幼なじみは絶対人質の許嫁

青香

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 そんな息子に合わせるように、カータもゆっくりと目を閉じる。
 そして、少し微笑みながら口を開く。

 「あなたが生まれた時、母さんは本当に嬉しかったの。一生懸命に泣き声を上げる、赤ちゃんだった頃のカイルは、今でも鮮明に思い出せるわ」

 まだこの話題が続くのか!
 もうアレだな。
 昔話がキリの良い所までいかないと、話題は変わらない気がする。

 そう思うと、諦めの境地から、体の緊張が解れる。

 諦めて、全て聞き入れよう。
 気の利いた事は言わないでいい。
 ただ黙って頷いていれば、そのうち気が済むだろう。

 そう思い、目を開ける。

 母は産まれたばかりの俺を思い出したのだろうな。
 目を瞑りながら、とても幸せそうな顔で笑っている。
 赤ちゃんだった頃の記憶など、俺は覚えていようが無いが、母に抱いてもらおうと、必死に叫んでいたんだと思う。
 母の温もりを確かめる為にな。

 「こうして抱いたの。とても可愛いかったわ」

 赤ん坊を抱く仕草をする母。
 『そうか、そうか』と頷く息子。

 他人が見たら、微笑ましい光景だろう。
 親子の絆というのかな。
 そんな幸せを具現化したような光景。

 「そうだぞ?触るのが怖いくらい小さかったけど、父さんと母さんの初めての子供だからな。嬉しくて嬉しくて。ねぇ?母さん」
 「そうね、あなた」

 父が参加してきた事で、この場の幸せオーラが増していく。
 俺は黙って、『そうか、そうか』と頷く。

 いや、別にいいんだけどさ。
 この状況になったのは、まさに望むべき展開だし。
 もう俺がティナを登場させて、エッチな妄想をしていたのは話題にすら上がらないだろう。

 喜ぶべき展開なんだが、なぁ?
 行き着く先が見えないし、かと言って余計なアクションは出来ない。
 うぅむ。
 悩ましい。

 そんな事を考えていると、両親は見つめ合い出した。
 その瞳はウルウルと輝き、互いの頬は赤色に薄く染まる。

 「僕は幸せ者だ。こんなに綺麗な奥さんと、二人の子供に恵まれて」
 「あなた」

 『私もよ』と言わんばかりの表情で、二人の顔の距離が縮まっていく。
 紅潮のせいで、発色の良くなった二人の唇が、今まさに重なろうとしている。

 ぐっ!
 俺の存在を忘れているのか!?
 コレって、見ていいものなのか!?
 家族なんだから、別に問題があるわけじゃ無いが、多感な時期の俺はどう振舞えばいいんだよ!
 良い機会だから、やり方を覚える為に、ガン見したらいいのか?
 その為に、わざわざ俺の目の前で、実践してくれるのだろうか。

 いやいや待て待て!
 コレは罠だ!

 そんな事したら、そういう事に興味津々だと、両親にバレてしまうだろうが!
 『カイルも、そういう事に興味を持ち出したか』なんて思われるぞ!?
 それでいいのか?
 いや、よくないだろ!
 『スケベ野郎』と、カテゴライズされてしまうんだぞ!

 でも、父さんや母さんーー。
 いや、母さんは女性だから無いか?
 うぅむ。
 わからないが、とりあえず父さんだったら、俺くらいの歳頃で、そんな感じだったんじゃないか?
 だってそうだろ?
 父さんだって、男なんだから。
 そうなると、別に、おかしい事じゃないはずだよな?
 父さんなら、分かってくれるんじゃないか?
 たぶん、そうだよ。

 そんな思考をよそに、両親の唇は、互いの吐息を感じるところまで迫っていた。

 あぁ!?
 あぁぁ!
 どうすれば良いんだ!
 見ていいのか!?
 見たらいけないのか!?
 誰か!
 誰か答えを、教えてくれぇぇぇっ!

 心で激しく葛藤する。
 しかしカイルは、顔を手のひらで覆ってはいたものの、指の隙間から成り行きを見ていた。
 
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