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第04話♡ ファイティングポーズ
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さて、世の中には「言った、言わない」の不毛な争いが御座います。
言葉を言葉のままに音声で記録できれば申し分ないのですが、生憎そのような便利なものは世に御座いません。
大事なことは言質を取るだけではなく書面で残す。
お互いが同じ文面を1通づつ。予備として正教会の金庫に1通保管これで完璧。
正教会の金庫はとても便利で御座いまして、たとえ違法なものであっても預けた時の条件が揃わなければ開けて貰えない仕様になっております。
近年話題沸騰のスイスイ銀行という金融商会のシステムを取り入れて利用者が増えているのだとか。
墓まで持って行けない秘密もここなら安心と考える方が多いのでしょうね。
私は殿下に提案をしたのです。
「書面で残すのか。そうだな。あとで君がそうではないと言い出しても困るしな」
――オマエガナ~――
おっとっと。いけません。淑女の笑みが崩れる所でした。
「人は意図的に呆けることも御座いますしね。万が一も御座いますので書面にてその旨を認めて頂けます?」
「それは良いんだが…あっさりと受け入れるんだな」
「異を唱えて私に何か利が御座いまして?では‥1つ目。3年後の離縁は下記の要件を満たさずとも何より優先されるべき約束…として頂けます?」
「そんなに私と離縁したいのか?!」
しばしの沈黙。キョトンとするレアンドロ様と「何、言うてますのん?」と思う私。
何が嬉しくて初夜から愛人うんぬん、それ以前にも婚約中から他の女とイチャコラしてる男を「ハイ、喜んで!」なんて女がいると思うのか。不思議でなりません。
一言、言わせて頂くなら離縁となる前!
つまり結婚前にちゃんとしとけ?
耳に拡声器をあてて腹の底からの声出しシャウトしたい気分ですわ。
「ルシェル様と愛を語り、つむぎたいのでは?そこにわたくしが必要ですの?」
「いや…。居なくていい。判った…何を置いても最優先だな?」
「えぇ。勿論」
レアンドロ殿下は顔以外に字も良いとお聞きしましたが、噂通り。
顔だけでなく文字も褒められてよぅ御座いましたわね。
「で…慰謝料はどうする?」
「なしで。婚姻時にお互いが得た利益、不利益も干渉なしで御座いましょう?」
「そ、それもそうだな。だが妃として国庫から支度金も出るんだが」
「第1王子殿下に差し止めをお願いしておきますわ。3年分となればそこそこな金額。経費削減ですわね」
「兄上に?離縁前提の結婚と思われるのではないか?」
「何を仰いますやら。昨今、天下りや無駄な経費は削減しようと民からの突き上げも御座います。自費で用意できるものを買って頂く必要は御座いませんし、何より妃の仕事はしないのですから支度金など不要です」
「君は何もいらないのか?」
「御心配は無用です。大事な事なのでもう一度言いますわね?必要なものは自分で買いそろえます。妃の仕事を全て放棄するのですからローブ・モンタントも必要御座いません」
「それは不味いだろう。そこまで一切仕事をしないと言うのか?」
「世の中、一事が万事とも申します。わたくしが妃の仕事をする事で意図せず何方かから褒められ、流石王子妃と称えられる事があってはなりません。その後に貴方の妃になるルシェル様の事を考えてくださいませ。前例があるから比較されるのですよ?今後の事を考えればハードルは極限まで下げる、いえ、ハードルを無くすくらいでないと乗り越えられませんからね」
「だ、だとしてもだな。一切しないというのも困るんじゃないか?」
「何も困りません。昨日まで殿下には妃がいなかったのに国政に滞りは御座いませんわ。離縁までのたった3年ですもの。一人で公務、乗り切りましょう!!殿下なら出来る!殿下なら出来る!殿下なら出来るッ!」
いけない。いけない。
つい力が入ってしまってファイティングポーズを取ってしまいましたわ。
「褒められるのがそんなに嫌なのか…」
「いいえ?称賛はとても嬉しいです。ですが手枷足枷となるような王子妃としての称賛は迷惑ですね」
「そんなハッキリ言わなくても」
「何を仰るのです?のらりくらりにあぁでもない、こぅでもないと引き延ばしされるよりずっと良いではありませんか」
「それはそうなんだが。判った。表立って何かすることも無ければ離縁もし易いだろうし‥好きなようにしてくれ」
さて、妃としての仕事もこれでしなくて良くなりました。
