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第14話 チップとスティック、さぁどっち!
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試食会の場にいないかったスティルの元にリサはスティック状に挙げた芋を皿に盛ってやってきた。
正確な年齢は判らないがスティルが50歳を超えているであろう事は解るのでスティックだ。
イクル子爵も加齢とともに固いものを食べると歯ぐきから血が出てしまっていた。
乳歯はないはずなのに歯が動くと言いながら、固めるために冷たいものを飲むと沁みると言っていたし、ついでに若者は聴かないコブシの効いた歌を聞くと心に沁みると言いながら、干したイカを炙って酒を飲んでいた。
リサにはその言動全てが理解不能。
――きっと酔っ払うと歯のぐらつきも気にならないんだわ――
加齢と共に訪れる人体を形成する各部位の劣化。
父のイクル子爵と同じくスティルも虫眼鏡を使って書類を読んでいた。
リサはまだ書類を読むのに虫眼鏡を必要としないので、なんで虫眼鏡?スティルにも疑問の目を向ける。
「あぁ。奥さ…リサ様、どうされました?」
「芋チップを作ったんですけども、スティル様にもどうかと思いまして。スティック状にしたので柔らかいですよ」
「これはこれは!私は芋が大好物なんです」
「良かったです。塩は控えめにしていますわ」
「助かります。塩分の取り過ぎ…半年前の健康診断で医師に注意をされましてね。血圧も高いので注意しているんですよ」
スティックの芋はポリポリと音は立てない。
豚のラードで揚げているので植物脂と違ってサクサク感はまだ残っている。
シャクシャクとスティルは美味しそうに食べ始めた。
芋チップを作る前。
部屋から出て行ったレンダールの姿が見えなくなるとスティルたちは「申し訳ございません」またもやリサに頭を下げた。
「ずっと抑圧されていたようなものですから」
「奥様っ!旦那様って顔は良いけど悪い人じゃないんですよ。信じてあげてください!」
――へ?顔は悪いけど、じゃないの?――
貧乏だったけれど、自由奔放に育ったリサには想像もつかない生き方を強いられてきたのがレンダールなのだとスティルは言う。
実はレンダールは軽く女性不信でもあり、触れられないわけではないけれど女性が嫌いである。
レンダールをそうしたのはかつての婚約者第3王女シシリーだった。
シシリーは物心ついた時からの婚約者で両親からも周囲からもシシリー以外の女性を女性と思ってはならない、そんな教育をずっと受けてきたのでシシリーが酷いルッキズム崇拝者であっても「そんなものか」と受け入れてきた。
『いい?お前で我慢をしてあげているのは顔が良いからよ?』
顔を会わせるたびにシシリーはレンダールを指さしてそう言った。
シシリー曰く、レンダールに足らないものは立場だと隠しもせずに言い切っていた。
王族のシシリーは自分に見合う男は同等の王族もしくは皇族で「侯爵家だなんて。最悪」機嫌が悪い時は必ずそう言われた。
同じくらい大事なのが容姿。
そのためレンダールは自分ではどうしようもない上背については高身長の父親に感謝をした。
太らないように、痩せないように。
食事にも気を使って筋肉も付け過ぎずなさ過ぎず。
見た目に五月蝿かったシシリーはニキビなど吹き出物も、領地の視察に行けば付き物である擦り傷、切り傷も見える場所につけることは許してくれなかった。
『せめて公爵家ならよかったのに』と侯爵家であるレンダールはシシリーに詰られ、両親からも『王女殿下の機嫌を損ねることはするな』と言われ続けてきた。
傍がどう思っているかレンダールは知らないが、シシリーは帝国の皇子に見初められるとアッサリとレンダールを捨てた。
「旦那様が引き籠もるようになったのは自分自身の価値は何だったのかと過去の全てを否定されたような気がしたのです。あとは…」
「王女からも親からも解き放たれたのに結婚を強要されたから?ですか?」
「おそらくは」
――同情する余地はここにもあったかぁ――
しかし、リサにはそれ以上の感情移入をしてやるつもりはサラッサラ~になかった。
レンダールと比べれば安い覚悟かも知れないけれど、リサにだって背負っているものはあるし覚悟も決めてきた。
必要以上に関わってはならない。深入りは禁物。一線を画すのは必須。
それはこれからも変わらぬ信念。
――だって老舗の売り文句にあるじゃない――
真実一路。変わらぬ味を守って創業●●年!!
