13 / 55
第13話 イライラ・イライラ
しおりを挟む
結婚をして1か月。ダリオンは日を追うごとに苛立ちが募っていた。
その原因はレスカでありアイリス。さらに両親とヴァルディスだった。
「いよいよ期日が決まったんだ。いい加減に躾もしたらどうだ」
「そうよ?読み書きもおぼつかない侯爵夫人だなんて。この先、どうやって切り盛りしていくつもりでいるの」
「解ってるよ!」
声を荒げて両親に反論をするが、レスカの教育は全く進んでいない。
進捗率を数字で表すなら1%。その1%はレスカの習得ではなく家庭教師を雇えたこと。
ファルフェス侯爵家でメイドとして住まわせているが、どこから漏れたのかレスカの評判は最悪だった。
「学園を卒業しているんだ。それなりに学問は履修している」
「と、申されましても1年ですよね。最終学年のみの入学ですよね」
「そ、それがなんだ」
ダリオンも顔を背け、見て見ぬふりをしてきたが現実は受け止めている。
諸外国に見習って開設した学園なので、それなりに学問は学べるのだが実態は金で学歴を買うようなもの。
他国では「●●学院卒」など学歴が就職をしたり事業に参入できるかの基準になるのを良いとこ取りで真似たのだ。
わざわざそんな学園で学ばずとも、帝国の学院を既に卒業し、それなりの学力を持っているヴァルディスが敢えて入学をしたのにも訳がある。コネで事業に参入できることが出来るため不正も横行している現状を王位についた時に廃止する足掛かりにするためである。
ダリオンも入学前にはヴァルディスに「力を貸してくれ」と言われ、その熱意に応えるべく入学をした。
入学をして驚いたのは「金さえ払えば学歴が手に入る」と何もしない貴族子女の多い事だった。
そしてレスカのような平民は「あわよくば王太子のお手付きに?」「王太子の御学友になれる」とそれだけが目的なので‥‥その先は言わずもがな。
卒業をしても大半の学園生は文字を覚えたての高位貴族の幼児程度の学力しかなかった。
ダリオンはレスカが自分の名前を書いた書類を見比べた。
1枚は学園を卒業したばかりで侯爵家に転がり込んできた時に書いたもの。
もう1枚は雇った家庭教師が「どの程度学力があるか知りたい」と簡単なテストをしたもの。
ダリオンは愕然とした。
――未だに自分の名前すらまともに書けないのか――
侯爵家に来た時、自分の名前も間違ってしまって「えへ♡」照れるレスカを可愛いと思った自分を殴りたい。
雇った家庭教師は「私より相応しい者を紹介します」と言った。
連れて来た講師は学問を学ぶ前にアルファベットなどを遊びの中で幼児に教える講師だった。
「読めない訳じゃないんだ」
「それは承知しております。宝飾品など商人が持ってくるパンフレットはしっかりとご理解されていますので」
「だったらもう少し程度をあげてだな!」
「それを考慮しての人選です。うっかりと書類にサインをされては困りますので。重要な書類だったら不備で突き返されるのですよ?一度突き返されたら次の申請まで2週間は必要になります。事業の申請日に間に合わなかったらどうするのです」
侯爵夫人となった暁にはある程度の執務も手伝ってもらわねばならない事を考えると「自分の名前」がちゃんと書けることは当たり前。
書くたびに違う部分が間違っているようでは困るのだ。
レスカにも何度も説明をした。
アイリスの存在が無かった頃は結婚の話を持ち出しても「どうせダーの親は許してくれないでしょう?」と学ぶ気が一切なく時間だけが無意味に過ぎて行った。
しかし、アイリスと結婚した。
その時も説明をしたのだ。
「アイリスと結婚し、離縁すれば再婚出来るんだ。そうすればレスカ、君を本当に迎え入れることが出来るんだ」
「嬉しい!ダー、ありがとう」
「侯爵夫人となる日は決まったんだから相応しいレディであるよう頑張ってくれよ?」
レスカはダリオンに向かって黙って微笑みを返すだけだった。
解ってくれたかと思ったのだが、レスカは講師を前にしても講師が首を傾げるくらいに手ごたえが全くない。
「聞いていますか?」と講師が問えば。
「はい、先生の言葉、聞いてますわ」と返す。
講師はダリオンに言った。
「本当に聞いているだけです。覚える事はしません」
ダリオンは言葉を失った。
レスカのやる気の無さは異常としか思えなかった。
結婚をして1か月。残りはあと11か月しかない。
過ぎた時間は「やっと1か月」ではなく「はや1か月」なのである。
アイリスは婚約中の取り決め通り一切の接触をしてこないのは僥倖だが、従者の報告によれば再々ヴァルディスがアイリスの住む別棟を訪れているという。
間者も連れての訪問で不貞を疑われるような行為はないというし、ヴァルディスも立場がありお飾りでもダリオンの妻であるアイリスに手を出すことも出来ないが、気分の良いものではない。
ダリオンの苛立ちは考えれば考えるほど高まっていった。
その原因はレスカでありアイリス。さらに両親とヴァルディスだった。
「いよいよ期日が決まったんだ。いい加減に躾もしたらどうだ」
「そうよ?読み書きもおぼつかない侯爵夫人だなんて。この先、どうやって切り盛りしていくつもりでいるの」
