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二章
演目14 訓練開始
しおりを挟む魔法少女活動室で弁当を食べる。
今日は酸味の強いタルタルソースがたっぷり掛かった大盛りのチキン南蛮弁当。白米がよくすすむ。
ある程度食べ進めたところで、俺はさっきの状況が気になって聞いてみた。
「あのブロンドさん、さっきみんな慌てて動きましたけど、何故です?」
「ああ、さっきのはマホロ対策だ。彼女は幻を見せる能力に加えて、大の悪戯好きで、姿と気配を消して盗み聞きしたり盗み見したり、いきなりセクハラ紛いのスキンシップを取ろうとすることがあったんだ。リリスとなった今なら、暗殺や誘惑を行えてかなり危険だ。だから私もマコトも、マイカですら警戒して動いたということだ」
「なるほど」
確かに幻によって姿と気配を認識出来ない状態で近づかれていたら、情報は筒抜けになるしそもそも身の危険がある。
「それで、私とマイカはこれから訓練漬けと言うことですけど、具体的に何をするんです?」
「よく聞いてくれた。君たちはまだ魔法少女になって日が浅い。だから付け焼刃として応用を教えるより、魔法少女としての基礎を伸ばしながら実戦に則した戦闘経験を積んでもらおうと考えている」
「ふむ」
「そう言えば、ネロの動きは素人のそれじゃなかったな。武道の経験があるのか?」
「ええまぁ、数年前にぽっくり逝った祖父が元陸自でして。生前に徒手格闘と銃剣術と短剣術を叩き込まれました」
今役立っているけど、あの厳しい指導は嫌いだった。
「なるほど。なら君との実戦は威力以外に加減は不要だな」
「……」
言わなきゃよかった。
ところでマイカはさっきから俺の顔をジッと見て、何を考えてるんだろうか?
「マイカ、どうした?」
「えっ、あー……あんたって、思っていたより凄い人なんだなって思っただけよ」
「フッ、褒めても口からトランプしか出ないさ。オロロロロ」
魔法で口からトランプを吐き出してみた。勿論、食べている弁当に付着しないように全部手で受け止めている。傍から見たら手品のように見えるだろう。
「うわっ、汚い!」
マイカにドン引きされて椅子ごと距離を取られた。
向かい側では口元を手で隠し、クスクスと笑うブロンドさん。色っぽい。
ちらりとマコトを見れば、静かに笑っていた。
よしウケた!
……ところで、ブロンドさんはビニール袋から出してる購買の大盛り弁当を三つ、全部食べる気だろうか?
気になったので自分の分を食べ終わってからスマホのネット小説を見つつ観察していると、本当に全部食べてしまった。しかも食後のデザートにシュークリームを三つも食べた。体だけでなく胃もデカい健啖家だ。凄い。
昼休みも終わり、午後の授業も終わって放課後。
学生鞄を持って席から立ち上がったところで、クラスメイトの三人が近づいて来た。先頭にいる女子は如何にもお嬢様って雰囲気を出している。髪が縦ロールだし。名前は知らない。
「皇さん、よかったら放課後、私たちと一緒にどうかしら?」
「お誘いありがとう。でもごめん。魔法少女の先輩と訓練の予定が入っていてね、今暫くは外せないんだ」
「あら残念。でしたら来週か再来週にでもお誘いしますね」
「そうしてくれると助かる。おや? こんなところに花が……」
お詫びとしてちょっとした手品を行う。
彼女の髪に触れ、取り巻きに見えないように内側に手を潜り込ませてサッと引き抜く。同時に魔法で一本のピンクの薔薇を生成した。
「おぉー!」
「凄い!」
と後ろに控える女子二人がパチパチと拍手してくれる。
俺は生成したピンクの薔薇を目の前の彼女に差し出した。
「どうぞ。お嬢様」
「うふふ、ありがとう」
喜んでもらえたようで何より。
「ネロ、行くわよ」
「ああ」
