捨てたのはあなたです。

cyaru

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第59-1話  甘い誘惑にはご注意

レオンが突然釈放された理由はルーフェルズ伯爵にあった。

ウェルゾ伯爵家が破産した今、訴えたところでエルドラの今後の治療費を支払えと言っても支払う人間はいない。完全に取りっぱぐれてしまった。

負傷者に対しての補償も訴えたが保留のまま。
時間の経過と共にあの日のエルドラの発言は背びれに尾びれを付けて民衆の間には広まってしまい、エルドラの方が悪い、そんな声も聞かれるようになった。

ルーフェルズ伯爵が一番焦ったのは爵位だけを残し、ウェルゾ伯爵家が破産、そして家人は今何処にいるかも判らない事だった。失うものが何もない人間ほど怖いものはない。

生きることが地獄で絞首刑になる方が彼らには天国なのだから、手っ取り早く絞首刑になるにはと考えたら貴族を手にかけるのが早い。
じっとりと首に嫌な汗が噴き出てきた。

金もないし、エルドラが入院している間は噛めないエルドラに出されるパン粥を味見と称して半分食べて飢えを凌いでいたが、退院すると自費で食料も用意をせねばならない。

ルーフェルズ伯爵は妻とエルドラを残し屋敷を出て残った資産を引き出せるだけ全て引き出して中級の宿屋を塒とし、閉山した鉱山しかない領地もエルドラに食事を届ける時に家印を持ち出し、売り払った。

てっきり妻がエルドラの面倒を見ているかと思いきや、妻は事情を知らない地方の友人の家を泊まり歩いていると噂を聞いた。よく金があったものだと思ったが考えたら落ちぶれる少し前まで金の事など考えずに夫婦とエルドラは買い物など好き勝手にしていたので、宝飾品などを売り飛ばしたのだろうと思い至った。

エルドラが退院する日にバレス侯爵は確かに来たが部屋の前で「退院おめでとう」と1言口にしただけで会話は出来なかった。

ルーフェルズ伯爵も理解はしている。

除籍の件、親子なんだからと思ったのはルーフェルズ伯爵だけでバレス侯爵は【除籍は言葉が重いからな。だがパトリシア嬢は情に厚い娘だ】と除籍についての見解と、バレス侯爵の見たパトリシアの感想を述べただけ。

バレス侯爵家に行ってもパトリシアには会わせて貰えないし、面倒を見るからと言った所で屋敷の中どころか門も開いてくれないだろうと。

手持ちが尽きたらどうしようか。そんな事を考えて食事をするために安そうな屋台を探して公園を歩いていると声を掛けられた。

「ルーフェルズ伯爵ではありません事?」
「そうですが‥‥貴女は?」

声を掛けてきたのは目が覚めるような美人だった。あと20、いや10も若ければ。そんな事も考えてしまったが女性は「食事はお済ですか?」とルーフェルズ伯爵を誘ってきた。

(これは美人とワンチャンなワンナイトもあり?)

下心全開で鼻の下をビロビロに伸ばしたルーフェルズ伯爵は女性に食事をご馳走になった。
デザートに女性をご馳走になっちゃおうかな。エロ親父となったルーフェルズ伯爵だったが女性は金の話をしようという。

てっきり事業でもするのかと思えば…。

「ウェルゾ伯爵家の子息レオン。ご存じよね?」

聞きたくもない名前だ。慰謝料やら色々ブン取ってやろうと考えたが爵位以外を失ったウェルゾ伯爵家からは何も取れない。

「知っているがなんだ」
「貴女の娘さん、彼に怪我を負わされたのよね。でも…治療費どころか?」
「知っているのなら話をしなくても良いだろうが」
「そうね。でも…医療院までの運賃くらいなら手に入るわよ?」
「なんだって?」

運賃なんか雀の涙だが、収入の術が全く無く1日1日手持ちの金が目減りするだけなのでルーフェルズ伯爵は食いついた。

「破産した人間って怖いのよ。娘さんの子供って子息の子供じゃなかったんでしょう?平民ならいざ知らず爵位持ちの托卵は重罪よ。そこを突かれたら破滅するのは貴方。折角どん底の生活を満喫しているウェルゾ伯爵は貴方の資産で貴族の生活にカムバックね」
「なっ!!」
「あら怖~い。でも本当の事よ?人間って痛いところを図星で突かれるとイキっちゃうものね?」
「ハンッ。だから何だというんだ。証拠がある訳でもないのに」
「証拠?そりゃ腹を開いてみる訳でもないんだから。でも憲兵隊には客の供述がある。それは公的書類よ。本当に子息の子供かも知れないけど、人の口って怖いの。知ってる?」
「・・・・」
「公的な供述がある。噂は広まっている。托卵の可能性がゼロではない。あ~怖い怖い」
「何が言いたいんだ」
「言ったでしょう?金の話よ。金額的にはたかが知れている金額だけど…訴えられた時に証拠となる供述調書が証拠にならなくなる方法があるの」
「托卵を匂わせる供述が…消える?」
「御名答」

ルーフェルズ伯爵は女の本心は解らないが話に食いついた。
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