貴方の妻にはなれなくて

cyaru

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(๑>؂<๑) ハーシア15歳♡

34:Let’s study②―②

食事を終え、支度をしたハーシアは父親同士が取り決めをした午前10時から午後2時までをユリアに付き添う。

セシル伯爵家に到着をして玄関に立ったのは10時に10分前。
本当は10秒前にしたいくらい。

「来てくれたんだね。ようこそ!」

満面の笑みで出迎えてくれるファクターが気持ち悪くて仕方がない。
看取った時は50をとうに超えていたし、長い呪いで若い頃の面影も無くなっていた。

結婚した当時のような顔で、トキメキも感じたものだったが今は嫌悪感しかない。

「出迎え、ありがとうございます。午後2時までよろしくお願いいたします」
「もっとフランクにしてくれていいよ。堅苦しいのもなんだろう?」

――フランク?!フランクフルトに謝れ!――

ボイルしたフランクフルト、串に刺して炭火で炙ったあのジューシーさ。気軽に連想させる事を口にするな!と思ってしまう。
食べ物の恨みは恐ろしいって事を知らないんだろうかとハーシアは笑みすら返さずセシル伯爵家に入った。

までは良かったのだが。


「これと…これ。それからこっちも時間があれば目を通しておいてくれ。判らない事があれば聞いてくれればいい」

何故かユリアは茶菓子を頬張って寛いでいるのにハーシアが案内をされて着席したテーブルの上に明らかな執務を思わせる書類が置かれていく。

書類を置いていくのはセシル伯爵だ。


「申し訳ございません」
「どうした?もう判らない所があると?」
「はい」

セシル伯爵は「流石だな」と思い、「どこが判らないんだ?」ハーシアに優しく問うた。

「これは何でしょう?」
「何って執務だよ。色々とあってね。項目で分けているんだ」

――いやいや、なんで?――

執務の内容に目を通すのはユリアだろうと、苛ついてしまったが一応聞いてみた。

「ユリアが行う事では?」
「勿論だ」
「では、お気遣い無用です。私、時間を過ごすための本は持参しております。しかし驚いてしまいました。伯爵様の行動そのものの意味が判らなかったので」

そうやって言えば、すかさず執事の装いになったプレデータが本を差し出してくれる。
表紙を見て「え?」かなりセシル伯爵は驚いているがハーシアは気にしない。

プレデータの他にもう1人。ピーナも同行してくれたので、ピーナを呼び隣に座らせると執務の書類をポンポンと重ねてセシル伯爵に突き返した。

「お気遣い、ふ・よ・う!ですので」

真顔で念押しをしてピーナと1冊の本を楽しむべくページを捲る。

「お嬢様、先に袋とじを切ります?」
「そうね。次の公演予定でも書いてるのかしら。ワクワクするわね」

ハーシアとピーナが読み始めたのは週刊・青田買い。
今、王都に住まう令嬢たちがイチオシの演劇俳優の補佐をする次世代の俳優特集号だった。

セシル伯爵は後ろに陣取るファクターを振り返り話が違う、そう言いたげな表情を向けたがファクターにもハーシアの行動は想定外のようだ。

数歩前に来たファクターはセシル伯爵に戻された書類をピーナとキャッキャウフフと雑誌に見入るハーシアに差し出した。


「悪いんだが、執務でもあるが教材でもあるんだ。目を通してくれないか」
「お断りいたします」
「どうして!」
「どうして?それはこちらのセリフです。私がいれば妹ユリアへの教えが捗るのでしょう?私がユリアに教える訳でもなく、セシル伯爵家に嫁ぐ訳でもないのですよ?」
「しかし、君にもやって貰わないと困るんだ」

はて?とハーシアは首を傾げる。

「ご子息様。何か勘違いをされておられませんか?当家の事情なのでご存じないかも知れませんが、私とユリアは同じ講師に同じように教鞭を振って頂いておりました。履修の程度は同じ。ユリアが学んでいない事は私も学んでおりません。やって貰わねば困るとご子息様が言う相手は私ではなくユリアですよ?」

ファクターは書類を差し出されたらハーシアは自分も手伝うものだと取り組むと考えていた。本当に付き添うだけとは考えてもいなかった。

「だったら!君がユリアに真面目にやれと言うべきだろう!あれを見ろ!あれを!」

声を荒げファクターがユリアを指さすが、ハーシアはサラッと言い退けた。

「私が申し上げるべきことはないようですわね」

ユリアはファクターの母親と追加の菓子を食べていた。
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