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第34話 ぶった斬る場所が問題
1週間後、レーナはデリックの元を訪れた。
「どうしたんだ?その顔!」
「どうでもいいでしょ。私の顔を心配するより大事な事を心配した方が良いわ」
「大事な事?レーナの顎が歪んでるのと鼻が凹んでるより大事な事か?」
「失礼ね。それだけじゃないわ。奥歯も4本割れたわよ」
折れたでも抜けたでもなく割れた。
デリックは聞くだけで冷水がチュイーンと沁みた気がして歯が痛くなった。
「リック、驚かないで」
「今のレーナの顔以上に驚くことはないよ。驚いたら鼻で逆立ちしてやるよ」
「なら言うわ。リック、サリアが不貞をしてるわ」
「・・・・・エェェーッ!?ちょ、ちょ、ちょ‥‥待ってくれ。整理する。サリーが五厘?5分刈りじゃなく?」
デリックは盛大に驚いた。
脳内には丸坊主のサリアがデリックに微笑んでいるが想像域を超えていて靄がかかっている。
「違うわよ。五厘じゃなく不倫!靴下無し革靴な文化と言われた不倫よ!」
「レーナ。私の耳は今、非常に雑音を拾っているようなんだ。あり得ないワードが聞こえてきた。もう一度言ってくれないか」
「だから!サリアがリック以外の男と、ウフンアハンでハァハァしてるって言ってるの!」
デリックは目と鼻を塞いで耳に向かって思いっきり息を突き上げた。高所に行った時のように耳に膜が一瞬だけ張るが、感度は良好。
「ちょっと待ってくれ。耳掃除してくる。ついでに鼻もかんで、歯磨きと目洗浄もしてくる」
――おかしい。五感がイカれたかな?――
デリックの頭の中は不都合な事を都合よい事が寄り切って勝っている。
万全の態勢でレーナにもう一度向かい合おうとしたが、体は正直だ。足が前進するのを嫌がり無理やり歩くと足の小指を扉の下部で強打してしまった。
目から火花が飛び、涙が目尻に溜るほど小指が痛い。
――くっ。噛まれても痛いらしいが、足の小指の強打は効くぅ――
痛みを堪え、レーナに再度向き合った。
「レーナ。待たせた。で?なんだったかな?」
「だから!サリアがリック以外の男と――」
「いやん、ばかん♥そこはお尻…って事か?」
「そうよ!しかも相手は馬――」
「なんだと!‥‥サリー、私に会えないばかりに…寄りにも寄って馬だなんて」
「その馬じゃないわよ!何言ってるの!」
「なんだと?獣ならまだ犬や猫を愛でると思えばとやり過ごせるのに馬並みだと?!しかも尻?!」
==そんな事はひとっ言も言ってないからね?==
「ウアァァァァーッ!何故だ!何故なんだサリーっ!!私はサリーを思えばこそ!清い体なのに!何故なんだぁ!」
突然暴れ始めたデリックに危険を感じたレーナはそそくさと逃げようとしたが、目を血走らせたデリックがレーナを逃すはずがない。ガッと腕を掴まれて何故かレーナは「そこに座れ」と床に膝を折って座らされた。
「リック‥ヒールを脱いでいい?トップリフトがお尻に刺さっちゃうの」
「そんな些細な事はどうでもいい。サリーは馬並みを尻に刺されているんだぞ?」
==先生~。そこ、違うと思いまぁす==
なぁんて冗談で流せる雰囲気ではない。
レーナは自分の言葉選びを間違ったかな?と発言を思い出してみたが、どう見ても途中でぶった斬っているデリックに問題があると自分を宥めた。
「教えろ。どこの厩舎だ」
「は?厩舎?違うわよ。ちゃんと聞いて」
「今、お前に聞いている。せめて高位貴族ならサラブレッド率が高い。なんの慰めにもならんがな」
「慰めて欲しいのは私よ!」
「ハッ。レーナ…お前もか!?」
「違うわよ!私のタイプはマクロン!男の割に背が低くて、声は天使のボーイソプラノ。ハニーフェイスな永遠の美少年のマクロンよ!ちゃんと聞けぇぇぇーっ!」
レーナは事の次第、と言っても「馬に乗った男が間男だ」と2秒も掛からない言葉を言い終わるのに肩で息をするほどに疲れてしまった。
が…デリックは目の前で燃え尽きた消し炭のように魂が抜け、真っ白に見えた。
「リック?大丈夫?」
「‥‥レーナ…私は何処がいけなかったのかな。Dを死守した事か?靴を借りた相手が水虫と知り父上の薬をこっそり使った事か?30代から徐々に浸食が始まるM字禿げに怯えている事か?国宝の宝飾品を落として割った事か?王妃殿下に間男が3人いる事を未だに打ち明けられないことか?」
デリックは涙を流し、レーナに「教えてくれ!」とせがんだ。
