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第20話 1、10、100‥
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昼前には壁紙を買い取ってくれる商会がやってきた。
壁紙や、天井材を一部だけ拭き取り査定を始める。
「素晴らしい!よくぞここまで放置してくれましたッ!!」
褒められても全然嬉しくない。つまりは掃除をサボりまくり、体に悪いと言われているタバコを長年吸いまくった。そういう事なのだ。
「こちらの汚部屋。壁紙だけでなく元々この部屋にあった調度品や家具は…どちらに?」
「これです。埃は被っているんですが…引き出しとか取っ手がヤニでネトネトで」
「なんと!!素晴らしい!こんな素晴らしい木製品なのにここまで!!滅多にない逸品です」
「は、はぁ‥」
「当商会は家のお掃除をする際の洗剤を開発、販売しているんですが壁、床、天井、窓は勿論ですけども、家具などは使っている木も違いますし、なにしろ‥普通貴族ってほら、使用人がいるじゃないですか。大抵は綺麗に清掃されているので、なかなか開発した洗剤で何処まで落ちるかと試験が出来ませんでね。汚れていればいるほどありがたいのです。頑固な汚れ、バッチコーイ!なのです」
「えぇ…そうでしょうね」
ちらりとロイスを見ると、流石に褒められているけれど同時に貶されているようにも聞こえるのか小さくなっているのが見える。あまりにもショボンとしているので「しっかり!」と背中を叩いて喝をいれたほうがいいのかと思ってしまうくらいだ。
「ここまでとなる品を初めて見ました。それでですね、良ければ…なんですが…」
商会は壁紙を剥がすだけでなく、出来ればヤニで汚れた家具や天井材、床材も欲しいと言い出した。
「どうする?」とシルフィは無言でロイスを見た。
「いいですよ。全部持って行ってくれていいです。返品不可で」
「ありがとうございます!!では、えぇっと…1,2、3」
商会の男性は天井を見上げて格子で囲まれた天井材を数え始めた。
そして買取伝票に書き込んで、不気味な1言を連れて来ていた男性に耳打ちした。
「直ぐに金融商会に走ってくれ。現金だからな。気を付けて持ってきてくれ」
――金融商会?どういうこと?――
シルフィとロイスは顔を見合わせたが、本気で驚くのはこれからだった。
「査定で御座いますが、当商会。全て!全て!‥‥現金で買い取らせて頂いております」
「はぁ…まぁ、はい」
「結果ですが壁紙。こちらは4面で1面1万バウ。床材も1万バウ。書棚とチェストで5千バウ…っと調度品などはこちらに記載しておりますが、50バウはこの花瓶、130バウはこの本立てっと…見て頂くとして、天井の格子はこちらに含んでですね、天井材以外で10万バウで買い取らせて頂きます。勿論工賃、輸送費コミコミ!なんですが!!」
「なんですが‥‥何か?」
「えぇっと天井材!こちら56枚御座います。1枚当たり250万バウ…勉強させて頂きましたーっ!!」
「え?‥(桁が違う?)」
シルフィとロイスは伝票に書かれた数字を下1桁から数えていく。
「1、10、100、1000、万、十万、百万…えぇーっ?!」
「はい、天井材だけで1億4千万バウで御座いますが、当商会は先ほども申しました通り現金!現金にて買取をさせて頂いております」
「ちょ、ちょっとロイスさん、どういう事?」
「僕も判らないよ」
「ご説明いたしましょう。こちらの天井材。時代としてはそうですね、今から550~600年前のもので御座いまして、488年前に滅亡した亡国の王家が所有していたものに間違い御座いません。どういう経緯でこちらのお屋敷に持ち込まれたかは不明ですが…でも惜しい!!」
「惜しい?」
「実はこの天井画。文献によれば60枚なのです。枚数としては60枚あるんです。私、胸が躍りましたよ~。世紀の大発見です。もう存在しないと言われている品ですよ。でも…このお部屋のサイズに合わなかったので4枚を切断しちゃったんですね。ほら、あの柱の回りです。そちらはもう値をつけることはできませんので56枚を買い取りとさせて頂きました」
シルフィは聞くのがちょっと怖かったが聞いてみた。
「あの、もし4枚が切られてなかったら…」
商会の男性は即答した。
「いくつか国が買えますね。天文学的な数字になるので当社では買取は無理です。多分…帝国でも無理でしょう」
シルフィはロイスの先祖に吠えた。
――切ってんじゃないわよ!!――
その日の内に超高額査定の買い取りが済み、見た事もない札束の山を見て「どうしよう」と全員がロイスの部屋の天井に隠したのは言うまでもない。
ちなみに翌日、屋敷にある不用品の買取は全て終わった。
2日間で総額1億4千22万バウだった。
天井材がなかったら、たった22万バウ。職人1人に給料を払ったら終わりだった。
ラーリ伯爵は本当に金目の物は全部持ち出してしまっていたが、ヤニで絵が描かれているかどうかすら判らなかった天井画は気が付かなかったのだろう。
壁紙や、天井材を一部だけ拭き取り査定を始める。
「素晴らしい!よくぞここまで放置してくれましたッ!!」
褒められても全然嬉しくない。つまりは掃除をサボりまくり、体に悪いと言われているタバコを長年吸いまくった。そういう事なのだ。
「こちらの汚部屋。壁紙だけでなく元々この部屋にあった調度品や家具は…どちらに?」
「これです。埃は被っているんですが…引き出しとか取っ手がヤニでネトネトで」
「なんと!!素晴らしい!こんな素晴らしい木製品なのにここまで!!滅多にない逸品です」
「は、はぁ‥」
「当商会は家のお掃除をする際の洗剤を開発、販売しているんですが壁、床、天井、窓は勿論ですけども、家具などは使っている木も違いますし、なにしろ‥普通貴族ってほら、使用人がいるじゃないですか。大抵は綺麗に清掃されているので、なかなか開発した洗剤で何処まで落ちるかと試験が出来ませんでね。汚れていればいるほどありがたいのです。頑固な汚れ、バッチコーイ!なのです」
「えぇ…そうでしょうね」
ちらりとロイスを見ると、流石に褒められているけれど同時に貶されているようにも聞こえるのか小さくなっているのが見える。あまりにもショボンとしているので「しっかり!」と背中を叩いて喝をいれたほうがいいのかと思ってしまうくらいだ。
「ここまでとなる品を初めて見ました。それでですね、良ければ…なんですが…」
商会は壁紙を剥がすだけでなく、出来ればヤニで汚れた家具や天井材、床材も欲しいと言い出した。
「どうする?」とシルフィは無言でロイスを見た。
「いいですよ。全部持って行ってくれていいです。返品不可で」
「ありがとうございます!!では、えぇっと…1,2、3」
商会の男性は天井を見上げて格子で囲まれた天井材を数え始めた。
そして買取伝票に書き込んで、不気味な1言を連れて来ていた男性に耳打ちした。
「直ぐに金融商会に走ってくれ。現金だからな。気を付けて持ってきてくれ」
――金融商会?どういうこと?――
シルフィとロイスは顔を見合わせたが、本気で驚くのはこれからだった。
「査定で御座いますが、当商会。全て!全て!‥‥現金で買い取らせて頂いております」
「はぁ…まぁ、はい」
「結果ですが壁紙。こちらは4面で1面1万バウ。床材も1万バウ。書棚とチェストで5千バウ…っと調度品などはこちらに記載しておりますが、50バウはこの花瓶、130バウはこの本立てっと…見て頂くとして、天井の格子はこちらに含んでですね、天井材以外で10万バウで買い取らせて頂きます。勿論工賃、輸送費コミコミ!なんですが!!」
「なんですが‥‥何か?」
「えぇっと天井材!こちら56枚御座います。1枚当たり250万バウ…勉強させて頂きましたーっ!!」
「え?‥(桁が違う?)」
シルフィとロイスは伝票に書かれた数字を下1桁から数えていく。
「1、10、100、1000、万、十万、百万…えぇーっ?!」
「はい、天井材だけで1億4千万バウで御座いますが、当商会は先ほども申しました通り現金!現金にて買取をさせて頂いております」
「ちょ、ちょっとロイスさん、どういう事?」
「僕も判らないよ」
「ご説明いたしましょう。こちらの天井材。時代としてはそうですね、今から550~600年前のもので御座いまして、488年前に滅亡した亡国の王家が所有していたものに間違い御座いません。どういう経緯でこちらのお屋敷に持ち込まれたかは不明ですが…でも惜しい!!」
「惜しい?」
「実はこの天井画。文献によれば60枚なのです。枚数としては60枚あるんです。私、胸が躍りましたよ~。世紀の大発見です。もう存在しないと言われている品ですよ。でも…このお部屋のサイズに合わなかったので4枚を切断しちゃったんですね。ほら、あの柱の回りです。そちらはもう値をつけることはできませんので56枚を買い取りとさせて頂きました」
シルフィは聞くのがちょっと怖かったが聞いてみた。
「あの、もし4枚が切られてなかったら…」
商会の男性は即答した。
「いくつか国が買えますね。天文学的な数字になるので当社では買取は無理です。多分…帝国でも無理でしょう」
シルフィはロイスの先祖に吠えた。
――切ってんじゃないわよ!!――
その日の内に超高額査定の買い取りが済み、見た事もない札束の山を見て「どうしよう」と全員がロイスの部屋の天井に隠したのは言うまでもない。
ちなみに翌日、屋敷にある不用品の買取は全て終わった。
2日間で総額1億4千22万バウだった。
天井材がなかったら、たった22万バウ。職人1人に給料を払ったら終わりだった。
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