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王子殿下、心奪われて
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この回は第1王子レオン君の視点です
★~★
――なんだ。あれは――
それがアドリアナ・カレドス嬢をみた私の第一印象だった。
それまで令嬢と名がつく生き物は男に媚びへつらうか、マウントを取るかの2択。総じて身分が下の者には高圧的な言動で、楽しみと言えば茶、ドレスなどの衣装、宝飾品、菓子に流行りの歌劇、そして他人の噂。
それらがエネルギー源となって空っぽの中身をゴテゴテに着飾り、薄気味悪い笑いを浮かべるのが私の中の令嬢だった。
それが一気に覆された。
『わぁロカルドさん。オナモミだらけ~』
『ホントだ!くそっ!どこでこんなに!!』
『そこに入っちゃったからですよ。コセンダングサも沢山ついてる』
『そういうお嬢様も背中にオナモミが大量ですよ』
『嘘っ?!ホント?えっえっ?うわぁ…ポリー取るの手伝って』
手にはよく判らない雑草を持ち、土を平気で掘り、俗にいう「引っ付き虫」な雑草を取ってくれと笑顔を向ける令嬢、その人がアドリアナ・カレドス嬢だった。
血の繋がりがあるからではないが、アルフォンソが「惚れたな」とは感じていたが、あの眩しい笑顔を見ていれば判る。
私も目だけでなく、心を奪われてしまったからだ。
隣に立つアルフォンソを見れば見た事もない優しい目をして彼女を見ていた。
それがどうしようもなく私を苛立たせる。
そしてブラウリオに対し、侮蔑と怒りがわく。侮蔑はアドリアナ嬢ではなく阿婆擦れのソフィーリアを選んだことに対してだが、怒りはアドリアナ嬢に対して手をあげたこと。
アルフォンソには「特別扱いはしない」と言ってしまったが今更ながらに後悔が私を襲う。
人目でも彼女を先に、人となりを事前に知っていればあんな判断はしなかった。
そうそうにブラウリオに手を打っていれば。
あの時ならまだ彼女はブラウリオの婚約者だったので間に合ったのに。
ブラウリオよりも、アルフォンソよりも出会いが遅かったばかりに彼女はブラウリオの妻となってしまった。
王族である私が彼女を手に入れようと思えばもう側妃でしか側に置く事が出来ない。白い結婚とは言え婚姻歴があるのは事実で、身綺麗である事が証明をされても籍が汚れた彼女を正妃として、王妃として妃にする事は叶わなくなってしまった。
あの時、アルフォンソの言葉に乗せられた振りをして王子令を出していれば彼女を迎える事も出来たというのに、過去に戻れない事が悔しくて堪らない。
アルフォンソもアルフォンソだ。
もっと強く私に王子令を出せとしつこくしてくれていれば折れたかも知れないのに。
私の心が黒い靄で覆われそうになった時、彼女の声がした。
「アルフォンソ様。今日は早いお帰りなのですね」
「あぁ、そうそう。こちらは第1王子殿下でレオン殿下だ」
彼女の目が少し見開かれ、透き通ったオレンジの瞳に私が映るのが見える。
後手を取ったばかりにアルフォンソを介し紹介をしてもらう事になるとはなんとも口惜しい。
「レオンだ。アルフォンソから君のことは報告を受けているよ」
「だ、第1王子殿下…知らぬことはいえお目汚しをしてしまい申し訳ございません」
「連絡も無しに来たのは私だ。畏まらなくていい。どうだ。ロカ家は不便なのではないか?」
「いえ、とても良くしてくださいますので毎日が快適で御座います」
「そうか。それは何よりだ。後日城へも遊びに来るといい。母上も君のような人なら大歓迎だ」
「母う…とっ飛んでもございません!畏れ多い事で御座います」
同じ言葉を掛ければ二つ返事で「是非」と返してくる令嬢ばかりなのに固辞する彼女に健気さを感じ、私の心臓は早い拍動を繰り返す。
母上、つまり王妃に会わせたい。その言葉にアルフォンソの表情が厳しくなった。
王妃に会える人間などごく少数であり限られている。
側妃に考えていると読まれただろうが、構うものか。
同時に私の心に更に黒い靄がかかる。
――ブラウリオが儚くなれば寡婦。未婚の私の閨番に招いても面白い――
結婚をしていれば閨番は迎える事が出来ないが、未婚ならば寡婦となった夫人を呼ぶ事も出来る。子供が出来ぬよう措置をされる年齢だが、子供は居なくてもいいかとも思える。
その方が末永く側に置けるというものだ。
閨番はさておき、私は城に戻った後は父上に婚姻の話を進めてもらう事を決めた。
正妃となる女などどうでもいい。
既婚者で再婚となる彼女を迎えるにあたっては、こちらも既婚となっている必要がある。その為に結婚を早めに決めておけば3年後に側妃と出来る。
