大好きだからこそ、です

cyaru

文字の大きさ
28 / 28

最終話  大好きだからこそ②―②

「懐かしいわ。まだ半年も経ってないけど…花壇も花を植え替えたのね」

教会の受付に行こうとデルモントと数歩を歩き出した時だった。


「リゼっ!!」

聞き覚えのある声にリーゼロッテとデルモントは同時に振り返った。
そこにはかなり汚れて、無精髭も生え放題の男が1人立っていた。

デルモントは身を挺してリーゼロッテを男の視界から隠そうと動いた。


「リゼ。僕だよ。アンセルだ。あの時はごめん。もう愛人だなんて血迷った事は言わない。予定通り結婚しよう。教会での自主奉仕はもう終わりだ。僕はリゼ、君だけを生涯愛し続ける。ここは教会なんだからこの言葉に嘘はないよ」

訳の分からない事を言いながらアンセルはゆっくりとリーゼロッテとアンセルに近寄ってきた。

泥と垢で汚れた口元がニマァと笑みを浮かべるのを見たリーゼロッテは「気持ち悪い」と思ってしまった。

「リゼ。恥ずかしがらなくていいよ。さぁおいで」

「は?」

アンセルは両手を広げてリーゼロッテに僕の胸に飛び込んでおいでと言っているが冗談じゃない。
今着ている服は今日おろしたてだし、どんな汚れが付いてしまうか解らない。洗濯も大変ではないか。

「ロゼ。大丈夫だ」

「ううん。デル。何時かは言う時も来るかもとは思ってたし大丈夫。妻は強いのよ」

「それは同意するが、危険だよ」

「付き纏われるよりずっとマシよ」


リーゼロッテは前に踏み出し、半身だけデルモントより前に出た。
アンセルの顔が更に喜びで破顔していく。それすら気持ち悪かった。

「アンセル。私はもう貴方とは結婚もしないし会う事もないわ」

「リゼ…解ってる。僕が悪かった。心を入れ替えたんだ。解ってくれるだろう?」

「解らないわ。説明もせず裏では平気で裏切っておいて信じてくれ?何処の世界にそんな言葉を信じる者がいると言うの」

「怒ってるんだね。解るよ。僕が悪いって言ってるだろう?」

「えぇ。怒っているし悪いのは貴方よ。そこまで解っているなら目の前から立ち去って」

「そんな事を言うなよ。ほら、僕たちはあんなに愛し合っていたじゃないか。もう2度と裏切らないし嘘もつかないよ。冷たい事を言わないでくれよ。僕にはもうリゼしかいないんだ」

「残念だけど信じることは出来ないわ。2度と裏切らないんじゃなく1度だって裏切ってはいけないのよ。それに私、結婚をしたの。貴方には他にもっと素敵な女性がいたじゃない。あの日追いかけても来なかった。それが全て」

「リゼ。あの女とはもう会わない!僕の事が信じられない?」

「えぇ。信じられないわ。ハッキリ言ってあげる。私、あなたの事大好きだった。だからこそ裏切られて辛かったの。貴方の事を好きだった自分を消してしまいたいほどに悩んで泣いたわ。でももうどうでもいいの。私は心から愛する人と結婚をしたし未来を生きていくって決めたの。今はあの日、追いかけてくれなかった事、貴方が騙してくれていた事に感謝してるわ。そうじゃなかったら…出会えなかったもの」


リーゼロッテはそう言うとデルモントの動かない右手を手に取り、手の甲、指にキスを落とした。

「うわぁぁぁーやめろ!やめろ!リゼ!裏切ったのか?僕を裏切ったのか!?」

「裏切ったのは貴方だと言ったでしょう?さよなら。もう会う事もないわ。行きましょう」

空腹でもう足が1歩も出ないアンセルはその場に崩れ落ちた。
その姿を振り向き様にみたリーゼロッテはデルモントとは全く違うと言葉にはしなかったが思った。

デルモントは辛いであろうにリーゼロッテを背負い何日も歩いてくれた。
そう言えばあの時は2人とも何日も川で行水もしなかったし清拭も出来ていなかったから汚れ具合は今のアンセルと大差なかった。