何も知らず、私が悠々自適に過ごすための免罪符を認めてくださるレアンドロ殿下には感謝しか御座いませんわね。
言葉を言葉のままに音声で記録できれば申し分ないのですが、生憎そのような便利なものは世に御座いません。
大事なことは言質を取るだけではなく書面で残す。
お互いが同じ文面を1通づつ。予備として正教会の金庫に1通保管これで完璧。
正教会の金庫はとても便利で御座いまして、たとえ違法なものであっても預けた時の条件が揃わなければ開けて貰えない仕様になっております。
近年話題沸騰のスイスイ銀行という金融商会のシステムを取り入れて利用者が増えているのだとか。
墓まで持って行けない秘密もここなら安心と考える方が多いのでしょうね。
私は殿下に提案をしたのです。
「書面で残すのか。そうだな。あとで君がそうではないと言い出しても困るしな」
――オマエガナ~――
おっとっと。いけません。淑女の笑みが崩れる所でした。
「人は意図的に呆けることも御座いますしね。万が一も御座いますので書面にてその旨を認めて頂けます?」
「それは良いんだが…あっさりと受け入れるんだな」
「異を唱えて私に何か利が御座いまして?では‥1つ目。3年後の離縁は下記の要件を満たさずとも何より優先されるべき約束…として頂けます?」
「そんなに私と離縁したいのか?!」
しばしの沈黙。キョトンとするレアンドロ様と「何、言うてますのん?」と思う私。
何が嬉しくて初夜から愛人うんぬん、それ以前にも婚約中から他の女とイチャコラしてる男を「ハイ、喜んで!」なんて女がいると思うのか。不思議でなりません。
一言、言わせて頂くなら離縁となる前!
つまり結婚前にちゃんとしとけ?
耳に拡声器をあてて腹の底からの声出しシャウトしたい気分ですわ。
「ルシェル様と愛を語り、つむぎたいのでは?そこにわたくしが必要ですの?」
「いや…。居なくていい。判った…何を置いても最優先だな?」
「えぇ。勿論」
レアンドロ殿下は顔以外に字も良いとお聞きしましたが、噂通り。
顔だけでなく文字も褒められてよぅ御座いましたわね。
「で…慰謝料はどうする?」
「なしで。婚姻時にお互いが得た利益、不利益も干渉なしで御座いましょう?」
「そ、それもそうだな。だが妃として国庫から支度金も出るんだが」
「第1王子殿下に差し止めをお願いしておきますわ。3年分となればそこそこな金額。経費削減ですわね」
「兄上に?離縁前提の結婚と思われるのではないか?」
「何を仰いますやら。昨今、天下りや無駄な経費は削減しようと民からの突き上げも御座います。自費で用意できるものを買って頂く必要は御座いませんし、何より妃の仕事はしないのですから支度金など不要です」
「君は何もいらないのか?」
「御心配は無用です。大事な事なのでもう一度言いますわね?必要なものは自分で買いそろえます。妃の仕事を全て放棄するのですからローブ・モンタントも必要御座いません」
「それは不味いだろう。そこまで一切仕事をしないと言うのか?」
「世の中、一事が万事とも申します。わたくしが妃の仕事をする事で意図せず何方かから褒められ、流石王子妃と称えられる事があってはなりません。その後に貴方の妃になるルシェル様の事を考えてくださいませ。前例があるから比較されるのですよ?今後の事を考えればハードルは極限まで下げる、いえ、ハードルを無くすくらいでないと乗り越えられませんからね」
「だ、だとしてもだな。一切しないというのも困るんじゃないか?」
「何も困りません。昨日まで殿下には妃がいなかったのに国政に滞りは御座いませんわ。離縁までのたった3年ですもの。一人で公務、乗り切りましょう!!殿下なら出来る!殿下なら出来る!殿下なら出来るッ!」
いけない。いけない。
つい力が入ってしまってファイティングポーズを取ってしまいましたわ。
「褒められるのがそんなに嫌なのか…」
「いいえ?称賛はとても嬉しいです。ですが手枷足枷となるような王子妃としての称賛は迷惑ですね」
「そんなハッキリ言わなくても」
「何を仰るのです?のらりくらりにあぁでもない、こぅでもないと引き延ばしされるよりずっと良いではありませんか」
「それはそうなんだが。判った。表立って何かすることも無ければ離縁もし易いだろうし‥好きなようにしてくれ」
さて、妃としての仕事もこれでしなくて良くなりました。
何も知らず、私が悠々自適に過ごすための免罪符を認めてくださるレアンドロ殿下には感謝しか御座いませんわね。
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