34 / 41
天国の扉?地獄の門?
しおりを挟む
そろそろ意識が飛ぶ、そうすれば終わる、楽になる。
そんな事を考えながらトリエは振り下ろされるベルトの痛みに耐えた。
変態爺はアフターケアもしっかりと行ってくれる。
己の欲求に応えてくれる者は大事にしてくれるからだ。
目覚めれば医療用の軟膏でベトベトになっているだろうが、沈み込むような寝台で寛げるし、使用人に言えば好きな食材で好きな物だけを好きなだけ食べさせてくれる。
その上、帰る時には法外な小遣いまでもらえるのだ。
トリエが変態爺と関りを切る事ができないのは、この至れり尽くせりなアフターケアがあるからである。
しかし、その日は違った。
興奮も最高潮に達している変態爺は息を切らせながら大きく振りかぶって、肘にスナップを利かせ始めた。その時だった。
「はい~。そこまで」
突然開いた扉から現れたのは王太子フェルナンドで、その後ろには王太子直属の近衛隊の隊服が見える。
「今は忙しい、後にしろ、フェルナンド」
トリエは変態爺の声にギョッとした。いくらここが無法地帯に等しい破落戸のたまり場だとしても相手は王太子。バルコニーから手を振る王太子夫妻とその子供たちは何度か遠目に見た事はあった。
年老いた国王と同等、いや今はそれ以上に民に慕われている王太子。
この変態爺は何者なのか。トリエは打たれた痛みも瞬時で吹っ飛ぶほどに驚いた。
「その小汚い爺を拘束しちゃって」
「はい」
「何をするんだ!こんな事をして許されるとでも思っているのか!」
トリエを打つことでいい加減紅潮していた頬は、怒りで顔全体が真っ赤になり変態爺はベルトを騎士に取り上げられて、その流れのままに捕縛用の縄で縛られていった。
「貴方の面倒を見るのはもう飽きちゃったんですよ。曾祖叔父」
「なんだと?親父を呼べ。息子のお前では話にならん!」
「父上は忙しくてね。来月ペーパークラフトの展示会があるんで、その作品作りにアンタに時間を割く余裕はないそうで。これを預かってきました」
変態爺の目の前にひらりと垂らして見せたのは勅命による拘束指示書だった。
変態爺はフェルナンドの曾祖父、国王の祖父の庶子の弟。
フェルナンドには曾祖叔父、国王には大叔父になる。
75歳だが、エリツィアナのように年を取ってから出来た子である。
まさかまだ子種があったとは?!と手を出した張本人の先先王が驚いたくらいだ。
市井の女に手を出してしまった先先王の隠し子と言われてきた。
その時代は反社会的な組織がごく当たり前に街で幅を利かせていた。
貴族ですら節税をして上納金を納めていた。
幾つかの組織があり、それを纏めるという事で彼らにも「生きる権利」を与える代わりに、「生きる場所」に制限をかけた。見張り役としてこの男を派遣した。しかし、国王の息子であるにも関わらず庶子であるというだけで虐げられてきた反動なのか。
幾つかの組織を纏める代わりに裏の会頭のような立場に納まって甘い汁を吸い続けてきた。
「俺はこの界隈で大人しくしていただろう」
喚く変態爺だが、確かに間違いではない。だが立場を利用して騎士団にも息のかかった者を捩じ込んで融通を聞かせてきたのも事実である。
元締めと呼ばれる男が何度捕縛をされても、実行犯ではないため直ぐに釈放をされていた。
冷たい牢ではなく、最低でも仮眠室で聴取も適当に惰眠を貪っていたのも変態爺の指示である。
「今回ね、もうすぐ僕が即位するにあたって新しく作っちゃいました~」
言葉は軽いがフェルナンドの目は全く笑っていない。
フェルナンドも第二王子もこの変態爺が大嫌いだった。父の国王の事も大叔父という立場を利用し公の場で辱めたり、好色なのは誰の影響なのか王妃や王子妃に手を出そうとした事もある。
元締めの男が何度捕縛しても直ぐ釈放されるのと同じで、この変態爺は自分では直接手を下さない。イーストノア王国には実行犯と共犯以外を取り締まる法がなかったのだ。
フェルナンドは妹のシャルノーがサウスノアに嫁いで、ノア大陸にサウスノアだけにある刑法を知った。「教唆」である。だが変態爺の息のかかった貴族も多く法案の成立はなかなか出来なかった。
貴族たちも似たり寄ったり。立場を利用して弱い立場の者に実行をさせるからである。そんな法案が成立してしまえば折角平民にやらせたのに自分たちまで巻き添えを食うからだ。
「これね。何度見直して議会に出しても通らないんですよね~。だからもう面倒になっちゃって。エヘっ。教唆も捕らえることが出来る法律をね?作ったんだよね~議会を通さずに~」
フェルナンドの顔から表情が消えた。
その顔はアクセルたちに見せるような仔犬の顔ではなく、獲物を前にした猟犬の顔。いや大蛇がまさに獲物を仕留めかかったかのような顔だった。
「勅令でな。排膿をするには元凶となる粉瘤を取り除くのが一番だ。粉瘤の中で膿という反社組織が育っていく。その粉瘤とはお前だ」
わなわなと唇を震わせる変態爺が連行される際、フェルナンドはそっと耳打ちした。
「父上は貴様の責任を取り、毒杯を賜る。庶子の大叔父とは言え難儀な事だ」
変態爺が近衛兵に連行された後、部屋の隅に移動しガタガタと震えるトリエをフェルナンドは見下ろした。トリエはゆっくりと顔を上げてフェルナンドに慈悲を乞うような目を見上げる。
「あの…アタシ…」
「君はね。罪状は色々あるんだけど【特別】だよ」
「とっ特別?見逃してくれるのですかっ」
トリエの顔はパッと明るくなる。
そして遅れて入ってきた大柄な男とその隣に居る不思議な男を見上げた。
大柄な男は王太子のフェルナンドに対しては対等に話をしている。
ボタンもキラキラしていて、どこかの【王族】だろうとトリエは頬を染めた。
女は力のある男の庇護下にいれば幸せになれる
トリエから金を取り上げながら母親はそう言った。その言葉に間違いはなかった。
元締めに気に入られている間は誰もが持ち上げてくれたし、いつもトリエを顎で使っていた娼婦も元締めと腕を組んで歩けばヘコヘコと頭を下げて、愛想笑いを浮かべトリエを褒めちぎった。
オーウェンに出し抜かれてしまったけれど、元締めを見限った後は変態爺には今まで以上に可愛がってもらえた。
――待って!それまでの男と切れたらステップアップって事?!――
「可愛がり甲斐がありそうですね」
「そうだな。フェルナンド殿。もらい受けても問題ないか?」
「どうぞ~どうぞ~。返品は不可って事で」
トリエは鼻が利く。この目の前の3人で一番立場が上なのは王太子ではなく一番大きくて若い男だと。
「では、陛下。私はこれで父上との野暮用がございましてね」
「そうでしたな。敬愛していたと言伝を頼めるだろうか」
「喜びます」小さくフェルナンドは微笑んだ。
フェルナンドの言葉にトリエは思わず口から感嘆符が出そうになった。
――陛下って!陛下って!!え?アタシ王妃様になるの?嘘?――
「あのぉ~アタシわぁぁ。トリエって言いますぅ。あのおじさんに捕まっちゃってぇ」
「黙れ」
「えっ…ヒッ、ヒィィィッ!!」
トリエの頬にバティウスの剣の刃が薄く走り、裂けた皮膚から血が滲み出た。
――コッチ系の加虐が好きって事なの?王妃じゃないの?――
「さてお嬢さん。一緒に天国の扉を開けましょうか」
カインドルがトリエに手を差し出す。
バティウスは小さく呟いた。
「地獄の門の間違いじゃないのか」
カインドルはトリエに向かって、にこっと微笑んだ。
「大丈夫。ないのは床だけなので」
「床がないって…なんですか…アタシ‥怖いっ」
「大丈夫、お嬢さんは底なしですからね」
「底なし?そんなに可愛いって事?」
「えぇ…その頭の軽さが神経を逆撫でするほどに」
トリエの頭の中では天秤が傾き始める。
加虐趣味のある大男よりも、目の前の不思議な男のほうがいいかも知れないと。
この男も陛下と呼ばれる男と対等に話をしている。
――アタシ、女の中では最高峰に飛び立てるんだわ――
「アタシ、頑張って飛びますね」
「是非」
カインドルは薄く笑った。
そんな事を考えながらトリエは振り下ろされるベルトの痛みに耐えた。
変態爺はアフターケアもしっかりと行ってくれる。
己の欲求に応えてくれる者は大事にしてくれるからだ。
目覚めれば医療用の軟膏でベトベトになっているだろうが、沈み込むような寝台で寛げるし、使用人に言えば好きな食材で好きな物だけを好きなだけ食べさせてくれる。
その上、帰る時には法外な小遣いまでもらえるのだ。
トリエが変態爺と関りを切る事ができないのは、この至れり尽くせりなアフターケアがあるからである。
しかし、その日は違った。
興奮も最高潮に達している変態爺は息を切らせながら大きく振りかぶって、肘にスナップを利かせ始めた。その時だった。
「はい~。そこまで」
突然開いた扉から現れたのは王太子フェルナンドで、その後ろには王太子直属の近衛隊の隊服が見える。
「今は忙しい、後にしろ、フェルナンド」
トリエは変態爺の声にギョッとした。いくらここが無法地帯に等しい破落戸のたまり場だとしても相手は王太子。バルコニーから手を振る王太子夫妻とその子供たちは何度か遠目に見た事はあった。
年老いた国王と同等、いや今はそれ以上に民に慕われている王太子。
この変態爺は何者なのか。トリエは打たれた痛みも瞬時で吹っ飛ぶほどに驚いた。
「その小汚い爺を拘束しちゃって」
「はい」
「何をするんだ!こんな事をして許されるとでも思っているのか!」
トリエを打つことでいい加減紅潮していた頬は、怒りで顔全体が真っ赤になり変態爺はベルトを騎士に取り上げられて、その流れのままに捕縛用の縄で縛られていった。
「貴方の面倒を見るのはもう飽きちゃったんですよ。曾祖叔父」
「なんだと?親父を呼べ。息子のお前では話にならん!」
「父上は忙しくてね。来月ペーパークラフトの展示会があるんで、その作品作りにアンタに時間を割く余裕はないそうで。これを預かってきました」
変態爺の目の前にひらりと垂らして見せたのは勅命による拘束指示書だった。
変態爺はフェルナンドの曾祖父、国王の祖父の庶子の弟。
フェルナンドには曾祖叔父、国王には大叔父になる。
75歳だが、エリツィアナのように年を取ってから出来た子である。
まさかまだ子種があったとは?!と手を出した張本人の先先王が驚いたくらいだ。
市井の女に手を出してしまった先先王の隠し子と言われてきた。
その時代は反社会的な組織がごく当たり前に街で幅を利かせていた。
貴族ですら節税をして上納金を納めていた。
幾つかの組織があり、それを纏めるという事で彼らにも「生きる権利」を与える代わりに、「生きる場所」に制限をかけた。見張り役としてこの男を派遣した。しかし、国王の息子であるにも関わらず庶子であるというだけで虐げられてきた反動なのか。
幾つかの組織を纏める代わりに裏の会頭のような立場に納まって甘い汁を吸い続けてきた。
「俺はこの界隈で大人しくしていただろう」
喚く変態爺だが、確かに間違いではない。だが立場を利用して騎士団にも息のかかった者を捩じ込んで融通を聞かせてきたのも事実である。
元締めと呼ばれる男が何度捕縛をされても、実行犯ではないため直ぐに釈放をされていた。
冷たい牢ではなく、最低でも仮眠室で聴取も適当に惰眠を貪っていたのも変態爺の指示である。
「今回ね、もうすぐ僕が即位するにあたって新しく作っちゃいました~」
言葉は軽いがフェルナンドの目は全く笑っていない。
フェルナンドも第二王子もこの変態爺が大嫌いだった。父の国王の事も大叔父という立場を利用し公の場で辱めたり、好色なのは誰の影響なのか王妃や王子妃に手を出そうとした事もある。
元締めの男が何度捕縛しても直ぐ釈放されるのと同じで、この変態爺は自分では直接手を下さない。イーストノア王国には実行犯と共犯以外を取り締まる法がなかったのだ。
フェルナンドは妹のシャルノーがサウスノアに嫁いで、ノア大陸にサウスノアだけにある刑法を知った。「教唆」である。だが変態爺の息のかかった貴族も多く法案の成立はなかなか出来なかった。
貴族たちも似たり寄ったり。立場を利用して弱い立場の者に実行をさせるからである。そんな法案が成立してしまえば折角平民にやらせたのに自分たちまで巻き添えを食うからだ。
「これね。何度見直して議会に出しても通らないんですよね~。だからもう面倒になっちゃって。エヘっ。教唆も捕らえることが出来る法律をね?作ったんだよね~議会を通さずに~」
フェルナンドの顔から表情が消えた。
その顔はアクセルたちに見せるような仔犬の顔ではなく、獲物を前にした猟犬の顔。いや大蛇がまさに獲物を仕留めかかったかのような顔だった。
「勅令でな。排膿をするには元凶となる粉瘤を取り除くのが一番だ。粉瘤の中で膿という反社組織が育っていく。その粉瘤とはお前だ」
わなわなと唇を震わせる変態爺が連行される際、フェルナンドはそっと耳打ちした。
「父上は貴様の責任を取り、毒杯を賜る。庶子の大叔父とは言え難儀な事だ」
変態爺が近衛兵に連行された後、部屋の隅に移動しガタガタと震えるトリエをフェルナンドは見下ろした。トリエはゆっくりと顔を上げてフェルナンドに慈悲を乞うような目を見上げる。