わざわざ対応を待っていてくれていたマイカに声を掛けられ、俺は一緒に教室から出て行った。向かう場所は屋上。休憩時間にブロンドさんからトコトークで屋上に来るように言われていた。
屋上に到着すると、既にブロンドさんが腕を組んで待っていた。
「待っていたぞ二人とも。鞄を隅に置いて私の前に来てくれ」
言われた通り、鞄をベンチに置いてブロンドさんの前に立つ。
……胸、やっぱデカいな。
ブロンドさんの胸に自然と目が行ってしまう。だがそれは仕方のないことだ。腕を組んで大きな胸を持ち上げるような姿勢は、まるで強調しているように見えるのだから。
「さて、これから魔法少女としての基礎訓練を始めるわけだが……君たち二人にやってもらうのはまず、瞑想だ」
「瞑想?」
「魔力感知と魔力操作を主に鍛える基礎中の基礎、魔法少女の技術を身に付ける為の土台作りだ。ネロはまず、魔法少女の魔力がどういったものかをしっかりと感じて理解してもらう。マイカは魔力操作が及第点だから、操作精度の向上を図るのが目的だ。では二人とも、その場に座って」
「ならその前に、これをどうぞ」
背中に手を回し、超絶癖毛でボリューミーな黒髪の中で三人分のマットを生成し、手品っぽく出して二人に渡した。制服のスカートで地面に直接座るのは、お尻がちょっと痛そうだったから。
「ありがと」
「気が利くな」
二人から褒められつつマットを敷いて座る。瞑想ということが事前に分かっているからか、全員胡坐だ。
「マイカは魔力を体の形に沿って内側で循環させ、より速く、より精密にするんだ。可能なら手足の爪先まで意識してやるといい」
「はい!」
いい返事をしたマイカは早速目を瞑った。
「ネロはまず目を瞑って、体の内側にある魔力を感じ取れるようになること。力の感覚を例えるなら……そうだな……ほんのり温かい蝋燭の火のようなものだ」
「なるほど?」
よく分からん。実践あるのみだ。
「感じ取れたら私に言ってくれ」
「ああ」
マイカと同じように目を瞑り、自分の内側に意識を向ける。
蝋燭の火のような物……それって魂では?
お?
なんか魂だと認識した瞬間に内側から魔力的な何かが湧き出て――いやこれ多くない!?
ファイヤーッ!! って感じで滅茶苦茶に燃えてるし。
ので、目を開けて瞑想中のブロンドさんに声を掛けた。
「あの、魔力感じ取れたんですけど」
「おっ、早いな。それでどんな感じだった? 一応、感じた勢いでその魔法少女の魔力量を測ることが出来るんだけど」
「すっっごい燃えてました」
「ほう! やはりココンが推薦しただけはある。魔力量は鍛えればある程度は増やせるとは言え、先天的な物だ。将来はマイカ同様、私やマコトと同じレベルに到達出来るだろうな」
「そうですか」
「そのまま次の訓練に移ろう。今マイカがやっているように、魔力を体内で循環させるんだ。時計回りでも反時計回りでも構わない。体の形に沿って隅々まで魔力を動かし、出来る限り速く精密にするんだ。とにかくやってみてくれ」
「はい」
再び目を瞑り、体内にある魔力を操作してみる。
溢れ出る魔力を右腕、手、戻って体、右脚、股関、左脚……といった具合に動かして一周させる。何度かやったところで速度を上げていくが、これがなかなか難しい。速くなると魔力の制御が追いつかず、爪先で一瞬止まってしまったり、体の中であらぬ方向に飛んでしまったりする。
それでも続けていると段々と魔力の動きというものが理解出来るようになり、意識すれば魔力を速く滑らかに自動で循環させられるようになった。
「ネロ、マイカ、今日はもう終わりにしよう」
ブロンドさんの声が聞こえて目を開ける。
気付けばかなりの時間が経っていたのか陽が沈み、辺りが暗くなっていた。
「明日からは授業を休んでほしい。朝からここで訓練を行う。そのつもりでいるように」
こうして初日の訓練は終わったのだった。
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