俺の攻撃力は2乗される〜絶大な火力にひれ伏すがよい!〜

紅蓮の魔術師

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3- 逃亡と錯綜

咆哮の魔獣__『スライム』

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 …なんだか、いつも歩いているような気がする。
 夜の星は煌々と輝いていて、その中でも大きな紫紺の光へと歩を進める。
「そろそろ眠いのだけど……」
 小さな口を開けて、既に微睡みに沈みそうなフィラがあくびをしながらそう言う。

 俺たちは、例の『賢者』を探す為に星の方角へと歩いていた。街の城門を抜けて、この世界に来た初めての街を後にする。あの白い巨塔を見る機会はもうないだろうか。
 小一時間は経ったところで、皆の足取りがおぼつかなくなってきた。時間的には、日が沈む後だから大体7時かそんなところだろうが、なにせ日中にあれだけ色々あったのだ。疲れて当然といったら当然か。

 俺は、背中に背負うリュックサックのような鞄の紐を緩め、中から簡易テント?を取り出した。流石転生した俺には様々な荷物を授けてくれたようで、他にも簡易食料、毛布、変えの洋服、そして火打ち石など色々入っている。重さも大きさもそこまで入るようには見えないので、きっとなにかしらの魔法かなにかが掛かっているのだろうとは思う。流石異世界だ。

 さて、俺はテントを組み立てようとしてのだが、一瞬でかなりの大きさに開いた。
「私に……野宿させようなんて……神なのに!」
「愚痴るな」
 アクリスは真っ先にテントへ突っ込んで、そのまま秒速で寝てしまった。

 銀河の下に広がる草原の中、3つの温もりが瞼を下げた。

__
 「北の大地」とは言うが、まぁ当然だが一朝一夕ではたどり着けない距離だ、特に徒歩では。
 なんだか、いつも歩いている気がする。
「あれ、遠くの方になんか見えるぞ!」
 突如、俺の耳に響いたのはそんな言葉だった。アクリスが指差す先には、かすかに「何か」がある。
「街?……ん、なんだかさっきよりも大きく見えないか…」
 遠くに見えた「ソレ」は、以前よりも近く見え、

 絶叫がつんざく。
 心を強く保たなければ失禁・嘔吐はしそうな異形が、草地に跡を残しながら猛スピードで近づいてくるのだ。俺たちの前で急停止、そして俺たちはソレを見上げる形になる。
「ま、魔獣……」
「お、おぅ……」

《魔獣とは、野生で生息する異形の、人間に対して敵対心を抱く生物で、形状は周りの環境に大きく依存します》

 土ごとえぐりながら、濃い紫の触手が地面を吹き飛ばす。風圧で思わず倒れ、第二打は俺をかすめて、地面は俺を乗せて数メートル吹っ飛ぶ。

 色は濃い紫。身体全体から醜い体液が滲みだしていて、それはある意味スライムのような印象を与える。が、某クエストにおけるような可愛らしい水色のものではなく、触手を十数本は備えた殺人マシンだ。
「誰かっ!助け…」
 フィラは泣き叫び、泥まみれになりながらも必死に逃げ回っている。
刺突スティング!」
 俺は手をかざし、とっさに魔法を唱える。歪な結晶は、風を斬りながら一直線、その異形に穴を開ける。
「………通じてないじゃ…」
 亀裂。俺はまたもふっとばされる。残念ながら武闘家ではないせいで、受け身も取れずに背中をモロに打ち、しびれと激痛が走る。
貫徹ペネトレート!』
  白光が異形を貫いた。喘ぎ苦しむ声はか弱く微風の中に消えていく。結晶は溶ける雪のように、その魔獣の身体は空へ。

 絶対に、何かがおかしい。
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