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第08話 孤児の少年マルコ
教会で自主奉仕を始めたリーゼロッテは初日こそ与えられた部屋の中から窓の外を見るだけだったが、2日目は教会に世話になっているホームレスの子供に頼まれて寄付で集まった布の仕分けを手伝った。
「こっちだよ。もうすぐバザーがあるから飾りつけをする花を作ってるんだ」
「花?布で作るの?」
「寄付とか集めてきた布で売れそうにないのを使うんだよ。出来るだけ綺麗に洗ってはいるんだけど、見える部分に落ちなかったシミとか見えるとカッコ悪いだろ。そういう時は中に織り込んで…やってたら出来るようになるよ」
作っているのはファブリックフラワー。
但しレースなどは手の平サイズでも買い手が付くのでファブリックフラワーには使わない。
積まれている布は確かに洗ってはいるが水洗いの後で干しただけ。量が量なので仕方ない部分もあるだろうが食べこぼしや血液と思われるシミの後もあれば、洗っても落ちない強い生活臭のする布もある。
確かにこれでは端切れとしても買い手はつかないと思われる布が大量にある。
「これは…フェルトね。珍しいわね」
「それは張り合わせて椿みたいにするんだ。ペタンコになるけどその布は使い道もないからさ」
ファブリックフラワーと言っても適当な長さの布を蛇腹に折りたたんで中央を細い麻布で強く縛る。
それを角度を変えて幾つも縛って布に鋏を入れて花びらに見立てる。
紐の部分がくぼみになってはいるけれど、お粗末な仕上がり。
しかしこれは入り口の飾りつけに使う。積まれている布で隙間なく詰めて配置をするので気にならないというのだが、リーゼロッテはふと閃いた。
「ね、これって工夫すれば売り物になるわ。香りが強く染みついているのはダメだけど、布を縫い合わせてコサージュ風に加工すれば十分に売れるわ」
「コサー??何それ。売れればいいんだけど、売れなかったら捨てになるよ。置いとく場所もないしさ」
捨てになる、つまりは燃やしてしまうのだ。
お針子の様な内職もしていたリーゼロッテとしては捨てるのは勿体ない。
何よりこんなに沢山布があるんだから使い道は必ずある筈だ。
子爵家と言えど新品の服が何時も買える訳ではなくほとんどがセカンドユーザー以上の品ばかり。
何より飾りつけたファブリックフラワーだってバザーが終われば焼却処分なのだ。
なんとかこれを処分する量を減らし売り上げにつなげる事が出来れば。
リーゼロッテが考え込んでいると神父がやってきた。
「これ。マルコ。無理強いはいけませんよ」
「だって!人が多い方が早く終わるしっ!」
「ですが、あくまでもリーゼロッテさんが自主的にやろうとするのが大事なのですよ」
「でもさぁ神父さん、この布の山見てよ。でもバザーの日まで時間もないんだ。今はえぇっと…キツネの子だった?あれ?馬の子だったかな…兎に角手伝って欲しいんだってば!」
――それ、猫。ついでに子じゃなくて手ね――
マルコは教会の前に捨てられていた子。
どこで生れたか、出生日も不明。なので両親も不明。
6歳の時に平民の夫婦に引き取られて行ったけれど行った先では何時の時代かと思うような奴隷の扱いを受け、教会まで1人で逃げ戻ってきた。
8歳の時にまた別の夫婦に引き取られて行ったけれど、今度は給金を払わなくていい使用人の扱いを受け、また逃げ戻ってきた。
11歳になったマルコの夢は「暇なら手伝ってよ」と部屋から引っ張り出され案内の途中で聞いてもいないのに、さっき聞かせてもらったのだが「海賊の船長になること」だそうで、どうして?と聞くと「海を見たことがないから」なのだそうだ。
ただマルコは文字の読み書きは出来ないので教会に寄付された本の挿絵をページを捲って見つけては想像を膨らませる。悪漢である贅沢好きな国王はでっぷりとした腹をベルトの上に乗っけていて、いかにも悪そうな顔つきなので悪者。
お気に入りの海賊は「後で俺のバイブルを見せてあげるよ」と言われたが精悍な顔をした男性らしい。
子供だから。
そんな理由もあるだろうか。
リーゼロッテはマルコは生物学上男性でも嫌悪感は抱かなかった。
神父も婚姻が禁じられていて男性ではあるけれど、感覚的には中性的。神父に対しても身構えることはなかったが同年代以上の男性となると「この色の布はないかな」と積みあがった布の中から似た色を探しているその言葉ですら裏があるのでは考えてしまう。
そんなリーゼロッテを気遣ってなのか。それとも海賊の船長になるのが夢だからか。本人の素質も手伝って場を仕切っているのはマルコ。