それでもデルモントの背中で臭いとも汚いとも思わなかった。
手を広げたアンセルには生理的な嫌悪を感じた。

見た目でも何でもない。

――私、あの時からもうデルを愛していたのかも――

ふとデルモントを見れば目が合う。

「どうした?」

「ううん。大好きだからこそ…かなって思ったの」

「ふーん??よく判らないがアレを一緒にしないでくれよ?」

「する訳ないでしょう?さぁ、マルコに絵本を渡して早く領地に帰りましょう」

「そんなに急いで帰らなくてもゆっくり見物でもしていかないか?」

「行かないわ。だって…デルとずっと男爵領で生きていくって決めたんだもの。他の場所には行きたくないの」

「そうか。ならそうしよう」

寄り添って受付に消えていく2人の背にもうアンセルの慟哭は聞こえなかった。


マルコに絵本を渡そうと思ったのだが生憎の留守。
今度は配送になるが別の絵本を送ると伝言を残し、待たせていた馬車に乗り込んだ2人。

その時にはもうアンセルの姿はなかった。
他の礼拝に訪れる人の迷惑になると修道士に追い出されてしまったからである。

その後、アンセルの姿を見たものはいない。
川に浮いていた、橋のたもとで施しを待っていた。色々と噂はあるが領に戻ったリーゼロッテにそんな噂は聞こえない。


「デル?」

「なんだ?」

帰りの豪華な幌馬車で向かい合ってリーゼロッテはデルモントを呼ぶ。

「何でもない。大好きよ」


Fin


読んで頂きありがとうございました<(_ _)>































ドルルルルル‥‥(ドラムロール)

ジャジャン!!

スクロールしてしまったアナタ!
キョロキョロしちゃダメ!アナタよ。ア・ナ・タ♡

悪いことは言わないので「閉じる」作業をしましょう。

この先スクロールをしても意味不明な文言がタラタラツラツラとあるだけです。

ここからは本編のキャラを使った通称S話になってしまいます。

ただでさえ破綻した世界に時間軸。そこにSやHをぶち込んで単に作者が楽しみたいだけのオォウオォゥ!洋物のエロビ(はい、ビデオですが何か?)の世界が広がるだけです。

おそらく日本語であるかすら疑問に思える伏字の世界です。

さぁ閉じよ!閉じるのだ!

いいですか?もう一度。大事な事です。

スクロールは禁止。はい!オッケェイ!




























これ、スクロールは禁止なのに…

そんなアナ●が微妙に好き

はい、ここを松居直●サンのように歌えたらどうぞ~













危険な【S閑話】
タイトル ひざ丈で溺れる妻の飼いたいペット


オッペル男爵領は田舎である。
不便があるかと言えばそんなにない。なぜならそこそこに裕福な家だからである。

この度、国●改造計画という某総理の掛け声のような号令でインフラが整備されると所得も増えた。

「所得が倍だよ。まだ右肩上がり。おまけにロゼの言うところに投資をしたらまるで倍々ゲームだな」

「え?アイ●イゲーム?」

「ロゼ。それは危険すぎる。明日学校だから夜更かしはいけないと解っているのに日曜の22時になると見てしまうチョメチョ●なゲームじゃないか」

そんなリーゼロッテ。
オッペル男爵領には1つ問題が勃発したことに頭を悩ませていた。

半年前に1軒の喫茶店が導入したインベー●―ゲーム。
ちょっと怪しげな喫茶は銅貨を山積みにした男たちで占領され遂には24時間営業になってしまったし、領内どころか隣の領地まで銅貨が消えるという摩訶不思議な現象。

子供たちに学問を教えるために学び舎を開設したが、子供たちまでイン●ーダーゲームに嵌ってしまって今では玩具屋さんの奥の部屋でこっそりと合言葉を言えば通してもらえるので遊んでしまう子供たちまで出てしまった。

