捨てたのはあなたです。

cyaru

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第30話  車輪付き椅子、試作品完成

心配そうにジョーズが「そーっと」と、指示を出しメイドが皿に移し替えている焼き菓子やケーキ。
その中の1つがパトリシアの心にぐっさりと刺さった。

「どうされました?」
「これっ!これって…」
「あぁ、マカロンですね。新作スィーツなんですよ。お目が高――」
「そうじゃなくて!これなのよ!」
「だからマカロン…あぁ!はい、そうです。チェリブロ味なんです。チェリーブロッサムをツイン!丸ごとクリームでバチーンと挟み込ん――」
「そうじゃないわよ!この形!これよ。持って行っていい?」
「え、えぇ‥構いませんが」

庭師はまだ庭で作業中。ついでに下男もいるので何とかなりそう。
パトリシアはチェリブロ味のマカロン、要はサクランボをクリームと生地で挟みヘタが飛び出たマカロンを持って庭に飛び出し、庭師の元に走った。

「どうされました。そんなに急いで」
「はぁはぁ‥これよ…」
「コレ?お菓子ですか?」
「そうなんだけど、そうじゃなくて!椅子っ!椅子よ」
「椅子?あぁあの話。一応ね、廃材を使って椅子の側面に小型の荷車で使っていた車輪を付けたんですよ。足がぶらぶらになるんでステップみたいな足置きも付けたんです。座ってみても壊れないので重さは大丈夫なんですが」
「前後に倒れちゃう!よねっ!」
「そうなんです」
「それを解決するのがこのマカロンよ!!」

パトリシアは庭師に説明をした。
試作で作った車輪付きの椅子の前にこのマカロンの様にさらに小さな車輪を平行で並べ、車輪を繋ぐ軸を足置きの下部に突き刺すように取り付ける。

足置きは両足分、2つあるのでそれぞれに取り付けると車輪は全部で4つ安定をするし、小さな車輪は軸を吊るので360度クルクルと回る。移動をする時に行きたい方向に小さな車輪が回転するのだ。

庭師は壁の修理をする下男を呼ぶと下男は車輪の付いた椅子を抱えて走ってきた。

聞いた話を忘れないうちにと作業をしつつも作った車輪付き椅子。

早速小さな車輪を先ずは4つ作り、2組にする。
軸を足置きに取り付ける、そう説明すると下男は小さな車輪は直ぐに作れないが代用品があると廃材置き場に走って行った。

戻ってきた下男が抱えていたのは、もう使わない手押しの一輪車に付いていた車輪である。小ぶりの荷車の車輪からするとかなり小さな車輪だ。

車輪の中央には元々固定用のナットもある。2つを5cmほど間隔をあけて軸で固定。
軸にはさらに穴をあけ、上向きになる棒を突き刺し、足置きの下部にねじ込んだ。

「簡易ですけど‥どうですかね」
「足置きをもう少し上にした方が良いな。前輪に高さが出ちまった」

手押しの一輪車の車輪は直径が25cmほど。実際に取り付けると足置きが邪魔になった。
急いで足置きとして固定した板を外し、位置を付け替えた。

「不格好だぁ」
「座るとかなり膝が上になっちゃうな」

だが、形は出来た。あとはまず動くかどうかだ。

「押してみるわ」

パトリシアが押してみるが全く動かない。
何故だろうと思ったら土の上なので、大きな車輪の接地部分が土に埋もれてしまっていた。

「石畳みの上なら進むかもしれませんね」

庭師が車輪付き椅子を持ち上げて庭の小道に敷き詰めた石畳みの上に置いた。

パトリシアが椅子の背もたれを押すと側面の大きな車輪が回る。
くねくねと動いてみれば、ちゃんと小さな車輪が行きたい方向に回転して右に左にと舵を取る事が出来た。前後左右に傾くことも無い。

「やった!」
「でも、椅子の背凭れですからねぇ‥押し難いですよね。縦型のバーでも取り付けてみますか」
「ダメだよ。背中にバーを取り付けるボルトの先が飛び出すぞ」
「そうかぁ。背凭れってこうみると厚さがないよな」
「そこはまた改良すればいいわ。早速今日の夕食会で車輪付き椅子、デヴューさせるわよ」

改良する点はこれから幾つも出て来るだろう。
パッと見ただけでひじ掛けに車輪を取り付けているので手はお行儀よく太ももの上に置かねばならないし、進むには進むがガタガタと揺れるので音は大きいし、お尻も痛くなりそう。足置きの高さもどうするか考えねばならない。押す時のバーもそうだし、見た目も酷い。

仮に謁見など出ても良いとライオットが言ってもこの椅子の見た目だとライオットが恥を掻いてしまう。

当面はクッションを置いて座るとか、屋敷の中だけの使用とせねばならないがパトリシアは嬉しかった。

(これでライオットを先ずは屋敷の中だけでもあちこちに連れて行ける)

そして庭だ。日光浴も出来る。一番は寝台から離れられる時間が出来る事だ。

ライオットは寝台に上半身を起こしただけなので姿は見えないが、メイドたちがケーキや焼き菓子を片手に窓から出られるテラスに出てパトリシア達が何をしているんだろうと様子を伺っていた。

パトリシアは大きく手を振って「やったぁ!!」ついでにジャンプして喜びを表現した。
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