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第24話 魔力切れの魔石
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板だけのスケットに乗った少年2人がアルベルティナとタイタンの横を追い越しそうになった時、先を進んでいた少年のスケットがザザザーっと底が地面を擦る音をさせて止まり、惰性で少年の体がバランスを失い前のめりになって転がった。
「あ~。ここで魔石切れかよ!」
「なんだよ。お前、充填しなかったのか」
「チッ。金が無かったんだよ」
アルベルティナは「どういうこと?」とタイタンに問うた。
タイタンによれば、スケーターもスケットも動力は魔石。始動させるのにも所定の場所に魔石を嵌め込まねばならないのだと言った。
「でも永久的に使える訳じゃなくて魔石は1年ごとに充填をしてもらわないといけないんだ」
「充填?」
「そう。何もしなくても、毎日何キロもスケーターに使っても魔石は年に1度、登録をした日に充填をしてもらわないといけないんだ。その他に3年に1度は新しい魔石にしなきゃいけないんだ」
「どうして?3回目は充填してくれないの?」
「魔石も疲労するからね。3回目となると割れちゃうんだ。充填する時に割れなくても2、3か月すると割れてしまう。まぁ…使用の限界だろうね」
その魔石があるので魔力を持たない者もスケーターなどを移動手段と出来るわけだが、料金がそれなりのお値段だった。
「新品の魔石は1個25万。年に1度の充填は8万必要なんだ」
「そんなに?!」
「あぁ。その他にスケーターやスケットの磁力も弱まるから補修点検は必要だし…次の魔石までに使う金は3年で50万くらいかな」
「ひゃぁぁ。じゃぁお給料のほとんどになっちゃうじゃない」
つい王都の給料感覚で言ってしまったが、タイタンは「そうでもない」と笑った。
王都では家令や執事クラスになると月給で30万以上だが、平民はおおよそ10万。
辺境領ではほぼ倍額が給料なので、真面目に働ければスケーターやスケットを購入して使用するくらいの金は捻出できる。
「あの子たちは…親に買って貰って魔石だけは自分で出せと言われてるんだろうな。そういう家は多いよ」
「そうなのね」
「バイトだと月に7、8万だから毎月2万でも残して行かないとあぁやって魔石切れ、つまり魔石の魔力が切れて動かなくなる奴が出るんだ」
「そうね。3年目は魔石を交換だものね」
自業自得と言えば自業自得だが、アルベルティナは少年たちが気の毒に思えた。
スケーターなどの下部に車輪でもついていれば動力は人力になるしスピードも落ちるけれど、惰性で進むことは出来るのに…と考えたが、それもタイタンに否定をされてしまった。
「馬車が珍しいって言ったろ?実は地面と車輪が接地する乗り物は基本禁止なんだ。石畳みに轍が出来てしまうからね」
「なるほどぉ。だから魔石で浮かせているのね」
「正しくは魔石は推進力だから磁力で浮かせている、だけどね」
便利なものは便利なりに色々とある物だと思い、少年たちの横を通り過ぎようとした時、魔石切れを起こした少年がもう使えなくなった魔石を腹立ちまぎれに放り投げた。
こんっこんっここーん。
軽い音を立てて石畳みの隙間に落ちた魔石をアルベルティナは拾い上げた。
「わぁ。綺麗ね。このままでも幾つか纏めて飾れそうね」
「ガラス玉みたいなものだよ。欲しかったら雑貨屋に行けばタダでもらえるよ」
「タダで?こんなに綺麗なのにもらえるの?」
「あぁ。魔石への充填は僅かでも魔力が残ってないと空っぽになるともう充填出来ないんだ。もう使い道もないから一昔前は装飾品に加工したりもしてたけど、ブームが過ぎれば欲しがる人もいないしね」
なんて勿体ないのだろうと思いつつ足を進め、タイタンと雑貨店の前を通りかかると確かに「ご自由に幾つでもどうぞ」と札がある木箱に過去に魔石だった綺麗な石がぎっしりと詰められていた。
1つ、2つではなく5つの木箱にぎっしりなので数は数万個以上。
「本当に貰ってもいいの?」
「あぁ。でも気をつけるんだ。持ち方によっては弾けるから怪我をする」
元々は魔獣の核である魔石はタイタンが言ったように指で抓むと、抓み方によってはパチンと弾けて粒子となってしまう。箱に詰める時や、店先に木箱を出す際の振動で幾つも弾けたのか周囲にはキラキラとした粒子が積もって光を反射していた。
「あれ?」
「どうしたんだ?」
「木箱を置いている周囲って…草が生えてない?」
「あぁ。元は魔獣の核だからね。草なんかの栄養になるのかもな」
アルベルティナの頭の中でパチンと纏まりきらなかった考えが弾けた。
「タイタンさん!無料よね?って事はこの木箱の魔石、全部貰っても無料?」