レンタル奥様に求められるのは立場を死守する老舗店舗と同じく揺るぎない信念なのだ。
そう。芋チップのように固い信念なのである。
正確な年齢は判らないがスティルが50歳を超えているであろう事は解るのでスティックだ。
イクル子爵も加齢とともに固いものを食べると歯ぐきから血が出てしまっていた。
乳歯はないはずなのに歯が動くと言いながら、固めるために冷たいものを飲むと沁みると言っていたし、ついでに若者は聴かないコブシの効いた歌を聞くと心に沁みると言いながら、干したイカを炙って酒を飲んでいた。
リサにはその言動全てが理解不能。
――きっと酔っ払うと歯のぐらつきも気にならないんだわ――
加齢と共に訪れる人体を形成する各部位の劣化。
父のイクル子爵と同じくスティルも虫眼鏡を使って書類を読んでいた。
リサはまだ書類を読むのに虫眼鏡を必要としないので、なんで虫眼鏡?スティルにも疑問の目を向ける。
「あぁ。奥さ…リサ様、どうされました?」
「芋チップを作ったんですけども、スティル様にもどうかと思いまして。スティック状にしたので柔らかいですよ」
「これはこれは!私は芋が大好物なんです」
「良かったです。塩は控えめにしていますわ」
「助かります。塩分の取り過ぎ…半年前の健康診断で医師に注意をされましてね。血圧も高いので注意しているんですよ」
スティックの芋はポリポリと音は立てない。
豚のラードで揚げているので植物脂と違ってサクサク感はまだ残っている。
シャクシャクとスティルは美味しそうに食べ始めた。
芋チップを作る前。
部屋から出て行ったレンダールの姿が見えなくなるとスティルたちは「申し訳ございません」またもやリサに頭を下げた。
「ずっと抑圧されていたようなものですから」
「奥様っ!旦那様って顔は良いけど悪い人じゃないんですよ。信じてあげてください!」
――へ?顔は悪いけど、じゃないの?――
貧乏だったけれど、自由奔放に育ったリサには想像もつかない生き方を強いられてきたのがレンダールなのだとスティルは言う。
実はレンダールは軽く女性不信でもあり、触れられないわけではないけれど女性が嫌いである。
レンダールをそうしたのはかつての婚約者第3王女シシリーだった。
シシリーは物心ついた時からの婚約者で両親からも周囲からもシシリー以外の女性を女性と思ってはならない、そんな教育をずっと受けてきたのでシシリーが酷いルッキズム崇拝者であっても「そんなものか」と受け入れてきた。
『いい?お前で我慢をしてあげているのは顔が良いからよ?』
顔を会わせるたびにシシリーはレンダールを指さしてそう言った。
シシリー曰く、レンダールに足らないものは立場だと隠しもせずに言い切っていた。
王族のシシリーは自分に見合う男は同等の王族もしくは皇族で「侯爵家だなんて。最悪」機嫌が悪い時は必ずそう言われた。
同じくらい大事なのが容姿。
そのためレンダールは自分ではどうしようもない上背については高身長の父親に感謝をした。
太らないように、痩せないように。
食事にも気を使って筋肉も付け過ぎずなさ過ぎず。
見た目に五月蝿かったシシリーはニキビなど吹き出物も、領地の視察に行けば付き物である擦り傷、切り傷も見える場所につけることは許してくれなかった。
『せめて公爵家ならよかったのに』と侯爵家であるレンダールはシシリーに詰られ、両親からも『王女殿下の機嫌を損ねることはするな』と言われ続けてきた。
傍がどう思っているかレンダールは知らないが、シシリーは帝国の皇子に見初められるとアッサリとレンダールを捨てた。
「旦那様が引き籠もるようになったのは自分自身の価値は何だったのかと過去の全てを否定されたような気がしたのです。あとは…」
「王女からも親からも解き放たれたのに結婚を強要されたから?ですか?」
「おそらくは」
――同情する余地はここにもあったかぁ――
しかし、リサにはそれ以上の感情移入をしてやるつもりはサラッサラ~になかった。
レンダールと比べれば安い覚悟かも知れないけれど、リサにだって背負っているものはあるし覚悟も決めてきた。
必要以上に関わってはならない。深入りは禁物。一線を画すのは必須。
それはこれからも変わらぬ信念。
――だって老舗の売り文句にあるじゃない――
真実一路。変わらぬ味を守って創業●●年!!
レンタル奥様に求められるのは立場を死守する老舗店舗と同じく揺るぎない信念なのだ。
そう。芋チップのように固い信念なのである。
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