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第03話 妻に貸付?破産させる気?
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池に面したテラスでキャットファイト、その流れで最後は池に落ちて溺れかけたが大きな怪我をしている訳ではなく、3日目には通常の生活に戻る事が出来た。
通常と言っても、屋敷の者が知る通常ではなく私の通常に戻っただけ。
奥様としてどんな仕事をしていたのか全く覚えがないし、束になるほど離縁状を突きつけられている正妻なんだから屋敷の事は特に何もしなくても問題はない。
むしろ、仕事をしないとして離縁状がさらに増える事になるかも知れないけれど、私には医師が書いた診断書という天下御免の免罪符がある。
「フンフフン♪」
「奥様、ご機嫌ですね」
「そりゃそうよ。これ見て。私がしていた事業なんですって」
言葉の使い方は少しおかしいけれど、覚えがないのだから仕方がない。
持参金で始めた事業は「落ち穂事業」とタイトルが付いたファイルに纏められていた。
(私って、こんなことをしてたんだわ)
落ち穂は小麦を収穫した後の穂で使い道としては乾燥させ、束にして薪替わりの燃焼材として使っているけれど、私の事業書を読むと、細かく砕いて牛や馬の飼料に混ぜ込んで販売をしていたようだ。
「凄いわね。飼料にするだけで年間300万ルルも売り上げがあるわ」
「あれ?奥様、悩んでましたよ」
「悩む?こんなに売り上げがあるのに?」
「赤字だって言ってました」
「赤字ぃぃ?!」
バサバサとページを捲ってみると確かに赤字だった。
そのまま飼料に混ぜ込めばいいのではなく、状態の良いものを選別するために不合格となった落ち穂は廃棄するしかなく、廃棄にも料金がかかる。
「廃棄の費用が売り上げを上回っているじゃない?!」
「はい。だから赤字だって頭を抱えておられましたよ?」
「こうしちゃいられないわ。こんな事業は辞めるが勝ちよ!」
「でも、第3王子殿下が飼料を気に入ってくれているから辞めるに辞められないって」
なんてことなの。ここで王族が絡んで来たら本当に辞められないじゃない。
って事は赤字がどんどん嵩んでいく。行きつく先は破産しかないってこと?
マリエンさんは香りのよいお茶を淹れながら更に続けた。
「それに奥様。確かに私達とかからすると300万ルルは大金なんですけど、事業としては…」
(ハッ!!そうよ。これ、事業なのよ)
ギュギギギ…さっきまで宝の地図かと思う勢いで読んでいたけど、事業としては年間で300万ルルしか売り上げがないとなると、それは失敗‥‥
ブルル!!冗談じゃない。
「でも、他の事業は旦那様が許可をしないので出来ないって困っておられましたよね」
「そうなの?!」
「はい。記憶がない奥様にこういうのはなんですけど…旦那様が執事さんを介して赤字補填で奥様に貸し付けをされていたの――」
「なんですってぇ?!貸付?!」
「は、はい…借用書は棚のファイルに…」
慌てて借用書を纏めたファイルを手に取って中を見た私は灰になった気分。
(嘘でしょ…300万ルルしか売り上げないのに2年であの夫から500万ルル借りてるし)
ブレン伯爵は何故私に貸付を?
事業だから夫婦であることを切り離して考えているのかと思うけれど、私の行う事業には制約をしていたと言う。
「旦那様は私が知る限り、落ち穂事業以外は認めないって仰ってました」
つまりは…明らかに儲かる事はさせなかったし、させないということ。
許せる?いいや、許せない!
(よぉし、やってやるわ。がっつり儲けて一括返金してやるわ!)
