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第03話 気持ち悪すぎる
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パトリシアの気も知らず、ルーフェルズ伯爵はネコナデ声で話しかけてきた。
「言いたい事はあるだろうが、聡いお前だ。お前がレオン君を好きなのは解る。だがその座をエルドラに譲ってやるのも姉として当然の事だと思わないか?」
(譲れ?それが父親の言う事?)
この婚約は両家の合意で結ばれたもの。
伯爵家の次男であるレオンがルーフェルズ伯爵家に婿入りをするからパトリシアは女当主になるので、その為に色々な事を背負ってきた。
女性が嫁入りをするのと違って男性が婿入りをする場合、確かに次男、三男と家督を継がない子息は多いので新しい相手は直ぐに見つかるだろうが、女当主は何かと舐められやすく下手をすればお家乗っ取りで近づいて来る婿入り候補もいるので下調べに時間が掛かるのだ。
「では…私の相手はどうなるのですか」
「つまらんことを気にするな」
ルーフェルズ伯爵の言葉はパトリシアの嘆きを含んだ意見を一蹴した。
「父さんたちも考えたんだ。考えた上にパティにも良い縁談を結んできたんだ。な?パティは結婚できない訳じゃない。相手だってちゃーんと見つけてきた。何の心配もしなくていいんだ。そんなに急いでと思うだろうが…今は離れた方が良い。お互い世帯を持って気持ちが落ち着いたら会いに来ればいい」
父親の言葉はパトリシアの心を打ち砕いた。
(私が当主になるんじゃなかったの?)
父親の言葉はパトリシアを外に出す事を示唆している。
道化となって踊っていただけじゃない。
父親の言葉はエルドラの思いを汲んだ言葉。
嫉妬と憎悪に駆られたパトリシアを遠ざけ、エルドラの安全を確保したいだけ。
当の本人はどう思っているのだろうかとパトリシアはレオンを見た。
伏せがちになった目。長く婚約者をしていれば解る。この場をやり過ごそうとしている顔だ。
「パティ。騙す形になってしまったが、騙そうとしていた訳じゃない、解ってくれるよな」
レオンの言葉に心が冷える。
謝罪の言葉よりも先に自分の弁明、そして行為を正当化するために許せではなく理解しろという。
(はっ。私って、こんな男の何処が好きだったの?)
これ以上レオンの言葉など続きを聞く気にもなれなかった。
心なんて一瞬で粉々に砕け散るものだとパトリシアは知った。
貴族の娘として生まれたからには家のために嫁ぐ。言葉だけは知っていたがこの身に降りかかってくれば感じ方がこんなに違う。
何か言えば「少しの間、良い思いをしただろう」とレオンと過ごした時間が父の功績になってしまいそうな気さえした。
そしてその父は、妹のエルドラには思いのままの生き方を与え、自分には家のためにと務めを押し付けようとしている。
もう痛みを感じる心もない。
パトリシアは、無になった心を感じるとやっと言葉が音になって発する事が出来た。
「お父様。話は解りました」
「パティ、レオン君がまだ何か言いたそうだが?」
「部外者の声など必要ありません。縁談を纏めてくださったと仰っていましたよね。どなたです?顔合わせなど日取りを決めねばなりませんでしょう?」
1分、いや1秒ですらこの部屋にいる者とは場所も時間も共有したくない。
離れられるのなら例え相手が地獄の悪魔であろうと構わない。
目の前にいる人の形をした異形が気持ち悪すぎてこの部屋の、この屋敷の空気を吸い込みたくなかった。
「言いたい事はあるだろうが、聡いお前だ。お前がレオン君を好きなのは解る。だがその座をエルドラに譲ってやるのも姉として当然の事だと思わないか?」
(譲れ?それが父親の言う事?)
この婚約は両家の合意で結ばれたもの。
伯爵家の次男であるレオンがルーフェルズ伯爵家に婿入りをするからパトリシアは女当主になるので、その為に色々な事を背負ってきた。
女性が嫁入りをするのと違って男性が婿入りをする場合、確かに次男、三男と家督を継がない子息は多いので新しい相手は直ぐに見つかるだろうが、女当主は何かと舐められやすく下手をすればお家乗っ取りで近づいて来る婿入り候補もいるので下調べに時間が掛かるのだ。
「では…私の相手はどうなるのですか」
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ルーフェルズ伯爵の言葉はパトリシアの嘆きを含んだ意見を一蹴した。
「父さんたちも考えたんだ。考えた上にパティにも良い縁談を結んできたんだ。な?パティは結婚できない訳じゃない。相手だってちゃーんと見つけてきた。何の心配もしなくていいんだ。そんなに急いでと思うだろうが…今は離れた方が良い。お互い世帯を持って気持ちが落ち着いたら会いに来ればいい」
父親の言葉はパトリシアの心を打ち砕いた。
(私が当主になるんじゃなかったの?)
父親の言葉はパトリシアを外に出す事を示唆している。
道化となって踊っていただけじゃない。
父親の言葉はエルドラの思いを汲んだ言葉。
嫉妬と憎悪に駆られたパトリシアを遠ざけ、エルドラの安全を確保したいだけ。
当の本人はどう思っているのだろうかとパトリシアはレオンを見た。
伏せがちになった目。長く婚約者をしていれば解る。この場をやり過ごそうとしている顔だ。
「パティ。騙す形になってしまったが、騙そうとしていた訳じゃない、解ってくれるよな」
レオンの言葉に心が冷える。
謝罪の言葉よりも先に自分の弁明、そして行為を正当化するために許せではなく理解しろという。
(はっ。私って、こんな男の何処が好きだったの?)
これ以上レオンの言葉など続きを聞く気にもなれなかった。
心なんて一瞬で粉々に砕け散るものだとパトリシアは知った。
貴族の娘として生まれたからには家のために嫁ぐ。言葉だけは知っていたがこの身に降りかかってくれば感じ方がこんなに違う。
何か言えば「少しの間、良い思いをしただろう」とレオンと過ごした時間が父の功績になってしまいそうな気さえした。
そしてその父は、妹のエルドラには思いのままの生き方を与え、自分には家のためにと務めを押し付けようとしている。
もう痛みを感じる心もない。
パトリシアは、無になった心を感じるとやっと言葉が音になって発する事が出来た。
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「部外者の声など必要ありません。縁談を纏めてくださったと仰っていましたよね。どなたです?顔合わせなど日取りを決めねばなりませんでしょう?」
1分、いや1秒ですらこの部屋にいる者とは場所も時間も共有したくない。
離れられるのなら例え相手が地獄の悪魔であろうと構わない。
目の前にいる人の形をした異形が気持ち悪すぎてこの部屋の、この屋敷の空気を吸い込みたくなかった。
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