪魔にならないようにハットからの放水を止めて見守ると、マイカはがら空きの背中にぐさりと大太刀を突き刺し、魔力を込めて延長した刀身で振り切ってアシュラオーガの頭部まで切断した。
アシュラオーガは最後に大きな叫び声をあげると、事切れて霧散して消えた。
「よくやったマイカ。ネロも」
ブロンドさんが俺とマイカの働きを褒め、スマホを取り出してナイトメアの出現情報を確認。
「……他にナイトメアは現れていないようだ。お疲れ様」
「じゃあ、私は先に帰らせてもらうわ」
魔法少女としての仕事が終わったマイカは、さっさと飛んで学校へ帰ってしまった。
「ブロンドさん、いいの? 先に帰らせて」
「問題無いよ。マイカは現役女子高生だし、こういった後処理は大人がやってあげるべきだ。それに彼女、火の魔法を主体にしているせいか、修復や回復の魔法はからっきしだからね」
つまり、後処理関係で事情聴取以外に役に立たないと。
俺は出した魔法を消し、飛んでいるハットを手元に戻して被り直した。
数分後、やって来た魔法少女協会の事務員に事情聴取を受け、俺たちはゆっくりと学校へ帰還した。
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