マルコの言う通りファブリックフラワーを作りながらも「これは」と思う布を見つけたら部屋に持ち帰ってコサージュを作ってみる。久しぶりに針仕事をすると肩の凝りが酷いけれどその痛みも心地よかった。
「こっちだよ。もうすぐバザーがあるから飾りつけをする花を作ってるんだ」
「花?布で作るの?」
「寄付とか集めてきた布で売れそうにないのを使うんだよ。出来るだけ綺麗に洗ってはいるんだけど、見える部分に落ちなかったシミとか見えるとカッコ悪いだろ。そういう時は中に織り込んで…やってたら出来るようになるよ」
作っているのはファブリックフラワー。
但しレースなどは手の平サイズでも買い手が付くのでファブリックフラワーには使わない。
積まれている布は確かに洗ってはいるが水洗いの後で干しただけ。量が量なので仕方ない部分もあるだろうが食べこぼしや血液と思われるシミの後もあれば、洗っても落ちない強い生活臭のする布もある。
確かにこれでは端切れとしても買い手はつかないと思われる布が大量にある。
「これは…フェルトね。珍しいわね」
「それは張り合わせて椿みたいにするんだ。ペタンコになるけどその布は使い道もないからさ」
ファブリックフラワーと言っても適当な長さの布を蛇腹に折りたたんで中央を細い麻布で強く縛る。
それを角度を変えて幾つも縛って布に鋏を入れて花びらに見立てる。
紐の部分がくぼみになってはいるけれど、お粗末な仕上がり。
しかしこれは入り口の飾りつけに使う。積まれている布で隙間なく詰めて配置をするので気にならないというのだが、リーゼロッテはふと閃いた。
「ね、これって工夫すれば売り物になるわ。香りが強く染みついているのはダメだけど、布を縫い合わせてコサージュ風に加工すれば十分に売れるわ」
「コサー??何それ。売れればいいんだけど、売れなかったら捨てになるよ。置いとく場所もないしさ」
捨てになる、つまりは燃やしてしまうのだ。
お針子の様な内職もしていたリーゼロッテとしては捨てるのは勿体ない。
何よりこんなに沢山布があるんだから使い道は必ずある筈だ。
子爵家と言えど新品の服が何時も買える訳ではなくほとんどがセカンドユーザー以上の品ばかり。
何より飾りつけたファブリックフラワーだってバザーが終われば焼却処分なのだ。
なんとかこれを処分する量を減らし売り上げにつなげる事が出来れば。
リーゼロッテが考え込んでいると神父がやってきた。
「これ。マルコ。無理強いはいけませんよ」
「だって!人が多い方が早く終わるしっ!」
「ですが、あくまでもリーゼロッテさんが自主的にやろうとするのが大事なのですよ」
「でもさぁ神父さん、この布の山見てよ。でもバザーの日まで時間もないんだ。今はえぇっと…キツネの子だった?あれ?馬の子だったかな…兎に角手伝って欲しいんだってば!」
――それ、猫。ついでに子じゃなくて手ね――
マルコは教会の前に捨てられていた子。
どこで生れたか、出生日も不明。なので両親も不明。
6歳の時に平民の夫婦に引き取られて行ったけれど行った先では何時の時代かと思うような奴隷の扱いを受け、教会まで1人で逃げ戻ってきた。
8歳の時にまた別の夫婦に引き取られて行ったけれど、今度は給金を払わなくていい使用人の扱いを受け、また逃げ戻ってきた。
11歳になったマルコの夢は「暇なら手伝ってよ」と部屋から引っ張り出され案内の途中で聞いてもいないのに、さっき聞かせてもらったのだが「海賊の船長になること」だそうで、どうして?と聞くと「海を見たことがないから」なのだそうだ。
ただマルコは文字の読み書きは出来ないので教会に寄付された本の挿絵をページを捲って見つけては想像を膨らませる。悪漢である贅沢好きな国王はでっぷりとした腹をベルトの上に乗っけていて、いかにも悪そうな顔つきなので悪者。
お気に入りの海賊は「後で俺のバイブルを見せてあげるよ」と言われたが精悍な顔をした男性らしい。
子供だから。
そんな理由もあるだろうか。
リーゼロッテはマルコは生物学上男性でも嫌悪感は抱かなかった。
神父も婚姻が禁じられていて男性ではあるけれど、感覚的には中性的。神父に対しても身構えることはなかったが同年代以上の男性となると「この色の布はないかな」と積みあがった布の中から似た色を探しているその言葉ですら裏があるのでは考えてしまう。
そんなリーゼロッテを気遣ってなのか。それとも海賊の船長になるのが夢だからか。本人の素質も手伝って場を仕切っているのはマルコ。
マルコの言う通りファブリックフラワーを作りながらも「これは」と思う布を見つけたら部屋に持ち帰ってコサージュを作ってみる。久しぶりに針仕事をすると肩の凝りが酷いけれどその痛みも心地よかった。
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