「困ったわね。コンビニですら7時に開店、23時に閉店なのに!」

「ロゼ、それなんだが…コンビニも24時間営業になった」

「なんですって?!対策が必要だわ。デル、打ち合わせよ。ついでに布も買いたいの。いつものサンデ●サンで11時」

「ロゼ‥‥すまない。サンデー●ンはジョリー●スタと名前を変えたんだ」

「なんですって?!そこも…」


仕方なくその辺にある喫茶店で冷コーでも飲みながら対策を練ろうと街を歩いたのだが、デルモントの幼馴染が最近隣国から戻ってきたようで声を掛けられた。

「デルモント。今日もマブいスケ連れちゃって!」

「違う。俺の妻はハクいんだ」

「誰?」

「あぁ昔の幼馴染だ。気にしなくていい」

カランコロン

ドアの上部に取り付けたドアベルが入店すると音を立てる。
向かいのコンビニからは●盛況という音楽が客の入店に合わせて聞こえてくる。

テレレレレレ~テレレレ~♪

「あら?お客様かしら」

「違うコンビニに客が来たんだ。やっぱり音を変えよう」

「そうね。つい、反応しちゃうわ。ロミジュリで正にどうすりゃいいの~だわ」

「ロゼ。それはユニ●ーン様の大迷●だ。●盛況ではないぞ」

最近玄関にドアホンを付けたのだが、コンビニの入店音と同じとは思わなかった。

「ご注文は何になさいますか?」

ウェイトレスが問う。

「俺は冷コー。ロゼはどうする?」

「私はナポリタンにするわ」

「まだ午前中なのにガッツリ行くんだな」

「あ、食後にウィンナー珈琲もお願い」

「畏まりました」

デルモントはリーゼロッテに問うた。

「コーヒーにウィンナーが入っているのか?」

「・・・・」

リーゼロッテの目がピアノ線より細くなる。
デルモントは何かとんでもない間違いをしてしまったようだと気が付き、それ以上を問う事が出来なかった。

「卒業、入学のシーズンだな。制服を買いに来たのかな」

「そうね。学び舎の制服。セーラー服にして良かったわ。にゃんにゃんだもの」

「脱がされる事前提なのか…」

「違うわよ。脱がさないでって言ってるわ。それに渡り廊下を走る隊もあるのよ」

デルモントは知っているとは言えない。
会員番号1番から冬にオペラグラスを覗かなくても頭の中に名前、顔、会員番号の一致する●ニャン子。

ぽろっと漏らしてしまうとリーゼロッテは意外に妬きもち焼きなので修羅場になる。
ポロっとするのは芸能人の水泳大会だけで良いのだ。


「制服か…懐かしいな。俺、ドカンに洋ランだったんだ」

「え?」

リーゼロッテは想像した。
空き地に下に2段、上に1段。丸いコンクリート製のドカンと花の洋ランが制服。
思わず口に蘭の花の茎を咥えキザっちく土管の上でポーズをとるデルモントを想像してしまった。

「花なの?爪楊枝じゃなくて?」

「爪楊枝?」

「だって土管の上で花を咥えてる…咥えるのは木枯し紋●郎で爪楊枝でしょう?」

「色々と情報が錯綜しているな。それにチョイスが渋すぎるだろう。中●敦夫氏とは‥。我が妻ながらに素晴らしいSっぷりだ。だがドカンと言うのは学生服のズボンのワタリと裾の限界に挑戦した至高の逸品だ。そして洋ランとは上着で俺のはくるぶしまであったぞ」

「え?上着が?それじゃロングコートじゃないの」

「似て非なるものだ。学ランだからな。裏地はサテンで虎だった。髪型はリーゼントと思いきやBU●K-TI●Kに憧れていたからな。朝からセットが大変な上に型崩れしやすいから俺は朝から寒天を溶かし、逆立ちをしたものだ。学生カバンの厚さは驚異の1cm。下敷きしか入らなかったぞ」

