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第10話 分厚いハム。口の中の肉汁
「息が出来るって幸せぇぇぇーッ!!」
ドレスを脱いだ後、アリアは本気で空に向かって叫んだ。
足元にはドレスだった布の残骸が散らばる。
帰宅してから大急ぎで部屋に運び込まねばならなくなったため、エルフィンは「私が責任を負う」として脱がせる時にドレスを切ったのだ。
コルセットの紐も解いている時間がなく鋏を入れると緩んだと思ったら軽く2mほど吹き飛んだ。
締め付けられすぎて上半身には鬱血していないところがない。
それでも息が出来る喜びにアリアは我慢できず叫んだのだった。
喉も乾いただろうとワゴンを引いてやってきたエルフィンは気取らず、常に素を見せるアリアを見てくすっと笑った。
「落ち着いたら茶でもどうだ」
「お茶ーッ!喉がカラッカラだったの。ありがとう。ついでに食べる物はないの?お腹もペッコペコよ」
夫への最初のリクエストが食事の要求なんてアリアくらいだろう。
エルフィンは手早く作れて軽く抓めるものを従者に持ってくるように命じた。
「君ってさ、自分を繕う事をしないんだな」
「見栄を張っても意味ないでしょう?見られたくない場も見られてしまったし、どうせ離縁するし対外的に社交もしなくていいんだもの」
「確かにね。ま、もう一杯どうだ?」
出会い方が違えばエルフィンほどの美丈夫で侯爵家のボンボン相手ならアリアだって自分を良く見せようとしただろうが、出会って3日目、時間にして1時間もないうちに結婚となれば何を取り繕う必要があるだろう。
ましてや離縁しても手厚く生活を保障してくれるんだし、愛だ、恋だの前にお互いの事もよく知らない。
それにこの結婚で本当の旨味があるのはエルフィン。
キツキツのドレスでもう遠慮することも無く、満喫させてもらおうとアリアは完全に開き直った。
そこにいつも肉屋の前で「いつかは!」と恨めしく見るだけだった分厚いハムの挟まれたサンドウィッチが登場した。
「た、食べても?」
「いいぞ。好きなだけーー」
「いっただぁきまぁす!!」
エルフィンが言葉を言い終わらないうちにアリアは1切れを手に取るとハムの厚さに目を潤ませた。
「こ、こ、こんなに厚いハムっ!!」
「いいから食え」
「言われずともっ!(ぱくっ)」
(フォォォォ!熱くないのに肉汁が凄ぉい!)
口の中で迸る肉汁を吸ってくれる柔らかいパン。
(ここは天国ですか!おいひぃぃぃ!)
アリアが2つ目に手を伸ばすとエルフィンはアリアを見て目を細め、口元にマスタードが付いていると指で拭ってくれた。
「明日は仕立て屋が来る。好きなだけ注文すればいい」
言うついでに何故かマスタードを拭った指をパクリ。
(ヒュッ!!)
アリアは2切目の天国を味わおうと手に取ったパンを落としそうになった。
「どうした?もう腹いっぱいか?」
まだまだイケます!と思いつつも、マスタードの事を指摘していいものかアリアは迷った。迷った挙句…。
「服を着る体は1つですよ?着替えは必要でしょうけど着回せばいいので3、4着で結構です」
「3、4着?しかも着回し?正気か?」
「正気かと聞きたいのはこっちです。今日のドレスもですが貸してくださったことには感謝します。でもこんな事でもなければ生涯に1度しか袖を通さないドレスなんて無駄の極みですっ!ドレス1着のお値段知ってます?その金額で従業員に臨時の賞与も余裕で出せるんですよ?これから事業を本格的に始めようとするのに無駄使いしてどうするんです」
やっぱり小心者なので指摘は出来ず根っからの貧乏性からの言葉を返してしまったのだった。
思いもよらないアリアの可愛い反撃にエルフィンは驚いた。
「ならば好きなようにすると良い。もう何も言わん」
「はーい。好きにさせてもらいまーす。で、お聞きしたいことがあります」
「なんだ?」
「住んでいた家なんですけど、家賃の支払いがもうすぐなんです。住まいを移してもらわないといけないって言ってたので退去しようと思うのですけど荷物を片付けて掃除もしなきゃいけなくて」
「その件か。承知した。手続きや引っ越しについてはこちらで手配をする。君は本当に欲しいものがないか仕立て屋の持ってきたカタログを吟味してくれ」
(要らないって言ってるのにしつこいなぁ、もぉ!)
