捨てたのはあなたです。

cyaru

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第59-2話  甘い誘惑にはご注意

今回の事はレオンの暴力はいけないが、煽ったエルドラも悪いとしてエルドラのケガは痴話喧嘩の縺れなので訴えない。そうすれば事件ではないので供述調書は廃棄される。

記録に残るのは憲兵隊が飲み屋に行って男を連行、女を医療院に運んだという事実と名前だけ。申請を出来るのは現在被害者かも?とされてるルーフェルズ伯爵家だけだ。


「レオンって兵士なのよね。勤続も3年を超えている。解る?」

女は書類を差し出してきた。
ルーフェルズ伯爵はギョッとした。それはウェルゾ伯爵の家印が押された書類で「エルドラの負傷の治療費について」というもの。

驚いたのはそのタイトルではない。書かれている字が何度か見た記憶のあるウェルゾ伯爵のものではなかった事だ。

「この書類をあげる。直ぐに憲兵隊に行き見せるのよ」

足を組みかえた女性は書類を持っていない方の爪を見ながらフゥ♡爪に息を吹きかけた。

「娘さん、未成年だものね?」
「そうか!」

ルーフェルズ伯爵はピンときた。

エルドラはまだ未成年。親告罪になるのでルーフェルズ伯爵は事件ではないと申し出る。
そして女性の持っている書類を討伐隊に持って行く。

兵士は勤続が3年を超えると退団をするまで引き出す事は出来ないが、退職金代わりの金が国庫から積み立てられる。事件ではないがエルドラの治療費を負担するとなればその金を引き出せる。

レオンは暴行事件を起こしたとして除隊をされたか、されるかの時期。
仮に除隊になっていても、事件ではないので除隊は取り消され退団扱いになる。

「あんた、賢いな」
「そう?」
「ありがとう。で?いくら払えばいい?」
「お金なんて要らないわ。私は私がしたい事をしてるだけだもの」

本当に金を払う必要もなく、女性から書類を受け取ったルーフェルズ伯爵は先ず憲兵隊に走った。次に討伐隊に走り、翌日には本当にレオンの退職金代わりの金がエルドラの治療費として親であるルーフェルズ伯爵に支払われた。

レオンの勤続は9年だったので100万ほどだったがホクホク顔のルーフェルズ伯爵はその金を持って宿屋に戻った。

☆~☆

その夜、ルーフェルズ伯爵の宿泊している宿屋で火災が発生をした。
客も従業員も逃げ出したが、鎮火した後で1人の遺体が見つかった。

周囲にはワインの空き瓶が幾つも転がっていて、酔いつぶれて寝てしまい逃げられなかったのだろうとされた。宿泊名簿と部屋の割り当てからその遺体はルーフェルズ伯爵と判明したが、引き取りを頼んでも屋敷にいるエルドラは首を縦には振らずルーフェルズ伯爵は無縁仏と同じ墓地に埋葬をされることになった。

「奥様、これからどうなさいます?」
「釈放されたレオン、誘導して」
「畏まりました。それから荷物を載せた船は出航しました」
「そう?夫婦と息子で100万にもならなかったわね」
「ですが今回も人数はクリア出来ました。取引先は次回も50人との事です」
「勝手な事ばかり。消えてもいい人間集めるの苦労するのに」
「奥様、こちらは如何致しましょう」

奥様と呼ぶ男が差し出したのは討伐隊を示すマークの入った現金袋だった。

「駄賃よ。今夜はそれで良い物を食べなさい」
「ありがとうございます」

消火隊に運び出され、形ばかりに野に咲く花を添えられたルーフェルズ伯爵に女性は弔いの言葉を呟いた。

「賢いんじゃないのよ?貴方が愚かだっただけ」
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