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第28話 私の対価
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「何という事を!」
システィアーナに魔女ロージェリアと契約をしてしまった事をカイザーは打ち明ける以外になかった。
隠し事をしたくないと言う気持ちと、それだけシスティアーナの事を愛しているのだと示す方法だと思い、禁断の契約を交わした事を打ち明けた。
「そんな…末路を聞いたでしょう?溶けてしまうのよ?」
「知っていると思ったよ。もしかするとシスティアーナ、君もロージェリアと契約をしたんじゃないか。とも思ってしまったよ」
「する訳がないでしょう?!あぁ…でも何を願ったの?!叶えられる願いなの?」
システィアーナは表情を作ることも無くカイザーに詰め寄った。
腹の探り合いのようになってしまったが、システィアーナは外の騒ぎに気付かないシスティアーナではない。カイザーが何らかの関与をしているのではないか。それはもしや自分を思っての事ではないかと危惧していたからである。
エルファンに付いた従者の中でもカイザーは特殊だった。
半数が無条件にエルファンの言動を受け入れる中、カイザーだけはエルファンを諫める態度を変えなかったし、投獄されたシスティアーナを連れ出すなんて見つかればその場で切り殺されても文句は言えない所業だ。
ポルク侯爵家に厄介になっている間、カイザーの気持ちに気がつかないほどに愚鈍でもない。
一途な気持ちを利用したくはなかったので、気付かないふりをしてきたが匂わせになってしまっていたのか。
だからこそ告白をはぐらかしてしまったが、藪をつついて蛇を出してしまった。
――選りに選って魔女と契約するなんて――
「契約を解除する方法はないの?」
「どうだろう。直ぐに扉を開けたけどもういなかったんだ」
「そんな…どんな契約をしたの!」
システィアーナは執拗にカイザーに詰め寄った。
言ってくれないのであれば生涯をかけてロージェリアを探し歩くとも。
「私が関係している事なんでしょう?ねぇ、カイザーっ!」
システィアーナの細い指がカイザーの腕を掴み、心地よい痛みを食い込ませる。
カイザーは迷いに迷ってようやく口を開いた。
「難しい事じゃないさ。簡単な契約で破ろうにも破れない、そんな契約をしたんだ。付与された魔法は制約だ」
「制約って…」
「俺は嫉妬深い男なんだよ。ホント、嫌になるくらいにね」
カイザーがロージェリアと契約をした願いは「エルファンとセレナに罰を与える事」でその罰はカイザーが死を迎えるまで続く。
他者に命を絶ってくれと頼んだところで制約を受けた命を他者の手により傷つける事は出来ない。カイザーが死を迎える前に2人に対し許しの気持ちを抱けば契約違反というものだった。
「あいつらのせいで君が傷ついた。俺はそれがどうしても許せないんだ」
システィアーナには告げたくはなかった。
心配されるのは解っていたし、システィアーナが受けた仕打ちを許せなかったカイザーは自分を対価にして契約を結んだ。
システィアーナが自分のせいだと自分自身を責めてしまう事が判っていたから告げたくはなかった。
何よりシスティアーナはカイザーに取り返しのつかない事をさせてしまったと一生悔いる事になる。
「墓まで持って行く秘密だったんだけどな」
「馬鹿な人…どうしてそんなことを」
「愛しているからさ。だけどだからと言って同情はしないで欲しいんだ。これは俺が望んだこと。もう病気だな。アハハ」
「深すぎるわよ。貴方の愛が…。こうなったのは私の責任だもの。カイザー私と契約しましょう」
「システィアーナと?何を?」
「貴方の命が尽きるまで傍にいる。それが私の対価よ。私だけが何もしない、しなくていいなんて…嫌だもの」
システィアーナに魔女ロージェリアと契約をしてしまった事をカイザーは打ち明ける以外になかった。
隠し事をしたくないと言う気持ちと、それだけシスティアーナの事を愛しているのだと示す方法だと思い、禁断の契約を交わした事を打ち明けた。
「そんな…末路を聞いたでしょう?溶けてしまうのよ?」
「知っていると思ったよ。もしかするとシスティアーナ、君もロージェリアと契約をしたんじゃないか。とも思ってしまったよ」
「する訳がないでしょう?!あぁ…でも何を願ったの?!叶えられる願いなの?」
システィアーナは表情を作ることも無くカイザーに詰め寄った。
腹の探り合いのようになってしまったが、システィアーナは外の騒ぎに気付かないシスティアーナではない。カイザーが何らかの関与をしているのではないか。それはもしや自分を思っての事ではないかと危惧していたからである。
エルファンに付いた従者の中でもカイザーは特殊だった。
半数が無条件にエルファンの言動を受け入れる中、カイザーだけはエルファンを諫める態度を変えなかったし、投獄されたシスティアーナを連れ出すなんて見つかればその場で切り殺されても文句は言えない所業だ。
ポルク侯爵家に厄介になっている間、カイザーの気持ちに気がつかないほどに愚鈍でもない。
一途な気持ちを利用したくはなかったので、気付かないふりをしてきたが匂わせになってしまっていたのか。
だからこそ告白をはぐらかしてしまったが、藪をつついて蛇を出してしまった。
――選りに選って魔女と契約するなんて――
「契約を解除する方法はないの?」
「どうだろう。直ぐに扉を開けたけどもういなかったんだ」
「そんな…どんな契約をしたの!」
システィアーナは執拗にカイザーに詰め寄った。
言ってくれないのであれば生涯をかけてロージェリアを探し歩くとも。
「私が関係している事なんでしょう?ねぇ、カイザーっ!」
システィアーナの細い指がカイザーの腕を掴み、心地よい痛みを食い込ませる。
カイザーは迷いに迷ってようやく口を開いた。
「難しい事じゃないさ。簡単な契約で破ろうにも破れない、そんな契約をしたんだ。付与された魔法は制約だ」
「制約って…」
「俺は嫉妬深い男なんだよ。ホント、嫌になるくらいにね」
カイザーがロージェリアと契約をした願いは「エルファンとセレナに罰を与える事」でその罰はカイザーが死を迎えるまで続く。
他者に命を絶ってくれと頼んだところで制約を受けた命を他者の手により傷つける事は出来ない。カイザーが死を迎える前に2人に対し許しの気持ちを抱けば契約違反というものだった。
「あいつらのせいで君が傷ついた。俺はそれがどうしても許せないんだ」
システィアーナには告げたくはなかった。
心配されるのは解っていたし、システィアーナが受けた仕打ちを許せなかったカイザーは自分を対価にして契約を結んだ。
システィアーナが自分のせいだと自分自身を責めてしまう事が判っていたから告げたくはなかった。
何よりシスティアーナはカイザーに取り返しのつかない事をさせてしまったと一生悔いる事になる。
「墓まで持って行く秘密だったんだけどな」
「馬鹿な人…どうしてそんなことを」
「愛しているからさ。だけどだからと言って同情はしないで欲しいんだ。これは俺が望んだこと。もう病気だな。アハハ」
「深すぎるわよ。貴方の愛が…。こうなったのは私の責任だもの。カイザー私と契約しましょう」
「システィアーナと?何を?」
「貴方の命が尽きるまで傍にいる。それが私の対価よ。私だけが何もしない、しなくていいなんて…嫌だもの」
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