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第29話 根回しは必須
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執事はエルフィンの無言の指示に小さく頷き足早になると先に店舗に入り、店主に相談を始めた。
「今から参ります主の買い物。アリア様がご所望の品は全て倍の値で買い取り、同じ品は100倍にしてここに納品をお願いします。それから手に取られた品も全て買い取ります。支払いはこちらに。即金で払います」
「へ?マジで?いいんですか?」
「勿論。アリア様のお手に触れたものを他者が購入なんて万死に値します」
「万死って言い過ぎ――」
「言葉が過ぎました。末代までの恥でございます。主に生き恥を掻かせる訳には参りません」
店主は手渡された紙を見た後、執事越しに店先を見て「アリーなら知ってる子だよ?そんなことしなくても」と言うが執事はニッコリ。
「主を男にしてください。愛する妻に良いところを見せたいのは万国共通でございます」
「ちゅ、ちゅま?!ア、アリー…あれ?相手が?あれ?」
店主はデリスとダリオンの結婚式やパーティには買い出しもあって参加しておらず、噂は耳にしたものの未だにアリアの恋人はダリオンでゆくゆくは2人が結婚するのだと思っていたので相手が違うことに驚いた。
「アリア様は長く慕ったゲス、いえ、クズ、コホン。元騎士に裏切られ大変なご傷心。主はそんなアリア様の心と体を守るためには妻と言う不動の座を提供するのも厭わず」
「そうだったのか。いやぁ、嘘みたいな噂は聞いたけど本当だったのか」
「噂とは?アリア様に関する?」
「違う。違う。その元騎士のほう。心配してたんだ。アリーは婆さんが亡くなったばかりで弔問に行かなきゃと思ったけど引っ越したとか聞いてさ。そういう事情があったんだな。よし、判った。任せろ」
店主は執事にサムズアップ。
執事はうんうんと笑顔で頷いた。
「店主殿!!アリア様の夫は生涯我が主のみ。他の男の名は勿論、気配も出さぬようお願いします」
「お、おぅ!任せとけ」
「これは迷惑料。この会話は他言無用で」
「迷惑・・・・?これ口止め料…」
5年間の利益ではなく売り上げに匹敵する金額の書かれた小切手をシャツの襟もとから差し込まれた店主は目を丸くした。
「店主殿!気をしっかり!」
「は、はい。口にチャック。完了です」
会話が終わったころ、アリアとエルフィンが店にやってきた。
「ヨハンさん。お久しぶり。布巾が欲しいんですけど」
「フゥキンッ!!アルッ!あるぜぇ。持ってくるッ。待っててくれ!」
「ヨハンさん…寝具の下に生えたキノコでも食べたの?声が裏返ってるわよ?」
「元々!元々だ。本当はこんな声ッぬわぁんだよ」
「そうなの?」
明らかに挙動不審な店主ヨハンにアリアは首を傾げたが、ヨハンは布巾を入れた箱を並べた棚に行こうとして右足と左足が一緒に出てしまい、陳列した商品を盛大に薙ぎ払いながら倒れてしまった。
「だ、大丈夫?教えてくれたら私、取るわ」
「平気だ。雨が降りそうだから足が縺れるんだ」
「雨?凄く良いお天気なのに」
「そ、そうか?俺の脳内天気予報では今後半年の間に雨が降るって言ってるんだがな」
(半年なら雨も降るでしょうに)
全くアテになりそうにないヨハンの脳内天気予報。
アリアはエルフィンと繋いでいない手で近くにあった小瓶を1つ手に取った。
「これも使えそうね」
「何を容れるんだ?」
「粉末よ。蓋を閉じれば湿気たりしないでしょう?」
「そうだな。私も個人的に5千ほどもらおうかな」
<< ご、5千っ?! >>
アリアと店主ヨハンの声が重なる。通常ならあと2、3。多くても10なのに5千。
(金持ちは桁が違う)とアリアとヨハンの心の声が重なる。
足はガクガク、手はブルブルになってようよう布巾の入った箱を手に取ったヨハンにエルフィンは注文を掛けた。
「店主、布巾だが、目の粗いものから細かいものまで10段階。それぞれ1万。納品してくれるか?」
「仰せのままにぃぃぃ!」
手にした布巾の箱をつま先に落とした店主ヨハンはエアー献上。空になった手を上にあげ、完全に裏返った声で注文を受けたが、この異常な空気が読めていないアリアはきょとんとし、真顔でエルフィンに問うた。
「そんなに?何に使うの?」
エルフィンが答えを口にしようとしたその時だった。
「アリー!あんた、こんなところで何してんのよ!」
声を掛けてきたのは不機嫌極まれりなダリオンの腕を掴んだデリスだった。
刹那、場に緊張感が張り詰める。
ヨハンは「マジか」声には出さなかったが、見えてはならないものを見てしまった。
それまでただの通行人や買い物客と思われた者たちが人間離れした動きを見せたのである。
都市伝説でしか聞いたことのなかった「影」がヨハンの目に映る。
デリスは後ろを取られているが気が付いていない。
デリスと向かい合っているからこそヨハンには存在が見えているが、デリスは殺気立った男性たちの気配すら感じていないのだ。
一触即発を感じさせ、ヨハンは足はガクガク、手はブルブルに加え胃までキリキリなのにやっぱり空気を読んでいないアリア。
デリスの大声とは真逆の声で「見て判らない?」とでも言いたげに答えた。
「買い物だけど?」
☆~☆