ぷくっと頬を膨らませたアリアはエルフィンと目が合ったが、フンッ!顔を逸らした。
その様子にエルフィンは「ぷっ」と苦笑し部屋を出て行った。
エルフィンは約束通り退去の手続きを済ませてくれたようで、アリアの住んでいた家にあった家財は明らかなゴミ以外は一旦全てエルフィンの屋敷に持ち込まれた。
ほとんどは祖母の物でアリアの物は衣類を含めてもトランクに収まりそうな量しかない。
アリアは1つ1つを使えるもの、使えないものに仕分けし使えるものは手直しをしたり洗濯をして教会に寄付をした。
ドレスを脱いだ後、アリアは本気で空に向かって叫んだ。
足元にはドレスだった布の残骸が散らばる。
帰宅してから大急ぎで部屋に運び込まねばならなくなったため、エルフィンは「私が責任を負う」として脱がせる時にドレスを切ったのだ。
コルセットの紐も解いている時間がなく鋏を入れると緩んだと思ったら軽く2mほど吹き飛んだ。
締め付けられすぎて上半身には鬱血していないところがない。
それでも息が出来る喜びにアリアは我慢できず叫んだのだった。
喉も乾いただろうとワゴンを引いてやってきたエルフィンは気取らず、常に素を見せるアリアを見てくすっと笑った。
「落ち着いたら茶でもどうだ」
「お茶ーッ!喉がカラッカラだったの。ありがとう。ついでに食べる物はないの?お腹もペッコペコよ」
夫への最初のリクエストが食事の要求なんてアリアくらいだろう。
エルフィンは手早く作れて軽く抓めるものを従者に持ってくるように命じた。
「君ってさ、自分を繕う事をしないんだな」
「見栄を張っても意味ないでしょう?見られたくない場も見られてしまったし、どうせ離縁するし対外的に社交もしなくていいんだもの」
「確かにね。ま、もう一杯どうだ?」
出会い方が違えばエルフィンほどの美丈夫で侯爵家のボンボン相手ならアリアだって自分を良く見せようとしただろうが、出会って3日目、時間にして1時間もないうちに結婚となれば何を取り繕う必要があるだろう。
ましてや離縁しても手厚く生活を保障してくれるんだし、愛だ、恋だの前にお互いの事もよく知らない。
それにこの結婚で本当の旨味があるのはエルフィン。
キツキツのドレスでもう遠慮することも無く、満喫させてもらおうとアリアは完全に開き直った。
そこにいつも肉屋の前で「いつかは!」と恨めしく見るだけだった分厚いハムの挟まれたサンドウィッチが登場した。
「た、食べても?」
「いいぞ。好きなだけーー」
「いっただぁきまぁす!!」
エルフィンが言葉を言い終わらないうちにアリアは1切れを手に取るとハムの厚さに目を潤ませた。
「こ、こ、こんなに厚いハムっ!!」
「いいから食え」
「言われずともっ!(ぱくっ)」
(フォォォォ!熱くないのに肉汁が凄ぉい!)
口の中で迸る肉汁を吸ってくれる柔らかいパン。
(ここは天国ですか!おいひぃぃぃ!)
アリアが2つ目に手を伸ばすとエルフィンはアリアを見て目を細め、口元にマスタードが付いていると指で拭ってくれた。
「明日は仕立て屋が来る。好きなだけ注文すればいい」
言うついでに何故かマスタードを拭った指をパクリ。
(ヒュッ!!)
アリアは2切目の天国を味わおうと手に取ったパンを落としそうになった。
「どうした?もう腹いっぱいか?」
まだまだイケます!と思いつつも、マスタードの事を指摘していいものかアリアは迷った。迷った挙句…。
「服を着る体は1つですよ?着替えは必要でしょうけど着回せばいいので3、4着で結構です」
「3、4着?しかも着回し?正気か?」
「正気かと聞きたいのはこっちです。今日のドレスもですが貸してくださったことには感謝します。でもこんな事でもなければ生涯に1度しか袖を通さないドレスなんて無駄の極みですっ!ドレス1着のお値段知ってます?その金額で従業員に臨時の賞与も余裕で出せるんですよ?これから事業を本格的に始めようとするのに無駄使いしてどうするんです」
やっぱり小心者なので指摘は出来ず根っからの貧乏性からの言葉を返してしまったのだった。
思いもよらないアリアの可愛い反撃にエルフィンは驚いた。
「ならば好きなようにすると良い。もう何も言わん」
「はーい。好きにさせてもらいまーす。で、お聞きしたいことがあります」
「なんだ?」
「住んでいた家なんですけど、家賃の支払いがもうすぐなんです。住まいを移してもらわないといけないって言ってたので退去しようと思うのですけど荷物を片付けて掃除もしなきゃいけなくて」
「その件か。承知した。手続きや引っ越しについてはこちらで手配をする。君は本当に欲しいものがないか仕立て屋の持ってきたカタログを吟味してくれ」
(要らないって言ってるのにしつこいなぁ、もぉ!)
ぷくっと頬を膨らませたアリアはエルフィンと目が合ったが、フンッ!顔を逸らした。
その様子にエルフィンは「ぷっ」と苦笑し部屋を出て行った。
エルフィンは約束通り退去の手続きを済ませてくれたようで、アリアの住んでいた家にあった家財は明らかなゴミ以外は一旦全てエルフィンの屋敷に持ち込まれた。
ほとんどは祖母の物でアリアの物は衣類を含めてもトランクに収まりそうな量しかない。
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