「あの…アタシ…」
「君はね。罪状は色々あるんだけど【特別】だよ」
「とっ特別?見逃してくれるのですかっ」
トリエの顔はパッと明るくなる。
そして遅れて入ってきた大柄な男とその隣に居る不思議な男を見上げた。
大柄な男は王太子のフェルナンドに対しては対等に話をしている。
ボタンもキラキラしていて、どこかの【王族】だろうとトリエは頬を染めた。
女は力のある男の庇護下にいれば幸せになれる
トリエから金を取り上げながら母親はそう言った。その言葉に間違いはなかった。
元締めに気に入られている間は誰もが持ち上げてくれたし、いつもトリエを顎で使っていた娼婦も元締めと腕を組んで歩けばヘコヘコと頭を下げて、愛想笑いを浮かべトリエを褒めちぎった。
オーウェンに出し抜かれてしまったけれど、元締めを見限った後は変態爺には今まで以上に可愛がってもらえた。
――待って!それまでの男と切れたらステップアップって事?!――
「可愛がり甲斐がありそうですね」
「そうだな。フェルナンド殿。もらい受けても問題ないか?」
「どうぞ~どうぞ~。返品は不可って事で」
トリエは鼻が利く。この目の前の3人で一番立場が上なのは王太子ではなく一番大きくて若い男だと。
「では、陛下。私はこれで父上との野暮用がございましてね」
「そうでしたな。敬愛していたと言伝を頼めるだろうか」
「喜びます」小さくフェルナンドは微笑んだ。
フェルナンドの言葉にトリエは思わず口から感嘆符が出そうになった。
――陛下って!陛下って!!え?アタシ王妃様になるの?嘘?――
「あのぉ~アタシわぁぁ。トリエって言いますぅ。あのおじさんに捕まっちゃってぇ」
「黙れ」
「えっ…ヒッ、ヒィィィッ!!」
トリエの頬にバティウスの剣の刃が薄く走り、裂けた皮膚から血が滲み出た。
――コッチ系の加虐が好きって事なの?王妃じゃないの?――
「さてお嬢さん。一緒に天国の扉を開けましょうか」
カインドルがトリエに手を差し出す。
バティウスは小さく呟いた。
「地獄の門の間違いじゃないのか」
カインドルはトリエに向かって、にこっと微笑んだ。
「大丈夫。ないのは床だけなので」
「床がないって…なんですか…アタシ‥怖いっ」
「大丈夫、お嬢さんは底なしですからね」
「底なし?そんなに可愛いって事?」
「えぇ…その頭の軽さが神経を逆撫でするほどに」
トリエの頭の中では天秤が傾き始める。
加虐趣味のある大男よりも、目の前の不思議な男のほうがいいかも知れないと。
この男も陛下と呼ばれる男と対等に話をしている。
――アタシ、女の中では最高峰に飛び立てるんだわ――
「アタシ、頑張って飛びますね」
「是非」
カインドルは薄く笑った。
71
あなたにおすすめの小説
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
出来レースだった王太子妃選に落選した公爵令嬢 役立たずと言われ家を飛び出しました でもあれ? 意外に外の世界は快適です
流空サキ
恋愛
王太子妃に選ばれるのは公爵令嬢であるエステルのはずだった。結果のわかっている出来レースの王太子妃選。けれど結果はまさかの敗北。
父からは勘当され、エステルは家を飛び出した。頼ったのは屋敷を出入りする商人のクレト・ロエラだった。
無一文のエステルはクレトの勧めるままに彼の邸で暮らし始める。それまでほとんど外に出たことのなかったエステルが初めて目にする外の世界。クレトのもとで仕事をしながら過ごすうち、恩人だった彼のことが次第に気になりはじめて……。
純真な公爵令嬢と、ある秘密を持つ商人との恋愛譚。
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
「では、ごきげんよう」と去った悪役令嬢は破滅すら置き去りにして
東雲れいな
恋愛
「悪役令嬢」と噂される伯爵令嬢・ローズ。王太子殿下の婚約者候補だというのに、ヒロインから王子を奪おうなんて野心はまるでありません。むしろ彼女は、“わたくしはわたくしらしく”と胸を張り、周囲の冷たい視線にも毅然と立ち向かいます。
破滅を甘受する覚悟すらあった彼女が、誇り高く戦い抜くとき、運命は大きく動きだす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる