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木の実の殻は割るんです
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「これなんかどうだ?似合うんじゃないか?」
「いやです。趣味が悪い」
王宮の夜会に向けて大量の宝飾品が持ち込まれているフォーズド公爵家。
大は小を兼ねるとでも言いたげに、スティルレインは大きな石がドカンとついた宝飾品を勧めてくるのである。髪色がピンクであるため、ドレスまでピンクにしてしまうと一色になってしまう。
ピンクの髪と瞳の緑は補色の関係であるため、より瞳も目立ってしまうのだ。
特に当日は髪も、婚約者がいますという証に結い上げるため隠すものが無くなってしまう。
エフローレはピンクの髪色もだが、緑眼も好きではなかった。
スティルレインは瞳は紅眼だが、髪は黒よりの茶色で焦げ茶色よりも少し黒みがかっている。
なのでよりクマに見えなくもないし、暗闇で目が強調されると闇夜に光る野生動物と間違われそうでもある。
「ほら、このネックレスなんかピッタリじゃないか」
「どこにコブシ大の宝石をぶら下げて歩く令嬢がいるのです!もう、貴方にはセンスと言うものがありません。大きければ何でもいいとか。お父様にそっくりよ。邪魔。向こうに行きなさい」
遂にカァラム夫人が業を煮やして参戦してきてしまった。
「緑眼を目立たないようにしたいのなら、ドレスを薄いブルーから裾に行くに従って緑にしてみたらどうかしら。髪色とドレスの裾の上下に視線が飛ぶから目立たないかも知れないわね」
「ですが、ちょっとこれは胸元が開き過ぎではないかと…」
デコルテが強調されるベアトップで胸元がハートシェイプになっており、胸が大きい事も悩みの種であるエフローレは出来れば隠したいのである。
「俺はそれでいい!それがいい!!それじゃないと嫌だ!!」
「お黙り!」
「却下ですわね」
スティルレインの願望は聞き届けられないようである。
プリンセスラインのドレスだったが、ウエスト部分でどうしても上下という見え方になると瞳の色に着目されやすいのでマーメイドラインのドレスに着替える事になり、追い出されるスティルレイン。
そこに天敵も言える末弟のビームがやってきてしまった。
「あ、ドレス選び??僕も手伝うよ」
「ちょっと待て!お前は男だろうが!絶対にダメだ」
「どうして?可愛いは正義なんだよ?兄上は可愛い妻が最高の着こなしをするのを見たくないとでも?わぁ~最っ低~。こんな夫なんて絶対やだぁ」
「どうしてそうなる?俺のジアなら野良着でも作務衣でも何でも着こなす。皆が二度見するのをどうやって阻止するか検討せねばならんじゃないか」
――夜会に野良着や作務衣なら間違いなく二度見じゃなくガン見ですわ――
「まぁまぁ、兄上はどっか行って?邪魔だよ」
「いや、ビーム。お前が間違いなく邪魔だから!って!おいっ!」
スティルレインの制止を振り切って、ビームが幾つもあるドレスからスタンダードなマーメイドドレスをサッと手にするとエフローレに当ててみる。
可愛い物や、フリフリしたものに目がないビーム。
後ろで吠えまくる兄などもういないも同然である。
「待って、待って。マーメイドラインにするなら、足元の切り替えは少し大げさにしてみたらどうかな。肩口はオフショルダーにして透け感のある感じにすればデコルテも綺麗に見えるし気になる胸元も隠れると思うよ」
「そうですね。もうちょっと胸が小さければ…布を巻くと言うのはだめでしょうか」
「ダメだー!ジア!ビームに唆されちゃダメだ!布なんて!そんなもの巻いちゃダメだー!!ビーム離れろ!半径40キロ以上離れろ!」
「何を吠えているのかしら…困った子ね。誰か!塩シャケでも咥えさせて頂戴」
「畏まりました」
パクリ。途端に静かになる野次馬。いや、野次熊。
「こんな感じでどうかな。裾をちょっとお直しして…アクセサリーはシンプルなのが良いと思うよ。こんな感じでもうちょっと石が小ぶりなのはないかな」
「そうね。エフィちゃんは背中のラインも綺麗だから思い切って見せちゃうのもいいと思うけど」
「それはちょっと恥ずかしいです」
「いや、意外にイイかもよ。兄上が大きいから並んでる時はきっと腕とかで隠すだろう?背中が大きく開いてるとダンスの時とか意外性が出て注目の的!それにさ、この肩甲骨の形なかなかないよ?」
すったもんだでおおよその方向性が決まり、あとは細かい手直しを少し。
背中を出すのはまた今度という事で、シンプルな仕上げになった。
「レイン様、どうかしら?」
「ジア‥‥」
――咥えていた塩シャケが床に落ちましたわよ?――
「どこか変ですか?夜会の日はここにコサージュが入るんですよ」
「どこでも大丈夫だ。綺麗すぎて目が開けられない」
――がっつり開いてますよね?なんなら瞬きもしてませんよね?――
「どう?兄上とダンスを踊った後は列が出来るかもしれないね」
「潰す」
――木の実の殻は割るんです!潰してはだめですわ――
不穏な声が聞こえたが、一先ずはこれで夜会のドレスと宝飾品が決まった。
「もうちょっと贅沢をしても良いんだぞ?あの宝飾品と似合ってたと思うが」
「ドレス毎に宝飾品を合わせていたら大変です」
「そうか?あの赤い石の大きなやつは、なかなかないぞ?」
「いいんです。だってレイン様の目のほうが大きくて綺麗な紅ですもの」
