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第31話 夕食③―①
「これは何だ?」
「じゃじゃーん。聞くも涙、見るも涙、語るはOH~饒舌ぅ!なぁんと製作費ゼロ!手間賃のみの要改良な車輪付き椅子でぇーっす」
「製作費は良いが、要改良って問題しかないんじゃないのか」
「仕方ありません。試作の第1号機ですからね。これからバージョンアップしていくんです。さ、さ、座ってみてください」
「座る?私が?」
「ライオット様以外に誰が座るんです?さぁ、ライオット様をドーンと座らせてくださいまし」
ニッコニコのパトリシアに号令を掛けられて2人の男性従者がライオットを椅子に座らせた。
「どうです?座り心地が今は最悪ですよね」
「解っているなら聞くな。クッションは‥ない方が良い。尻が変な形に浮く」
「そうですか…でもそのままだとガタガタするのでお尻が痛くなりますよ」
「食事室に行くだけだ。耐えられる」
「限界に挑戦みたいに言わないでくださいよ。もぉ」
ぷぅっと頬を膨らませるパトリシアにライオットは「ありがとう」と言うと頬はぺしゃっと潰れた。
「さぁ食事室までGO!GO!」
パトリシアが背凭れを押すと、ゴゴゴゴ…。大きな音がするが板張りの廊下の上を車輪付き椅子は動いていく。床板に傷も出来るが誰も文句は言わない。
ライオットが負傷し帰還してから男性従者に抱えられている訳でもなく、部屋から出たなんて初めての事。そしてこれから庭にも出る機会が出来た。こんな嬉しいことはない。床の傷なんてどうでもよかった。
「ライオット様、右に曲がりまぁす!」
「あぁ…手加減してくれよ?」
「大丈夫です。この椅子、何処の国の椅子?スイス椅~子ってね。うわっ。寒っ」
「自分で言っておいて凍えるな」
「御心配は無用!この椅子が出来た事で心がメラメラ燃えてますからね」
食事室の手前の曲がり角も楽々。
よいしょと椅子を持ち上げて方向転換しなくてもスイスイ進んでいった。但し音は凄いが。
物々しい大きな音が近づいてきて食事室で待つ侯爵夫妻も「なんなの?!何の音?」椅子から立ち上がって廊下まで出てきた。
「父上、母上。遅くなって申し訳ございません」
「ライ!!」
「っっっ!!」
奇妙な椅子だが、ライオットが部屋から出た。使用人に抱えられている訳でもなく部屋から出て食事室に向かって来る事に侯爵夫妻は感動して名を呼ぶのがやっとだった。
「何時ぶりになるかな…」
「そうですね。遠征の前もバタバタしていたし3年でしょうか」
「今日はライオットの好物ばかりよ。偶然かしらね」
侯爵夫人はパトリシアにパチンとウィンクをした。
いつもは侯爵夫妻だけが利用する食事室。ライオットは碌に食事もしなかったしパトリシアが来てからは部屋で食事をとっていた。
食事室のランプはいつも通りの明るさを提供しているが、ランプの明るさ以上に全体が明るく見える。使用人たちも笑顔で、中には涙ぐんでいるものまでいた。
「父上、ロセに頼んでいたのですが、婚姻届けを仕上げてください」
「いいのか?」
「はい。勿論です」
「お前じゃない。パトリシアさん。いいのか?」
パトリシアは自分に振られると思っていなかったのでレタスを1枚、大きな葉っぱのまま口に入れたところだった。
(やっば!こっち見てないと思ったからぱくっとやっちゃったぁ)
急いで「もっもっ…もっもっ」懸命に咀嚼して口の中に引きこむようにレタスを食べた。
「なんでしょう?」
「ふははは。本当に…君って子は。何と愛らしいんだ」
「そ、そうでしょうか…(お行儀悪いだけです。ごめんなさい)」
「いいんだ。いいんだよ。沢山食べなさい」
「そうよ。好きなものをたくさん食べて。これなんか美味しいわよ?」
(侯爵様も夫人もやっぱり優しい♡食事も美味しい~♡幸せぇ♡)
「で?シア。婚姻届け。だよな?」
「ん?‥‥あ、はいっ!そうです。婚姻届けお願いします」
「解った。直ぐに手続きをしよう。ついでだが…シアと呼ばれているのかね?」
そうですと答えようとしたがライオットが口を挟んだ。
「父上。母上もですがシアと呼ぶのは私だけです。ご承知おきを」
「‥‥うわっはっは。そうか。そうか。そうだったか」
「もぅ。この子ったら。ちょっとくらい良いじゃない」
「ダメです。絶対に。それとシアは事業をします。バレス侯爵家として全面バックアップ。お願いします」
(くわっ!!何それ。投資は了解したけど全面バックアップなんて聞いてないわよ?)
バレス侯爵家の夕食の時間は和やかに進んでいった。
「じゃじゃーん。聞くも涙、見るも涙、語るはOH~饒舌ぅ!なぁんと製作費ゼロ!手間賃のみの要改良な車輪付き椅子でぇーっす」
「製作費は良いが、要改良って問題しかないんじゃないのか」
「仕方ありません。試作の第1号機ですからね。これからバージョンアップしていくんです。さ、さ、座ってみてください」
「座る?私が?」
「ライオット様以外に誰が座るんです?さぁ、ライオット様をドーンと座らせてくださいまし」
ニッコニコのパトリシアに号令を掛けられて2人の男性従者がライオットを椅子に座らせた。
「どうです?座り心地が今は最悪ですよね」
「解っているなら聞くな。クッションは‥ない方が良い。尻が変な形に浮く」
「そうですか…でもそのままだとガタガタするのでお尻が痛くなりますよ」
「食事室に行くだけだ。耐えられる」
「限界に挑戦みたいに言わないでくださいよ。もぉ」
ぷぅっと頬を膨らませるパトリシアにライオットは「ありがとう」と言うと頬はぺしゃっと潰れた。
「さぁ食事室までGO!GO!」
パトリシアが背凭れを押すと、ゴゴゴゴ…。大きな音がするが板張りの廊下の上を車輪付き椅子は動いていく。床板に傷も出来るが誰も文句は言わない。
ライオットが負傷し帰還してから男性従者に抱えられている訳でもなく、部屋から出たなんて初めての事。そしてこれから庭にも出る機会が出来た。こんな嬉しいことはない。床の傷なんてどうでもよかった。
「ライオット様、右に曲がりまぁす!」
「あぁ…手加減してくれよ?」
「大丈夫です。この椅子、何処の国の椅子?スイス椅~子ってね。うわっ。寒っ」
「自分で言っておいて凍えるな」
「御心配は無用!この椅子が出来た事で心がメラメラ燃えてますからね」
食事室の手前の曲がり角も楽々。
よいしょと椅子を持ち上げて方向転換しなくてもスイスイ進んでいった。但し音は凄いが。
物々しい大きな音が近づいてきて食事室で待つ侯爵夫妻も「なんなの?!何の音?」椅子から立ち上がって廊下まで出てきた。
「父上、母上。遅くなって申し訳ございません」
「ライ!!」
「っっっ!!」
奇妙な椅子だが、ライオットが部屋から出た。使用人に抱えられている訳でもなく部屋から出て食事室に向かって来る事に侯爵夫妻は感動して名を呼ぶのがやっとだった。
「何時ぶりになるかな…」
「そうですね。遠征の前もバタバタしていたし3年でしょうか」
「今日はライオットの好物ばかりよ。偶然かしらね」
侯爵夫人はパトリシアにパチンとウィンクをした。
いつもは侯爵夫妻だけが利用する食事室。ライオットは碌に食事もしなかったしパトリシアが来てからは部屋で食事をとっていた。
食事室のランプはいつも通りの明るさを提供しているが、ランプの明るさ以上に全体が明るく見える。使用人たちも笑顔で、中には涙ぐんでいるものまでいた。
「父上、ロセに頼んでいたのですが、婚姻届けを仕上げてください」
「いいのか?」
「はい。勿論です」
「お前じゃない。パトリシアさん。いいのか?」
パトリシアは自分に振られると思っていなかったのでレタスを1枚、大きな葉っぱのまま口に入れたところだった。
(やっば!こっち見てないと思ったからぱくっとやっちゃったぁ)
急いで「もっもっ…もっもっ」懸命に咀嚼して口の中に引きこむようにレタスを食べた。
「なんでしょう?」
「ふははは。本当に…君って子は。何と愛らしいんだ」
「そ、そうでしょうか…(お行儀悪いだけです。ごめんなさい)」
「いいんだ。いいんだよ。沢山食べなさい」
「そうよ。好きなものをたくさん食べて。これなんか美味しいわよ?」
(侯爵様も夫人もやっぱり優しい♡食事も美味しい~♡幸せぇ♡)
「で?シア。婚姻届け。だよな?」
「ん?‥‥あ、はいっ!そうです。婚姻届けお願いします」
「解った。直ぐに手続きをしよう。ついでだが…シアと呼ばれているのかね?」
そうですと答えようとしたがライオットが口を挟んだ。
「父上。母上もですがシアと呼ぶのは私だけです。ご承知おきを」
「‥‥うわっはっは。そうか。そうか。そうだったか」
「もぅ。この子ったら。ちょっとくらい良いじゃない」
「ダメです。絶対に。それとシアは事業をします。バレス侯爵家として全面バックアップ。お願いします」
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