王子殿下には興味がない

cyaru

文字の大きさ
15 / 43

第14話   立ちはだかる試練

「護衛さんは、2歳の娘さんがいるの?」
「はい。グローリアと言うんですけど可愛いんですよ~」
「なら、こんな事してないで夜は帰らないと!奥様も心配しているでしょう?子供も・・・私はいないから判らないけど、夜泣きもあって大変だと聞くわよ?」

――でも、こういう仕事なんですよ――

とはいえず、護衛はヘラっと笑う。

竈に火を起こしたあと、昨夜のスープを温めて追加で野菜を投入。
「ついでだから一緒に食べましょう」と誘われて何故か第2王子妃と朝食を共にする護衛。

なんと報告をしようかと考えていると、トゥトゥーリアが言った。

「変わった事は何もないって言っといてくださると助かるわ」
「それはよぅ御座いました。ご不便は?」
「護衛がいる事かしら」
「そ、そうですよね。アハハ・・・アハハ」

朝食が終わると、食材の中に牛乳がない事に気が付くトゥトゥーリア。
流石に牛は飼えないので、牛乳を買うしかないが先立つ物がない。

報告に宮へ戻るという護衛に頼みごとをしたトゥトゥーリア。

「何でしょう?」
「予定表を頂いてほしいの。夜会とか慰問もあるって言ってたので」
「まさかずっとここに?いやいや、宮に帰ればいいじゃないですか」
「話をする前に既に不機嫌だし、理不尽な事を求められても応える事なんて出来ないもの。2年で離縁してくれるって言ってたんだもの。離縁するまでここでいいわ。ダメって言うなら・・・住み込みで働けるところを探すしかないわね」

護衛は聞いてはいけないような事を聞いた気がして、言葉を返せなくなった。

「どうされたの?」
「い、いえ。予定表ですね。畏まりましとワァッ??」

突然頬をプニッとつままれた護衛は久しぶりの事に頬を赤くする。
以前に頬を抓られたのは妻と結婚する前。淡い思い出であるがここでは省略。

「この家にいる時はそういう言葉使いは禁止!引継ぎの方にも伝えて?」
「か・・・判りました」

護衛が宮に向けて出て行ったあと、トゥトゥーリアは「さて!」腕まくりをして掃除を始めたのだった。


家中の窓を開けてハタキで埃をパンパン!
庭の草を千切って水で濡らし、軽く水気を切ると床にばらまき、箒で集める。

小さな家だし、昨日のうちに寝室とした部屋と使用人の仮眠室は掃除を終えていたのでさほどに手間もかからない。元々掃除はバリバ侯爵家にいた時に使用人としても扱われていたので手順も覚えている。

下男が直してくれた井戸の滑車とロープも使いやすい。

「今のうちに水瓶に水を入れておこうかしら」

今夜は護衛もいないのだから、昨日のように存分にバスタブで石鹸遊びが出来る。
無駄使いは出来ないけれど、1日や2日は大目に見て欲しいと思うのも欲張りにはならないだろうと井戸からせっせと水を汲み上げ、水瓶に溜めていく。

竈にも枯れ木や落ち葉を放り込み、湯を沸かし湯殿のバスタブに溜めていく。
今まで着ていたワンピースからしみ出した汚れに目を疑ったが、「洗えばいいの!洗えば!」と元々は濃紺だったのに今では青っぽいベージュになったワンピースも風にたなびく。


「御不浄と厨房はお天気を見ながら順番にしなくちゃ」

全てを1日で終わらせる事も出来るのだが、それは「掃除」に限ってのこと。トゥトゥーリアにはその他にもしなければならない事があった。


厨房で調理台の上に野菜を並べていく。
朝食に使うために切った物から使わねばならないが、根菜類は日持ちをするけれど葉物野菜はそうもいかない。


「白菜と・・・キャベツにほうれん草は早めに食べないといけないわね」

朝晩が冷えると言っても凍るほどではないし雪も降り始めるのは来月。
雪が降り始めれば積もった雪の中に野菜を埋めておけばもう数日日持ちはするが、今はまだその時期ではないので傷んで腐る前に食べるのが最善策。

副菜となる野菜をどう使うかは決まったのだが、トゥトゥーリアの前に最大の難問が立ちはだかった。

「困ったわ。これじゃぁパンが焼けない」

小麦の入った袋の口をギュッと握る。ネジネジと絞るように袋の口を捩じるがいい知恵が浮かんでこなかった。
感想 124

あなたにおすすめの小説

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

それは私の仕事ではありません

mios
恋愛
手伝ってほしい?嫌ですけど。自分の仕事ぐらい自分でしてください。

そう言うと思ってた

mios
恋愛
公爵令息のアランは馬鹿ではない。ちゃんとわかっていた。自分が夢中になっているアナスタシアが自分をそれほど好きでないことも、自分の婚約者であるカリナが自分を愛していることも。 ※いつものように視点がバラバラします。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜

まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。 ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。 父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。 それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。 両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。 そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。 そんなお話。 ☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。 ☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。 ☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。 楽しんでいただけると幸いです。

侯爵家に不要な者を追い出した後のこと

mios
恋愛
「さあ、侯爵家に関係のない方は出て行ってくださる?」 父の死後、すぐに私は後妻とその娘を追い出した。