「ジア…煽るな。これでも目覚めそうになる気持ちを抑えているんだ」
――え?今は冬眠中だったのかしら?――
「いやです。趣味が悪い」
王宮の夜会に向けて大量の宝飾品が持ち込まれているフォーズド公爵家。
大は小を兼ねるとでも言いたげに、スティルレインは大きな石がドカンとついた宝飾品を勧めてくるのである。髪色がピンクであるため、ドレスまでピンクにしてしまうと一色になってしまう。
ピンクの髪と瞳の緑は補色の関係であるため、より瞳も目立ってしまうのだ。
特に当日は髪も、婚約者がいますという証に結い上げるため隠すものが無くなってしまう。
エフローレはピンクの髪色もだが、緑眼も好きではなかった。
スティルレインは瞳は紅眼だが、髪は黒よりの茶色で焦げ茶色よりも少し黒みがかっている。
なのでよりクマに見えなくもないし、暗闇で目が強調されると闇夜に光る野生動物と間違われそうでもある。
「ほら、このネックレスなんかピッタリじゃないか」
「どこにコブシ大の宝石をぶら下げて歩く令嬢がいるのです!もう、貴方にはセンスと言うものがありません。大きければ何でもいいとか。お父様にそっくりよ。邪魔。向こうに行きなさい」
遂にカァラム夫人が業を煮やして参戦してきてしまった。
「緑眼を目立たないようにしたいのなら、ドレスを薄いブルーから裾に行くに従って緑にしてみたらどうかしら。髪色とドレスの裾の上下に視線が飛ぶから目立たないかも知れないわね」
「ですが、ちょっとこれは胸元が開き過ぎではないかと…」
デコルテが強調されるベアトップで胸元がハートシェイプになっており、胸が大きい事も悩みの種であるエフローレは出来れば隠したいのである。
「俺はそれでいい!それがいい!!それじゃないと嫌だ!!」
「お黙り!」
「却下ですわね」
スティルレインの願望は聞き届けられないようである。
プリンセスラインのドレスだったが、ウエスト部分でどうしても上下という見え方になると瞳の色に着目されやすいのでマーメイドラインのドレスに着替える事になり、追い出されるスティルレイン。
そこに天敵も言える末弟のビームがやってきてしまった。
「あ、ドレス選び??僕も手伝うよ」
「ちょっと待て!お前は男だろうが!絶対にダメだ」
「どうして?可愛いは正義なんだよ?兄上は可愛い妻が最高の着こなしをするのを見たくないとでも?わぁ~最っ低~。こんな夫なんて絶対やだぁ」
「どうしてそうなる?俺のジアなら野良着でも作務衣でも何でも着こなす。皆が二度見するのをどうやって阻止するか検討せねばならんじゃないか」
――夜会に野良着や作務衣なら間違いなく二度見じゃなくガン見ですわ――
「まぁまぁ、兄上はどっか行って?邪魔だよ」
「いや、ビーム。お前が間違いなく邪魔だから!って!おいっ!」
スティルレインの制止を振り切って、ビームが幾つもあるドレスからスタンダードなマーメイドドレスをサッと手にするとエフローレに当ててみる。
可愛い物や、フリフリしたものに目がないビーム。
後ろで吠えまくる兄などもういないも同然である。
「待って、待って。マーメイドラインにするなら、足元の切り替えは少し大げさにしてみたらどうかな。肩口はオフショルダーにして透け感のある感じにすればデコルテも綺麗に見えるし気になる胸元も隠れると思うよ」
「そうですね。もうちょっと胸が小さければ…布を巻くと言うのはだめでしょうか」
「ダメだー!ジア!ビームに唆されちゃダメだ!布なんて!そんなもの巻いちゃダメだー!!ビーム離れろ!半径40キロ以上離れろ!」
「何を吠えているのかしら…困った子ね。誰か!塩シャケでも咥えさせて頂戴」
「畏まりました」
パクリ。途端に静かになる野次馬。いや、野次熊。
「こんな感じでどうかな。裾をちょっとお直しして…アクセサリーはシンプルなのが良いと思うよ。こんな感じでもうちょっと石が小ぶりなのはないかな」
「そうね。エフィちゃんは背中のラインも綺麗だから思い切って見せちゃうのもいいと思うけど」
「それはちょっと恥ずかしいです」
「いや、意外にイイかもよ。兄上が大きいから並んでる時はきっと腕とかで隠すだろう?背中が大きく開いてるとダンスの時とか意外性が出て注目の的!それにさ、この肩甲骨の形なかなかないよ?」
すったもんだでおおよその方向性が決まり、あとは細かい手直しを少し。
背中を出すのはまた今度という事で、シンプルな仕上げになった。
「レイン様、どうかしら?」
「ジア‥‥」
――咥えていた塩シャケが床に落ちましたわよ?――
「どこか変ですか?夜会の日はここにコサージュが入るんですよ」
「どこでも大丈夫だ。綺麗すぎて目が開けられない」
――がっつり開いてますよね?なんなら瞬きもしてませんよね?――
「どう?兄上とダンスを踊った後は列が出来るかもしれないね」
「潰す」
――木の実の殻は割るんです!潰してはだめですわ――
不穏な声が聞こえたが、一先ずはこれで夜会のドレスと宝飾品が決まった。
「もうちょっと贅沢をしても良いんだぞ?あの宝飾品と似合ってたと思うが」
「ドレス毎に宝飾品を合わせていたら大変です」
「そうか?あの赤い石の大きなやつは、なかなかないぞ?」
「いいんです。だってレイン様の目のほうが大きくて綺麗な紅ですもの」
「ジア…煽るな。これでも目覚めそうになる気持ちを抑えているんだ」
――え?今は冬眠中だったのかしら?――
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