「あ、あぁ…量が量だから一応店主には声をかけないといけないだろうけど無料だな」
「よし!全部貰うわ」
「は、ハァァーッ?!」
驚くタイタンを横目にアルベルティナは腕をグッと胸の前で折り曲げてガッツポーズを取った。
「あ~。ここで魔石切れかよ!」
「なんだよ。お前、充填しなかったのか」
「チッ。金が無かったんだよ」
アルベルティナは「どういうこと?」とタイタンに問うた。
タイタンによれば、スケーターもスケットも動力は魔石。始動させるのにも所定の場所に魔石を嵌め込まねばならないのだと言った。
「でも永久的に使える訳じゃなくて魔石は1年ごとに充填をしてもらわないといけないんだ」
「充填?」
「そう。何もしなくても、毎日何キロもスケーターに使っても魔石は年に1度、登録をした日に充填をしてもらわないといけないんだ。その他に3年に1度は新しい魔石にしなきゃいけないんだ」
「どうして?3回目は充填してくれないの?」
「魔石も疲労するからね。3回目となると割れちゃうんだ。充填する時に割れなくても2、3か月すると割れてしまう。まぁ…使用の限界だろうね」
その魔石があるので魔力を持たない者もスケーターなどを移動手段と出来るわけだが、料金がそれなりのお値段だった。
「新品の魔石は1個25万。年に1度の充填は8万必要なんだ」
「そんなに?!」
「あぁ。その他にスケーターやスケットの磁力も弱まるから補修点検は必要だし…次の魔石までに使う金は3年で50万くらいかな」
「ひゃぁぁ。じゃぁお給料のほとんどになっちゃうじゃない」
つい王都の給料感覚で言ってしまったが、タイタンは「そうでもない」と笑った。
王都では家令や執事クラスになると月給で30万以上だが、平民はおおよそ10万。
辺境領ではほぼ倍額が給料なので、真面目に働ければスケーターやスケットを購入して使用するくらいの金は捻出できる。
「あの子たちは…親に買って貰って魔石だけは自分で出せと言われてるんだろうな。そういう家は多いよ」
「そうなのね」
「バイトだと月に7、8万だから毎月2万でも残して行かないとあぁやって魔石切れ、つまり魔石の魔力が切れて動かなくなる奴が出るんだ」
「そうね。3年目は魔石を交換だものね」
自業自得と言えば自業自得だが、アルベルティナは少年たちが気の毒に思えた。
スケーターなどの下部に車輪でもついていれば動力は人力になるしスピードも落ちるけれど、惰性で進むことは出来るのに…と考えたが、それもタイタンに否定をされてしまった。
「馬車が珍しいって言ったろ?実は地面と車輪が接地する乗り物は基本禁止なんだ。石畳みに轍が出来てしまうからね」
「なるほどぉ。だから魔石で浮かせているのね」
「正しくは魔石は推進力だから磁力で浮かせている、だけどね」
便利なものは便利なりに色々とある物だと思い、少年たちの横を通り過ぎようとした時、魔石切れを起こした少年がもう使えなくなった魔石を腹立ちまぎれに放り投げた。
こんっこんっここーん。
軽い音を立てて石畳みの隙間に落ちた魔石をアルベルティナは拾い上げた。
「わぁ。綺麗ね。このままでも幾つか纏めて飾れそうね」
「ガラス玉みたいなものだよ。欲しかったら雑貨屋に行けばタダでもらえるよ」
「タダで?こんなに綺麗なのにもらえるの?」
「あぁ。魔石への充填は僅かでも魔力が残ってないと空っぽになるともう充填出来ないんだ。もう使い道もないから一昔前は装飾品に加工したりもしてたけど、ブームが過ぎれば欲しがる人もいないしね」
なんて勿体ないのだろうと思いつつ足を進め、タイタンと雑貨店の前を通りかかると確かに「ご自由に幾つでもどうぞ」と札がある木箱に過去に魔石だった綺麗な石がぎっしりと詰められていた。
1つ、2つではなく5つの木箱にぎっしりなので数は数万個以上。
「本当に貰ってもいいの?」
「あぁ。でも気をつけるんだ。持ち方によっては弾けるから怪我をする」
元々は魔獣の核である魔石はタイタンが言ったように指で抓むと、抓み方によってはパチンと弾けて粒子となってしまう。箱に詰める時や、店先に木箱を出す際の振動で幾つも弾けたのか周囲にはキラキラとした粒子が積もって光を反射していた。
「あれ?」
「どうしたんだ?」
「木箱を置いている周囲って…草が生えてない?」
「あぁ。元は魔獣の核だからね。草なんかの栄養になるのかもな」
アルベルティナの頭の中でパチンと纏まりきらなかった考えが弾けた。
「タイタンさん!無料よね?って事はこの木箱の魔石、全部貰っても無料?」
「あ、あぁ…量が量だから一応店主には声をかけないといけないだろうけど無料だな」
「よし!全部貰うわ」
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