捨てたのはあなたです。

cyaru

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第60話  危険な二度寝

(どうしてこうなった?何故?WHY?)

昨夜のことを覚えていない訳ではない。掛布を捲って下半身のチェックが必要ないのは解っている。大事な純潔はまだ温存中。

しかし、昨夜は時計の針が日付を超えるまで3時間と少しライオットに色々とアレ!やコレ!をソコも?!っとばかりにしっかり下味をつけられた気分。

そして目が覚めたら向かい合わせに横になるライオットの顔が一番に飛び込んできた。

「何を朝から百面相しているんだ。昨夜ので足らなかったか」
「足ります。足りてます。飽和状態ですっ」
「そうか?私は消化不良だがな」

(やっぱりつまみ食いをしたの?え?私がつまみ食い?うーん…うーん)

思考が追い付かず、うんうんと唸っているとグイっ!!体を引き寄せられる。

「まだ6時だ。もう少し寝ろ」
「6時っ?!もう起きな――」
「まだだ。今日は一緒に出掛けるから体力温存だ」

無駄に腕の力はあるので、背中から回された手は手の平がパトリシアの後頭部をホールド。全く動けない。膝蹴りをいれるわけにもいかないが、秋になると朝方は少し冷える。
ライオットの体温もあり、ついつい「二度寝も良いかも」と二度寝の誘惑に負けたパトリシアはウトウト。

次に目が覚めたのはジョーズの元気な声だった。

「おはようございます!!今朝は朝食がまだのよ…ぅ…」

突然途切れるジョーズの声。
寝間着ははだけていないが、ライオットの寝台に見えるのはパトリシア。
ジョーズはハッと口元を隠し、左右を見て、もう一度左右を見た。

「‥‥うぅん…五月蝿い…えっ?!ジョーズさんっ?!」

ガバッと起き上がったパトリシア。
二度寝は目覚めが恐ろしく良くなるのは多分万国共通。

途端に声にするなら「あぁっ。私を見ないで!」ジョーズは手で自分を隠すようにして体を屈め、パトリシアと目どころか顔も合わないように隠してしまう。

(ジョーズさん。どちらかと言えば私の方が恥ずかしいんですけど)

しかしやはりライオットである。おそらくは全裸でもジョーズに見られるのを気にしないのか表情1つ変えずに「今日の予定は?」とジョーズの朝の日課を促す。

「は、はいっ。本日は少なめの朝食後ストレッチタイムを終えた後、10時30分出発で事業地の着工前の状態を視察、その後は昼食を商会、職人総勢120名で屋外ビュッフェ形式で終えまして15時ファルソ将軍閣下への挨拶、帰宅予定時間は17時となっております」
「解った。では朝食の前にシア、着替えておいで」
「ん?待って。視察?聞いてないんだけど?」
「昨日、ペルルーシャ商会の会頭が何か言っていなかったか?」
「ペルルー…あ、明日はよろしくって…この事だったの?」
「その通り。時間厳守だ」

ピッとライオットがパトリシアに着替えをしろと指で促すとパトリシアは「こうしちゃいられない」寝台を飛び出すと自室に向かい、洗顔だ、歯磨きが先だった、あー!着替えないと!!1人でバタバタしながらもメイドの助けを借りてライオットの部屋に戻って朝食をとった。

出掛ける際、馬車の後ろには小ぶりな荷馬車が付く。
何に使うのだろうと首を傾げていると荷台には車輪付き椅子が乗せられた。

ライオットは男性従者に横抱きにされても文句も言わずパトリシアと同じ馬車に乗る。
(うんうん。大きな進歩ね)

馬車の中では2人は向かい合わせではなく隣同士。
不意の揺れにライオットは踏ん張る事が出来ないので、片手は常に壁にあるバーを握っている。逆側にパトリシアが座り、咄嗟の時には抱えるのだ。

ゆっくりと馬車が進み、停車をするとライオットは仮面をつけてくれとパトリシアに差し出した。。
甲冑のバイザーのように頭部全体を覆うようなものではないが、仮面をつけた時に見える肌は左側の頬の中央から下と口元だけ。

以前は形の良い唇だったのだろうが、酷い裂傷だったようで一部が潰れてしまっている。

「初見の者も多いからな。怖がらせたくない」
「気にしないと思うけど…」
「シアはな。でも皆がシアと同じとは限らない。たとえシアの選んだ人間だとしても人の感情は千差万別。それにだ。仮面侯爵とか…少しカッコよくないか?」
「どこが!」
「響きが」

何故かパトリシアは響きと言われて打楽器のバチを打つ素振りをしたが、ライオットが仮面をつけるというのなら本人の意思。否定をする権利はパトリシアにはないので、後頭部で仮面が落ちないように紐を結んだ。

到着をすると5つの商会の面々が待っていた。
先に降りると、従者たちが荷車から車輪付き椅子を下ろしているが、足元を見てパトリシアは驚いた。

「驚いただろう?」
「えぇ。先に道を作ったの?」
「そうさ。工事をするのに材料を運ぶ荷馬車も土が剥き出しのままだと雨が降る日に翌日は搬入も出来ないからな。最後に少し補修をすればいいだけだ。これも何度も打ち合わせをして敷地の何処に家屋、何処に植え込み。しっかりと配置の計画が出来たからだ」

荷馬車の搬入用として工事中は使う道はライオットの車輪付き椅子もスイスイと走らせることが出来る。

「ありがとう」
「礼を言うのは完成してから皆で言い合おう」
「そうね…でもあのこんもりした山は何?」
「あれは更地だった時にライオット様が職人の手が空く時間や、子供たちの小遣い稼ぎに集めさせたんだ。凄いよな。これで基礎に使う砕石を買わなくてもいいなんて最初は全然判らなかったよ」

ライオットは本当に先の先まで見ているとパトリシアはつくづく感じた。

金を出せば何でも買えるが侯爵家と商会のやり取りだけになるので、敢えて手持無沙汰で収入の減る職人や職人の子供たちの小遣いのために石拾いや草むしりの仕事をさせた。

工事は家屋や工房を建設するだけではなく、大雨の時に浸水をしないよう土地の中を流れる2つの分水路も両岸に堰を設けるので当初の予定より工期は3カ月延びて1年と7カ月。

家屋そのものの建設は1年の予定。1年後には引っ越しが始まる。

その光景を想像していると背後から声を掛けられた。

「貴女がパトリシアさん?」

(誰?)

声の主はパトリシアの全く知らない女性だった。
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