転生先は王子様の元婚約者候補というifモブでした

cyaru

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第07話   抱擁は不要

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アベルジェ公爵家は一言でいって、お金持ちだ。

父親のアベルジェ公爵。名前はクロード。
年齢は51歳なのだが、イケオジの部類。

母親ベランジェール。
実家はオベール侯爵家だそうで生粋のお嬢様育ちの奥様だ。

なんとこの2人、今年で結婚39年なんだそうで来年は40周年記念。
え?・・・って事は小学6年生と4年生が結婚しちゃったって事?凄いわね…。

と、言っても今は隣国に出掛けて不在の長兄の年齢は28歳なのだそうで、それなりの年齢になるまではイタさないのが決まりらしい。

ちなみに次兄が25歳。計画的に子供が生まれた感じだ。

この生活にも慣れてくると習っても教えて貰ってもいないのに「あ、知ってる」という事柄が増えてくる。体が覚えていると言うか、きっと高位貴族の令嬢設定なのだろう。ちょっとした仕草などもすんなりと出来る。

ただ、時々行動と脳内が合わない時がある。これを臨機応変にって事なのだろうとは解るのだが…。


ふと、思う。王子様の元婚約者候補だったという事は、覚えのない記憶の中に確かにある。しかし候補から降ろされた理由が判らない。

――とんでもない粗相をしちゃったとか?――

考えても判らない事は聞くのが一番と父のクロードに問うてみた。

「お父様」
「なんだい?シャル」
「どうしてわたくしは、王子殿下の婚約者候補では無くなったのでしょう」
「あぁ…シャルッ!可哀想に!」

そう言うと目に涙をためて父のクロードは私を抱きしめてきた。

――いや、理由知りたいだけで抱擁いらんし――

お国柄なんだろうか。
父のクロードも母のベランジェールも大袈裟、紛らわしいのだ。

あと1つ「嘘」が入ればJAR〇に通報するところだ。

兎に角、動きが無駄に大きい。一言ごとに抱きしめてくるし帰宅した後で私の姿を見つけると両手を広げて近寄ってくる。

『あぁなんて可愛いんだ!』
『お留守番させてごめんなさいね』
『どうして私の娘はこんなに愛おしいんだ』

色々と言ってくるが思うのだ。

――ゴチャゴチャ言う前に ”だたいま” でしょうが!――


公園の鳩も一斉に飛び立つわ!ってくらいに動作が大きい。
もしかして、父の日、母の日に〇ート製薬の目薬でも欲しいのかと思ってしまう。


「抱擁はいいので…それで、わたくしは何か粗相をしてしまったんでしょうか」
「粗相!とんでもない!シャルには何の咎もないんだ」
「だったら何故でしょう?」


クロードの話によれば、ある日突然王子殿下が「好きな子と結婚したい。そうじゃないなら子供は作らない」と言い出したのだそうだ。

この時代は嫡男以外は家を継がないので、そこそこ金が貯まったり、後継者が不慮の事故など儚くなるなどお鉢が回ってこない限り結婚にはなかなか至る事が出来ず、男性は40代、50代で初婚だったり、生涯お一人様も少なくない。

このアベルジェ公爵家も次兄には相続する財産は一切ないらしく、次兄は身一つで独立し妻を迎えている。

男性社会ではあるけれど、その点令嬢の場合は政略結婚をさせて家の利益になるため法外な持参金まで用意をしてもらえる。但し、死別以外で出戻った時は居場所がない。

死別の場合は夫の財産を相続しているため、それはそれは手放しで迎え入れてくれるそうだ。
尤も、それも子供が産める年齢で嫁げればの話で女性としては気分の良い扱いではないが、それがこの世界であり時代なのだから受け入れざるを得ない。
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