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第26話 王弟のお誘い
「そうか。やったか」
「はい。首尾よく」
王弟はかの日、報告書に記載された言葉に小躍りした。
慎重に行動をしているようで、タッカス侯爵家を断罪するような罪はなかなか見つけられなかった。
ちょっと批判をしただけ悪口を言っていただけで処罰をされていたらこの国から人間はいなくなってしまう。
結果として尻尾を振って右に倣えをした貴族がいたからと言って、そこまでタッカス侯爵家に罪を問う事は出来なかったのだ。
税の報告も問題はなく、あったとしても修正申告で事が済むのでせいぜい注意で終わる。最大限に罪を問うたとしても追徴課税でタッカス侯爵家には痛くも痒くもないだろう。
しかし報告書も残り数ページになった時に、娘のアンネマリーの行動が問題視出来るのでは?と考えた。
正式な婚約は結んではいないものの、相手となるウッサム伯爵家は借金をしてまで支度金を用意している。それは何故かと言えばタッカス侯爵家の娘と婚約をするからである。
まだ正式な締結はされていないが状況証拠と出来るのではないか。
そう考えた。
「デルモントの言っていたベルカム子爵家はウッサム伯爵家と姻戚になる予定だったのだな。つまりは寝取りと言う奴か」
タッカス侯爵家に踏み込んでも「婚約など無かった」と言われてしまえば身持ちの悪い娘がいただけ。そうならないように賭けではあったがウッサム伯爵家にも踏み込み、証拠を手に入れた。
それはあの日、アンネマリーがジョーンに頼んだ書類。
作製はタッカス侯爵家で事細かに結婚式までの予定がびっしりと書き込まれていた。
相手方に渡す書類だからこそ抜かりなく仕上げた書類は結婚をするための婚約を結ぶとみなされた。
その上でウッサム伯爵夫妻とアンセルもタッカス侯爵家に連行しタッカス侯爵家が言い逃れをしないようにしたのである。
アンネマリーの恋人たちは簡単に見つけることが出来た。
彼らは恋人で爵位を継がないアンネマリーとは婚姻関係にはならないため罪には問えない。
せいぜい教会から「不浄の者」として認定され生涯民衆からもそのように扱われるだけだ。マトモなところには就職は出来ないだろうし、今後生涯を添い遂げたい相手が出来ても教会に不浄の者と認定された男を受け入れる娘がいるかは神のみぞ知る。
アンネマリーのご乱交。その恋人の1人がアンネマリーの母親とも過去に関係を持っていたことを白状した。知っている事をさっさと喋り、釈放されたほうがより遠くに逃げることが出来る。
散々に楽しんだ恋人はアンネマリーを、侯爵家を売ったのである。
時期も良かった。教会側は昨今の性の乱れを問題視していてより厳罰をするように戒律を見直した。
「はぁ、これで王都も暫くは色々と綺麗な街になるだろう」
「殿下、ウッサム伯爵家はどうしますか?」
「坊ちゃんはどうだろうな。鞭打ちくらいか。当主夫妻は罰金刑だろうな」
「支度金の借金返済で苦しいようですよ」
「元金は返せるんだ。問題ないだろう。そもそもで最初の結婚話を息子可愛さに反故にしたのがいけないんだ。伯爵家なら女が被っている時期があった事は解ってるんだから選ぶ方を間違っちゃいけなかったのさ。ま、間違ってくれたおかげで…アイツにも春が来ると良いんだがな」
「え?開花予報は2週間後ですが?」
「こっちの話。さて、処刑執行の準備でもしますかね~」
王弟の言葉通りウッサム伯爵家は罰金刑を受けた。
しかし、教会の怒りに触れたと周知される事となったため、今後の経営は非常に厳しいものになる。
アンセルはアンネマリーが他にも男がいることも知っていたが報告をしなかった事、そして教会に自主奉仕に出たリーゼロッテに会いたいと何度も面会に行った際、修道士の前で堂々と愛人勧誘をした事が問題視をされた。
ウッサム伯爵はアンセルを廃籍としてウッサム伯爵家とは関係のない者だとし、アンセルは身分を失った。
鞭打ちになるかと思いきや教会はアンセルも騙された面もあると情状酌量を出したため禁固3か月となってしまった。
「全く。司祭様も大司祭様も甘いね。こいつは絶対にまたやらかす。今度は色恋じゃなく犯罪をだ。釈放された後も半年は見張りを付けておくように」
「承知いたしました」
タッカス侯爵家の刑が執行された3日後。
王都にいる王弟の元にデルモントからの手紙が届いた。
「へぇ。やるなぁ。結婚するのか。良かった。良かった」
気を良くした王弟はデルモントに早速返信を出し、その中に幌馬車の往復切符を2人分入れた。
善意からくる新婚旅行がてらに王都見物に来ないかと言う誘いの言葉を添えて。
