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第56話 予想外の事
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「はぁ。憂鬱」
「気を落とすな。直ぐに見つかるよ」
「だと良いんだけど。勿体ないけど宿屋暮らしにしようかな。タイタンさんも住み込み状態だし困るでしょ?」
「俺は全然。何の問題もないよ」
候補者とのデートが終われば毎日家の周囲をうろつくリュシアンのおかげで、アルベルティナはリュシアンの様子を見ながらコッソリ家に入らねばならないし、時に植え込みの間を潜って隠れながら家の中に飛び込む事もある。
1日と16日は姿が見えないけれど、それ以外は毎日なので地味にストレスが溜まっていく。
先代辺境伯夫妻はアルベルティナの引っ越しを認めてくれた。緊急を要するとして民間の貸家やアパートメントなどアルベルティナが良いと思う家や部屋に引っ越しをする費用も全面的に出してくれることも決まった。
そこまでは良かったのだが、廃棄魔石の事業が始まってちょっと予想外の事が起きた。
辺境に夫が兵士として着任をしたので家族で引っ越しをしてきた妻と子供。
いつまでになるのか期間が判らないので、頑張って働いてくれると思い兵士の妻を多く採用したら離婚する夫婦が激増してしまったのだ。
それまで夫の稼ぎで生活をして来た妻たちは自分でも稼げるとなれば子供を引き取り夫とは別居しながら離縁手続きをするようになってしまった。
「それだけ…”誰のおかげで食ってるんだ” とか言われちゃってた女性が多かったって事よね」
「騎士よりも兵士って生きるか死ぬかの本物の修羅場が多いからモラハラ気質になりやすいんだ」
「ソウナノ(ジト目)」
「お。俺は違うぞ?俺は…い、一途に妻だけを愛し続けるからな」
「結婚してないのにどうしてわかるの?」
「そ、それは…俺がそういう男だからだ!(キリッ)」
「はいはい。タイタンさんの奥さんになる人すごーい(棒)」
タイタンが、ではなくこれだけ夫を見限った女性が多いとなればどちらが説得力があるかの問題。アルベルティナは申し訳ないがタイタンの宣誓は信用できなかった。
――護衛としてはいつも一緒にいてくれるし申し分ないんだけどね――
離縁した、離縁手続き中の女性たちが貸家ならシェアしたり、アパートメントを借りてしまったので物件がまさかのゼロ状態。
クラークに頼もうかと思ったのだが、儲けた事で新しい社屋だけではなく社宅と従業員寮も建て替えを決定し、従業員寮に住んでいた世帯が新しい従業員寮や社宅が建設されるまで賃貸に引っ越しをして、あぶれた世帯を屋敷に住まわせたので空き部屋もない。
「自分が始めた事とは言え…辛いわ」
タイタンも「俺の家に来い」とは言えない。
兵士の宿舎に住まうタイタンは元々1人部屋をフェーベと使っている。
何よりその隊舎は先代辺境伯夫妻とリュシアンが住む屋敷と敷地は同じなのだ。
リュシアンを何とかしたいアルベルティナが更に住まう距離を縮めるのは無理だろう。
「仕方ないわ。どうせ…明後日は31日だし…10時から16時…地獄の6時間だわ」
「出来るだけ間に入るようにするよ」
「無理じゃない?はぁあ~誰がオークみたいな顔に特殊メイクしてくれないかな」
「自分で見た目を変えられないのか?」
「変える事は出来るのは着ている服とかなの。顔は変えられないわ」
「ベルでもできない事があるんだな」
「・・・・・」
アルベルティナはタイタンを凝視した。
無意識だったタイタンはどうしてアルベルティナが自分を見ているのか判らない。
「さっき…ベルって」
「ハッ!!」
タイタンは口を手で覆った。
声に出すつもりは全くなかった。自分の心の中での呼び名だったのについベルと呼んでしまったのだ。
「あ、あの…他意はなくてだな…」
「別にいいけど」
「いいのか?」
「私の名前。アルベルティナって長いでしょう?姓もないしティナでも良いけどタイタンさんは護衛だからベルって区別されれば解りやすいもの」
――そういう区別じゃない方が嬉しいんだけどな――
タイタンはベル呼びの許可を得たのは嬉しかったけれど、一瞬でも異性として意識をしてくれたのかな?と自惚れてしまった事に自分の太ももを軽く抓って罰を与えた。
「気を落とすな。直ぐに見つかるよ」
「だと良いんだけど。勿体ないけど宿屋暮らしにしようかな。タイタンさんも住み込み状態だし困るでしょ?」
「俺は全然。何の問題もないよ」
候補者とのデートが終われば毎日家の周囲をうろつくリュシアンのおかげで、アルベルティナはリュシアンの様子を見ながらコッソリ家に入らねばならないし、時に植え込みの間を潜って隠れながら家の中に飛び込む事もある。
1日と16日は姿が見えないけれど、それ以外は毎日なので地味にストレスが溜まっていく。
先代辺境伯夫妻はアルベルティナの引っ越しを認めてくれた。緊急を要するとして民間の貸家やアパートメントなどアルベルティナが良いと思う家や部屋に引っ越しをする費用も全面的に出してくれることも決まった。
そこまでは良かったのだが、廃棄魔石の事業が始まってちょっと予想外の事が起きた。
辺境に夫が兵士として着任をしたので家族で引っ越しをしてきた妻と子供。
いつまでになるのか期間が判らないので、頑張って働いてくれると思い兵士の妻を多く採用したら離婚する夫婦が激増してしまったのだ。
それまで夫の稼ぎで生活をして来た妻たちは自分でも稼げるとなれば子供を引き取り夫とは別居しながら離縁手続きをするようになってしまった。
「それだけ…”誰のおかげで食ってるんだ” とか言われちゃってた女性が多かったって事よね」
「騎士よりも兵士って生きるか死ぬかの本物の修羅場が多いからモラハラ気質になりやすいんだ」
「ソウナノ(ジト目)」
「お。俺は違うぞ?俺は…い、一途に妻だけを愛し続けるからな」
「結婚してないのにどうしてわかるの?」
「そ、それは…俺がそういう男だからだ!(キリッ)」
「はいはい。タイタンさんの奥さんになる人すごーい(棒)」
タイタンが、ではなくこれだけ夫を見限った女性が多いとなればどちらが説得力があるかの問題。アルベルティナは申し訳ないがタイタンの宣誓は信用できなかった。
――護衛としてはいつも一緒にいてくれるし申し分ないんだけどね――
離縁した、離縁手続き中の女性たちが貸家ならシェアしたり、アパートメントを借りてしまったので物件がまさかのゼロ状態。
クラークに頼もうかと思ったのだが、儲けた事で新しい社屋だけではなく社宅と従業員寮も建て替えを決定し、従業員寮に住んでいた世帯が新しい従業員寮や社宅が建設されるまで賃貸に引っ越しをして、あぶれた世帯を屋敷に住まわせたので空き部屋もない。
「自分が始めた事とは言え…辛いわ」
タイタンも「俺の家に来い」とは言えない。
兵士の宿舎に住まうタイタンは元々1人部屋をフェーベと使っている。
何よりその隊舎は先代辺境伯夫妻とリュシアンが住む屋敷と敷地は同じなのだ。
リュシアンを何とかしたいアルベルティナが更に住まう距離を縮めるのは無理だろう。
「仕方ないわ。どうせ…明後日は31日だし…10時から16時…地獄の6時間だわ」
「出来るだけ間に入るようにするよ」
「無理じゃない?はぁあ~誰がオークみたいな顔に特殊メイクしてくれないかな」
「自分で見た目を変えられないのか?」
「変える事は出来るのは着ている服とかなの。顔は変えられないわ」
「ベルでもできない事があるんだな」
「・・・・・」
アルベルティナはタイタンを凝視した。
無意識だったタイタンはどうしてアルベルティナが自分を見ているのか判らない。
「さっき…ベルって」
「ハッ!!」
タイタンは口を手で覆った。
声に出すつもりは全くなかった。自分の心の中での呼び名だったのについベルと呼んでしまったのだ。
「あ、あの…他意はなくてだな…」
「別にいいけど」
「いいのか?」
「私の名前。アルベルティナって長いでしょう?姓もないしティナでも良いけどタイタンさんは護衛だからベルって区別されれば解りやすいもの」
――そういう区別じゃない方が嬉しいんだけどな――
タイタンはベル呼びの許可を得たのは嬉しかったけれど、一瞬でも異性として意識をしてくれたのかな?と自惚れてしまった事に自分の太ももを軽く抓って罰を与えた。
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