結婚式の前夜、花嫁に逃げられた公爵様の仮妻も楽じゃない

cyaru

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第16話  オクタヴィアンの断捨離

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ジョゼフィーヌの1件で気の置けない友人からは「忘れろ」「そんな女、コッチから捨ててやったと思え」と言われたがそんなに簡単に忘れられるなら苦労しない。

落ち着きは取り戻したけれど、今の今までオクタヴィアンはジョゼフィーヌの事を忘れられなかった。「これが未練って言うのかな」女々しいと思いながらも気持ちを断ち切る事は出来ず、「あんな高さから飛び降りたんだ。怪我をしていないかどうか。それだけでいい。知りたい」・・・など理由をつけてオーストン公爵家の使用人に命じ探させていた。

そう・・・ブリュエットにコソコソと覗き魔のような事をしながらも、本当についさっきまで「心の君」であるジョゼフィーヌの事を忘れたことはなかったし、オクタヴィアンの心の中の90%を占めていたのはジョゼフィーヌだった。


屋敷に戻ったオクタヴィアンは、寝台にダイブすると抱き枕を抱えて「う~!!」顔を埋めて声が漏れないように気を使いながら吠えた。

「なんだ!あの可愛さはなんだ?!にゃん♡…。くわぁぁ可愛いっ!!」

可視化した円グラフがあればまさにビフォーアフター。

ビフォーではジョゼフィーヌの事が90%、執務をしなきゃと5%、友人や周囲に申し訳ないと3%、ブリュエットに謝らないと!と2%だった。

それがアフターとなると95%がブリュエット。友人や周囲に「私の妻はこんなに可愛い」と自慢したい気持ちが5%。全てがブリュエット関連で埋まってしまい、ジョゼフィーヌの「ジ」、いや綴りの「J」でさえ心の片隅にも残っていなかった。

恋とは恐ろしい。切り替わったスイッチ。元に戻そうにもそこにはもうジョゼフィーヌを思わせる物は何一つなかた。


しかし、枕に顔を埋めて「可愛い!可愛いっ!」悶絶していると物理的に気が付いた。

「枕・・・臭っさ!」

そう言えばこの枕・・・イラネ。

むくりと起き上がって両端を抓むとポイ!!寝台という陣地から放り投げた。そして周囲をキョロキョロと見回す。

寝台から出ると先ず棚や壁に飾っていたジョゼフィーヌからの贈り物を無造作に集め出した。

扉を開けて廊下に向かって「誰か!ゴミを入れる箱か袋を持って来てくれないか」声を掛けると、部屋にある全ての引き出しも開けて、中にあるジョゼフィーヌ関連のグッズを床に放り投げる。

使用人が「ごみ入れ」の木箱を持ってやってきた時には部屋の数カ所に小さなが出来ていた。

「あの若旦那様、持ってきたんですけど」
「ありがとう。要らないものを整理してるんだ。床に盛っている物が要らないものだから処分してくれ。その中に必要なものがあったら皆で分けてくれていいよ」


10年以上に及ぶ婚約期間。明らかにジョゼフィーヌではなくジョゼフィーヌの両親である侯爵夫妻が選んであろう品もあるが、気持ちの切り替えがスパーン!!と出来てしまったオクタヴィアンは全て捨てようと思ったのだ。

「こんなのが部屋の中にあるからダメだったんだ。うん。なんか気持ちいいぞ」

断捨離をするとスッキリすると、結婚を前に隠れて付き合っていた愛人を断捨離した友人の言葉の通り不要だと思う物を捨てると気持ちが良い。

部屋の中にジョゼフィーヌ関連のグッズは使用人が持ってきたごみ入れ用の木箱では足らず、なんと7個も満杯になる量があった。

壁に掛けてあったジョゼフィーヌの肖像画も「本当に良いんですか?」と使用人がオクタヴィアンに問えば「いいよ」と答える。

肖像画のジョゼフィーヌはまだ5、6歳の幼女だが使用人が躊躇ったのはモデルがジョゼフィーヌだからではない。その絵を描いたシャメールという画家。ジョゼフィーヌの肖像画がほぼ最後の仕事だったのだが現在は鬼籍に入っている。芸術家あるあるで亡くなってからその価値が見出されて現在ではポストカードサイズの絵が1億は下らない価格で取引をされているのだ。

人物画は苦手だったようで生涯に2,3点あるかどうかの1点が目の前にある。

使用人達にも欲がある。「この絵を売り飛ばせば買い叩かれても10億」になる。なんせ公爵家に飾ってあって、絵の隅には署名もあるし、ジョゼフィーヌの実家がシャメールのパトロンだったのだから真贋鑑定など不要。

しかし!絵は色んな所有者を転々とする傾向があり、「必要なものがあったら分けて良い」そんな言葉を真に受けてしまったら大変なことになる。捨てたはずの物がまだ現存をするとなったらとんでもないブーメランになって返ってきてしまうじゃないか。

「捨てろっと言われても!」
「ばれたら怖すぎる!!」

使用人達の心の中には激しいブーメランハリケーンが吹き荒れる。

それだけではない。ジョゼフィーヌとお揃いだと揃えた宝飾品。ここにあるのは男性用だけだがもし!もしだがジョゼフィーヌが持っている宝飾品と対で揃える事が出来ればこれまた価値の出てしまう宝飾品がずらり。

オクタヴィアン用の物だけでも触れるのに新品の真っ白い手袋をしてしまう超高級品。
宝飾品のみでなく、個々を収納しているケースにだって単品で給料の何倍もの値がつく。

そんな中で唯一と言っていい「素朴な品」がオクタヴィアンの抱いていた抱き枕。
刺繍を覚えたてのジョゼフィーヌが作った不格好な1品で、「洗うの禁止」としているのでオクタヴィアンの頭皮の皮脂で汚れている。

それだけは躊躇うことなくゴミ箱に入れることは出来たが、その他の品は丁寧に木箱に詰めて使用人控室に持ち込んだ。

ネコババをするのではない。
言葉通りに「皆で分けよう」と考えたからだが全てを売り払い均等に売り上げを分配したら、公爵家でも頭一つ抜けた家令の給料62年分となる事に使用人達の心臓は止まりそうになったのは言うまでもない。
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