「はい。首尾よく」
王弟はかの日、報告書に記載された言葉に小躍りした。
慎重に行動をしているようで、タッカス侯爵家を断罪するような罪はなかなか見つけられなかった。
ちょっと批判をしただけ悪口を言っていただけで処罰をされていたらこの国から人間はいなくなってしまう。
結果として尻尾を振って右に倣えをした貴族がいたからと言って、そこまでタッカス侯爵家に罪を問う事は出来なかったのだ。
税の報告も問題はなく、あったとしても修正申告で事が済むのでせいぜい注意で終わる。最大限に罪を問うたとしても追徴課税でタッカス侯爵家には痛くも痒くもないだろう。
しかし報告書も残り数ページになった時に、娘のアンネマリーの行動が問題視出来るのでは?と考えた。
正式な婚約は結んではいないものの、相手となるウッサム伯爵家は借金をしてまで支度金を用意している。それは何故かと言えばタッカス侯爵家の娘と婚約をするからである。
まだ正式な締結はされていないが状況証拠と出来るのではないか。
そう考えた。
「デルモントの言っていたベルカム子爵家はウッサム伯爵家と姻戚になる予定だったのだな。つまりは寝取りと言う奴か」
タッカス侯爵家に踏み込んでも「婚約など無かった」と言われてしまえば身持ちの悪い娘がいただけ。そうならないように賭けではあったがウッサム伯爵家にも踏み込み、証拠を手に入れた。
それはあの日、アンネマリーがジョーンに頼んだ書類。
作製はタッカス侯爵家で事細かに結婚式までの予定がびっしりと書き込まれていた。
相手方に渡す書類だからこそ抜かりなく仕上げた書類は結婚をするための婚約を結ぶとみなされた。
その上でウッサム伯爵夫妻とアンセルもタッカス侯爵家に連行しタッカス侯爵家が言い逃れをしないようにしたのである。
アンネマリーの恋人たちは簡単に見つけることが出来た。
彼らは恋人で爵位を継がないアンネマリーとは婚姻関係にはならないため罪には問えない。
せいぜい教会から「不浄の者」として認定され生涯民衆からもそのように扱われるだけだ。マトモなところには就職は出来ないだろうし、今後生涯を添い遂げたい相手が出来ても教会に不浄の者と認定された男を受け入れる娘がいるかは神のみぞ知る。
アンネマリーのご乱交。その恋人の1人がアンネマリーの母親とも過去に関係を持っていたことを白状した。知っている事をさっさと喋り、釈放されたほうがより遠くに逃げることが出来る。
散々に楽しんだ恋人はアンネマリーを、侯爵家を売ったのである。
時期も良かった。教会側は昨今の性の乱れを問題視していてより厳罰をするように戒律を見直した。
「はぁ、これで王都も暫くは色々と綺麗な街になるだろう」
「殿下、ウッサム伯爵家はどうしますか?」
「坊ちゃんはどうだろうな。鞭打ちくらいか。当主夫妻は罰金刑だろうな」
「支度金の借金返済で苦しいようですよ」
「元金は返せるんだ。問題ないだろう。そもそもで最初の結婚話を息子可愛さに反故にしたのがいけないんだ。伯爵家なら女が被っている時期があった事は解ってるんだから選ぶ方を間違っちゃいけなかったのさ。ま、間違ってくれたおかげで…アイツにも春が来ると良いんだがな」
「え?開花予報は2週間後ですが?」
「こっちの話。さて、処刑執行の準備でもしますかね~」
王弟の言葉通りウッサム伯爵家は罰金刑を受けた。
しかし、教会の怒りに触れたと周知される事となったため、今後の経営は非常に厳しいものになる。
アンセルはアンネマリーが他にも男がいることも知っていたが報告をしなかった事、そして教会に自主奉仕に出たリーゼロッテに会いたいと何度も面会に行った際、修道士の前で堂々と愛人勧誘をした事が問題視をされた。
ウッサム伯爵はアンセルを廃籍としてウッサム伯爵家とは関係のない者だとし、アンセルは身分を失った。
鞭打ちになるかと思いきや教会はアンセルも騙された面もあると情状酌量を出したため禁固3か月となってしまった。
「全く。司祭様も大司祭様も甘いね。こいつは絶対にまたやらかす。今度は色恋じゃなく犯罪をだ。釈放された後も半年は見張りを付けておくように」
「承知いたしました」
タッカス侯爵家の刑が執行された3日後。
王都にいる王弟の元にデルモントからの手紙が届いた。
「へぇ。やるなぁ。結婚するのか。良かった。良かった」
気を良くした王弟はデルモントに早速返信を出し、その中に幌馬車の往復切符を2人分入れた。
善意からくる新婚旅行がてらに王都見物に来ないかと言う誘いの言葉を添えて。
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