それもリーゼロッテには理解が出来ない世界だった。

そして思う。

――当時頭皮に無理をさせたからきっと――

もうすぐ誕生日のデルモントにカツラも考えている。
しかしドン●・ホーテに行くと「お父ちゃん風」しかなく、腹巻とステテコも必要なので検討中だ。


注文の品が運ばれて来るのだが、窓の外にはワンコのお散歩中のマダムが横切った。

「あ!ヨーゼ●!」

「知っている女性か?男性名のようだが」

「違うわ。セントバーナード犬だったじゃない」

「知ってる犬なのか?」

「さぁ?でもセントバーナード犬と言えば●ーゼフでしょ?コリー犬は●ッシー、ビーグル犬はバ●ン、アライグマはラ●カルって決まってるのよ」

「三毛猫にミケ、白猫にシロのノリだな」

「そうかしら。でもチワワはア●フルでしょ?」

「そこだけは違うんだな」

リーゼロッテはペットとして飼いたい動物がいるのだが、ずっとデルモントは却下を続けている。

何故か?
オッペル男爵領は山間部にあるので海がない。

リーゼロッテが飼いたいのはイルカという海の生き物なので海水が用意できない。

「いいなぁ。フ●ッパー飼いたいわ。そしたら背中につかまって無人島まで行ってフ●ーネするのよ」

そう言うがリーゼロッテはひざ丈で溺れる。
デルモントの希望で風呂は一緒に入っているが下心なしにやっぱり却下である。

そんなリーゼロッテだが、唯一デルモントから許されてネズミを飼っている。
本当は「ハ●太郎」のようなハムスターを希望していたのだが、山で野ネズミを捕まえたのでハムスターの代わりに飼っている。

「帰りに布も買うの忘れないでね」

ナポリタンを食べながらリーゼロッテが言う。

布は裁縫が得意なリーゼロッテが野ネズミに服を作るためである。
何故か。

野ネズミの名前がメスなのに「●ッキーチャック」だからである。

世●名作劇場をこよなく愛するリーゼロッテ。
そんなリーゼロッテをデルモントは心から愛している。

お食事中の2人にあの電子音が聞こえてきた。

ピーッユ。ドッドッドッド。
ピーッユ。ドッドッドッド。
ピュピュピュピュピュピュ…ピーユッ
ピョワワワワ

「あ、UFO打った」

音だけでUFOの出現と撃破が判る周囲の客。
やはり対策は必要なのだと思った2人だった。
感想 24

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(24件)

HIRO
2025.03.24 HIRO

今、Sに気付きました🤯
やっぱり大爆笑させてもらいました😁
作者様、ありがとうございます😊

2025.03.27 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

今回は別枠を設けなかったんですよ(笑)
なので、登録頂いている方にも新しい話のお知らせとかも届かなかったかと(笑)
覗いても話数が変わってないのと、サブタイトルに変化もないので「あれぇ?」と思われた方もいたかも(;^_^A

しかしどこかに香るSの香り!!
見つけて頂いてありがとうございますですよぅ(*´▽`*)

世界●作劇場はいろんな話があったんですけども、あ~あった!と思い出して頂けるといいかな~と(;^_^A
正直、動物が主人公のアニメはどうしてもみなし●ハッチとか、ガン●の大冒険とかを思い出しちゃうんですけども、●ッキーチャックもあった!と思って頂けたらいいな♡

ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

解除
みや
2025.03.24 みや

ハウス名作劇場や世界名作劇場ってのもあったけど
私はカルピスまんが劇場だったなぁ……
ちなみにロッキーなチャックは
カルピスまんが劇場ですな

フランダースとアメディオと
ラスカルは カルピスこども劇場
バロンは カルピスファミリー劇場


2025.03.27 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

ハ●スもカル●スも名作が揃っておりましたよねぇ(*^_^*)
今やカル●スはアサ●になっちゃって時代を感じます( ノД`)シクシク…
思えば当時ってサ●エさんもでしたけども、スポンサーが1社提供ってのも結構多かったような(;^_^A

残念なのが、今は放送するのにクレーム殺到になるのが多いんですよねぇ。
みな●ごハッチですらタイトルからアウトとかですし、フランダースの●とかも最後が悲惨だとか小公女●ーラもいじめを助長するとか…レ・ミゼラ●ルですらクレームつく時代ってどうよと(笑)

ワシはロッキ●チャックに萌えを教えて頂きましたよ~♡

ペ●ーヌとか覚えている方は少ないかな?と思ったんですけどもどの劇場作品だったかもご存じの方がいて良かった♡

ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

解除
jolly
2025.03.18 jolly

私もハウス食品世界名作劇場で育ちましたw
何の作品をリアルタイムで観ていたかで世代がわかるかも。

2025.03.19 cyaru

コメントありがとうございます。<(_ _)>

世界●作劇場は秀逸でしたからねぇ。赤毛●アンとか若草●語とか原作知ってても楽しめましたし、フラン●ースの犬なんか号泣したり、小公●セーラでは「何やっとんじゃ!」とテレビの前でいじめっ子に文句言ったり(笑)
そして民放だけでなく国営方法も秀逸が多かったんですよ~。
時折話の中にちょこっと出した事もあるんですけどもプリ●●リン物語とかニル●の大冒険、スプ●ンおばさんとか。
未来少年●ナンとかもNH●だったなぁ…ギガン●が後にナウ●カで出てきた時は「ふぉぉぉ!ギガン●だ!」と思いましたもん(*´▽`*)

えぇ言わずと知れたテレビっ子でございましたからね(笑)もしかすると年齢がバレたかも???
大丈夫。その為に木枯●紋次郎だしてる。うん!!

楽しんで頂けて良かったです♡
ラストまでお付き合いいただきありがとうございました<(_ _)>

★~★欄を拝借★~★
今回も23件(内1件、年齢バレるので非公開。笑)もの沢山のコメントありがとうございました<(_ _)>
また次回、楽しんで頂けるような話を投稿できるよう頑張ります。

読んで頂きありがとうございました<(_ _)>

解除

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

必要とされなくても、私はここにいます

あう
恋愛
辺境公爵カーネル・クリスのもとへ嫁ぐことになったフィレ・バーナード。 けれど彼女は、理想の妻になろうとも、誰かの上に立とうともしなかった。 口出ししない。 判断を奪わない。 必要以上に関わらない。 ただ静かに、そこにいるだけ。 そんな彼女の在り方は、少しずつ屋敷の空気を変えていく。 張りつめていた人々の距離はやわらぎ、日々の営みは穏やかに整いはじめる。 何かを勝ち取る物語ではない。 誰かを打ち負かす物語でもない。 それでも確かに、彼女がいることで守られていくものがある。 これは、 声高に愛を叫ばなくても伝わる想いと、 何も奪わないからこそ育っていく信頼を描く、 静かでやさしい結婚生活の物語。

刺繍妻

拓海のり
恋愛
男爵令嬢メアリーは魔力も無くて、十五歳で寄り親の侯爵家に侍女見習いとして奉公に上がった。二十歳まで務めた後、同じ寄り子の子爵家に嫁に行ったが。九千字ぐらいのお話です。

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

後妻の条件を出したら……

しゃーりん
恋愛
妻と離婚した伯爵令息アークライトは、友人に聞かれて自分が後妻に望む条件をいくつか挙げた。 格上の貴族から厄介な女性を押しつけられることを危惧し、友人の勧めで伯爵令嬢マデリーンと結婚することになった。 だがこのマデリーン、アークライトの出した条件にそれほどズレてはいないが、貴族令嬢としての教育を受けていないという驚きの事実が発覚したのだ。 しかし、明るく真面目なマデリーンをアークライトはすぐに好きになるというお話です。

【完結】帳簿係の地味令嬢、商会の不正を見抜いて王宮に見出されました。

夏灯みかん
恋愛
王都の商工会議所で働く、地味な帳簿係エミリー。 真面目に記録をつけることだけが取り柄の彼女は、同僚から軽く扱われ、雑用を押しつけられる日々を送っていた。 そんなある日――エミリーは、孤児院への配給物資の記録に、わずかな“ズレ”があることに気づく。 数量は合っている。 だが、なぜか中身の重量だけが減っている。 違和感を覚えたエミリーは、自ら倉庫へ足を運び、現物を確認する。 そこで見つけたのは、帳簿では見えない“静かな不正”だった。 しかしその矢先――不正の責任を押しつけられ、職場から追い出されそうになってしまう。 それでもエミリーは諦めない。ただ一つ、自分が積み上げてきた“記録”を信じて。 「では、正式な監査をお願いいたします」 やがてその記録は、王宮の政務監査官リオンの目に留まり―― 隠されていた不正はすべて暴かれる。 そして、彼女を軽んじていた者たちは、その代償を支払うことになる。 これは、地味で目立たなかった一人の帳簿係が、 “正しく記録した”ことで不正を暴き、王宮に見出されるまでの物語。

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。