父上にアルフォンソが手を回す前に、こちらから仕掛けなければならないのだから。
★~★
――なんだ。あれは――
それがアドリアナ・カレドス嬢をみた私の第一印象だった。
それまで令嬢と名がつく生き物は男に媚びへつらうか、マウントを取るかの2択。総じて身分が下の者には高圧的な言動で、楽しみと言えば茶、ドレスなどの衣装、宝飾品、菓子に流行りの歌劇、そして他人の噂。
それらがエネルギー源となって空っぽの中身をゴテゴテに着飾り、薄気味悪い笑いを浮かべるのが私の中の令嬢だった。
それが一気に覆された。
『わぁロカルドさん。オナモミだらけ~』
『ホントだ!くそっ!どこでこんなに!!』
『そこに入っちゃったからですよ。コセンダングサも沢山ついてる』
『そういうお嬢様も背中にオナモミが大量ですよ』
『嘘っ?!ホント?えっえっ?うわぁ…ポリー取るの手伝って』
手にはよく判らない雑草を持ち、土を平気で掘り、俗にいう「引っ付き虫」な雑草を取ってくれと笑顔を向ける令嬢、その人がアドリアナ・カレドス嬢だった。
血の繋がりがあるからではないが、アルフォンソが「惚れたな」とは感じていたが、あの眩しい笑顔を見ていれば判る。
私も目だけでなく、心を奪われてしまったからだ。
隣に立つアルフォンソを見れば見た事もない優しい目をして彼女を見ていた。
それがどうしようもなく私を苛立たせる。
そしてブラウリオに対し、侮蔑と怒りがわく。侮蔑はアドリアナ嬢ではなく阿婆擦れのソフィーリアを選んだことに対してだが、怒りはアドリアナ嬢に対して手をあげたこと。
アルフォンソには「特別扱いはしない」と言ってしまったが今更ながらに後悔が私を襲う。
人目でも彼女を先に、人となりを事前に知っていればあんな判断はしなかった。
そうそうにブラウリオに手を打っていれば。
あの時ならまだ彼女はブラウリオの婚約者だったので間に合ったのに。
ブラウリオよりも、アルフォンソよりも出会いが遅かったばかりに彼女はブラウリオの妻となってしまった。
王族である私が彼女を手に入れようと思えばもう側妃でしか側に置く事が出来ない。白い結婚とは言え婚姻歴があるのは事実で、身綺麗である事が証明をされても籍が汚れた彼女を正妃として、王妃として妃にする事は叶わなくなってしまった。
あの時、アルフォンソの言葉に乗せられた振りをして王子令を出していれば彼女を迎える事も出来たというのに、過去に戻れない事が悔しくて堪らない。
アルフォンソもアルフォンソだ。
もっと強く私に王子令を出せとしつこくしてくれていれば折れたかも知れないのに。
私の心が黒い靄で覆われそうになった時、彼女の声がした。
「アルフォンソ様。今日は早いお帰りなのですね」
「あぁ、そうそう。こちらは第1王子殿下でレオン殿下だ」
彼女の目が少し見開かれ、透き通ったオレンジの瞳に私が映るのが見える。
後手を取ったばかりにアルフォンソを介し紹介をしてもらう事になるとはなんとも口惜しい。
「レオンだ。アルフォンソから君のことは報告を受けているよ」
「だ、第1王子殿下…知らぬことはいえお目汚しをしてしまい申し訳ございません」
「連絡も無しに来たのは私だ。畏まらなくていい。どうだ。ロカ家は不便なのではないか?」
「いえ、とても良くしてくださいますので毎日が快適で御座います」
「そうか。それは何よりだ。後日城へも遊びに来るといい。母上も君のような人なら大歓迎だ」
「母う…とっ飛んでもございません!畏れ多い事で御座います」
同じ言葉を掛ければ二つ返事で「是非」と返してくる令嬢ばかりなのに固辞する彼女に健気さを感じ、私の心臓は早い拍動を繰り返す。
母上、つまり王妃に会わせたい。その言葉にアルフォンソの表情が厳しくなった。
王妃に会える人間などごく少数であり限られている。
側妃に考えていると読まれただろうが、構うものか。
同時に私の心に更に黒い靄がかかる。
――ブラウリオが儚くなれば寡婦。未婚の私の閨番に招いても面白い――
結婚をしていれば閨番は迎える事が出来ないが、未婚ならば寡婦となった夫人を呼ぶ事も出来る。子供が出来ぬよう措置をされる年齢だが、子供は居なくてもいいかとも思える。
その方が末永く側に置けるというものだ。
閨番はさておき、私は城に戻った後は父上に婚姻の話を進めてもらう事を決めた。
正妃となる女などどうでもいい。
既婚者で再婚となる彼女を迎えるにあたっては、こちらも既婚となっている必要がある。その為に結婚を早めに決めておけば3年後に側妃と出来る。
父上にアルフォンソが手を回す前に、こちらから仕掛けなければならないのだから。
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