でも、そこで燃え上がりそうになった心が冷えた。
現在の売り上げからするに、同じことをしていたら貸し付けが増えるだけ。
かと言って、他の事業を始めようとすれば制約を付けてきたというのだから許可が下りないだろう。
個人でやるにしても、結婚をしている間は「ブレン伯爵夫人」なのだからブレン伯爵家を切り離す事が出来ない。事業として出来るのは落ち穂を使った事業だけ。
(道は2つしかないわね)
今のまま、同じことを続けて貸付を増やしていくか。
今の材料を使って儲けを大きく伸ばすか。
勿論後者の方が良いのは解っているけれど。
(落ち穂を使って…どうすればいいかしら)
通常と言っても、屋敷の者が知る通常ではなく私の通常に戻っただけ。
奥様としてどんな仕事をしていたのか全く覚えがないし、束になるほど離縁状を突きつけられている正妻なんだから屋敷の事は特に何もしなくても問題はない。
むしろ、仕事をしないとして離縁状がさらに増える事になるかも知れないけれど、私には医師が書いた診断書という天下御免の免罪符がある。
「フンフフン♪」
「奥様、ご機嫌ですね」
「そりゃそうよ。これ見て。私がしていた事業なんですって」
言葉の使い方は少しおかしいけれど、覚えがないのだから仕方がない。
持参金で始めた事業は「落ち穂事業」とタイトルが付いたファイルに纏められていた。
(私って、こんなことをしてたんだわ)
落ち穂は小麦を収穫した後の穂で使い道としては乾燥させ、束にして薪替わりの燃焼材として使っているけれど、私の事業書を読むと、細かく砕いて牛や馬の飼料に混ぜ込んで販売をしていたようだ。
「凄いわね。飼料にするだけで年間300万ルルも売り上げがあるわ」
「あれ?奥様、悩んでましたよ」
「悩む?こんなに売り上げがあるのに?」
「赤字だって言ってました」
「赤字ぃぃ?!」
バサバサとページを捲ってみると確かに赤字だった。
そのまま飼料に混ぜ込めばいいのではなく、状態の良いものを選別するために不合格となった落ち穂は廃棄するしかなく、廃棄にも料金がかかる。
「廃棄の費用が売り上げを上回っているじゃない?!」
「はい。だから赤字だって頭を抱えておられましたよ?」
「こうしちゃいられないわ。こんな事業は辞めるが勝ちよ!」
「でも、第3王子殿下が飼料を気に入ってくれているから辞めるに辞められないって」
なんてことなの。ここで王族が絡んで来たら本当に辞められないじゃない。
って事は赤字がどんどん嵩んでいく。行きつく先は破産しかないってこと?
マリエンさんは香りのよいお茶を淹れながら更に続けた。
「それに奥様。確かに私達とかからすると300万ルルは大金なんですけど、事業としては…」
(ハッ!!そうよ。これ、事業なのよ)
ギュギギギ…さっきまで宝の地図かと思う勢いで読んでいたけど、事業としては年間で300万ルルしか売り上げがないとなると、それは失敗‥‥
ブルル!!冗談じゃない。
「でも、他の事業は旦那様が許可をしないので出来ないって困っておられましたよね」
「そうなの?!」
「はい。記憶がない奥様にこういうのはなんですけど…旦那様が執事さんを介して赤字補填で奥様に貸し付けをされていたの――」
「なんですってぇ?!貸付?!」
「は、はい…借用書は棚のファイルに…」
慌てて借用書を纏めたファイルを手に取って中を見た私は灰になった気分。
(嘘でしょ…300万ルルしか売り上げないのに2年であの夫から500万ルル借りてるし)
ブレン伯爵は何故私に貸付を?
事業だから夫婦であることを切り離して考えているのかと思うけれど、私の行う事業には制約をしていたと言う。
「旦那様は私が知る限り、落ち穂事業以外は認めないって仰ってました」
つまりは…明らかに儲かる事はさせなかったし、させないということ。
許せる?いいや、許せない!
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個人でやるにしても、結婚をしている間は「ブレン伯爵夫人」なのだからブレン伯爵家を切り離す事が出来ない。事業として出来るのは落ち穂を使った事業だけ。
(道は2つしかないわね)
今のまま、同じことを続けて貸付を増やしていくか。
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