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第20話 出すのは金か馬か
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片づけ屋の仕事をしていると古い品が出てくることがよくある。骨董品は稀だがアンティークは結構多い。その中でも茶器はかなりの値で買い取ってもらえ、下手をすると茶器だけで新築の家が建つ。
「も、もしだよ・・・その金貨とこの茶器…木彫りが本物だったら幾らになるんだろ」
「値は付けられません」
「え?そ、そうだよね・・・古いから買い取ってもらえな――」
「博物館行きの品ですから・・・モーセットで買い取るなら茶器は2億、金貨は22枚で10億。問題は木彫りです。500億・・・いえ、正教会が十倍は出すかも知れません」
「じゅばっ!十倍っ?!」
「はい。この木彫り。中の空洞をご覧ください。文字が掘ってあります。ソルティ王国の洞穴で見つかった塩湖石板文書にある文字に似ています。正教会の教祖が誕生したと言われているウハハ地方の品なら石板以外にも動物の骨や木簡、儀式に使ったと思われる物には残されているので、木彫りも儀式の品だとすれば天文学的数字になります」
「キュゥゥ~(ばたっ)」
「リヴァイヴァール様!大丈夫ですか?!」
リメンバー・失神。
たった3つでソレなら物置化したこの家全体で幾らになるかと考えたリヴァイヴァールは頭がショートしてしまい、白目を剥いて気絶してしまった。
★~★
そよそよと心地よい風が吹いてくる。
(フワフワだ・・・気持ちいいな・・・いい香り・・・)
目を開けると目の前に深緑の瞳があり、その中に自分が映っていた。
「気が付かれましたか?」
「うわっ!寝てた?!」
「寝ていたという表現は適切ではありません。気を失われておりました」
(一緒のような気もするけど)とは言えない。フワフワで良い香りだったのはステラの上着。
雪もちらほらと舞う天気だったので、厚めの防寒着を着ていたのだがステラは上着をリヴァイヴァールの枕にしていたのである。
「寒いだろ?ごめん!直ぐ着て!」
「大丈夫です。楽しくなってあれこれと見ていたので・・・こちらは解る範囲で書き取りを致しましたものです」
ボードに紙を挟んで形などを書きとっていくのだが、リヴァイヴァールが心地よい夢を見ている間にステラは半分ほどを書きとっていた。
「ありがとう。助かるよ」
「美術品ですが、ここにあるものは本物だと思います。それも無名時代でまだ世に出ていないものですね」
「またそんなお宝が・・・元の所有者に連絡をしないといけないな」
「ですが、ブートレイア王国にお住まいなのですよね?どなたです?」
「ブルゲンさんというんだ。仕事が忙しいらしくて」
「ブルゲン・・・でしたら宰相様でございます。代替わりをされたとお聞きしたのでここを売られたのかも知れませんね」
「知ってる人?」
「お会いした事は数回しか御座いませんが、母がブートレイア王国の出身で出国する際に宰相を務められていたのがグランド・ブルゲン様。お子様は養子でしたので、思い入れもなく売る事にされたのでしょう」
「そんな偉い人にあった事があるんだ・・・」
ビクッとステラの肩が震えるが、にっこりとリヴァイヴァールに微笑むと「気さくな方でしたので身分関係なく」と誤魔化した。
ステラは心の中で手を祈りの形に結んだ。うっかり「先代国王のシュルタス大伯父様の元に行った際に会った」と言いそうになったが回避できたことを神に感謝したのだ。
(あぶない、あぶない。気を付けないと)
自分から身バレするようなワードをポンポン言ってしまい、リヴァイヴァールが何か気が付いたかと思ったが「そうなのか。モーセットもブートレイアもフレンドリーだな」と全く気が付いていない。
やはりリヴァイヴァールは・・・いや、危険な発想だ。やめておこうとステラは書き取りした用紙を外し、一番後ろに回すと、まだ白紙の用紙を一番上にしてボードに挟み込んだ。
「他にも書き取り致しますか?」
「いや、先ずは鑑定士だ。モーセット王国の鑑定士は直ぐに来てくれるのかな?」
「王都の鑑定士よりも辺境領にいる鑑定士の方が手が空いていると思います。連絡をしてみましょうか?ですがプリスセア王国の方には報告はされませんの?」
「こっちは・・・暫く黙っていようと思うんだ」
報告はしなくてはいけないのだが、報告をすれば第2王子アドリアンの知る所になる。良い状態で残っている美術品などを王家に取り上げられるのは構わない。
それで適切な保管をしてくれるなら願ったりかなったりだが、そうならない可能性がある以上、国に報告をするのは今じゃないとリヴァイヴァールは考え、まずモーセット王国の鑑定士に見てもらう方を選んだ。
「ではモーセットに連絡を致します」
「手紙を送る時の代金は出すから負担はしなくていいよ」
「出すのは代金ではなく馬で御座いますが、事業所の馬をお使いになるのですか?」
「え?・・・」
この時、リヴァイヴァールは考えても見なかった。
まさか現辺境伯夫妻がやって来るなんて・・・。
「も、もしだよ・・・その金貨とこの茶器…木彫りが本物だったら幾らになるんだろ」
「値は付けられません」
「え?そ、そうだよね・・・古いから買い取ってもらえな――」
「博物館行きの品ですから・・・モーセットで買い取るなら茶器は2億、金貨は22枚で10億。問題は木彫りです。500億・・・いえ、正教会が十倍は出すかも知れません」
「じゅばっ!十倍っ?!」
「はい。この木彫り。中の空洞をご覧ください。文字が掘ってあります。ソルティ王国の洞穴で見つかった塩湖石板文書にある文字に似ています。正教会の教祖が誕生したと言われているウハハ地方の品なら石板以外にも動物の骨や木簡、儀式に使ったと思われる物には残されているので、木彫りも儀式の品だとすれば天文学的数字になります」
「キュゥゥ~(ばたっ)」
「リヴァイヴァール様!大丈夫ですか?!」
リメンバー・失神。
たった3つでソレなら物置化したこの家全体で幾らになるかと考えたリヴァイヴァールは頭がショートしてしまい、白目を剥いて気絶してしまった。
★~★
そよそよと心地よい風が吹いてくる。
(フワフワだ・・・気持ちいいな・・・いい香り・・・)
目を開けると目の前に深緑の瞳があり、その中に自分が映っていた。
「気が付かれましたか?」
「うわっ!寝てた?!」
「寝ていたという表現は適切ではありません。気を失われておりました」
(一緒のような気もするけど)とは言えない。フワフワで良い香りだったのはステラの上着。
雪もちらほらと舞う天気だったので、厚めの防寒着を着ていたのだがステラは上着をリヴァイヴァールの枕にしていたのである。
「寒いだろ?ごめん!直ぐ着て!」
「大丈夫です。楽しくなってあれこれと見ていたので・・・こちらは解る範囲で書き取りを致しましたものです」
ボードに紙を挟んで形などを書きとっていくのだが、リヴァイヴァールが心地よい夢を見ている間にステラは半分ほどを書きとっていた。
「ありがとう。助かるよ」
「美術品ですが、ここにあるものは本物だと思います。それも無名時代でまだ世に出ていないものですね」
「またそんなお宝が・・・元の所有者に連絡をしないといけないな」
「ですが、ブートレイア王国にお住まいなのですよね?どなたです?」
「ブルゲンさんというんだ。仕事が忙しいらしくて」
「ブルゲン・・・でしたら宰相様でございます。代替わりをされたとお聞きしたのでここを売られたのかも知れませんね」
「知ってる人?」
「お会いした事は数回しか御座いませんが、母がブートレイア王国の出身で出国する際に宰相を務められていたのがグランド・ブルゲン様。お子様は養子でしたので、思い入れもなく売る事にされたのでしょう」
「そんな偉い人にあった事があるんだ・・・」
ビクッとステラの肩が震えるが、にっこりとリヴァイヴァールに微笑むと「気さくな方でしたので身分関係なく」と誤魔化した。
ステラは心の中で手を祈りの形に結んだ。うっかり「先代国王のシュルタス大伯父様の元に行った際に会った」と言いそうになったが回避できたことを神に感謝したのだ。
(あぶない、あぶない。気を付けないと)
自分から身バレするようなワードをポンポン言ってしまい、リヴァイヴァールが何か気が付いたかと思ったが「そうなのか。モーセットもブートレイアもフレンドリーだな」と全く気が付いていない。
やはりリヴァイヴァールは・・・いや、危険な発想だ。やめておこうとステラは書き取りした用紙を外し、一番後ろに回すと、まだ白紙の用紙を一番上にしてボードに挟み込んだ。
「他にも書き取り致しますか?」
「いや、先ずは鑑定士だ。モーセット王国の鑑定士は直ぐに来てくれるのかな?」
「王都の鑑定士よりも辺境領にいる鑑定士の方が手が空いていると思います。連絡をしてみましょうか?ですがプリスセア王国の方には報告はされませんの?」
「こっちは・・・暫く黙っていようと思うんだ」
報告はしなくてはいけないのだが、報告をすれば第2王子アドリアンの知る所になる。良い状態で残っている美術品などを王家に取り上げられるのは構わない。
それで適切な保管をしてくれるなら願ったりかなったりだが、そうならない可能性がある以上、国に報告をするのは今じゃないとリヴァイヴァールは考え、まずモーセット王国の鑑定士に見てもらう方を選んだ。
「ではモーセットに連絡を致します」
「手紙を送る時の代金は出すから負担はしなくていいよ」
「出すのは代金ではなく馬で御座いますが、事業所の馬をお使いになるのですか?」
「え?・・・」
この時、リヴァイヴァールは考えても見なかった。
まさか現辺境伯夫妻がやって来るなんて・・・。
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