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第14話 結婚の話はなかった事に
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状況が悪くなるのはエトガーの勤める商会だけではなかった。
オイレト伯爵家に届けられる書類のほとんどが取引の縮小や中止を申し渡すもの。
中にはオイレト伯爵家の主力産業である羊毛。原材料となる羊の飼料を供給しないと通達するものもある。一大事以外の何物でもなかった。
羊毛という材料を卸し、布となれば諸外国に輸出する。そちらの取引先からも取引量を毎月15%削減し、年内には取引終了との知らせもある。
「どう言う事なんだ?」
オイレト伯爵には訳が分からない。
今まで支払いを滞った事はないし、取引先には便宜も図って関係は良好だったはず。
いきなり手のひらを返すような書面には頭を抱えるしかなかった。
そんな父親を見ていち早くオイレト伯爵家で状況を判断したのはアメリアだった。
アメリアとしては婿養子に来てくれる美丈夫なら誰でも良かった。
資産がそこそこある伯爵家と言えど、公爵家や侯爵家となると話を持ち込んでもかわされるばかり。
金で買えない爵位を持つ者は「血」を重んじるので平民の血が混じっていると敬遠するのだ。時代錯誤もいいところだが、では話を受けてもらうのもそれはそれでアメリアには問題。
高位貴族で年齢の見合う子息は不細工ばかりで話にならない。
アメリアは可愛いモノ、綺麗なモノが好きだった。
だからこの先社交界で「金で夫を買った」と言われたとしても相手は美丈夫だと決めていた。
目をつけていたのがファネン子爵家のエトガー。
次男なので家は兄が継ぐ。ファネン子爵家は裕福とは言えないけれど借金もなく婿入りに何の問題もない。
ただ1つ問題があるとすればエトガーには結婚の約束をした女性がいた事だった。
幾らなんでも25歳まで結婚を待たせていれば当然責任問題が出てくる。
障害があるとアメリアはエトガーがより欲しくなった。
取引をする事を検討していると言えばエトガーはやって来た。
恋人より若くて社交界では可憐な花と言われるアメリアが迫ればコロッと落ちた。
体の関係を持っても心配事はある。
子供が出来たというのは嘘だったが、エトガーは簡単に信じてくれた。
あの日だって渋るエトガーはアメリアに言った。
『何も言わなくても諦めてくれるさ。子供も出来たし事を荒げたくないんだよ』
納得できるはずがない。アメリアとしてはフライアに失望と絶望を感じて欲しかった。家が貧乏でアメリアの所有品をみて指を咥える令嬢の無様な姿は何度も見たけれど、恋人だと思っていたのは自分だけという絶望をした顔が見たかったのだ。
あの夜は滑稽だった。
直接見えるのは後ろ姿でも、ブースの入り口扉のガラスに映ったフライアが顔を歪めているのを間接的に見た時は漏らしそうになるくらい興奮した。
ブースを飛び出して行ったフライアにエトガーは席を立とうともしない。アメリアはエトガーがフライアから金を借りている事を知っていた。
遠回しに「結婚には何もかも清算してくれるのでしょう?」と「彼女に遺恨を抱かせるな」と言わんばかりに焚きつけた。
馬鹿なエトガーはフライアを追いかけた。
エトガーが出て行くとアメリアは声を上げて大声で笑った。
結局のところ、エトガーも自分の言いなり。
しかも言葉の意図をきちんと汲み取っていない事も明らか。
「ま、いいわ。結局男なんて見目が良くて隣にいてくれればいいんだもの」
全てをやり終えた顔でエトガーが戻ってくると美味しい食事を食べた。
――全部手に入れたわ。あの子爵令嬢の顔ったら。ざまぁね――
全てを手に入れたアメリアは良くない癖が出た。
手に入ると興味が無くなってしまうのだ。
美人は3日で見飽きるというが、手に入ってしまうと整った顔も色褪せて見える。その上、体の相性が良いかと言えば否。単調でワンパターン。面白みも目新しさも全くない。
我慢もせねばと思ったが、家が良くない方向になってくれば話は違う。
エトガーはオレイト家からの発注で売り上げがトップなだけ。オレイト伯爵家が抜ければビリかよくてもブービー。経営など任せるような頭の持ち主ではない。
――所詮は顔だけだし。もう要らないわ――
会うのも面倒だが、最後に1つ楽しみも出来た。
別れを告げた時に、エトガーがあの顔をどう歪ませるのだろうと。
エトガーを呼び出すと、エトガーは直ぐにやって来た。
「アリー。良かったよ。俺も話があったんだ」
間もなく職を失うエトガーは必死。
予定を早めて婿に入らないと住む家も無くなってしまう。
何より来月いっぱいで無職になる事をアメリアの父に知られるのは不味いと思っていた。
アメリアはそこまでは知らなかったが、エトガーに微笑んで告げた。
「ねぇ。私達、別れましょう」
「何を?!子供は?子供はどうするんだ」
「あ~。ごめんなさい。月のものが不順だっただけなの」
「そんな!今更だよ!子供が出来たというから結婚を――」
「あら?じゃぁ子供が出来なかったら私、捨てられちゃってたのね?」
「違うよ。そう言う事じゃない」
必死なエトガーを見てアメリアは恍惚とした表情になった。
かと言って、関係を戻す気はない。
こう言うのは1度切りだから楽しいのだ。
「誰か。お客様がお帰りよ。玄関までお送りして差し上げて」
「待ってくれよ!アリー!アリーッ!」
抓み出されるエトガーを見てアメリアは声を上げて笑った。
★~★
次は少し時間が空いて、20時10分です(*^-^*)
って言うか…癖って怖い…10分の更新になっちゃってるのに夕方気が付きました<(_ _)>
オイレト伯爵家に届けられる書類のほとんどが取引の縮小や中止を申し渡すもの。
中にはオイレト伯爵家の主力産業である羊毛。原材料となる羊の飼料を供給しないと通達するものもある。一大事以外の何物でもなかった。
羊毛という材料を卸し、布となれば諸外国に輸出する。そちらの取引先からも取引量を毎月15%削減し、年内には取引終了との知らせもある。
「どう言う事なんだ?」
オイレト伯爵には訳が分からない。
今まで支払いを滞った事はないし、取引先には便宜も図って関係は良好だったはず。
いきなり手のひらを返すような書面には頭を抱えるしかなかった。
そんな父親を見ていち早くオイレト伯爵家で状況を判断したのはアメリアだった。
アメリアとしては婿養子に来てくれる美丈夫なら誰でも良かった。
資産がそこそこある伯爵家と言えど、公爵家や侯爵家となると話を持ち込んでもかわされるばかり。
金で買えない爵位を持つ者は「血」を重んじるので平民の血が混じっていると敬遠するのだ。時代錯誤もいいところだが、では話を受けてもらうのもそれはそれでアメリアには問題。
高位貴族で年齢の見合う子息は不細工ばかりで話にならない。
アメリアは可愛いモノ、綺麗なモノが好きだった。
だからこの先社交界で「金で夫を買った」と言われたとしても相手は美丈夫だと決めていた。
目をつけていたのがファネン子爵家のエトガー。
次男なので家は兄が継ぐ。ファネン子爵家は裕福とは言えないけれど借金もなく婿入りに何の問題もない。
ただ1つ問題があるとすればエトガーには結婚の約束をした女性がいた事だった。
幾らなんでも25歳まで結婚を待たせていれば当然責任問題が出てくる。
障害があるとアメリアはエトガーがより欲しくなった。
取引をする事を検討していると言えばエトガーはやって来た。
恋人より若くて社交界では可憐な花と言われるアメリアが迫ればコロッと落ちた。
体の関係を持っても心配事はある。
子供が出来たというのは嘘だったが、エトガーは簡単に信じてくれた。
あの日だって渋るエトガーはアメリアに言った。
『何も言わなくても諦めてくれるさ。子供も出来たし事を荒げたくないんだよ』
納得できるはずがない。アメリアとしてはフライアに失望と絶望を感じて欲しかった。家が貧乏でアメリアの所有品をみて指を咥える令嬢の無様な姿は何度も見たけれど、恋人だと思っていたのは自分だけという絶望をした顔が見たかったのだ。
あの夜は滑稽だった。
直接見えるのは後ろ姿でも、ブースの入り口扉のガラスに映ったフライアが顔を歪めているのを間接的に見た時は漏らしそうになるくらい興奮した。
ブースを飛び出して行ったフライアにエトガーは席を立とうともしない。アメリアはエトガーがフライアから金を借りている事を知っていた。
遠回しに「結婚には何もかも清算してくれるのでしょう?」と「彼女に遺恨を抱かせるな」と言わんばかりに焚きつけた。
馬鹿なエトガーはフライアを追いかけた。
エトガーが出て行くとアメリアは声を上げて大声で笑った。
結局のところ、エトガーも自分の言いなり。
しかも言葉の意図をきちんと汲み取っていない事も明らか。
「ま、いいわ。結局男なんて見目が良くて隣にいてくれればいいんだもの」
全てをやり終えた顔でエトガーが戻ってくると美味しい食事を食べた。
――全部手に入れたわ。あの子爵令嬢の顔ったら。ざまぁね――
全てを手に入れたアメリアは良くない癖が出た。
手に入ると興味が無くなってしまうのだ。
美人は3日で見飽きるというが、手に入ってしまうと整った顔も色褪せて見える。その上、体の相性が良いかと言えば否。単調でワンパターン。面白みも目新しさも全くない。
我慢もせねばと思ったが、家が良くない方向になってくれば話は違う。
エトガーはオレイト家からの発注で売り上げがトップなだけ。オレイト伯爵家が抜ければビリかよくてもブービー。経営など任せるような頭の持ち主ではない。
――所詮は顔だけだし。もう要らないわ――
会うのも面倒だが、最後に1つ楽しみも出来た。
別れを告げた時に、エトガーがあの顔をどう歪ませるのだろうと。
エトガーを呼び出すと、エトガーは直ぐにやって来た。
「アリー。良かったよ。俺も話があったんだ」
間もなく職を失うエトガーは必死。
予定を早めて婿に入らないと住む家も無くなってしまう。
何より来月いっぱいで無職になる事をアメリアの父に知られるのは不味いと思っていた。
アメリアはそこまでは知らなかったが、エトガーに微笑んで告げた。
「ねぇ。私達、別れましょう」
「何を?!子供は?子供はどうするんだ」
「あ~。ごめんなさい。月のものが不順だっただけなの」
「そんな!今更だよ!子供が出来たというから結婚を――」
「あら?じゃぁ子供が出来なかったら私、捨てられちゃってたのね?」
「違うよ。そう言う事じゃない」
必死なエトガーを見てアメリアは恍惚とした表情になった。
かと言って、関係を戻す気はない。
こう言うのは1度切りだから楽しいのだ。
「誰か。お客様がお帰りよ。玄関までお送りして差し上げて」
「待ってくれよ!アリー!アリーッ!」
抓み出されるエトガーを見てアメリアは声を上げて笑った。
★~★
次は少し時間が空いて、20時10分です(*^-^*)
って言うか…癖って怖い…10分の更新になっちゃってるのに夕方気が付きました<(_ _)>
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