辺境のバツ4領主に嫁ぎました

cyaru

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リズリーはサンバを踊る

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リズリーがパトリックに嫁いで2か月半が過ぎた。

3月も半ばとなればド田舎の山の中腹。比較的お日様が良くあたる山の斜面には「サクラ」という満開になると大変美しいのだが、それよりも花が終わる時。つまりは散り際が更に美しさと何とも言えないもの寂しさを醸し出す木が植えられている。

【花は桜木 人は武士 柱は檜 魚は鯛 小袖はもみじ 花はみよしの】

猪鹿蝶で有名な花札の桜に【みよしの】と書かれているという風情。
何が一番か…と説いたと言われるこの言葉だが、リズリー的には首を傾げる部分がある。

桜に限らず花は其々美しいし‥‥なによりリズリーは剣豪である。
武を嗜むが、潔く散るのがどうかと聞かれれば…うーん…。


そんなリズリーの隣で能天気なパトリックは桜並木の簡素化した上に省略した説明を始める。
簡素化した上に省略したソレを説明と言えるのか…。突っ込んではいけない。

パトリックなのだから。


「風が吹くとブワーっと花びらが舞うんだよ」
「なら尚の事、残したほうが良いのでは御座いませんか?」


パトリックは、

ひと目会ったその日から!恋の花咲く事もある!パンチDEデート!

…いや失礼。2人DEデート。

リズリーは領地視察を行っている。
周りを見ても他に従者はいない。人手不足で護衛に人数は割けないからである。

気を付けよう。
フィーリング・カップル・5対5ではない。今は2人きりだ。


今日のデート、いや視察はこの桜の木を伐採して日当たりも良いのでレジャー施設を作ってみてはどうか?と言う国王(以前の王太子、ベータテープのエロビの元所有者)の言葉に「どんなもんかね?」と思いつつの物である。

【田舎創生1億ミケ計画】という単なるバラマキ政策の一環である。
純金カツオでもと思ったが、盗難の危険性があるのでお勧めできない。
純金カツオは、タタキにされるでもなく溶かされたという過去の歴史を持つ。

海がないので純金ヤマメという案も出たが、川魚は結構スリムなのでタチウオに見えてしまう危険性もはらんでいる。


「見るのは花の満開と散る時くらいだし、観光客は来ないからなぁ」


パトリックは伐採してレジャー施設を作った方が現金収入があるのでは?と考えているようである。

樹齢も100年近くになる杉、檜などがある山も所有しているのだが、こちらは環境対策だと言って頑として伐採をしないのだ。

諄いようだがパトリックが良いのは【見た目】だけなのである。


木が植えられていれば温室ガス問題が解決する――否である。
木は30年ほど経つと吐き出す酸素量は低下する。伐採と植林という定期的なサイクルのほうがより効果が高いのである。

わかりやすく言えば、人間の食事量のようなものだ。
苗木と呼ばれる頃は人間でいう幼少期。しっかりとしたケアが必要なのだが、ぐんぐんと伸びてくると「運動部所属のDC、DK」の食事量のようにガンガン二酸化炭素を吸って光合成をし、酸素を吐き出す。

だが、人間でいう40代、50代になってもその当時の食事量か?と言えばNO。

「この頃、胃もたれしちゃってね」
「係長!そういう時はこれ!」
「おぉっ!良いモノ持ってるじゃないか!」
「パンッシ●ンでパン・PAN・ぱん!」

これこれ、そこの君。「え?50代でも係長って…」っと細かい所を気にしてはいけない。

近い将来、都市伝説となる【年功序列】の賜物で【昇格無くとも年昇給がない年はない】くらい右肩上がりの給与とボーナスでそれなりな生活が出来た時代の遺物なのである。
間違ってはいけない。産物ではなく遺物だ。



「あちらの山にある杉やヒノキは伐採し、植林を致しましょう。ここのサクラは残しましょう」

「え?なんであっちは良くて、こっちはダメなんだ!?」


リズリーの目が細~くなる。細い目をしても山の緑が目に優しいのは何故なのだろう。
パトリックの残念さがどうでも良くなる大自然の偉大さよ。天晴あっぱれである。


「白いフルフェイス仮面に切符切られる破落戸のような事を言ってはいけません。ダメなものはダメ。飲酒も無免許も速度違反も一時停止もダメなものはダメ。見つかったのは運が悪いのではなく、大事故を起こす前のありがたい切符、お札、洗礼と気持ちを切り替えるのが大事です。見えない力で守って貰ったと思わないと!」

「ど、どうして二段階右折で切符を切られた事を知ってるんだ…」

「右左折ウィンカーの使用頻度が高いパトリック様ですから、容易に想像がつきます。大事の前の小事。ヒヤリハットを侮ってはならないのです」

「ヒヤリハット?」

「えぇ、人は【うぉ!危なかった】って時はヒヤっとしますでしょう?その時にハッと気が付く事が大事なのです。今は伐採しても、数十年後には保全する事で環境維持と雇用拡大となり、良かったという時代が来ます。目先の利益だけを考えていれば事を仕損じます」


向かいの山に茂る杉。リズリーはパトリックの隣に立って木々を指差す。


「伐採と植林をする事で伐採した木材は乾燥させて建材などに利用を致します。サクラは手入れすればまだ大丈夫です。かの国の後楽園を御覧なさい。四季を問わず花が咲く見事な庭園でしてよ。梅が終われば桃、桃が終われば桜、桜が終われはツツジ、ツツジが終われば藤、気候が異なりますから全く同じには出来ませんが、そうやって人々の目を楽しませる弛まぬ努力も必要なのです。

お手本があるのですから、それを分析し改良。オリジナルを作ればよいのです。オリジナルが出来た時、それが唯一無二となります。ただの模写となればパクリで叩かれますが、似て非なる物となれば何故か崇められるのです」


「建材!?でも木は燃える。火事になった時に大変な事になる」

ぺちっ! リズリーのデコパッチンがパトリックのひたいに決まる。

のではなく。今や木材は時代のゴールドフィンガーですわよ!」

「なっなんだ!そのゴールドフィンガーというのは!」

「あら?ご存じありませんの?アチチ・アチ♡るんだろうかぁ~♪」


ハッとパトリックはリズリーを信じられない!という表情で見ている。
何か変な事を言ったかしら?手の甲は先に向こう側だったかしら?と両手の手首から先を裏表にして首を傾げた。


「あぁ!エリック・マ●ティンだなっ!」

ぺちっ! リズリーのデコパッチンが再度パトリックのひたいに決まる。


「エリック・マ●ティン様はMr.BIGのヴォーカリストですわ!!

GO様がカヴァーされたヴィン・ラ・ヴィダ・〇カ!!
リッキー・マー●ィン様ですわよ!有名なアーティストですのよっ!
サッカーでよく聞きますでしょう!

ヒィ!ウィ!ゴゥ!アレ!アレ!アレ!♪Go! Go! Go!アレ!アレ!アレ!」


思わずアレ!アレ!アレ!♪っとラテン系のダンスまでしてしまったリズリー。
ボーっとなったパトリックと目が合う。

そこに感じたのは羞恥!


「サンバよぅ~!!サンバッ!サンバーッ!!」

踊って誤魔化し、木の影にフェードアウトしていくより、逃げ出す術がなかった。

だが、リズリーも間違っている。
リッキー・マー●ィン様はアメリカ合衆国プエルト・リコ自治連邦区のご出身である。

サンバはブラジル。ラテン系だからと一括りにしてはいけないのだ。
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