今日はここまで\(^0^)/
明日はいよいよ最終日。
楽しんで頂けると嬉しいです♡
お休みなさい (-_-)zzz
「今から参ります主の買い物。アリア様がご所望の品は全て倍の値で買い取り、同じ品は100倍にしてここに納品をお願いします。それから手に取られた品も全て買い取ります。支払いはこちらに。即金で払います」
「へ?マジで?いいんですか?」
「勿論。アリア様のお手に触れたものを他者が購入なんて万死に値します」
「万死って言い過ぎ――」
「言葉が過ぎました。末代までの恥でございます。主に生き恥を掻かせる訳には参りません」
店主は手渡された紙を見た後、執事越しに店先を見て「アリーなら知ってる子だよ?そんなことしなくても」と言うが執事はニッコリ。
「主を男にしてください。愛する妻に良いところを見せたいのは万国共通でございます」
「ちゅ、ちゅま?!ア、アリー…あれ?相手が?あれ?」
店主はデリスとダリオンの結婚式やパーティには買い出しもあって参加しておらず、噂は耳にしたものの未だにアリアの恋人はダリオンでゆくゆくは2人が結婚するのだと思っていたので相手が違うことに驚いた。
「アリア様は長く慕ったゲス、いえ、クズ、コホン。元騎士に裏切られ大変なご傷心。主はそんなアリア様の心と体を守るためには妻と言う不動の座を提供するのも厭わず」
「そうだったのか。いやぁ、嘘みたいな噂は聞いたけど本当だったのか」
「噂とは?アリア様に関する?」
「違う。違う。その元騎士のほう。心配してたんだ。アリーは婆さんが亡くなったばかりで弔問に行かなきゃと思ったけど引っ越したとか聞いてさ。そういう事情があったんだな。よし、判った。任せろ」
店主は執事にサムズアップ。
執事はうんうんと笑顔で頷いた。
「店主殿!!アリア様の夫は生涯我が主のみ。他の男の名は勿論、気配も出さぬようお願いします」
「お、おぅ!任せとけ」
「これは迷惑料。この会話は他言無用で」
「迷惑・・・・?これ口止め料…」
5年間の利益ではなく売り上げに匹敵する金額の書かれた小切手をシャツの襟もとから差し込まれた店主は目を丸くした。
「店主殿!気をしっかり!」
「は、はい。口にチャック。完了です」
会話が終わったころ、アリアとエルフィンが店にやってきた。
「ヨハンさん。お久しぶり。布巾が欲しいんですけど」
「フゥキンッ!!アルッ!あるぜぇ。持ってくるッ。待っててくれ!」
「ヨハンさん…寝具の下に生えたキノコでも食べたの?声が裏返ってるわよ?」
「元々!元々だ。本当はこんな声ッぬわぁんだよ」
「そうなの?」
明らかに挙動不審な店主ヨハンにアリアは首を傾げたが、ヨハンは布巾を入れた箱を並べた棚に行こうとして右足と左足が一緒に出てしまい、陳列した商品を盛大に薙ぎ払いながら倒れてしまった。
「だ、大丈夫?教えてくれたら私、取るわ」
「平気だ。雨が降りそうだから足が縺れるんだ」
「雨?凄く良いお天気なのに」
「そ、そうか?俺の脳内天気予報では今後半年の間に雨が降るって言ってるんだがな」
(半年なら雨も降るでしょうに)
全くアテになりそうにないヨハンの脳内天気予報。
アリアはエルフィンと繋いでいない手で近くにあった小瓶を1つ手に取った。
「これも使えそうね」
「何を容れるんだ?」
「粉末よ。蓋を閉じれば湿気たりしないでしょう?」
「そうだな。私も個人的に5千ほどもらおうかな」
<< ご、5千っ?! >>
アリアと店主ヨハンの声が重なる。通常ならあと2、3。多くても10なのに5千。
(金持ちは桁が違う)とアリアとヨハンの心の声が重なる。
足はガクガク、手はブルブルになってようよう布巾の入った箱を手に取ったヨハンにエルフィンは注文を掛けた。
「店主、布巾だが、目の粗いものから細かいものまで10段階。それぞれ1万。納品してくれるか?」
「仰せのままにぃぃぃ!」
手にした布巾の箱をつま先に落とした店主ヨハンはエアー献上。空になった手を上にあげ、完全に裏返った声で注文を受けたが、この異常な空気が読めていないアリアはきょとんとし、真顔でエルフィンに問うた。
「そんなに?何に使うの?」
エルフィンが答えを口にしようとしたその時だった。
「アリー!あんた、こんなところで何してんのよ!」
声を掛けてきたのは不機嫌極まれりなダリオンの腕を掴んだデリスだった。
刹那、場に緊張感が張り詰める。
ヨハンは「マジか」声には出さなかったが、見えてはならないものを見てしまった。
それまでただの通行人や買い物客と思われた者たちが人間離れした動きを見せたのである。
都市伝説でしか聞いたことのなかった「影」がヨハンの目に映る。
デリスは後ろを取られているが気が付いていない。
デリスと向かい合っているからこそヨハンには存在が見えているが、デリスは殺気立った男性たちの気配すら感じていないのだ。
一触即発を感じさせ、ヨハンは足はガクガク、手はブルブルに加え胃までキリキリなのにやっぱり空気を読んでいないアリア。
デリスの大声とは真逆の声で「見て判らない?」とでも言いたげに答えた。
「買い物だけど?」
☆~☆
今日はここまで\(^0^)/
明日はいよいよ最終日。
楽しんで頂けると嬉しいです♡
お休みなさい (-_-)zzz
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