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第07話 こうしちゃいられない
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不浄でオフィーリアは便座に座ると、かの著名な彫刻家ロディンの作、考え抜く人のように顎に手を当てて考え込んだ。
――体が入れ替わっている…そんな事ってあるの?――
考えるだけ無駄だと直ぐに首を振った。
だって今、現在頭の中以外はフェリクスなのだ。
そんな事があるから、こうなっている。
理屈は判らないけれど、おそらく落下した時に「殿下、危ないッ!」と声がした気がするので運が良いのか悪いのか。落下地点を通りかかったフェリクスの上に落ちたのだと思われる。
――入れ替わったとすればその時だけだわ――
「うーん。どうしよう」
考える事は多くない。
先ず1つ目。
元に戻るかどうか。だ。
フェリクスとしてこの先生きていけと言われても、頭の中はオフィーリアなので無理がある。
何より、顔立ちもスタイルも平々凡々だが入れ替わっているという事は今、自分の体はフェリクスが使っているということ。好き勝手をされたくはなかった。
勿論それはオフィーリアだけでなくフェリクスだってそう思うはず。
次に大事なのは少しだけ希望が見えた気がした2つ目だ。
オフィーリアは離縁をしたかった。
しかしフェリクスが同意をしてくれないので離縁が出来ない。
たった半年も我慢出来ないのかとヨルムンドには笑われたし、小突かれたけれど半年どころか先の見えない未来には1日だって我慢が出来なかった。
どちらかと言えばよく半年耐えられたと褒めて欲しいくらい。
しかし立ちはだかる大きな壁がある。
「元に戻る方法ってあるのかしら。はぁー↓↓」
溜息を吐いても答など出るわけがない。
体と頭の中身が入れ替わるなんて初めての経験だし、他者の経験でも聞いたことがない。
対処法があるなら教えて欲しいくらいだ。
「ん?でも…あれ?これってラッキー?」
オフィーリアはふと思いついた。
体と頭の中身が入れ替わっている今が大チャンスなのではないかと。
側近のヨルムンドですら中身がオフィーリアだと言っても信じたりはしないだろう。
怪しむのなら不浄に入る前に怪しんでいるハズ。
「って、事は…この姿で離縁届を書いて貴族院に預ければいいんじゃない?」
ポン!手のひらを打つと、離縁をしたい悩みはすんなりと解決できる気がした。
問題はどうやって元の体に戻るかだ。
そして入れ替わっている間、フェリクスにも自分の体を適当な扱いなどして欲しくない。
「そもそも…フェリクス様って粗食に耐えられるの?…無理よね。絶対無理だわ」
オフィーリアは8歳の時に領地に送られたからこそ、半年間を生きて来られた。
領地は公爵領だと言っても田舎で基本が自給自足。オフィーリアが公爵令嬢だからと言ってオホホと高笑いをしていたら「働かざる者食うべからず」でとっくに飢え死にしていた。
領民に混じり、田畑を耕し、川で泳いで魚を突く。山に入れば獣は男衆が獲ってくれたが女衆に混じって木の実や山菜、キノコなど食べられるものを採ってきた。
医者だって領地には数人いるけれど広い公爵領のどこかで病人が出れば出向かねばならず、脱臼や捻挫、切り傷や擦り傷が自分でなんとかせねばならず、その方法を叩きこまれた。
オフィーリアも自分自身で脱臼などは治してきたし、どの薬草がどんなケガや病気に効果があるかを覚えて来たから生き延びられたのだ。
それを今のフェリクスが出来るとは思えない。
何より心配なのは空腹で厨房に行き「食べ物をくれ」なんて言ってしまったら下男や時に厨房長の張り手が飛んでくる。受け身は多少知っていてもまさか殴られる、張られると思ってないところに攻撃を受ければダメージは大きい。
「こうしちゃいられないわ!」
オフィーリアはグッと拳を握り、ガッツポーズを取ると便座から立ち上がった。
――体が入れ替わっている…そんな事ってあるの?――
考えるだけ無駄だと直ぐに首を振った。
だって今、現在頭の中以外はフェリクスなのだ。
そんな事があるから、こうなっている。
理屈は判らないけれど、おそらく落下した時に「殿下、危ないッ!」と声がした気がするので運が良いのか悪いのか。落下地点を通りかかったフェリクスの上に落ちたのだと思われる。
――入れ替わったとすればその時だけだわ――
「うーん。どうしよう」
考える事は多くない。
先ず1つ目。
元に戻るかどうか。だ。
フェリクスとしてこの先生きていけと言われても、頭の中はオフィーリアなので無理がある。
何より、顔立ちもスタイルも平々凡々だが入れ替わっているという事は今、自分の体はフェリクスが使っているということ。好き勝手をされたくはなかった。
勿論それはオフィーリアだけでなくフェリクスだってそう思うはず。
次に大事なのは少しだけ希望が見えた気がした2つ目だ。
オフィーリアは離縁をしたかった。
しかしフェリクスが同意をしてくれないので離縁が出来ない。
たった半年も我慢出来ないのかとヨルムンドには笑われたし、小突かれたけれど半年どころか先の見えない未来には1日だって我慢が出来なかった。
どちらかと言えばよく半年耐えられたと褒めて欲しいくらい。
しかし立ちはだかる大きな壁がある。
「元に戻る方法ってあるのかしら。はぁー↓↓」
溜息を吐いても答など出るわけがない。
体と頭の中身が入れ替わるなんて初めての経験だし、他者の経験でも聞いたことがない。
対処法があるなら教えて欲しいくらいだ。
「ん?でも…あれ?これってラッキー?」
オフィーリアはふと思いついた。
体と頭の中身が入れ替わっている今が大チャンスなのではないかと。
側近のヨルムンドですら中身がオフィーリアだと言っても信じたりはしないだろう。
怪しむのなら不浄に入る前に怪しんでいるハズ。
「って、事は…この姿で離縁届を書いて貴族院に預ければいいんじゃない?」
ポン!手のひらを打つと、離縁をしたい悩みはすんなりと解決できる気がした。
問題はどうやって元の体に戻るかだ。
そして入れ替わっている間、フェリクスにも自分の体を適当な扱いなどして欲しくない。
「そもそも…フェリクス様って粗食に耐えられるの?…無理よね。絶対無理だわ」
オフィーリアは8歳の時に領地に送られたからこそ、半年間を生きて来られた。
領地は公爵領だと言っても田舎で基本が自給自足。オフィーリアが公爵令嬢だからと言ってオホホと高笑いをしていたら「働かざる者食うべからず」でとっくに飢え死にしていた。
領民に混じり、田畑を耕し、川で泳いで魚を突く。山に入れば獣は男衆が獲ってくれたが女衆に混じって木の実や山菜、キノコなど食べられるものを採ってきた。
医者だって領地には数人いるけれど広い公爵領のどこかで病人が出れば出向かねばならず、脱臼や捻挫、切り傷や擦り傷が自分でなんとかせねばならず、その方法を叩きこまれた。
オフィーリアも自分自身で脱臼などは治してきたし、どの薬草がどんなケガや病気に効果があるかを覚えて来たから生き延びられたのだ。
それを今のフェリクスが出来るとは思えない。
何より心配なのは空腹で厨房に行き「食べ物をくれ」なんて言ってしまったら下男や時に厨房長の張り手が飛んでくる。受け身は多少知っていてもまさか殴られる、張られると思ってないところに攻撃を受ければダメージは大きい。
「こうしちゃいられないわ!」
オフィーリアはグッと拳を握り、ガッツポーズを取ると便座から立ち上がった。
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