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第04話 魔法も薬と同じ
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「ふぅ~。やっぱり女は若いのに限るな」
「タバコは止めてよ。香りが髪とかに付くと面倒なのよ」
「言うようになったじゃないか。私に意見するとはな?」
寝台の上でセレナの体を散々に貪った養父は先に寝台から降りるとセレナがエルファンを始めとして男たちから贈られた宝飾品の入っている引き出しを引いて物色をし始めた。
「止めてよ。それ、アタシが貰ったんだから!」
「良いじゃないか。1つくらい」
「そんな事言って!アタシが留守の間に幾つか持って行ったの知ってるんだから!」
「けち臭い事を言うな。ここに居られるのは誰のおかげだと思ってるんだ?うまい事王子に取り入ったようだがお前は平民なんだ。母親が準男爵である私と結婚しただけでお前はへ・い・み・んだッ。バカだから教えてやったんだ。感謝しろ」
「いちいち強調されなくたって解ってるわよ」
「解ってるなら口出しをするな」
「じゃぁエルファンから貰った品は手を出さないで。リクエストされた時に困るわ」
「それもそうだな」
養父は幾つかの宝飾品を値踏みし、買い取りで値が付きそうなものを勝手に持ち出し、着替えを始めた。
――なんでこいつには魅了が効かないのよ――
鼻歌を歌いながら着替えを済ませる養父をセレナは憎々し気に見るが、養父は甘えようが反抗しようが全く魅了の効き目が表れない。
養父と同じ効果がない男性は他にもいる。
人が10人いたとして、コロっとセレナに落ちる者は3人。
残りの7人のうち5人は数回の接触で徐々に落ちて来る。
最後の2人は何をしようとセレナに対しては一線を引き、全く相手にすらしてくれないのだ。
――いったい何が違うと言うの――
同じ王子でもエルファンは4、5回偶然を装って接触をし、その都度上目使いで甘えるように視線を合わせていれば落ちた。
即座に落ちて目をハートにする子息からすれば警戒を徐々に解いたような感じだ。
しかし、この数か月で10回程度エルファンの双子の弟、ステファン王子にも会った。
平民に過ぎないセレナがもう1人の王子と会えるなんて奇跡に等しい。
しかしエルファンに頼めば「そんな事か」とあっさり会う事が出来た。
勿論国王にも王妃にも。
流石にその時は緊張したが、国王は紹介された時は怪訝な表情だったが帰る際にはセレナに8割落ちていた。王妃は途中で中座をしてしまったので「もしや女性には効果がない?」と思ったものだ。
なのにステファンは最初から最後まで冷たい視線を向けて来るだけで一向に落ちなかった。
なんなら5回目に会った時は名前すら憶えていなかったのか「兄上?そちらは?」と問うたくらいにセレナが強く念じて魅了をしようにも全く効果が無かった。
しかし魅了の魔法は面白いように人間がセレナに服従をする。
男も女も、年齢も関係なく落ちる人間はストーンと気持ちがいいくらいに落ちるのだ。
気に食わないのは、養父に体さえ差し出せばなんでも買ってもらえるので宝飾品なんか貰っても嬉しくないのに嬉しそうな顔をしなければならないこと。
――あと少しの我慢よ――
セレナは平民だが、セレナなりに考えていた。
目指しているのは王妃。
数か月でセレナなりに「即座に効果がないか」は検証をした。
警戒心が強い者や恐ろしいほどの忠誠心に近い気持ちがあると先ず落ちない。
落ちやすさも試行錯誤していた。
視線を合わせるなら最低5秒。
触れるのであれば手袋無しの握手など肌と肌を合わせる。
駆使すれば落ちる人間は格段に増え、場数を熟せばセレナのレベルも上がっている気がした。
だとしても効かない人間は存在する。
セレナは魔法も薬と同じで万人に効き目がある訳ではないと言う事だろうと結論付けた。
落ちない人間がいるのだから敵を最小限に抑えておくのは大事だと考えた。
何より今、セレナはエルファンのお気に入りではあるがただの不貞相手。
国王もセレナに落ちてはいるが完全ではない。
国王が完落ちしたとてその次に議会の貴族たちがいる。
確実な立ち位置を確定させるまでは泳がせて置かねばならないし、魅了の効果がない人間がいるのなら、今は魅了されていても解ける者だっているかも知れない。
念には念を入れて下拵えをする時期は大人しくしていよう。そう考えていた。
着替えをする養父を横目にセレナは自身も身支度をし始めた。
今日はエルファンと会った時に確かめたい事があった。
――どれだけアタシにべた惚れか。試させてもらうわ――
「じゃぁな。上手くやれよ」
養父が捨てセリフを残し、振り返りもせずに部屋から出て行くとセレナは養父の背中に向かって小さく呟いた。
「アンタはもう用済み」
ニヤリと口角をあげ不敵に笑ったセレナは「とっておきはこっち」養父の開けた引き出しとは違う引き出しを引き、カムフラージュにしていた手紙の類を取り出すとその下に隠してあった宝飾品を手に取った。
「いい女には最高級品が似合うのよ」