「解ってるよ!」
声を荒げて両親に反論をするが、レスカの教育は全く進んでいない。
進捗率を数字で表すなら1%。その1%はレスカの習得ではなく家庭教師を雇えたこと。
ファルフェス侯爵家でメイドとして住まわせているが、どこから漏れたのかレスカの評判は最悪だった。
「学園を卒業しているんだ。それなりに学問は履修している」
「と、申されましても1年ですよね。最終学年のみの入学ですよね」
「そ、それがなんだ」
ダリオンも顔を背け、見て見ぬふりをしてきたが現実は受け止めている。
諸外国に見習って開設した学園なので、それなりに学問は学べるのだが実態は金で学歴を買うようなもの。
他国では「●●学院卒」など学歴が就職をしたり事業に参入できるかの基準になるのを良いとこ取りで真似たのだ。
わざわざそんな学園で学ばずとも、帝国の学院を既に卒業し、それなりの学力を持っているヴァルディスが敢えて入学をしたのにも訳がある。コネで事業に参入できることが出来るため不正も横行している現状を王位についた時に廃止する足掛かりにするためである。
ダリオンも入学前にはヴァルディスに「力を貸してくれ」と言われ、その熱意に応えるべく入学をした。
入学をして驚いたのは「金さえ払えば学歴が手に入る」と何もしない貴族子女の多い事だった。
そしてレスカのような平民は「あわよくば王太子のお手付きに?」「王太子の御学友になれる」とそれだけが目的なので‥‥その先は言わずもがな。
卒業をしても大半の学園生は文字を覚えたての高位貴族の幼児程度の学力しかなかった。
ダリオンはレスカが自分の名前を書いた書類を見比べた。
1枚は学園を卒業したばかりで侯爵家に転がり込んできた時に書いたもの。
もう1枚は雇った家庭教師が「どの程度学力があるか知りたい」と簡単なテストをしたもの。
ダリオンは愕然とした。
――未だに自分の名前すらまともに書けないのか――
侯爵家に来た時、自分の名前も間違ってしまって「えへ♡」照れるレスカを可愛いと思った自分を殴りたい。
雇った家庭教師は「私より相応しい者を紹介します」と言った。
連れて来た講師は学問を学ぶ前にアルファベットなどを遊びの中で幼児に教える講師だった。
「読めない訳じゃないんだ」
「それは承知しております。宝飾品など商人が持ってくるパンフレットはしっかりとご理解されていますので」
「だったらもう少し程度をあげてだな!」
「それを考慮しての人選です。うっかりと書類にサインをされては困りますので。重要な書類だったら不備で突き返されるのですよ?一度突き返されたら次の申請まで2週間は必要になります。事業の申請日に間に合わなかったらどうするのです」
侯爵夫人となった暁にはある程度の執務も手伝ってもらわねばならない事を考えると「自分の名前」がちゃんと書けることは当たり前。
書くたびに違う部分が間違っているようでは困るのだ。
レスカにも何度も説明をした。
アイリスの存在が無かった頃は結婚の話を持ち出しても「どうせダーの親は許してくれないでしょう?」と学ぶ気が一切なく時間だけが無意味に過ぎて行った。
しかし、アイリスと結婚した。
その時も説明をしたのだ。
「アイリスと結婚し、離縁すれば再婚出来るんだ。そうすればレスカ、君を本当に迎え入れることが出来るんだ」
「嬉しい!ダー、ありがとう」
「侯爵夫人となる日は決まったんだから相応しいレディであるよう頑張ってくれよ?」
レスカはダリオンに向かって黙って微笑みを返すだけだった。
解ってくれたかと思ったのだが、レスカは講師を前にしても講師が首を傾げるくらいに手ごたえが全くない。
「聞いていますか?」と講師が問えば。
「はい、先生の言葉、聞いてますわ」と返す。
講師はダリオンに言った。
「本当に聞いているだけです。覚える事はしません」
ダリオンは言葉を失った。
レスカのやる気の無さは異常としか思えなかった。
結婚をして1か月。残りはあと11か月しかない。
過ぎた時間は「やっと1か月」ではなく「はや1か月」なのである。
アイリスは婚約中の取り決め通り一切の接触をしてこないのは僥倖だが、従者の報告によれば再々ヴァルディスがアイリスの住む別棟を訪れているという。
間者も連れての訪問で不貞を疑われるような行為はないというし、ヴァルディスも立場がありお飾りでもダリオンの妻であるアイリスに手を出すことも出来ないが、気分の良いものではない。
ダリオンの苛立ちは考えれば考えるほど高まっていった。
1,797
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
王妃を蔑ろにし、愛妾を寵愛していた王が冷遇していた王妃と入れ替わるお話。
ましゅぺちーの
恋愛
王妃を蔑ろにして、愛妾を寵愛していた王がある日突然その王妃と入れ替わってしまう。
王と王妃は体が元に戻るまで周囲に気づかれないようにそのまま過ごすことを決める。
しかし王は王妃の体に入ったことで今まで見えてこなかった愛妾の醜い部分が見え始めて・・・!?
全18話。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる