あなたの愛は深すぎる~そこまで愛してもらわなくても~

cyaru

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第26話   情報と違う

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トラフ領にやって来て2週間。

流石にマリアナも考える。「このままじゃいけない」と。

婚約をしてもケルマデックの1日が大きく変わるわけではない。領民たちと作業をするにあたって出発地が屋敷なので直行直帰に近いが、ケルマデックは朝早くから日が落ちる寸前まで領民たちと働く。

そして夜は湯を浴びた後、マリアナと食事をして執務をし、マリアナと一緒の寝台で眠る。

「何もしなくていいよ。好きな事をして過ごしてくれればいいんだ」

ケルマデックはそう言ってマリアナには力仕事も執務もさせてはくれない。

「このままじゃダメになっちゃう!」

マリアナは元々侯爵家は継がないが、母が権利を持つ子爵家を興す予定だった。その時に一緒に貰える領地では高値で取引される鉱物が産出していたので、どれだけの量を採掘し値崩れしないように出荷調整をすれば使用人も雇えて悠々自適に暮らせた。

しかしトラフ領は違う。領民の数も少ないし特産物がない上に収穫量も高くはない。
採れた野菜も他の領で同じ時期に収穫を迎えるものなので、喜ばしい大豊作ですら野菜の値が暴落し、せっかく作った野菜を土に埋めて肥料にする事もしばしば。

そんな時は出荷をすればするほど赤字になってしまうからである。

かと言って時季外れの野菜は全天候型、フルオープンの農地では育てる事が出来ない。

「どうすればいいかしら」

ウサギの治療はどうやらキツネに追われて足を噛まれたようだが、致命傷になるようなものではなく以前のように猛ダッシュは出来なくても、ぴょこぴょことその辺を散歩できるようにはなるだろうとヤギのお産を手伝う領民が教えてくれた。

ついでに薬草の煎じ方も教えてもらい、ウサギ用の薬になる野草はその辺にたくさん生えているので、ケルマデックは「手が汚れるからしなくていい」と言うがマリアナは手づから摘んできて煎じる。

ケルマデックが作ってくれたウサギ用の畑には領民が苗を持って来てくれたので、種と引き換えで現在、ナス、オクラ、パセリとブロッコリーそしてソラマメがすくすくと育っていた。

野菜に水やりをしながらふと思いついた。

「ララさん。領地を案内してくれませんか?」
「お嬢様、ララですララ!呼び捨てで良いんですよ」
「だったらお嬢様っていうのもやめて?」
「それは出来ません。旦那様に叱られます」


どうしても頼んで「マリアナさん」とララに呼んでもらったが即日で中止になった。ケルマデックがララに「名前で呼ぶのは俺の特権」と言ったとか言わなかったとか。

「私に直接言ってくれればいいのに」
「言うわけないです。旦那様はお嬢様にいいところだけ見せたいので」

そう、ケルマデックは使用人に注意を与える時もマリアナの前では絶対に行わない。理性が吹き飛んでいたのは領に来た初日にカムチャと畑で乱闘した時くらいである。


「過保護なのよ。私、それなりに頑丈に出来てるから大丈夫なのに」
「迫ってみたらどうです?」
「迫る?頭は撫でさせてもらってるけど」
「マジ…(遠くを見る細い目)」


ララにはマリアナに頭を撫でて貰っているケルマデックは想像が出来ない。てっきりカッコつけで椅子に足を組んで座り、テーブルに頬杖なんかついているのだと思っていた。

太もももかなり筋肉があるので足をスマートに組んで重なる脹脛ではない。片方の膝の上にヨイショともう片方の足を乗せる「4」の形になるオッサンの足組みであるが。

恋愛初心者のため、キメのポーズも「なんか違う感」が漂うのだが本人は結構頑張っているので誰もツッコまない。

「例えばですよ?例えば!」

これは例えなのだと強調するララだが、マリアナは思った。

――そういうの結構実体験が多いんだけど――

ジト目になるマリアナにララは「甘え方」を伝授した。

「頭を撫でさせてもらってるならイケると思いますよ」

ララが強く推すのでその夜、マリアナは試してみた。


★~★その夜★~★

静かに扉が開くと、そっと入室してくるケルマデック。執務を終えたこの時間はもうマリアナは寝息を立てているので忍び足で寝台に近づき、自分の陣地に潜り込む。

しかし、その日は違った。

「遅くまでお疲れ様です」
「うぇっ!!起きてたのか?」
「はい、寝られないので」
「寝られない…それはいけない。直ぐに医者を呼ぶ。隣の領まで行って医者を連れてくるから8時間は待てそうか?}
「そんなに待ってたら、待ってる間に寝てしまいます」


寝台に上半身だけを起こし、並んだ状態からマリアナは行動に出た。

バッと掛布を捲り上げ、有無を言わさずにケルマデックに前抱っこの姿勢を取った。マリアナの両手はケルマデックの首の後ろで交差する。

「なっなにをするんだ。まだ早い!」
「トラフ様、いえ、ケルマデック様」
「い、今…俺の名前を…うぐっ。待ってくれ…胸が焼けるように熱い」
「胸やけですか?ここ?このあたり?」

するりと解かれたマリアナの手がケルマデックの胸にあてられる。

「にゃ。にゃにをするんだ!夜の寝台で男にそんな事をしたらどうなるか解っているのか!」
「えぇ。解っていますとも!」

ララ情報によれば、
【手を当てるのは男性にも双璧の先に突起があるので敢えて!指で弾くように触れる】

言われた通りにマリアナはケルマデックの小さな突起を爪で引っ掻くようにピンと弾いた。

ララ情報によれば、
【そうするとくすぐったいので止めてくれという。止める代わりに条件を飲ませる】


しかし・・・ケルマデックは全くくすぐったい様子はなく、目の白目が血走って、息遣いが荒くなり苦しさすら見ているマリアナが感じ取ってしまう状態になった。

ガッと手首を掴まれて「止めなさい」と顔を背けられてしまった。

「ケルマデック様…いいえ‥ケリー」

ブワっと風すら伴って背けた顔がマリアナに向けられた。

「今、ケリーと…」
「はい。寝言でケリーと呼んでくれと時折仰っていたので」
「俺が寝言でそんな事を?!」
「はい、ここ3、4日は特に。あ、ウサギを連れ帰ってくれた日が一番多かったかしら」

ハッハッハ…ケルマデックの息の間隔は更に短くなりマリアナが「ケリー、大丈夫?」と声を掛けるとケルマデックの両腕がマリアナを強く抱きしめ、前抱っこの体勢が押し倒されてマリアナは組みしだかれてしまった。

――あれ?ララさん情報と違う?――
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