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第13話 デッキブラシは最強アイテム
夜明けが午前8時とは言え、身についた習慣でトゥトゥーリアはまだ窓の外も暗い午前5時には目が覚めた。眠るのが深夜になろうと3時を過ぎていようと目が覚める。
侯爵家ではそうしないと食事が貰えなかった。
侯爵一家の目を盗んで使用人達からパンなどをもらったりしていたので生きるために身についた習慣でもある。
「ふぁぁ。良く寝た~。やっぱり柔らかい寝具は違うわね。昨日もだったけど体が何処も痛くないわ」
夏は良いのだが寒い季節になると敷布のない寝台はずっと寒いまま。掛布も年中シーツが1枚なのでとても薄く、住み込みに使用人は給金が出ると、真っ先に寝具を揃え始めるがトゥトゥーリアには給金がなかった。
エジェリナのお古のドレスが活用できないかと試した事もあったが、異様にボタンやガラス玉が付けられていて外すと布が破れてしまう。
何よりエジェリナに貰ったドレスを寝具にしている事が見つかると厳しく折檻をされたので使い勝手も悪い事だしトゥトゥーリアは丸まって眠るようにしていた。
雪の降る本当に凍りそうな夜は厨房の竈の前で座って朝を迎えた事もある。
「手も足も伸ばして寝られるなんて最高!!」
ランプに火を入れる前にトゥトゥーリアは部屋のカーテンを開けた。
「ん?あれはなんだろう?」
庭の植え込みに大きな岩があるように見えた。
「掃除をしてた時にはあんなの無かったと思うんだけど」
外はまだ真っ暗。それでも暗がりに目が慣れているので黒い塊が見えたのである。じぃぃっと見ていると‥
「動いた?!」
そっと窓から離れ、部屋から出るとトゥトゥーリアは昨日、下男達と共に片付けたデッキブラシを手に取り、そっと庭に出た。
ゆっくり、ゆっくりと近寄るとやはり黒い物体はモゾモゾと動いていた。それが「人」だと判るまで時間はかからない。ここは王家が所有する建物であり敷地なので、トゥトゥーリアは思い切りデッキブラシを振り被った。
「テェェェイッ!!」 ドゴッ!! 「ウギャっ!!」
初打撃は見事に命中。どうやら寝袋ですっぽりと頭まで被っているらしいので相手が反撃をしてくる前にとトゥトゥーリアはもう一度振り被った。
「てやぁぁぁっ!!」 ガツッ!!
コロンと転がった寝袋にデッキブラシは地面を叩いた。
「待って!待ってくださぁい!!」
寝袋からくぐもった声が聞こえてきたが、「待つわけないでしょう!」とまた振り被った。
「執事のエルドさんから頼まれたんです!!妃殿下を護衛しろとぉぉぉ!!」
「え?護衛?」
「凄く怪しく見えると思いますが、怪しい者じゃないんですぅぅ」
「怪しいわよ!!本当の事を言わないと、この御不浄掃除専用デッキブラシでお仕置きよ!」
――マジか?!良かったぁ…寝袋から出る前で――
護衛の目にはデッキブラシの先端が今まで見て来た中で最強いや最恐の武器にしか見えなかった。これほどまでに打撃を受けることもだが、受け身ですら躊躇う武器を見たことがない。
デッキブラシでツンツンと寝袋にくるまった男性を突っつきながらトゥトゥーリアは聞く。
「エルドさんって殿下と一緒にいる人?」
「そうです!左目にモノクルしてる40代の男性です!!」
「もしかして鍵とか食料とかも手配してくれてたとか?」
「私は護衛なので宮からついて来ただけです!ですが色々なものがあったとすればエルドさんだと思います!」
――え?ずっと監視されてたってこと?湯殿も?――
石鹸を泡立てるのが面白くてついつい長湯をしてしまったが、それも織り込み済みだとなると恥ずかしさが込み上げてくる。
しかし、こんな場所で寝るとなれば風邪をひいてしまうかも知れないが、それよりも庭に護衛がいると思うとおちおち窓も開ける事が出来ない。
「判りました・・・そうねぇ‥じゃ、手伝ってくださる?」
「手伝う?何をお手伝いすれば宜しいでしょう」
「朝食の準備よ。私は井戸で顔を洗ってくるから竈に火を起こしてくれる?夕べの火種が残ってると思うから直ぐに点くと思うけど」
「そんな事で宜しいんですか?うわっ」
トゥトゥーリアは強めにデッキブラシで護衛を押した。
「朝食は大事なのよ?昼と夜よりも朝食が一番大事なんだから!」
「そ、そうですよね」
「はい、寝袋から出る!今夜からは使用人さん用の控室で寝てくれる?」
「そんな!!叱られてしまいます!」
「何処の世界に寝台で寝て叱る人がいるの?そもそもで!こんな所で寝てるから!見てごらんなさい!折角の新品だったのに…これじゃ折角のデッキブラシが・・・ぐすん。デッキブラシは武器じゃないのよ?」
――デッキブラシは新品未使用?!――
護衛は思わず手を合わせ神に感謝を捧げた。このままでは寝袋も買い直し必須かと諦めていた心と財布の中身に光が差し込んだような気さえする。
「早く寝袋から出なさい!」とデッキブラシでツンツンしてくるトゥトゥーリアに、2歳になる娘も大きくなればこうなるのかなぁと我が子を重ねた。
侯爵家ではそうしないと食事が貰えなかった。
侯爵一家の目を盗んで使用人達からパンなどをもらったりしていたので生きるために身についた習慣でもある。
「ふぁぁ。良く寝た~。やっぱり柔らかい寝具は違うわね。昨日もだったけど体が何処も痛くないわ」
夏は良いのだが寒い季節になると敷布のない寝台はずっと寒いまま。掛布も年中シーツが1枚なのでとても薄く、住み込みに使用人は給金が出ると、真っ先に寝具を揃え始めるがトゥトゥーリアには給金がなかった。
エジェリナのお古のドレスが活用できないかと試した事もあったが、異様にボタンやガラス玉が付けられていて外すと布が破れてしまう。
何よりエジェリナに貰ったドレスを寝具にしている事が見つかると厳しく折檻をされたので使い勝手も悪い事だしトゥトゥーリアは丸まって眠るようにしていた。
雪の降る本当に凍りそうな夜は厨房の竈の前で座って朝を迎えた事もある。
「手も足も伸ばして寝られるなんて最高!!」
ランプに火を入れる前にトゥトゥーリアは部屋のカーテンを開けた。
「ん?あれはなんだろう?」
庭の植え込みに大きな岩があるように見えた。
「掃除をしてた時にはあんなの無かったと思うんだけど」
外はまだ真っ暗。それでも暗がりに目が慣れているので黒い塊が見えたのである。じぃぃっと見ていると‥
「動いた?!」
そっと窓から離れ、部屋から出るとトゥトゥーリアは昨日、下男達と共に片付けたデッキブラシを手に取り、そっと庭に出た。
ゆっくり、ゆっくりと近寄るとやはり黒い物体はモゾモゾと動いていた。それが「人」だと判るまで時間はかからない。ここは王家が所有する建物であり敷地なので、トゥトゥーリアは思い切りデッキブラシを振り被った。
「テェェェイッ!!」 ドゴッ!! 「ウギャっ!!」
初打撃は見事に命中。どうやら寝袋ですっぽりと頭まで被っているらしいので相手が反撃をしてくる前にとトゥトゥーリアはもう一度振り被った。
「てやぁぁぁっ!!」 ガツッ!!
コロンと転がった寝袋にデッキブラシは地面を叩いた。
「待って!待ってくださぁい!!」
寝袋からくぐもった声が聞こえてきたが、「待つわけないでしょう!」とまた振り被った。
「執事のエルドさんから頼まれたんです!!妃殿下を護衛しろとぉぉぉ!!」
「え?護衛?」
「凄く怪しく見えると思いますが、怪しい者じゃないんですぅぅ」
「怪しいわよ!!本当の事を言わないと、この御不浄掃除専用デッキブラシでお仕置きよ!」
――マジか?!良かったぁ…寝袋から出る前で――
護衛の目にはデッキブラシの先端が今まで見て来た中で最強いや最恐の武器にしか見えなかった。これほどまでに打撃を受けることもだが、受け身ですら躊躇う武器を見たことがない。
デッキブラシでツンツンと寝袋にくるまった男性を突っつきながらトゥトゥーリアは聞く。
「エルドさんって殿下と一緒にいる人?」
「そうです!左目にモノクルしてる40代の男性です!!」
「もしかして鍵とか食料とかも手配してくれてたとか?」
「私は護衛なので宮からついて来ただけです!ですが色々なものがあったとすればエルドさんだと思います!」
――え?ずっと監視されてたってこと?湯殿も?――
石鹸を泡立てるのが面白くてついつい長湯をしてしまったが、それも織り込み済みだとなると恥ずかしさが込み上げてくる。
しかし、こんな場所で寝るとなれば風邪をひいてしまうかも知れないが、それよりも庭に護衛がいると思うとおちおち窓も開ける事が出来ない。
「判りました・・・そうねぇ‥じゃ、手伝ってくださる?」
「手伝う?何をお手伝いすれば宜しいでしょう」
「朝食の準備よ。私は井戸で顔を洗ってくるから竈に火を起こしてくれる?夕べの火種が残ってると思うから直ぐに点くと思うけど」
「そんな事で宜しいんですか?うわっ」
トゥトゥーリアは強めにデッキブラシで護衛を押した。
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「そ、そうですよね」
「はい、寝袋から出る!今夜からは使用人さん用の控室で寝てくれる?」
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「何処の世界に寝台で寝て叱る人がいるの?そもそもで!こんな所で寝てるから!見てごらんなさい!折角の新品だったのに…これじゃ折角のデッキブラシが・・・ぐすん。デッキブラシは武器じゃないのよ?」
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