レーナは国家機密を聞かされた気分になり、消し炭になりたいと心から願った。
「どうしたんだ?その顔!」
「どうでもいいでしょ。私の顔を心配するより大事な事を心配した方が良いわ」
「大事な事?レーナの顎が歪んでるのと鼻が凹んでるより大事な事か?」
「失礼ね。それだけじゃないわ。奥歯も4本割れたわよ」
折れたでも抜けたでもなく割れた。
デリックは聞くだけで冷水がチュイーンと沁みた気がして歯が痛くなった。
「リック、驚かないで」
「今のレーナの顔以上に驚くことはないよ。驚いたら鼻で逆立ちしてやるよ」
「なら言うわ。リック、サリアが不貞をしてるわ」
「・・・・・エェェーッ!?ちょ、ちょ、ちょ‥‥待ってくれ。整理する。サリーが五厘?5分刈りじゃなく?」
デリックは盛大に驚いた。
脳内には丸坊主のサリアがデリックに微笑んでいるが想像域を超えていて靄がかかっている。
「違うわよ。五厘じゃなく不倫!靴下無し革靴な文化と言われた不倫よ!」
「レーナ。私の耳は今、非常に雑音を拾っているようなんだ。あり得ないワードが聞こえてきた。もう一度言ってくれないか」
「だから!サリアがリック以外の男と、ウフンアハンでハァハァしてるって言ってるの!」
デリックは目と鼻を塞いで耳に向かって思いっきり息を突き上げた。高所に行った時のように耳に膜が一瞬だけ張るが、感度は良好。
「ちょっと待ってくれ。耳掃除してくる。ついでに鼻もかんで、歯磨きと目洗浄もしてくる」
――おかしい。五感がイカれたかな?――
デリックの頭の中は不都合な事を都合よい事が寄り切って勝っている。
万全の態勢でレーナにもう一度向かい合おうとしたが、体は正直だ。足が前進するのを嫌がり無理やり歩くと足の小指を扉の下部で強打してしまった。
目から火花が飛び、涙が目尻に溜るほど小指が痛い。
――くっ。噛まれても痛いらしいが、足の小指の強打は効くぅ――
痛みを堪え、レーナに再度向き合った。
「レーナ。待たせた。で?なんだったかな?」
「だから!サリアがリック以外の男と――」
「いやん、ばかん♥そこはお尻…って事か?」
「そうよ!しかも相手は馬――」
「なんだと!‥‥サリー、私に会えないばかりに…寄りにも寄って馬だなんて」
「その馬じゃないわよ!何言ってるの!」
「なんだと?獣ならまだ犬や猫を愛でると思えばとやり過ごせるのに馬並みだと?!しかも尻?!」
==そんな事はひとっ言も言ってないからね?==
「ウアァァァァーッ!何故だ!何故なんだサリーっ!!私はサリーを思えばこそ!清い体なのに!何故なんだぁ!」
突然暴れ始めたデリックに危険を感じたレーナはそそくさと逃げようとしたが、目を血走らせたデリックがレーナを逃すはずがない。ガッと腕を掴まれて何故かレーナは「そこに座れ」と床に膝を折って座らされた。
「リック‥ヒールを脱いでいい?トップリフトがお尻に刺さっちゃうの」
「そんな些細な事はどうでもいい。サリーは馬並みを尻に刺されているんだぞ?」
==先生~。そこ、違うと思いまぁす==
なぁんて冗談で流せる雰囲気ではない。
レーナは自分の言葉選びを間違ったかな?と発言を思い出してみたが、どう見ても途中でぶった斬っているデリックに問題があると自分を宥めた。
「教えろ。どこの厩舎だ」
「は?厩舎?違うわよ。ちゃんと聞いて」
「今、お前に聞いている。せめて高位貴族ならサラブレッド率が高い。なんの慰めにもならんがな」
「慰めて欲しいのは私よ!」
「ハッ。レーナ…お前もか!?」
「違うわよ!私のタイプはマクロン!男の割に背が低くて、声は天使のボーイソプラノ。ハニーフェイスな永遠の美少年のマクロンよ!ちゃんと聞けぇぇぇーっ!」
レーナは事の次第、と言っても「馬に乗った男が間男だ」と2秒も掛からない言葉を言い終わるのに肩で息をするほどに疲れてしまった。
が…デリックは目の前で燃え尽きた消し炭のように魂が抜け、真っ白に見えた。
「リック?大丈夫?」
「‥‥レーナ…私は何処がいけなかったのかな。Dを死守した事か?靴を借りた相手が水虫と知り父上の薬をこっそり使った事か?30代から徐々に浸食が始まるM字禿げに怯えている事か?国宝の宝飾品を落として割った事か?王妃殿下に間男が3人いる事を未だに打ち明けられないことか?」
デリックは涙を流し、レーナに「教えてくれ!」とせがんだ。
レーナは国家機密を聞かされた気分になり、消し炭になりたいと心から願った。
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