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第32話 夕食③―②
ルーフェルズ伯爵家ではウェルゾ伯爵夫妻とレオン、そしてレオンの兄夫婦を招いて夕食会を開くため、テーブルには2人のメイドが食器を並べていた。
「あら?どうして全部同じ食器じゃないの?あったでしょう?」
「奥様…それが…あのぅ‥ないんです」
「何故?3か月前に私の友達を招いた時の食器で良いのよ。それにこのワイン…安物の合成酒じゃないの!」
3カ月前にルーフェルズ伯爵夫人は20人ほど友人を招いて食事会をした。今回の人数はそれよりも少ないルーフェルズ伯爵家が3人、ウェルゾ伯爵家が5人。足りるはずだ。メイドが「ない」と返す言葉が信じられなかった。
流石に日頃使っている食器なんか姻戚関係になると言っても出せないし、合成酒なんか話にもならない。
食事会で使った食器やワインは目も舌も肥えた夫人たちを唸らせた。
それくらいのレベルの物を出せばウェルゾ伯爵家もさっさとお披露目会場は決めて来る、そう思っていた。
ずるずると引き延ばされているのは金もないくせにと舐められているのでは?と思ったので、この食事会で同じ伯爵家、どっちの方が裕福なのかを思い知らせ、そんな家に息子が婿入りできるんだぞ?と思わせる意味もあった。
「あれはパトリシアお嬢様がリッチメン伯爵家の先代夫人様からお借りした食器なんです」
「なんですって?!」
「ワインは…本当のことを言うと価格は安いワインなんです。でも希少なワインを醸造するワイナリーのものでそれもパトリシアお嬢様が用意をしてくださって…」
「あの子が?そんなことする訳ないわ」
「本当です。ワイン用のブドウを収穫するのを何日も手伝って駄賃代わりに安く分けて貰ったと」
ルーフェルズ伯爵夫人が予想もしていなかった事に驚いていると料理長が声を掛けてきた。
「奥様、今日はもう暇をさせて頂きます。いつも通りお3方の夕食は作ってありますので」
「えっ?何を言ってるの?今日は食事会よ?」
「らしいですね。ケータリングでもされるんでしょう?」
「はぁっ?!ケータリング?何を言ってるの。貴方が作るのよ!貴方がっ!」
「作るって言ってもどうやって?ご家族の食事でしたら何とか賄ってきましたけど、いつも食材を持ってきていた商会がまだ来ないんですよ?旦那様や奥様、エルドラ様の食事だってストックしている食材であと2日分もありませんよ」
ルーフェルズ伯爵夫人は気にもしていなかった。
食材や消耗品を納品する商会は裏口を利用しているし、顔を合わせることも無い。
「執事を呼んで!」
ルーフェルズ伯爵夫人は叫んだが、2人のメイドも料理長もお互いを顔を見て首を横に振る。
「あのぅ…執事ってバレックタさんですか?」
「そうよ!他に誰がいるの」
「バレックタさんなら昨日付けで退職されましたよ?」
「退職ですって?!」
「はい。今夜は食事会だから夕方にセッティングするようにと一昨日伝達がありました。でもお料理は担当ではないので」
ルーフェルズ伯爵夫人が料理長を見ると手を前に突き出して知らないと手振りと声で示した。
「厨房には10日ごとに纏めて食材が届けられるんです。本来なら届くのは昨日だったのでバレックタさんには月に一度請求書がきたら渡すんですけど、請求書は次の納品なので会う必要も無くて。ただ食材が届かないので連絡箱にその旨は書いて入れておきましたけど」
昨日付けで退職をしたのならバレックタ宛に入れた連絡箱の連絡用紙は誰も見ていない。
こうなったら背に腹は代えられない。
「そのワイナリーに行って食事会に出したのと同じワインを買って来て。それとあるもので料理を作って頂戴。足らなさそうなら急いで買いに走って頂戴」
しかし彼らは動かない。
「何をしてるの!早く!」
急かす夫人に料理長は言った。
「でしたら現金取引になりますので、頂くものを頂かないと」
2人のメイドも言った。
「安いと言っても店頭にあるかどうかは解りませんよ?特別に分けて貰ったワインだったので。同等となると…1本数十万はすると思います。何よりワイナリーはここから片道50kmはあります。今日中には戻れません」
ルーフェルズ伯爵夫人は眩暈を覚えたが困りごとは連鎖する
こんな時に限って。
ルーフェルズ伯爵夫人は従者の声にハッとした。
「奥様、ウェルゾ伯爵家のご夫妻とご子息夫妻が見えられております。どちらにお通し致しましょう」
「そ、そうね…取り敢えず応接室に通して。あなた達は買い出し!行ってきなさい!」
「ですから。それなら現金取引になるので、代金を頂かないと」
夫人は困った。手持ちの現金などないのだ。硬貨なら探せばあるだろうが子供の駄賃にも足らない。
「立て替えておいて。明日清算するわ」
「無理です」
料理長とメイドは口を揃えて言った。
「あら?どうして全部同じ食器じゃないの?あったでしょう?」
「奥様…それが…あのぅ‥ないんです」
「何故?3か月前に私の友達を招いた時の食器で良いのよ。それにこのワイン…安物の合成酒じゃないの!」
3カ月前にルーフェルズ伯爵夫人は20人ほど友人を招いて食事会をした。今回の人数はそれよりも少ないルーフェルズ伯爵家が3人、ウェルゾ伯爵家が5人。足りるはずだ。メイドが「ない」と返す言葉が信じられなかった。
流石に日頃使っている食器なんか姻戚関係になると言っても出せないし、合成酒なんか話にもならない。
食事会で使った食器やワインは目も舌も肥えた夫人たちを唸らせた。
それくらいのレベルの物を出せばウェルゾ伯爵家もさっさとお披露目会場は決めて来る、そう思っていた。
ずるずると引き延ばされているのは金もないくせにと舐められているのでは?と思ったので、この食事会で同じ伯爵家、どっちの方が裕福なのかを思い知らせ、そんな家に息子が婿入りできるんだぞ?と思わせる意味もあった。
「あれはパトリシアお嬢様がリッチメン伯爵家の先代夫人様からお借りした食器なんです」
「なんですって?!」
「ワインは…本当のことを言うと価格は安いワインなんです。でも希少なワインを醸造するワイナリーのものでそれもパトリシアお嬢様が用意をしてくださって…」
「あの子が?そんなことする訳ないわ」
「本当です。ワイン用のブドウを収穫するのを何日も手伝って駄賃代わりに安く分けて貰ったと」
ルーフェルズ伯爵夫人が予想もしていなかった事に驚いていると料理長が声を掛けてきた。
「奥様、今日はもう暇をさせて頂きます。いつも通りお3方の夕食は作ってありますので」
「えっ?何を言ってるの?今日は食事会よ?」
「らしいですね。ケータリングでもされるんでしょう?」
「はぁっ?!ケータリング?何を言ってるの。貴方が作るのよ!貴方がっ!」
「作るって言ってもどうやって?ご家族の食事でしたら何とか賄ってきましたけど、いつも食材を持ってきていた商会がまだ来ないんですよ?旦那様や奥様、エルドラ様の食事だってストックしている食材であと2日分もありませんよ」
ルーフェルズ伯爵夫人は気にもしていなかった。
食材や消耗品を納品する商会は裏口を利用しているし、顔を合わせることも無い。
「執事を呼んで!」
ルーフェルズ伯爵夫人は叫んだが、2人のメイドも料理長もお互いを顔を見て首を横に振る。
「あのぅ…執事ってバレックタさんですか?」
「そうよ!他に誰がいるの」
「バレックタさんなら昨日付けで退職されましたよ?」
「退職ですって?!」
「はい。今夜は食事会だから夕方にセッティングするようにと一昨日伝達がありました。でもお料理は担当ではないので」
ルーフェルズ伯爵夫人が料理長を見ると手を前に突き出して知らないと手振りと声で示した。
「厨房には10日ごとに纏めて食材が届けられるんです。本来なら届くのは昨日だったのでバレックタさんには月に一度請求書がきたら渡すんですけど、請求書は次の納品なので会う必要も無くて。ただ食材が届かないので連絡箱にその旨は書いて入れておきましたけど」
昨日付けで退職をしたのならバレックタ宛に入れた連絡箱の連絡用紙は誰も見ていない。
こうなったら背に腹は代えられない。
「そのワイナリーに行って食事会に出したのと同じワインを買って来て。それとあるもので料理を作って頂戴。足らなさそうなら急いで買いに走って頂戴」
しかし彼らは動かない。
「何をしてるの!早く!」
急かす夫人に料理長は言った。
「でしたら現金取引になりますので、頂くものを頂かないと」
2人のメイドも言った。
「安いと言っても店頭にあるかどうかは解りませんよ?特別に分けて貰ったワインだったので。同等となると…1本数十万はすると思います。何よりワイナリーはここから片道50kmはあります。今日中には戻れません」
ルーフェルズ伯爵夫人は眩暈を覚えたが困りごとは連鎖する
こんな時に限って。
ルーフェルズ伯爵夫人は従者の声にハッとした。
「奥様、ウェルゾ伯爵家のご夫妻とご子息夫妻が見えられております。どちらにお通し致しましょう」
「そ、そうね…取り敢えず応接室に通して。あなた達は買い出し!行ってきなさい!」
「ですから。それなら現金取引になるので、代金を頂かないと」
夫人は困った。手持ちの現金などないのだ。硬貨なら探せばあるだろうが子供の駄賃にも足らない。
「立て替えておいて。明日清算するわ」
「無理です」
料理長とメイドは口を揃えて言った。
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