エルファンではなく商会の子息から贈られた小ぶりだが相当に値の張るピアスを耳たぶに付けるとセレナこそ鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。
「タバコは止めてよ。香りが髪とかに付くと面倒なのよ」
「言うようになったじゃないか。私に意見するとはな?」
寝台の上でセレナの体を散々に貪った養父は先に寝台から降りるとセレナがエルファンを始めとして男たちから贈られた宝飾品の入っている引き出しを引いて物色をし始めた。
「止めてよ。それ、アタシが貰ったんだから!」
「良いじゃないか。1つくらい」
「そんな事言って!アタシが留守の間に幾つか持って行ったの知ってるんだから!」
「けち臭い事を言うな。ここに居られるのは誰のおかげだと思ってるんだ?うまい事王子に取り入ったようだがお前は平民なんだ。母親が準男爵である私と結婚しただけでお前はへ・い・み・んだッ。バカだから教えてやったんだ。感謝しろ」
「いちいち強調されなくたって解ってるわよ」
「解ってるなら口出しをするな」
「じゃぁエルファンから貰った品は手を出さないで。リクエストされた時に困るわ」
「それもそうだな」
養父は幾つかの宝飾品を値踏みし、買い取りで値が付きそうなものを勝手に持ち出し、着替えを始めた。
――なんでこいつには魅了が効かないのよ――
鼻歌を歌いながら着替えを済ませる養父をセレナは憎々し気に見るが、養父は甘えようが反抗しようが全く魅了の効き目が表れない。
養父と同じ効果がない男性は他にもいる。
人が10人いたとして、コロっとセレナに落ちる者は3人。
残りの7人のうち5人は数回の接触で徐々に落ちて来る。
最後の2人は何をしようとセレナに対しては一線を引き、全く相手にすらしてくれないのだ。
――いったい何が違うと言うの――
同じ王子でもエルファンは4、5回偶然を装って接触をし、その都度上目使いで甘えるように視線を合わせていれば落ちた。
即座に落ちて目をハートにする子息からすれば警戒を徐々に解いたような感じだ。
しかし、この数か月で10回程度エルファンの双子の弟、ステファン王子にも会った。
平民に過ぎないセレナがもう1人の王子と会えるなんて奇跡に等しい。
しかしエルファンに頼めば「そんな事か」とあっさり会う事が出来た。
勿論国王にも王妃にも。
流石にその時は緊張したが、国王は紹介された時は怪訝な表情だったが帰る際にはセレナに8割落ちていた。王妃は途中で中座をしてしまったので「もしや女性には効果がない?」と思ったものだ。
なのにステファンは最初から最後まで冷たい視線を向けて来るだけで一向に落ちなかった。
なんなら5回目に会った時は名前すら憶えていなかったのか「兄上?そちらは?」と問うたくらいにセレナが強く念じて魅了をしようにも全く効果が無かった。
しかし魅了の魔法は面白いように人間がセレナに服従をする。
男も女も、年齢も関係なく落ちる人間はストーンと気持ちがいいくらいに落ちるのだ。
気に食わないのは、養父に体さえ差し出せばなんでも買ってもらえるので宝飾品なんか貰っても嬉しくないのに嬉しそうな顔をしなければならないこと。
――あと少しの我慢よ――
セレナは平民だが、セレナなりに考えていた。
目指しているのは王妃。
数か月でセレナなりに「即座に効果がないか」は検証をした。
警戒心が強い者や恐ろしいほどの忠誠心に近い気持ちがあると先ず落ちない。
落ちやすさも試行錯誤していた。
視線を合わせるなら最低5秒。
触れるのであれば手袋無しの握手など肌と肌を合わせる。
駆使すれば落ちる人間は格段に増え、場数を熟せばセレナのレベルも上がっている気がした。
だとしても効かない人間は存在する。
セレナは魔法も薬と同じで万人に効き目がある訳ではないと言う事だろうと結論付けた。
落ちない人間がいるのだから敵を最小限に抑えておくのは大事だと考えた。
何より今、セレナはエルファンのお気に入りではあるがただの不貞相手。
国王もセレナに落ちてはいるが完全ではない。
国王が完落ちしたとてその次に議会の貴族たちがいる。
確実な立ち位置を確定させるまでは泳がせて置かねばならないし、魅了の効果がない人間がいるのなら、今は魅了されていても解ける者だっているかも知れない。
念には念を入れて下拵えをする時期は大人しくしていよう。そう考えていた。
着替えをする養父を横目にセレナは自身も身支度をし始めた。
今日はエルファンと会った時に確かめたい事があった。
――どれだけアタシにべた惚れか。試させてもらうわ――
「じゃぁな。上手くやれよ」
養父が捨てセリフを残し、振り返りもせずに部屋から出て行くとセレナは養父の背中に向かって小さく呟いた。
「アンタはもう用済み」
ニヤリと口角をあげ不敵に笑ったセレナは「とっておきはこっち」養父の開けた引き出しとは違う引き出しを引き、カムフラージュにしていた手紙の類を取り出すとその下に隠してあった宝飾品を手に取った。
「いい女には最高級品が似合うのよ」
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