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第二章~王子殿下は興味「しか」ない
もしかしてとヴァレンティノは思う
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夜会が終わると各国との折衝が始まり数日気忙しい日々を送る事になったヴァレンティノは宮での朝食を食べながらトゥトゥーリアの事を考える。
「もしかして私は夫であり夫ではないと認識されているのかな」
宮の使用人達は口には出せない禁断の本心を心で盛大に叫ぶ。
――今更ですよね――
経理を担当している執事も金額面だけ見ても過去の「妃」に対しての費用がダントツに少ない事を危惧し、「この際だから時給と称し大幅に支給金をあげてみては?」と進言した事があっただけにひときわ大きく頷く。
――今の関係は雇用関係に近いですよぅ!!――
初夜のやらかしの代償は大きい。
静かな朝食が終わると前日貸し出したボナパルト号の嘶きが聞こえる。
暴れている訳ではなく、トゥトゥーリアを背に乗せているボナパルト号の「どやっ!」自慢である。飼い主であるヴァレンティノは完全にボナパルト号に舐められてしまっているのだが、トゥトゥーリアが「ヒンヒンしちゃダメでしょう?」と言えば大人しくなる。
「もしかして私よりもリアに懐いているのか?」
宮の使用人達は口には出せない禁断の本心を心で盛大に叫ぶ。
――当然ですよね――
ヴァレンティノは実はあまり騎乗するのは好きではないし、どちらかと言えば苦手。なので馬は怖いと言えば怖いのであまりボナパルト号と接してこなかった過去もある。
専属執事は食後の珈琲を飲み終わったヴァレンティノに口元を拭くナフキンを差し出しながら静かに告げた。
「言葉は口に出さずとも動物は感じ取ります」
「昨夜何かあったのか?」
「たまには仲良しさんになろうと妻を誘ったのですが、断られまして。飼い犬が私を慰めてくれました」
「飼い犬‥‥(ジト目)」
「変な想像はしないように。我が家の愛犬、リリーだけが私を慰めてくれるのです。言葉は通じなくても動物は心を読みますから。妃殿下はボナパルト号には絶対の信頼、そして人と馬という種別を超えた友情を持たれているようですのでボナパルト号も感じ取っているのでしょう。友情に必要なのは時間ではありません。心です」
「心か・・・」一番難しいなと思いつつヴァレンティノは復唱した。
「本日は執務も御座いますが、街に出ては如何でしょう」
「街に?」
「えぇ。間もなく生誕祭です。夜には大通りに松明を幾つも連ねて灯していて、恋人たちには人気のようです。私も生誕祭の当日には子供を両親に預けて妻と歩いてみようと思っているのですよ」
昼には灯りはないけれど、防犯面からヴァレンティノトゥトゥーリアが出歩けるのは日中しかない。執事は慌ただしい中にも生誕祭独特の雰囲気もあるから行って来いとヴァレンティノに勧めた。
「そうだな。行ってみるか」
「えぇ。是非」
★~★
ボナパルト号を馬丁に預けたトゥトゥーリア。
今日は執務を手伝う日なので感覚的には「出勤」である。
ヴァレンティノの待つ執務室にやって来た。
「おはようございます。今朝も寒いですね」
「おはようリア。頬が真っ赤だ」
「マフラーを忘れちゃったんです。ボナパルト号はかけっこが得意なので」
「かけっこ・・・」
「はい、その時は前傾姿勢でしっかりと鬣の辺りに顔を埋めて――」
「おい!それでは前を見ていないのではないか?!」
「ボナパルト号が見てますよ?」
いつもなら「そうだな」とトゥトゥーリアの意見に無条件賛同なのだが、危険である。
「ボナパルト号任せになるのは危険だ。そう言う事なら勤務時間も短くして朝はもっとゆっくり――」
「以後気を付けますわ!時短勤務は不要です!」
時短勤務になると稼ぎが少なくなるトゥトゥーリアは即答した。
その事がヴァレンティノには少し寂しく思えて、哀し気に目を伏せた。
「殿下っ!感傷に浸っている場合ではありませんよ!」
執事は空気を読まず発破をかける。
おそらくはこの夫婦の関係改善を一番に願っている専属執事。
双方の性格も把握しているので「気を使う」ような思いを持っているとトゥトゥーリアには伝わらないとヴァレンティノの背を押す。
「(ぼそっ)マフラー。買ってあげればどうです?」
専属執事は知っている。トゥトゥーリアのマフラーは嫁いできた時から持っていたもので正直言って「お妃様がこれを?!」と驚くようなボロボロのマフラー。
ただ、バリバ侯爵家でよくしてくれた使用人から貰ったので大事にしている品だった。
「そうだな」ヴァレンティノもこうなってしまったのは初夜の愚かな言動が全ての根源。そうしたのはヴァレンティノ本人なので、この際だ!と腹を括った。
「リア。今日は街に行く」
「街に?視察ですか?」
「さぁ?どうだろう。行ってみればわかる」
「そうなんですか・・・判りました」
与えられた席に座り、今日の執務をしようとインクなどを準備していたトゥトゥーリアはまだ引いたままの引き出しに出したばかりのインクやペンを仕舞った。
★~★
この後の公開時間です
前日夜になるかも~とお知らせしましたが少し早めました<(_ _)>
12時10分
15時10分
18時10分
21時10分(ラストです)
22時の休憩は取れそうにないので…( ノД`)シクシク…
「もしかして私は夫であり夫ではないと認識されているのかな」
宮の使用人達は口には出せない禁断の本心を心で盛大に叫ぶ。
――今更ですよね――
経理を担当している執事も金額面だけ見ても過去の「妃」に対しての費用がダントツに少ない事を危惧し、「この際だから時給と称し大幅に支給金をあげてみては?」と進言した事があっただけにひときわ大きく頷く。
――今の関係は雇用関係に近いですよぅ!!――
初夜のやらかしの代償は大きい。
静かな朝食が終わると前日貸し出したボナパルト号の嘶きが聞こえる。
暴れている訳ではなく、トゥトゥーリアを背に乗せているボナパルト号の「どやっ!」自慢である。飼い主であるヴァレンティノは完全にボナパルト号に舐められてしまっているのだが、トゥトゥーリアが「ヒンヒンしちゃダメでしょう?」と言えば大人しくなる。
「もしかして私よりもリアに懐いているのか?」
宮の使用人達は口には出せない禁断の本心を心で盛大に叫ぶ。
――当然ですよね――
ヴァレンティノは実はあまり騎乗するのは好きではないし、どちらかと言えば苦手。なので馬は怖いと言えば怖いのであまりボナパルト号と接してこなかった過去もある。
専属執事は食後の珈琲を飲み終わったヴァレンティノに口元を拭くナフキンを差し出しながら静かに告げた。
「言葉は口に出さずとも動物は感じ取ります」
「昨夜何かあったのか?」
「たまには仲良しさんになろうと妻を誘ったのですが、断られまして。飼い犬が私を慰めてくれました」
「飼い犬‥‥(ジト目)」
「変な想像はしないように。我が家の愛犬、リリーだけが私を慰めてくれるのです。言葉は通じなくても動物は心を読みますから。妃殿下はボナパルト号には絶対の信頼、そして人と馬という種別を超えた友情を持たれているようですのでボナパルト号も感じ取っているのでしょう。友情に必要なのは時間ではありません。心です」
「心か・・・」一番難しいなと思いつつヴァレンティノは復唱した。
「本日は執務も御座いますが、街に出ては如何でしょう」
「街に?」
「えぇ。間もなく生誕祭です。夜には大通りに松明を幾つも連ねて灯していて、恋人たちには人気のようです。私も生誕祭の当日には子供を両親に預けて妻と歩いてみようと思っているのですよ」
昼には灯りはないけれど、防犯面からヴァレンティノトゥトゥーリアが出歩けるのは日中しかない。執事は慌ただしい中にも生誕祭独特の雰囲気もあるから行って来いとヴァレンティノに勧めた。
「そうだな。行ってみるか」
「えぇ。是非」
★~★
ボナパルト号を馬丁に預けたトゥトゥーリア。
今日は執務を手伝う日なので感覚的には「出勤」である。
ヴァレンティノの待つ執務室にやって来た。
「おはようございます。今朝も寒いですね」
「おはようリア。頬が真っ赤だ」
「マフラーを忘れちゃったんです。ボナパルト号はかけっこが得意なので」
「かけっこ・・・」
「はい、その時は前傾姿勢でしっかりと鬣の辺りに顔を埋めて――」
「おい!それでは前を見ていないのではないか?!」
「ボナパルト号が見てますよ?」
いつもなら「そうだな」とトゥトゥーリアの意見に無条件賛同なのだが、危険である。
「ボナパルト号任せになるのは危険だ。そう言う事なら勤務時間も短くして朝はもっとゆっくり――」
「以後気を付けますわ!時短勤務は不要です!」
時短勤務になると稼ぎが少なくなるトゥトゥーリアは即答した。
その事がヴァレンティノには少し寂しく思えて、哀し気に目を伏せた。
「殿下っ!感傷に浸っている場合ではありませんよ!」
執事は空気を読まず発破をかける。
おそらくはこの夫婦の関係改善を一番に願っている専属執事。
双方の性格も把握しているので「気を使う」ような思いを持っているとトゥトゥーリアには伝わらないとヴァレンティノの背を押す。
「(ぼそっ)マフラー。買ってあげればどうです?」
専属執事は知っている。トゥトゥーリアのマフラーは嫁いできた時から持っていたもので正直言って「お妃様がこれを?!」と驚くようなボロボロのマフラー。
ただ、バリバ侯爵家でよくしてくれた使用人から貰ったので大事にしている品だった。
「そうだな」ヴァレンティノもこうなってしまったのは初夜の愚かな言動が全ての根源。そうしたのはヴァレンティノ本人なので、この際だ!と腹を括った。
「リア。今日は街に行く」
「街に?視察ですか?」
「さぁ?どうだろう。行ってみればわかる」
「そうなんですか・・・判りました」
与えられた席に座り、今日の執務をしようとインクなどを準備していたトゥトゥーリアはまだ引いたままの引き出しに出したばかりのインクやペンを仕舞った。
★~★
この後の公開時間です
前日夜になるかも~とお知らせしましたが少し早めました<(_ _)>
12時10分
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